「いくぞっ! シエスタッ!! 覚悟を決めろッ!!!」
「はいっ!!!」
二人の目前に、戦列艦の竜骨が鎌首をもたげていた。
ゼロ戦はそこに正面から突っ込んだ。
「はいっ!!!」
二人の目前に、戦列艦の竜骨が鎌首をもたげていた。
ゼロ戦はそこに正面から突っ込んだ。
シエスタの作戦は至極単純であった。
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!
零戦は、戦列艦の喫水線をなぞるように飛んでいる。
以前変わりなく。
以前変わりなく。
シエスタの作戦とは、つまるところ、これであった。
ブチャラティが戦艦の装甲を『切開』する。
ブチャラティが戦艦の装甲を『切開』する。
彼女は、破片や肉片が飛び交う中、非常なる集中力で、機体を最高速度で飛ばしながら座位を安定させていた。
(ひいおじいちゃん、おじいちゃん、ロハンさん)
(ブチャラティさん。私に力を!)
(見えた!!!機関部!!!!!)
シエスタは、零戦に残された機銃弾をすべて叩き込む。
ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ!!!
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!
ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ!!!
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!
20㎜機関砲と7.7mm機銃弾の死のダンス。
その瞬間をブチャラティは見逃さなかった。
彼が細切れに分解した、機関部の部品に、機銃弾によって火がつけられた瞬間を。
零戦の機体が、飛行船に開けられたトンネルを抜けていく。
新たに発生した大量の黒煙と共に。
その瞬間をブチャラティは見逃さなかった。
彼が細切れに分解した、機関部の部品に、機銃弾によって火がつけられた瞬間を。
零戦の機体が、飛行船に開けられたトンネルを抜けていく。
新たに発生した大量の黒煙と共に。
彼ら二人の行く手を阻むものは、何一つとしてなかった。
時はすでに夕刻。
月食も晴れ、太陽は自らの姿を紅く染め上げている。
シエスタは、すでにはるか後方にある『レキシントン』を眺めていた。
私、勝てた。平民のこの人と。
二人だけで。
月食も晴れ、太陽は自らの姿を紅く染め上げている。
シエスタは、すでにはるか後方にある『レキシントン』を眺めていた。
私、勝てた。平民のこの人と。
二人だけで。
ブチャラティは後部座席に戻っていた。
彼は後ろを振り返って右手をかざしあげ、夕日の輝きから目を保護していた。
まるで敬礼をするかのようだ。
視線の先には、爆発する戦列艦がある。
彼は後ろを振り返って右手をかざしあげ、夕日の輝きから目を保護していた。
まるで敬礼をするかのようだ。
視線の先には、爆発する戦列艦がある。
「アリーヴェ・デルチ(さよならだ)」
私、守れた。自分の村を、家族達を。
シエスタは少しだけあふれた涙を、指でそっとぬぐいながら。
自分の祖父の口癖を、ちょっとだけかわらしく、呟いてみた。
シエスタは少しだけあふれた涙を、指でそっとぬぐいながら。
自分の祖父の口癖を、ちょっとだけかわらしく、呟いてみた。
「ボラーレ……ヴィーア……(飛んで…おいきなさい)」
夕日に照らされたタルブの町が、金色に輝いていた。
せっかくの絶景も。
シエスタは、涙のせいで、かすんで良く見ることができなくなってしまった。
せっかくの絶景も。
シエスタは、涙のせいで、かすんで良く見ることができなくなってしまった。
「体当たりじゃねーのかよぉ! ちゃんと説明しやがれ! お前等!」
デルフリンガーが憤る。
だがそれも、今のシエスタにとっては賞賛の声に聞こえたのだった。
デルフリンガーが憤る。
だがそれも、今のシエスタにとっては賞賛の声に聞こえたのだった。
トリステイン学院の図書室には、いつもの、見慣れた風景があった。
アルビオンと、トリステインとの戦争は開始された。
だが、この場、このときだけは。
トリステイン学院に、戦場の気配は微塵も感じられない。
図書室の一角、密室と化した個人閲覧室の中から、タバサの呟きが漏れ出でている。
