ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔 第三章-07

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匿名ユーザー

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その後、ルイズたちはシエスタの実家に招待されることとなった。
昼食を食べ損ねた彼女たちの腹の音の合唱に、シエスタが同情したからである。
ルイズたちが、シエスタの家の中に入り、鳴り響いたお腹をなでている間。
シエスタは自分の父親を懇々と説得をしていた。
彼女の家は、広場から見て『魅惑の妖精』の奥に、隣接するように建てられていた。
シエスタの父親は、
「そうはいってもね、シエスタ。家の母屋は店とは違って、貴族様をお泊めするよ
 うなつくりじゃないことはお前も知っているだろう。何か粗相があったら、私達
 は責任をとらなくちゃいけない」

「それは大丈夫ですわ。シエスタの父君」
キュルケが、彼女の赤い髪を父親の型に触れさせながらいう。
おそらく、父親には彼女がつけている香水の香りに惑わされていることであろう。
キュルケはさらに、シエスタの父親にしなだれかかって見せた。
「ルイズもそう思うでしょ?」
「え? 私……は別にかまわないけど。平民と一緒に寝ることは慣れているし……」

ルイズのその言葉に、シエスタの父は半ば驚いた様子で、
「そ、そうですか? ならば良いんですがね……」
とつぶやくように言った。と、いうか、自分に言い聞かせた。

彼はルイズ言葉を、何か別の意味に捉えたようだ。
彼は、小さな独り言で、貴族のモラルや青少年の性の乱れを嘆き始めた。
「う~ん。トリステインの学院がそんな風紀の乱れた場所だとは知らなんだ……
 シエスタの貞操は大丈夫だろうか……?」
「お父さん?」
「なんだ、シエスタや、突然に。父をあまり驚かせてくれるな」

「今日、露伴さんたちを家に泊めてもいいでしょ?……」
シエスタの親父は、わが子の言い放った言葉の、ある単語を心に深く刻み込んだ。
シエスタについた悪い虫は、『ロハン』というのか……
彼はさらに踏み込んだ疑問をも、心の閻魔帳に書き込んだ。
俺のみたところ、やつは平民のようだが?

シエスタの父に、そのような思いで見られていることにはついぞ気づかず、岸辺
露伴はシエスタの家の間取りを好奇心丸出しで観察していた。
「これはすごい!
 日本様式にスゴク似ていながら微妙に違う…」
彼の目は、半ば狂気の色を帯びている。
露伴は、縄の物指しを胸ポケットから取り出し、手当たり次第に調度品の大きさ
を測っている。
「見ろ! この壷なんか、まともな日本人には決して真似できないセンスだ。
 このエセジャポニズムが大変すばらしいぞ!」
感動した様子で叫ぶ露伴。
それを見たブチャラティは、彼らしく、親しい友人の父親に語りかけるように、
シエスタの父親に話しかけた。

ため息をつき、疲労の色を顔に隠さずに。
「その、なんだ……色々とご迷惑をおかけします……」
その言葉には、シエスタが笑顔で応対した。
「いえ、このくらいは大丈夫です。厨房でのマルトーさんよりはマシです」
シエスタにとっては、露伴の行動は想定の範囲内のようだ。
それにしてもこのシエスタは。ずいぶんと人間関係で苦労しているようである。

使い魔二人と、シエスタの父親の間に、多様気まずい空気が霧のように発生した。
それを察知したシエスタが、とりあえず父親に、露伴のことを紹介した。
「そういえば、『タケオ』ひいおじいちゃんと露伴さんは同じ国の人なんです」
「そうなんですか? ほう、それは。確かに、すごい偶然ですな」
「ええ、私たちは、なんだか運命じみたものを感じます」

「そうらしいな。俺の場合は、異世界までは同じだが、国が違う」
シエスタの父は、なぜか露伴に警戒心を持っているようだ、とブチャラティは思った。

だが、その会話に対し、ブチャラティとは違った感想を持った人物がいた。
タバサである。
彼女にしてみれば。とんでもない、そんな運命などあってたまるものか。と、思う。
タバサは、シエスタと露伴を交互に見つめてみた。
しかしタバサには、露伴たちの間の、恋愛規模は量れなかった。

タバサの思考はどんどん深く、暗くなっていく。
シエスタと露伴は、家族のことを語り合っているような仲になっているの?
いや、むしろそう考えないことのほうがおかしい。
現に露伴はシエスタの実家に招かれているのだから……

タバサの、その空気を読めないのは、やはりこの人物。
ギーシュ・ド・グラモン氏その人である。

彼は一足遅れて、シエスタの家にやってきた。
「私の実家では靴を脱いで床に上がってください」
そのシエスタの言葉に従い、ギーシュは自分が履いていた、ムカデ屋の茶色い革靴を
玄関に脱いで入ってきた。
この男、あくまでも、どこまでも陽気な雰囲気をまとわせている。

「じゃまするよ……ッ!!!……グアアアアァァァッッッ!!!!」
ギーシュの悲痛な叫びが辺りに響き渡った。
彼は、しゃがみこんでもだえ苦しんでいる。
「どうした、敵の攻撃か?!」
咄嗟にブチャラティは辺りをを伺う。
だが彼には、『敵の攻撃』の兆候を見出せない。
ギーシュの態度の変化以外は。

しかも。
なぜか、シエスタとその家族が彼を憐れみの視線で見つめている。
ブチャラティは、戦闘体制をとりながらも、シエスタの態度に疑問を感じた。
どうしたというのだ?

