ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

外伝-9 コロネと亀は惹かれあう?

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
あ、ありのまま見たことを話すよ!

わ、私は父上に国から出されて、魔法学園に向かっていた。
父上に言われた『王家の血を引きながら系統魔法を全く使えないメイジ』を探す為だよ…
でも襲撃され、私は潜在的な敵国ゲルマニアの貴族ネアポリス伯爵に助けられ、その馬車に乗ることになった。

だが、そのネアポリス伯爵は今急速に勢力を伸ばしている、『盗賊』ではなく『ギャング』と名乗る組織『パッショーネ』の一員だった!
な、何を言ってるかわからないと思うけど、私もどうしたらいいのかわからない…!

レコンキスタだとか父上に反抗する一派だとか、そんなちゃちなもんじゃない危険を感じるよ!
当のネアポリスと目があって、私は反射的に目を伏せた。


外伝9 コロネと亀は惹かれあう?

ジョルノは自分と目があって、すぐに目を伏せてしまったイザベラを見て、微かに心に不審が沸いた。
馬車は相変わらず、ゆっくりと確実にトリスティン魔法学院へ向かっている。
馬車内にはイザベラが撒き散らす鬱屈した雰囲気が広がっていた。
それを感じ取ったテファが、ジョルノにどうにかして欲しいと期待しているような目を向ける。
だが、ジョルノは我関せずといつも通り仕事をしていた。
手紙を読み、返事を書き、本を読むといった普段どおりの行動をしている。

この雰囲気は、イザベラがテファを殺しかねなかったので、ジョルノが思わずスタンドで殴り倒してしまったせいだろう。
それならそれで、それを利用してイザベラと悪くない関係を築くくらいの事、できるようになってもらいたいとジョルノは考えていた。

だがしかし、今のイザベラが目を伏せた態度は何か奇妙に感じられ、ひっかかった。
『イザベラは本当に殴られて警戒心とまた殴られるかもって恐怖心を持っただけなのか?
  僕の何か…例えば『組織』や『麻薬』に気付いたのか?』という疑問が浮かんだのだ。

うっかりしていたと、後で気付いて落ち込んだものだが…殴り倒した時、イザベラにかけた上着のポケットには、『組織からの手紙』が入っていた。
今、ジョルノが読んでいる、ガリア領内の官憲を買収するのに結構な出費がかかっているとかの情報が書かれた手紙だ。
これをイザベラにばらされるとちょっと困った事になる…つまり、始末しなくっちゃあならなくなるのだが。
先日部下達に金をまいたお陰で、結構金欠だって言うのにまた頭を悩ませられる問題だ。
イイニュースと言えば、表側でやっていたブランド品事業が、ちょっぴり黒字だった事と本来の狙いがやっと当たったかもしれない、と言う位だ。

イザベラに見られたかもしれない手紙を外に捨て、証拠を消す為に与えたエネルギーが手紙をモグラに変えて、土の中へと消えていく。
次に取り出した手紙。既に読んだが、改めて読んだゲルマニアからの手紙には確かにこう書かれている。

『アルマニがパクリだと疑う貴族一人を確保。伯爵様が用意された質問の回答は半分位、使用できる言語を調べた途中経過では、英語は理解している…』

ジョルノは微かに笑みを見せその手紙も外へと捨てた。
まさかって感じだったが、確かに『ジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリス』と言うゲルマニア貴族が、地球出身だと言う事実は、以前より確実に広まったようだ。
これでいい…利益も大事だったが、戻る可能性も模索しなければならないから。
リスクも高いだろうが、「なんでも試してみるもんですね」

「? ジョナサン、何かいい事あったの?」

小声で言ったが、馬車内に会話がなかったし、重い空気が堪えていたテファはジョルノの唇の動きに敏感に反応した。
向かいに座っているとはいえ、所詮は馬車だ。
二人の距離は一歩か、せいぜい一歩半ほどしか離れていなかったが、この空気からよほど逃れたいのかテファは身を乗り出していた。
ジョルノは返事をする前に隣を見ていた。
身を乗り出したその時、揺れた胸。
舗装されていない道を走る為、微妙に馬車は揺れ続け…それにあわせて揺れる胸っぽい物体に、熱い視線を注ぐラルカスが隣にいる。

見られている事に気付いたラルカスが、わざとらしく何事もなかったかのように視線を逸らす。
そしてだらだらと汗を流しながら小声で言った。

「こおおおっ………」

呼吸音ではない。
ラルカスは、明らかに声に出して言っていた。
だがそんな状況でも、テファが恥ずかしそうに胸を隠し、指の間から溢れるのをしっかりとまた目撃するのは忘れない…馬車内に冷たい空気が流れた。

ラルカスは今気付いた、とでも言うような態度で周りを見て、そしてジョルノに笑顔を向ける。

「ん? なんだジョナサン。私のハンサム顔に何かついて…ますか?」
「アンタ、違う方向に成長してるようだな」

ジョルノの指摘は至極もっともだった。
なのに何故かラルカスは酷く傷ついたような目で、テファにフォローを求めた。
テファの隣に座るイザベラが、生暖かい視線を牛に注ぐ。
そんなラルカスに天罰が下ったのだろうか?

