ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-31

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匿名ユーザー

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「海軍少尉、佐々木武雄、異界ニ眠ル、か」
シエスタにひい祖父の墓の前に案内されたシュトロハイムが呟く。
「え、シュトロハイムさん、これ読めるのですか!?」
「腐っても大佐だ、ドイツ語はもちろん英語フランス語デンマーク語イタリア語日本語などお茶の子よッ!」
「よくわかんないけどすごいわねー」
キュルケがパチパチと手を叩く。
「へえ、平民で大佐とはすごいな、僕の家も長く武家をやってるが、平民で佐官まで上り詰めた人間なんて
そう聞いてないな。君の国はどこなんだい?」
ギーシュがそう尋ねた。
「う、うむ…ま、まあその話はオスマンにでも聞いてくれ…」
すると途端にシュトロハイムの歯切れが悪くなる。
「なによー、別にいいじゃない、言っちゃいなさいよ」
キュルケが促す。
シュトロハイムは特徴的な髪を片手でいじりながらゴホン、と咳をしてから話した。
「うむ、それなんだが…信じてもらえないかもしれないが、違う世界から来たのだ」
「違う世界ですって?そういえば私の使い魔もチキュウというところから来たって言っていたわね」
シュトロハイムがものすごい形相でルイズに振り向いた。
「なんだと、そう、俺もその地球から来たのだ!うむ、一度あってみたいな、その使い魔とやらに!」
「まあ、そのうち会えると思うわ」
「うむ、楽しみにしているぞ!」
シュトロハイムが大きく頷く
「あまり過度な期待はしないほうがいいと思うけれどね」

「よし、これで遺言通り墓碑銘も読んで機体も頂けた、あとはガソリンを入れるだけだぞ、コルベール!」
「うむ、ぜひともあれを飛ばしてみたいですぞ!」
シエスタがにっこりと笑う。
「わたしも、ぜひともあれが飛んでいるところをみたいですね」
「うむ、では初飛行と行こうか、空の羽衣、いや零式艦上戦闘機五二型のな!」



「ふむ…よい整備状況だが、少々無線とかををいじらねばな」
シエスタに空の羽衣の場所まで案内されたシュトロハイムは、周りを調べながら呟いた。
「ほう、無線とはなんですかな?」
コルベールが興味津々で尋ねる。
「まあ待て、コルベール、俺の胴体を一旦解体してくれ…うむ、そうだ、そしてそこの四角い物を
取り出して…ああ!コルベール、もっとやさしく!そこはダメだッ!ダメッ!ダメッ!
そう、そうしてそれを取り出したら、横の……」

作業が終わるのを暇そうに一行は眺める。
「それにしてもここは眺めのいいところねー」
キュルケが大きく体を伸ばす。
「ええ、わたしもこの景色、大好きですよ…田舎ですけれどもね」
シエスタがはにかむ。
「ああ、そうでした、ここのワインは景色とならんで自慢なんですよ!
後で振る舞いますのでぜひどうぞ、シュトロハイムさんたちもどうですか?」
しかし、彼らは集中しきって聞いていない。
いつのまにかギーシュも見慣れない部品でできたシュトロハイムの体に興味津々だ。
「まったく、これだから男の子ってのはねえ…」
キュルケがなにかを悟ったように呟いた。


「うむ、これで完成だ!では飛ばすぞ!…しかし、戦闘機に乗るなど久しぶりだな、
ルフトバッフェから降ろされたのがこの体になってからの唯一の心残りだったが、それも晴れた」
エンジンが音を立てて震えだし、シュトロハイムはゼロ戦に乗り込む。
「滑走距離よし、離陸する!」

長い長い草原の上を地平線めがけて車輪が回り、機体が進み始める。
かなり長い距離を進んでいき、そして、ゼロ戦は唐突に車輪が地面から離れた。
ゼロ戦は浮き上がり、そして大空へ舞い上がった。
近くの住民たちが歓声を上げる。コルベールの歓声は一際大きかった。

