ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-30

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匿名ユーザー

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 絶対絶命の状況で救いの声が掛かる。
「ミスタ・コルベール実家に連絡とは、いささかやり過ぎではないかね」
 オールド・オスマン!
 部屋の入り口にオールド・オスマンが立っていた。
「しかし、ミス・ヴァリエールは規則を破り・・・」
「ミスタ・コルベール」
 コルベール先生の話をオールド・オスマンが遮った。
「は、はい」
「今、君がこうして暢気に授業や研究が出来るのは、ミス・ヴァリエールの
お蔭と言っても過言では無いのじゃよ」
「なんですと!?」
 コルベール先生から驚きの声があがる。
「先の任務でミス・ヴァリエールはそれだけの働きをしたのじゃよ。性質上
誰彼かまわず自慢出来る事の無い任務のな。その任務で失ってしまった
使い魔を侮辱され怒りに囚われ魔法を使ってしまった・・・
一体誰が彼女を責められようか」
 ・・・使い魔・・・プロシュート・・・
「ミス・モンモランシー使い魔はメイジの半身じゃ、その失ってしまった気持ちを
察し、どうかミス・ヴァリエールを許してはくれんかね」
 オールド・オスマンはモンモランシーに頭を下げた。
 まさか学院長がわたしの為に頭を下げるなんて・・・
 だが、わたしよりも、モンモランシーの驚きの方が大きかった。
「あ、頭をお上げください、オールド・オスマン。何も知らずに無責任な事を
言ってしまった私も悪いのですから」
「そうか許してくれるか。これで、この話はお仕舞いじゃ」
 オールド・オスマンの決定にコルベール先生が非難の声をあげる。
「しかし、それでは他の生徒に示しがつきません」
「そんなもん、罰当番で充分じゃわい」
「しかし・・・」
 コルベール先生は納得できないようだ。

 その様子をみてオールド・オスマンは声を掛ける。
「のう、ミスタ・コルベール。人は誰しも間違いを犯してしまう、大切なのは
責める事ではなく赦す事だとはおもわんかね?」
「・・・わかりました。学院長の決定に従いましょう」
 先生から先ほどの剣呑な雰囲気がなくなったが、哀しい表情をしていた。
「今度こそ、この話は終わりじゃ。ミス・ヴァリエール」
 オールド・オスマンに声を掛けられ、わたしの中に緊張が走る。
「はっ、はい」
「旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけで、つらかろう。だがしかし、
おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのじゃ」
 優しい声で、オールド・オスマンは言った。
「そして、来月にはゲルマニアで、無事女王と、ゲルマニア皇帝との結婚式が
執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
 確かに手紙は取り戻した。でも、わたしの勝手な行動によりプロシュートを
死なせてしまった・・・とても胸を張ることなんて出来ない。
 わたしが黙って頭を下げているとオールド・オスマンは一冊の本を差し出した。
「これは?」
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書?これが」
 たしか王室に伝わる伝説の書物。国宝のはずだった。どうしてそれを
オールド・オスマンが持っていて、わたしに差し出すの?
「トリステイン王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を
用意せねばならんのじゃ。選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、
式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はぁ」
 そんな事するんだ。
「そして姫は、その巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫さまが?」
「その通りじゃ。巫女は、式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち
歩き詠みあげる詔を考えねばならぬ」
「えええ!詔をわたしが考えるんですか!」
「そうじゃ。もちろん、草案は宮中の連中が推敲するじゃろうが・・・。
伝統というのは、面倒なもんじゃのう。だがな、姫はミス・ヴァリエール、
そなたを指名したのじゃ。これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に
立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
 心の何処かで、こんな事をしている場合じゃないとさけぶ・・・
 いや違う、これはチャンスよ。アルビオンで手柄を立てたが、その成果は誰にも
言えない・・・家族にさえも。
 匿名の情熱なんていらない・・・
 わたしは歴史に名を残すと決めた。これは、その第一歩よ!
 わたしは、きっと顔をあげた。
「わかりました。謹んで拝命いたします」
 わたしはオールド・オスマンから『始祖の祈祷書』を受け取った。
 これが『始祖の祈祷書』・・・

トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。
あの王室には『始祖の祈祷書』が眠っておるからな。
聖地に赴く際には、是非とも携えたいものだ。

 頭の中に響く声・・・
 聞いたことも無い声なのに・・・
 ・・・どうして、こんなに胸騒ぎがするの・・・


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