まるで、シエスタは『ギーシュの感じている痛み』を知っているようではないか。
そのとき、当のギーシュから、息も絶え絶えな声が発せられた。

「か、家具……こ、小指……あ、足……」
その言葉で、露伴はすべてを理解した。
そして、彼は同情するかのようにため息をつく。
「ああ、アレは痛いな」

「おい、ギーシュは一体どうしたというのだ、露伴?」
「ああ、たぶん、いや、絶対。彼はあの家具に足の小指をぶつけたんだ」
「ええ、私もそうだと思います。私も、小さいときは、よくぶつけていましたもの」
「でもな、ただぶつけたくらいでアレほど痛がるか? 普通」
ギーシュはいまだのた打ち回っている。
「ああ、君はイタリア人だから、家に入るとき靴を脱がないんだったな」
「ブ、ブチャラティさん……この痛さは半端じゃないですって……」
ようやく立ち上がったギーシュは、半分涙目だ。
「まあ、結構な水のお化粧ね」
「そんなことで、みっともない。あんたそれでも貴族なの?」
「痛がり」
メイジたちの蔑みの目線を一心に受ける彼の元に、救いの手が差し伸べられた。

「あれは痛い。僕には、君のその痛みがよくわかるよ」
「私にも判りますわ、ミスタ。あなたのその苦しみが!」
「おお、ロハン! シエスタ! 心の友よ~」
ギーシュは感極まり、二人に向かって抱擁しようとした。
が、その二人はどちらともタイミングよくギーシュをよける。
結果、彼は暖炉の赤レンガの壁に鼻を思い切りぶつけることと相成る。

その場の空気が珍妙になったところで。
シエスタの父親は、
「そういえば、そろそろ夕食の時間だな……」
居間の隅においてある、檜の木でできた水盆をのぞき見た。
そこには針のようなものが二本浮いていて、それぞれ、現在の時間と分を示している。
それによると、現在はちょうど午後7時。
彼の言うとおり、夕食時といっても良かった。


「まことに相すみませんが、食堂のほうは、予約でいっぱいになってまして――」
そう貴族たちに恐縮するシエスタの父親。
対照的に、シエスタは元気いっぱいに話しかけた。
「それなら大丈夫よ、お父さん。私達が『ヨシェナベ』を作っておいたわ」
そういってシエスタは、タバサに向かって微笑みかけた。
彼女はタバサの手を握っている。
タバサは無言でうなずき返し、どこぞにむけ、『レビテーション』の魔法をかける。
ちょっとの間をおいた後、直径が1メイル程はあるナベが、空中を浮いてきた。
それは、まっすぐに居間のテーブルの中央に着座した。

「このヨシェナベを作るの、タバサさんも手伝ってくれたんですよ!」
「準備はすでにできている」
これはタバサの弁。
昼食を抜かれていたルイズたちにとって、タバサの言葉は、始祖ブリミル直々の御
言葉よりもありがたいものであった。
ルイズ達貴族も手伝って、たちまちテーブルに食器が用意される。
唖然とする父親をほったらかしにして。

「あれ? コルベールはどこ行った?」
「『竜の羽衣』のトコです。何か、いろいろ弄繰り回していました。先生は、夕食
 は召し上がらないそうです」
シエスタと露伴の協議の結果、今夜の晩餐はコルベール抜きで行われることとなった。

晩餐が始まったとき、その喜劇は訪れた。
少数の人間にとっては悲劇であったが。

「タバサさんは料理うまいですね!貴族様なのにびっくりです」
シエスタが目を丸くする。
「ンマッ!確かにうまいな!」
露伴が同意する。
「はしばみ草をいれて、アレンジしてみた」
タバサの頬がほんのり赤く染まった。
「そうなんですか? 今度マルトーさんに言って学院のメニューに加えるように提
 案しておきます」


「み、水……」
ルイズが目を丸くする。
「マズッ……っていうか、苦ッ!」
キュルケが同意する。
「世界の苦さが競い合うように地獄の交響曲をッ……ウボァー!」
ギーシュの頬が思い切り赤く染まった。

……いまのは『エアハンマー』かな……?
「きゅいきゅいッ!」(お姉さまの前でそのような発言は死を意味するのだわ……)
「きゅい」(あの魔法……味わったものにしかわからない痛みね)
「シルフィード、後でミーティング」
「きゅ、きゅい~」

ルイズたちの騒動に加わらない大人が二名、存在した。
彼らはこの時期、味に関して達観していた。
「フッ。アレだけ最高な昼食だったんだ。これくらいなんともないぜ」
「しんだ、シエスタのおっかさんの味だな……悪い意味で……」

To Be Continued...


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