突然、ラルカスは立ち上がり天井に頭をぶつけた。

「アンタ、天井が低い事も忘れるほど見てたのか?」

怯えていたイザベラにまで呆れたように言われながら、ラルカスは大急ぎで首を横に何度も振った。
そしてジョルノに切羽詰ったように言う。

「ジョナサン。話がある…一度馬車を止めてくれないか?」

自分が振りまいた空気を全く考えない真剣な言葉を聞き、ジョルノは御者役のガーゴイルに馬車を止めさせた。
ゆっくりと、ゆれを最小限に納めながら馬車が停車する。
颯爽と飛び出すラルカス、そして馬車内で待つように言ってジョルノが、それに続いて出て行った。

残された二人のうち、テファはまた仕事の話かなと気にせず与えられた本を読もうとして、飛んでくる伝書鳩に気付き顔を綻ばせた。
テファが窓から身を乗り出して、差し出された手に止まった鳥は、間違いなくロマリアの孤児院からの鳥だったからだ。

前受け取った手紙では、子供達は宗教色に染められて、エルフではないか?とテファに尋ねてきていた。
そして街で人間に追われ、隣に座るイザベラに先日襲われた。
だから、嬉しいはずの手紙を取り出して、テファの手は止まった。
深く深呼吸をして、その手紙を開く。ジョルノをとても慕っていた子供からの手紙が一番上にあった。
その子供のことを考えると、多分これはわざとそうしたんだろうなと微かに笑ってテファは手紙を読む。
慌てて封筒に入れたのか、少し端が折れた手紙はテファに思いもよらぬ衝撃を、ゆっくりと与えていった。

「…試験? え……?」

はじめ、嬉しそうに手紙を読み進めていたテファの表情が、理解に苦しんで歪んでいった。
手紙とジョルノが内緒話の為に消えた木々の間を視線が行き来する。
その様子に、何かを期待してイザベラが腰を上げる。
気付かないテファの後ろに静に回り、手紙を覗き込む。
興奮していたのか、少し乱れた文字が紙面で踊っていて、『パッショーネの入団テストに合格したんだ! でもまだジョルノには承諾をもらえてない…怒りそうだから、テファお姉ちゃんから許してもらえるように言ってくれない?』、と書かれている。

驚愕に、イザベラは目を見開き後退る。馬車の中だから、すぐにその背中が壁に付いた。

「ジョルノ、テファお姉ちゃんには甘いからって…あの子、一体何を?」

混乱するテファの隣で、イザベラも混乱していた。
自分がとることができる手段は何か?
急いで考えなければならないと、恐怖心に駆られて。

一方…いない間に届いた手紙によって、不味い事態になっているとは知らぬジョルノは、ラルカスと共に森の中にいた。
周囲を虫、蛇、そしてディテクト・マジックなどで探査していて、まだ何も話していなかったが、ラルカスがそこまでの行動を求めていることが、この話が案外大事だという事を表していた。

一通り警戒を行ったラルカスは、安心したようにしてから、ジョルノに顔を近づけた。
そこまで、不必要に警戒するラルカスを不思議がりながらジョルノはラルカスに尋ねた。

「なんです?」

ラルカスはゆっくりと答えた。
その声は、微かに震えている。

「ジョルノ。わ、私の偏在が殺された。相手は二人だが、実質一人のメイジだ」

ジョルノは「間違いないんですか?」と聞き返した。
滅多にこんな事は無いのだが、自重できない牛野郎とはいえ、ラルカスの能力は折り紙つき。
その上常に銃を携帯し、部下を連れ二人以上で行動。ヤバくなれば地下水に代わって、スクエア以上の力と鋼以上の強固な肉体を持つメイジとなるラルカスの偏在だ。
それが、一人のメイジに殺されたというのは、意外な話だった。そして同時に、今の所、普通に戦えばパッショーネ最強のラルカスが日中にやられたとなると、今後その領内ではこれ以上無いほど警戒しなければならない、と言う事にもなる。
ラルカスは重々しく頷き返した。

「火のメイジですか?」

火のメイジが操る炎なら、ラルカスの鋼の肉体にも十分な効果がある為、最も可能性は高いと言えたが、違った。
ラルカスは首を振った。

「こちらの正体は見られなかったが、相手は多分、『烈風』だ」
「烈風、風だと? アンタの体は風の刃なんて通さないはずだが…火のメイジより先に風がアンタを破ったのか」