「天気晴朗な…ど波高し…どう…聞こえ…か?」
空にいるはずのシュトロハイムの声が後ろから聞こえ、驚いてルイズ達は振り向く。
「ど、どこにいるのシュトロハイム!?」
「コルベ…ル…渡した機械に向か…て声を吹き込んでくれ」
コルベールはハッとして四角い箱につながれた小さな箱を拾う。
「こ、これはなんですかシュトロハイムくん!?」
「うむ…よく聞こえるぞ、コルベール、これは無線とい…てな…ある程度離れてもこうやって
会話をすることができるのだ、動力は先ほど俺から取り出したバッテリーで動いているウウウウッ!
ゼロ戦にももちろん積んであったが、我がナチスの電撃戦のカギは密接な連絡と指揮ィイイイイッ!
文字通りの機械化歩兵である俺に無線を積んでいないわけがないィイイイイイイッ!」
コルベールは興奮した顔で声を吹き込む。
「すごいですな、シュトロハイムくんの世界は!死ぬ前にお目にかかりたいものです!」
シュトロハイムの笑い声が聞こえた。
「あまりガソリンの無駄遣いはできんからな、そろそろ着陸する…全員機械を抱えて森の方まで避難してくれ」
シュトロハイムの乗ったゼロ戦は空中で華麗に旋回し、地面に車輪をつけ、数百メイル進んだのちに止まり、
中からシュトロハイムが降りてきた。

「どうだった、コルベール?」
「素晴らしいですな!あれにエンジンが使われているというのは驚きですな!
発明家としての血が沸きますぞ!」
「うむ、ではそのうちにこれを魔法学院に持っていく、着陸できそうな所を見繕っておいてくれ、
ではここの名物のワインを頂こうとするか!」
「なによ、あんたちゃっかり聞いてたのね」
キュルケがシュトロハイムをつつく。
「ワインとチーズには目がなくてな、あとはザワークラウトでもあれば言うことなしだな、
うむ、あちらの世界でちゃんと料理を学んでおけばよかった」
シュトロハイムが唸る。


シエスタの家に向かうと、近くの住民たちが集まって大がかりな歓迎会を開いていた。
この村の宝である『空の羽衣』が本当に飛んだのをみて急遽用意した、とのことだった。
村長が泣きながら現れ、コルベールとシュトロハイムに頭を下げ、シュトロハイムに抱きついた。
コルベールに抱きつくのは彼が貴族のため自粛したようだったが。

「素晴らしいワインですな、これは!」
コルベールが感嘆する。
「貴族様にそう言っていただけると光栄です」
そう言った住民にシュトロハイムが首を伸ばして酔った顔で言う。
「おい、そいつはお前が思ってるような貴族じゃないぞ、土と油にまみれた高貴さなんてかけらもない奴だ!
そんな奴に敬語なんて使ってもなにもでんぞ、わははははは!」
といって豪快に笑う。
「そ、そんな、畏れ多いですよ…」
「ははは、いいんだよ、一応教師をやっているがこうやって休暇をとって好き勝手やっているんだからね!
しかも、生徒たちにこんなところで好き勝手やっていることがバレてしまったし、面目が立たないですな!
しかし、それでもこのワインとチーズを楽しめただけでもあの『空の羽衣』を研究した甲斐はありましたぞ!」
「ありがとうございます、コルベール様、それでは次のワインを持ってきますね」
コルベールは頬をかく。
「うむ、なんだか催促したみたいになってしまいましたな…」


生徒たちも思い思いに楽しんでいた。
「UMEEEEEEEEEE!」
「このチーズがワインを、ワインがチーズを引き立てるッ!『ハーモニー』っていうのかしら、
『味の調和』っていうのかしら!例えるならホワイトスネイクとルイズ!
神田に対する栗原!ベルリンフィルハーモニーに対するサイモン!って感じだわ!」
「ところでコルク抜きもってないかしらあ?」
ギーシュ、ルイズ、キュルケも酔っぱらい、
いつのまにかシエスタも飲み始めていた。
「るいずさーん、一発芸やりますねー、口にワインを含んでー、パウパウッ!波紋カッター!」
「すごいわねーシエスタ、それどこで習ったのー?」
「えへへー、曾祖母のリサリサっていう異世界からきたひとからー、あれれー?私の曾祖母は
普通の人ですよねー?えへへーやっぱりわかんないですー」

