ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-29

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匿名ユーザー

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「なによ、主人が大変だっていうのに、あいつはどこいったのよ、ほんと…」
白紙の”始祖の祈祷書”を抱えながらルイズは自分の部屋で呟く。

詔を考えろなんて言われて、あまりのことにのぼせながら承っちゃったけど…
今考えたらとてつもない重役だわ、私じゃ力不足じゃないかしら……
詩的になんていわれても、思いつかないわよ、詩人じゃないんだから。
もう、やんなっちゃうわ。

ルイズはため息をつこうとすると鍵がかかっているはずのドアが大きく開く。
「ルイズー、詔とやらはできたの?」
校則で違反されているはずのアンロックで押し入ってきたキュルケにニヤニヤしながら尋ねられる。
まったく、またからかいにきたのかしら。
そう思いながら不機嫌な顔で返事をする。
「なによ、こんな大事なこと一朝一夕でできるわけないじゃない」
「そうよねー、じゃあどれくらい書けたのよ、見せなさいよ」
う、と詰まった隙をつかれ、キュルケに下書きしている紙を奪い取られた。
「な、なにするのよ!」

それを見たキュルケが吹き出す。失礼ね。
「あはははははは!なによ、これ!
『炎は五車炎情拳!!わが身に触れるものは怒りの炎に包まれる』
『水は世が世なら百万の軍を自在に操る』
『風は風を友とし風の中に真空を走らせる その真空の力は鋼鉄をも断ち割る』
『土の歩を進ませるのはこの子供たちの心』
どこが詩的よ、あははははは!」
「そ、そんなに笑うならあなたが書いてみなさいよ!」
「なによ、私はあんたのためにいい話をもってきたのよ」
そういってキュルケはたくさんの地図を出してくる。かなり厚い。
「なによその地図の量、終わりのクロニクルの最終巻より厚いわよ」
「これでも厳選したのよ、ギーシュなんかに任せたらそれこそペリー・ローダン全巻より厚くなるわよ」
「で、なんなのよそれは」

キュルケがふふ、と笑い人指し指を立てる。
「宝の地図よ!」
「はあ?」
思わず声が漏れる。
「だから宝の地図よ、ロマンよ!ロマンホラーよ!深紅の秘伝説よ!」
「それが詔となんの関係があるのよ」
眉をひそめながら言う。
「わかってないわね…いい、詩に限らずいいものを作ろうとしたら人生経験ってのは必須なの。
どうせあなた、いいとこのお嬢さまだってことにかこつけて宝探しなんてしたことないんでしょう?」

大して年も違わないくせに偉そうに言うのは少々腹が立つが、一理ないこともない。
というか、宝探しにせっかくだから私は行ってみる方を選ぶわ、なんて気持ちもないこともない。
「ま、まあ、そこまで言うならいってあげてもいいけど?」
「なら話が早いわ、トリスタニアに一緒に行ったメイドのシエスタっているでしょ、あの子も誘ってきて」
「なんでシエスタを誘うのよ、宝探しなんでしょ?」
「シエスタの故郷がタルブなんでしょ、あの辺りに結構あるみたいだから案内してほしいのよ、
あと料理できる人いないし」
こいつ、それが目的なのね…
「わかったわよ、誘ってみるわ、いつ行くの?」
「今すぐよ今すぐ、だいたいタバサもいなくて暇だからこんなことやってるんじゃない」
「ようするにあんたの暇つぶしってわけね、じゃあ二時間後に校門で待ってるわよ」
「あいあーい」
まったく、忙しいときになんてものに誘うのかしら。
でも、気分転換にはなるかもしれない。ちょっとワクワクするしね。



ラルカスが杖を振る。
鋭い水の刃が鍾乳石、地面、家具、そしてワムウたちの皮膚を切り裂く。
「なかなか堅い皮膚だな、同類よ」
「吸血鬼風情が偉そうな口を、貴様なんぞは餌にすぎん」
「吸血鬼?そうか、俺は吸血鬼になっていたのか。ご指摘感謝しよう、ところで君はなんなんだね、
伝説の吸血鬼の上の存在とは?学術的にも興味があるな」
「人間どもは柱の男と呼んでいた。お前が死ぬ前に脳味噌に刻んでおけ」
「『柱の男』か、いいだろう、覚えておこう。しかし私に勝てるのかね?
ミノタウロス、伝説の吸血鬼、スクウェア以上のメイジ、スタンド使い、それが私だ。
『柱の男』よ、もう神の前髪は俺の手の中だぞ」