頷き返し、ラルカスは恐れを含んだ声で言う。
その声には恐れと共に、隠し切れない興奮をも、ジョルノには感じられた。

「このハルケギニアの歴史の中でも屈指…いや、伝説の虚無とかを覗けば最強の一人に上がる程の伝説的なメイジだ」

虚空を睨みつけ、その逸話を思い出し、自分が見た姿と照合したラルカスはそうに違いないともう一度頷いた。

「ピンク色の髪をした小柄なメイジ。引退前は顔を隠してたらしいが、あの強さ、間違いない」
「誰かわかりますか?」
「ああ」

ラルカスは神妙な顔つきをした。
もったいぶるように一拍置き、皮肉な話だがと更に前置きをしてもったいぶってラルカスは言った。

「場所はヴァリエール領。貴方も知るヴァリエール公爵夫人だ。一緒にいたのは我々が助けたカトレア嬢だな」

言うと、ラルカスは苦笑して見せた。
敗北したが、その強さに納得しているようでもあったし、カトレアの名前に苦い表情を微かに覗かせたジョルノを面白がっているようでもあった。

「彼女も腕の良いメイジだったぞ? 退路を断たれなければ多分私も逃げられていたからな」
「そうですか。早急に、やり方をもっと周到にするとしましょう。急いで皆に領内で更に深く、静に溶け込むよう伝えましょう」

怖れを忘れる為に、面白がりながら言ったラルカスに、迷いない口調で言うと、ジョルノは背を向けて馬車に向かい、歩き出した。
驚いて瞬きしながら、その背をラルカスは追いかける。

「お、おい。一旦手を引いた方が…」

この体で生きる事に希望を持ったラルカスは、敗北から恐れに取り憑かれていた。

『烈風カリン』の名はラルカスも若い頃に何度も聞かされている。

『最強は風』と、トリスティンの風のメイジは誰はばかることなく言う…と言われている。
実際、トリスティン魔法学院の教師の一人は生徒にそう言っているが、それを否定する声は同僚である他の属性のメイジからは上がらない。
トラブルを避けているのではなく、そのメイジの言は『烈風カリン』が現役時代に照明して見せたからだ。
それ程のメイジが動く領内で活動する危険、溶け込んでもまた見つけられ戦い、追い詰められる事を嫌でも考えて、ラルカスはビビッていた。
烈風が娘を連れ、一人で動いているとは考えにくい。
ヴァリエール家が領内で今動かしている兵士は、当時のマンティコア隊と同じく彼女の冷たい鉄のような規則が動かしているはずなのだ。
その捜査力は侮れぬし、王都の官憲などよりも、精神的にも上かもしれない。
それを感じ取って、ジョルノは足を止めた。

「ラルカス、アンタビビってるのか?」
「あ、ああ…情け無いことだとは思うが、烈風カリンが率いるマンティコア隊の精強ぶりを知る者が聞けば、今のヴァリエール領からは一旦引いた方がいいと皆言うだろう」
「成長しろ、ラルカス」

首だけ振り向いたジョルノは、木々の間から差す光を受けながらはっきりと言った。
ラルカスは、その言葉の力強さ。そしてジョルノから吹き込むように感じる爽やかな風に驚きながら足を止めた。

「僕達の組織は、成長しなくちゃならない。たった一人のメイジから、深く静かに…それとも、彼女が死ぬのを待つか? 少なくとも僕にはその時間はあるが」

挑発的な笑みを見せたジョルノに、ラルカスは、呼吸が落ち着きを取り戻していく。それに、汗がひいていくのを感じた。
不思議と、もう恐怖はなかった。むしろ勇気が沸いてくる。そんな気持だった。

「いや、私はたった今、既に覚悟を決めた。『パッショーネ』は『烈風カリン』も乗り越えてみせる、ボス。理解したぜ」
「ベネ。計画を練り直しましょう」

再び歩き出すジョルノをラルカスは追いかけ、二人は馬車に戻る。
ヴァリエールとは仲良くする。だが、引きもしない。
理想としてはそんな、パッショーネにとって都合の良い落とし所を模索しながら。
出て行く前より、更に微妙な空気になった馬車内に首を傾げながら、馬車はまた少しずつトリスティン魔法学院に近づいていく。
進路を考えるのに忙しい女性二人を他所に、ジョルノは今後の計画を練り、ラルカスはとりあえずの対処を連絡していく。
鳥を飛ばし、偏在を向かわせていると、遠くで、巨大なゴーレムが立ち上がった。

腕を振るう様子が、ジョルノの目に止まった。

「クリス。あのゴーレムを作れるメイジは、どの程度の腕になります?」
「え…!? ああ、そうだね…トライアングル。いや、スクエアかも」

ジョルノの質問に、考えに没頭していたイザベラはすぐに反応し、ゴーレムを見て言った。
王宮に育ち、腕のいいメイジの技などを見る経験は多数あったので、すぐに答えられた。

「ラルカス。馬車をあっちへ向かわせてくれ」
「? 余計なトラブルを抱え込む事になるが…?」
「構いません。向かってください」

ジョルノとポルナレフの距離は一層縮まろうとしていた。
その傍らで、ジョルノが知らぬ間に静かに、テファとイザベラも覚悟を決めようとしていた。

そして彼女らも…ジョルノがゴーレムのいる辺りをジッと見つめながら、首筋の星型の痣に手を当てたことには気付かなかった。

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