あまりに酔いすぎているため、これは帰らせるのは無理だと判断したコルベールは泊まっている
シュトロハイムの小屋の近くにある宿に放り込んだ。


「あー、頭痛いわ…」
そう言って一階にルイズは降りていく。
ワムウに起こされているせいか、早起きはどうやら得意になったようである。
降りていくと、コーヒーを飲んでいるシュトロハイムがいた。
「ほお、なかなか早いな。あの少年よりは軍人向きかもしれんぞ?」
「あなたは元気ね、シュトロハイムさん。私たちは全員二日酔いで唸ってるわよ」
「軍人だからな、鍛え方が違う。敵は常にウォッカ飲んでるような奴らだったしなおさらだ」
「…ねえ、シュトロハイムさん、異世界から来たって言ったけれど…元の世界は恋しくないの?」
シュトロハイムは頬を緩ませる。
「貴女は優しいな、恋しいこともある。あの風土、食品を味わえんと思うとな」
「家族とか友人は恋しくならないの?」
「父母はいるが、まあなんとかやっていけるだろう。弟は先に戦争で死んだ。友人も、部下も、
優しい上官も厳しい上官も多く死んだ。俺が死なせたものも多くいる。俺がいなくなった戦場はどうなっているか
気がかりであるが…大佐一人で歴史はかわらんさ、閣下のように伍長から政治畑に上っていく器でもない。
なるべくようになるはずだろうな」
ルイズは黙りこくる。
「地球が恋しいこともある。しかし、俺があちらで死んだ以上、あちらでの俺の人生は終わったのだ。
ここはよいところだぞ、ミス・ヴァリエール。俺には帰るべき故郷はない。
ここに骨をうずめられるならば二度目の人生としては上々だろう」
「そうやって諦めきれるものなの…?」
「そうでも思わんとやっていけん」
そう言ってシュトロハイムはコーヒーをぐいっと飲み干した。
「あっちの世界の知識のある俺なら微力ながらやれることくらいはあるだろう。悲惨な戦争を止めるほどの力はないが、
少なくともゼロ戦を飛ばすことくらいはできる。ここの人たちに笑って貰えたのだからな、かなり上等じゃないか、
お前らを襲うオーク鬼も片付けられたしな」

そう言い終わったあと、キュルケとギーシュが降りてきた。
「あら、ルイズ早いわね」
「いたたたたた、おはよう、ルイズ、キュルケは大丈夫なのかい?」
「トリステイン人とは酒への強さが違うわ」
「そうかいそうかい、どうせ僕は軟弱な下戸さ」
キュルケたちはルイズの横に座る。
「それで、どうするの今日は?」
「もう宝の地図はないし、帰るしかないじゃない」
「結局徒労だったってことね」
ルイズの言葉にギーシュがムッとしていう。
「待て待て、あのカヌーのようなものが飛ぶところをみれただけでもこの旅は素晴らしいものだったぞ!」
「学院にいてもシュトロハイムさんがくるとき見れるじゃない」
「う、まあそうだが」
「まあ、ここでグダグダ言っててもしょうがないわよ、帰る準備でもしましょう」
そういってキュルケが立ち上がったとき、轟音が響いた。



「やれやれ、壊滅的とはこのことを言うのだな」
アルビオン艦隊にいわば『騙し討ち』といった形で攻撃されたトリステイン艦隊・ランベルト号艦長は自嘲的に言った。
「白旗をあげている艦も多くおりますな、罵ってやりたいところだが、そうもいきませんな」
側近の部下が艦長にそう漏らす。
「それで、どういたします、艦長?」
「そんなもの決まっておるだろう」
艦長は杖を構えた。
「勝ったつもりでいる奴らを教育してやる他あるまい、なに、運がよければ痛みもなく死ねるだろうからな」
「あなたも馬鹿ですな、貴族であるあなたは捕虜になるのが関の山でしょう」
「そう言うな、馬鹿な参謀め、『ランベルト』号、八時の方向に砲撃開始!一秒でも長くトリステインの空を守るぞ!」


「どうなっているのです、マザリーニ」
「アルビオン軍はタルブの村に上陸作戦を始めたようですな、もう少し言えば、ゲルマニアの助けは
得られそうもありません…さて、どうするのです?姫殿下?」
「不可侵条約があったはずでは?」
「紙のように破られたようですな」
「マザリーニはどうすべきだと思いますか?」
「タルブを捨てるべきか、水際作戦を行なうか、どちらを姫殿下が選ぶかによりますな」
「捨てられるわけがないでしょう」
「ならば、言わずもがなです」
「わかりました。南方の竜騎士部隊を急行させます。行きますよ、マザリーニ!」


「お姉様、タルブの村がなにかおかしなことになってるのね」
「降りる」
「わかったのね、ワムウ様、しっかりつかまってるのね、きゅいきゅいー!」


To Be Continued...


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