ラルカスの絶え間のない魔法とワムウとクレイジーダイヤモンドのぶつかりあいによって洞窟が少しずつ崩れていく。
月光による筋が数本射しこめる。
「きゅいー!お姉様もワムウ様もなんとかして外に逃げるのね、外にさえ出れれば空までは追って来れないはずなのね、
きゅいきゅいーッ!」
「シルフィードは逃げて」
「お、お姉様はどうするのね!?こんなところで死ぬのも死なせるのも嫌なのね!
どうせ死ぬなら空で死にたいのね!穴の中はごめんなのね!」
「なんとかして足止めだけでもする、あの化け物を見過ごしてはおけない」
「きゅいー!お姉様、なんでこういうときは強情なのね、やるからにはやるのね、
精霊の魔法なめんじゃないのねーッ!我を纏う風よ、彼の姿を変えよ!」
青い渦がラルカスを襲いラルカスの左手がゴムのようになる。
「た、他人にこの魔法使うのなんて初めてなのね…維持するだけでせいいっぱいだから
あとはお姉様とワムウ様よろしくなのね」
ワムウは邪魔が入り舌打ちするが、一応手伝いという名目なので何もいわず向き合う。
タバサは杖で足元を狙い、飛んでくる水の刃を凍らして体積を増やし、少しでも切れ味を鈍らせる。

そこまでの努力を敷いても、ラルカスには致命傷を与えられなかった。
ワムウが攻撃することによって退けることのできないクレイジー・ダイヤモンドをかわし、
かつ安定した体勢で狙わなければ堅い皮膚は破れない。
その上多少の傷は吸血鬼の自己再生能力ですぐに治り、決定打を与えることができても、暇を与えれば
おそろしいレベルに達している水の魔法による治癒で治されてしまう。
決定打を与えられないのはラルカスも同じだが、無尽蔵とも思える精神力とスタミナに対して
経験豊富なタバサでさえもついていけなくなっていく。

「やれやれ、埒があかんな」
バックステップで下がったワムウがタバサに話しかける。
「どうする?」
「埒を開けるしかないだろう、白兵戦は硬直しだしたならば、騎兵突撃といこうか」
「きゅい?馬なんかどこにもいないの…」
「闘技『神砂嵐』」

ワムウの放った神砂嵐で洞窟の天井が崩れる。
「ほら、とっとと竜になれ」
「わ、わかったのね」

竜に変身したシルフィードに二人は乗り、天井の大穴から大空へ飛びたつ。
ラルカスが見上げながら呟く。
「ふむ、上空か、それは少し厄介だな」
ラルカスはクレイジー・ダイヤモンドをだし、あいた大穴を半分以上治す。
「どうだ、これでその竜はもう降りてこれまい、降りてこい、鬼神」


「ど、どうするのね、よくわからないけれど、あんな小さい隙間にされたんじゃさすがに降りれないのねェ~
洞窟は狭いのねェ~」
「行け」
「い、行けといわれてもこれでは進めないのね…」
「隙間を広げればいいではないか…行け」
「す、すきま~~?破片で尖った石であふれているのねェェェ」
「関係ない、行け」
「い、いやなのねえェェェ!って体が勝手にいいィ!
きゅいいいいいいい!ここまでやらせたのね、私の綺麗な肌は守ってくれるのね?」
「だめだ」
「きゅいいいいいいいいいいいい!」

シルフィードをワムウが無理やり操り、隙間に急降下させる。
隙間をワムウが破壊し、破片が飛び散る。
急降下したままタバサが氷の矢を雨のように降らせる。
「騎馬の真髄はな、突撃力だ、あそこからの急降下ならお前も無事ではすまんだろう、
バカ竜、悪いがそのまま突っ込ませてもらうぞ」
「きゅいいいいいいいいーッ!ひどすぎるのねーッ!」