中からは、時々、露伴の相槌も聞こえる。
アルビオンと、トリステインとの戦争は開始された。
だが、この場、このときだけは。
トリステイン学院に、戦場の気配は微塵も感じられない。
図書室の一角、密室と化した個人閲覧室の中から、タバサの呟きが漏れ出でている。
中からは、時々、露伴の相槌も聞こえる。
「……この場面なら、『このド低能がッ!』と『このクサレ脳みそがッ!』のどちらかのセリフが適当だと思う」
「どう違うんだ?」
「個人的にはこのシーンだと、『このド低能がッ!』のほうが勢いがあって好いと私は思う。でも、表現が攻撃的過ぎるかもしれない」
「どういうことだ?」
「過激な表現だと、教師陣からクレームが来る恐れがある」
「なら、『このクサレ脳みそがッ!』にしてくれ」
「どう違うんだ?」
「個人的にはこのシーンだと、『このド低能がッ!』のほうが勢いがあって好いと私は思う。でも、表現が攻撃的過ぎるかもしれない」
「どういうことだ?」
「過激な表現だと、教師陣からクレームが来る恐れがある」
「なら、『このクサレ脳みそがッ!』にしてくれ」
閉じられたドアが、外側からノックされた。
「失礼します」
入ってきたのはシエスタだった。
入ってきたのはシエスタだった。
「お茶をお持ちしました。それと、お茶請けも」
「ああ、ありがとう」
最近、シエスタは毎日露伴の仕事場に差し入れを持ってくるようになった。
そして、三人でお茶会を楽しむのが図書室での日課となっている。
「ああ、ありがとう」
最近、シエスタは毎日露伴の仕事場に差し入れを持ってくるようになった。
そして、三人でお茶会を楽しむのが図書室での日課となっている。
たいてい、紅茶と、お茶請けのお菓子だ。
シエスタは最高級の茶葉を惜しげもなく使い、紅茶を三つのティーカップに順々に注いでいく。
紅茶のカップは貴族用の、ロマリア製の白磁の特注物だ。
それに、お菓子も段々と豪華なものになりつつある。
シエスタは最高級の茶葉を惜しげもなく使い、紅茶を三つのティーカップに順々に注いでいく。
紅茶のカップは貴族用の、ロマリア製の白磁の特注物だ。
それに、お菓子も段々と豪華なものになりつつある。
特にこの二~三日のそれの質は、食堂で出されるデザートのそれを超えているのをタバサは見逃していない。
「お茶の準備ができました。さっ、タバサ様もどうぞ」
「よし、いったん休憩にしよう。今日のお茶請けはこりゃまたすごいな…」
タバサはついに決意した。
このメイドとは一度、話をつけておく必要がある。
でも、そのまえに。
「シエスタ。私とあなたには身分の差はもうない」
「え?」
「私のことは、呼び捨てでいい」
「お茶の準備ができました。さっ、タバサ様もどうぞ」
「よし、いったん休憩にしよう。今日のお茶請けはこりゃまたすごいな…」
タバサはついに決意した。
このメイドとは一度、話をつけておく必要がある。
でも、そのまえに。
「シエスタ。私とあなたには身分の差はもうない」
「え?」
「私のことは、呼び捨てでいい」
そういわれたシエスタは、なぜだかとてもうれしそうに、タバサに向かって、はにかんで見せたのだった。
「では、タバサ…さん? お願いがあります」
「何?」
「あの…… 頭 ナ デ ナ デ してもいいですか?」
「……え゛」
「……え゛」
この瞬間、露伴は、タバサも思考回路が停止するものなのか、とのんきな考え事をしていた。
後日、タバサはキュルケに主張した。
『あの時シエスタは口の端からよだれをたらしていた』と……
『あの時シエスタは口の端からよだれをたらしていた』と……
シエスタ → 本人の希望の為、相変わらず学院内でメイドしている。
彼女がシュヴァリエであることを知るものは少ない。
彼女がシュヴァリエであることを知るものは少ない。
シエスタの活躍を、露伴から聞いたマルトー親父からは『我等の妖精』と呼ばれ、気に入られている。
正式名 →『シエスタ・シュヴァリエ・ド・ギルガ』
正式名 →『シエスタ・シュヴァリエ・ド・ギルガ』
岸辺露伴 → さあ、なでなでされる様子を見せてもらおうじゃあないか!
(スケッチ帳はどこにやったかな?)
(スケッチ帳はどこにやったかな?)
タバサ → ↑ う ら ぎ り も の ・ ・ ・
第3章『ポイントブランク』 Fine...