シルフィードの巨体をクレイジー・ダイヤモンドでガードするが、あまりの重量と速度のためガードが弾かれる。
ワムウがシルフィードから飛び下り、スキのできたクレイジー・ダイヤモンドを飛び越え、ラルカスに突っ込む。
ラルカスは舌打ちしながらワムウにむかって激流のような水柱を放つ。

「それを待っていた」
タバサが素早く詠唱し、ワムウに水柱が届く前に全て凍らせる。
杖ごと水柱は巨大な氷柱となり、あまりの重さに右手を下げる。

「もう貴様を守る腕はもうない、神の前髪が手の中にあるだと?笑わせるな。
首から上全て持っていくのが我々柱の男だ……闘技『神砂嵐』!!」
砂嵐の小宇宙がラルカスを襲い、凍っていた杖、皮膚、角、全てを破壊していく。

「おおおおおおおッ!」
やぶれかぶれにラルカスが殴り掛かってくるが、受け止め、ボディーブローを数発決める。
ラルカスは地面に沈む。

「どうした、先ほどのスタンドの能力は治療か巻き戻し、とみたが治さないのか?治すより早く体をぶち折ってやるがな」
「なんなんだ貴様は!鬼神か!?魔王か!?軍神か!?」
立ち上がれないラルカスが喚く。
ワムウが頬を掻く。
「そうだな、強いて言えば宝石も貰ったし、女王陛下のアルバイト使い魔、といったところか」
「使い魔だと、そうか、俺は使い魔に負けたのか…主人はそこの少女かね、それとも女王陛下とやらかね?」
「いや、向こう見ずな小娘だ」
「そうか、一度その少女を見てみたかったな、では、地獄でもよろしくだ、軍神の化身よ」

ラルカスはクレイジーダイヤモンドでワムウに殴り掛かる。
それよりも速くワムウはラルカスを喰いきった。



「あーっ!そういえば外の人売りどものこと忘れてたのね!一応ボスは縛ったけど仲間は逃がしっぱなしなのね、
早く追いかけるのねーッ!きゅいきゅいーッ!」

そう言って人間に戻ったシルフィードは出口に向かって走り出した。
そして、洞窟の出口にたち、絶句していた。

「なにが起きたか、そこにはとんでもない事実が!衝撃の事実は、しーえむのあと!」


タバサに杖でシルフィードは殴られる。
「痛いのね、なにするのね!」
「他人のネタは使わない」
「他人というかある意味自分のネタなのね、これは韻竜の共有財産なの…」
もう一発杖が落ちてくる。
「いたいのね、わかったのね、ごめんなさいなのね」
「それで、なんなの」
「外をみればすぐわかるのね」

タバサが長いトンネルを抜けるとそこは裸賊の住処であった。

「変態なのねー!お姉様目に毒なのねーッ!」
下着だけで盗賊たちが縛られて放置されていた。
「ま、待ってくれ、俺たちの名誉のためにもわけだけでも聞いてくれ!」
「あ、ありのまま先ほど起こったことを話すぜ!『リーダーを助けようとしたら変な髭のおっさんが現れて、
気がついたらギャンブルで下着以外全て奪われていた』
なにをされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだ」

シルフィードが男たちを冷やかな目で見つめる。
「変態には違いなさそうなのね、変態で盗賊なんてもうどうしようもないのね、とっとと突き出すのね、お姉様。
……ん、なにか紙が落ちてるのね?」
『タバサ様へ ロープなどの諸経費(人件費含む)五エキューを七日までにダービー商会トリスタニア店舗にてお支払い
お願いいたします。
追記、なおミノタウロスの遺体の買い取りも承っております、どうぞご利用下さい』

「……巻き上げた上にロープ数個に五エキューとはあのおっさん貴族なめてるのね、お肉いくつ買えると思ってるのね!
きゅいきゅい!だいたいミノタウロスの遺体なんて武器屋がなんに使うのね!」
「皮膚を使って鎧にしたり角を使って槍を作ったりする。肉骨粉はクラゲとあわせて発射にも使える」
「お姉様、そういうネタこそやめた方がいいと思うのね……もう疲れたのね、こいつら引き渡して、
シルフィお気に入りのタルブの村に向かうのね、きゅいきゅい」


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