ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-27

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匿名ユーザー

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「オーノーだズラ 私もうだめズラ 成果が爆破されちまったズラ 魔法撃たれてしまったズラ」
下を向いて呟くコルベールをルイズが慰める。
「そ、そんな…コルベール先生ほどの人ならこれくらい簡単に作れますよ……
それにほら、爆発は男のロマンって言いますし!」
コルベールが顔を上げる。
「そ、そうかね?」
「ええ、そうですよ!コルベール先生は天才ですから!爆発は男のロマンですから!」
「そうか!なんだか自信がついてきましたぞ、ありがとう、ミス・ヴァリエール」
「いえいえ、どういたいまして」
「ただ、教室の掃除は男のロマンではないですからな、頼みましたぞ」

結局、途中からシエスタの手伝いがあったものの、掃除が終わったときにはもう夜であった。
部屋に戻ったルイズはベッドに倒れこむ。
そして、なにかに気付いたように呟く。
「そういえば、ここ数日みてないけど…ワムウはどこいったのかしら…まあ、あいつのことだし
どうせ森の中にでも篭もってるんでしょうね……」
ルイズのつぶやきはフェードアウトしていき、寝息を立て始めた。



「きゅいきゅい、お姉様、ミノタウロスがいるっていう洞窟まできたけれど…やっぱり恐ろしいのね!
ほんとに引き返さなくていいのね?きゅいきゅい!」
「静かに」
タバサ…シャルロット・エレーヌ・オルレアンは静かに呟く。
「静かにってひどいのね!学園でも城でも喋れないんだからこういうときくらい…」
タバサは杖を振り、人間に変身したシルフィードにサイレントの呪文をかける。
「誰か来る、敵かもしれない」
そういって、森に向けて杖を構える。
なにか音がしたと思うと、木の枝がものすごいスピードで飛んでくる。
しかしタバサは微動だにせず、肩の上をかすめるだけだった。
シルフィードは声を上げようとし、あがらないので頭を抱えてしゃがんでいる。

森の中で何者かが動く。進む先を予測してそこにタバサは氷の矢を叩き込む。
大きな足音がする。タバサは気配を感じて上を見上げるが、なにも見えない。
空がややゆがんでいるように見えたときには、"敵"は背後に立っていた。

「子供にしてはやるな、ルイズとは大違いだ。朝の体操くらいにはなったな」
「あなたは…ルイズさまの使い魔なのね!どうしたのね!」
サイレントが解かれたシルフィードが口を開く。
「散歩していたらやけに緊張している知り合いを見つけたんでな、タバサといったか?」
タバサが頷く。
「散歩ってここどこだと思ってるのね!ガリアなのね!勝手に散歩で越境する使い魔も聞いたことないし
越境するほど歩く散歩も聞いたことないのね!突っ込みどころ満載なのね!」
「お前はどうなんだ、人間の決めた国境など気にして飛んでいるのか」
一瞬口をつぐんだが、すぐに話しだす。
「わ、私は別に使い魔なんかじゃないのね!」
「嘘も変装も下手くそだな」
タバサが尋ねる。
「いつから気付いてた?」
「気配でわかる。とにかく隠し果せたいなら口癖をなんとかするんだな」
タバサは風韻竜だといつから気付いていたのか、という意味で尋ねたのだが、ワムウはそんなものは知らなかった。
「それで、お前らは学生の身分でこんな遠くでなにをやっているんだ」
「一応遠くっていう認識はあるのね…」
シルフィードが呟く。
「なんでもない、休暇」
「主人も嘘が下手だな」
タバサの返答にワムウは無下もなく返す。
「別に理由を言いたくないなら構わんが、ミノタウロスの話には興味がある。
実物はみたことなくてな、どれくらい皮膚が堅いか試してみたい」

普通ならこのセリフ…おびえ、なんてバカと軽蔑するだろう…
でも…シルフィードはこの『セリフ』を……!
『なんてかっこいいのね!』……と思った!

「そこまで言うならワムウさまも来ていいのね!お姉様もOKなのね?」
別に連れていっても特に害はなさそうだし、かなりの強さを何度も見せつけられたし、
何よりシルフィードの意見を折るのが面倒なので、タバサは頷いた。
「変装したシルフィードを囮にする」
「なぜだ?ミノタウロスの警戒心は大して強くないそうだが」
タバサは声をひそめる。
「もしかしたら人間かもしれない」
「そうか、ならなおさら囮の必要はない、風上の方向か俺がら右二十度八十メイル先に殺気だった奴らがいる。
そいつらを少々こらしめてくれば終わりだろう、俺としてはつまらんがな」
「そういうわけにもいかない」
「そうか、じゃあ人間どもは任せた、本物がひょうたんから出てきたら教えてくれ」
ワムウは木の上に姿を消した。


「……あのちびすけ、鱗の色である青をこんな色に染め上げるなんて、この古代種たるシルフィに対する
種としての敬意が足りない、いやないのね!いつか噛みついてやるのね、きゅいきゅい」
ミノタウロスからの手紙で指定された娘の格好にされ、洞窟の前で縛られて転がされているシルフィードは
近くの茂みに潜んでいるタバサに呪詛の言葉を投げかける。

数十分後、タバサがいる逆側の茂みの中でなにかがごそごそと動く。
(お、音が複数からするってことは…ワムウさまじゃないのね?まだ死ぬのは嫌なのねーッ!)
茂みの中から大きな牛の頭が現れる。
「きゅいきゅいーッ!」
シルフォードは悲鳴を上げ、もがき始める。
ほどけるよう結ばれたはずの縄をほどこうとするがうまくほどくことができない。
「騒ぐな、殺すぞ」
ミノタウロスは顔を近づけ、低い声で呟く。
恐怖で黙るが、少しずつ冷静になる。
(あれ、このミノタウロス、獣の匂いがしないのね…というか首になんか隙間あるのね……
もしかして、人間…?あのちびっこといい、こいつといい、どうも人間は韻竜に対する敬意が足りないのね…)
シルフィードを抱えあげた男が向かうさきに数人男がいる。

「へへ、いいだろこのナイフ、アルビオンの傭兵から買ったんだぜ、この前なんかな、カッとなって
これを抜いたときにはな、そのときのことは覚えてないんだが…気がついたら男が三人倒れてたのさ!」
「ん、ジェイク、持ってきたか」
「あ、あんたたち、何者なのね!」
シルフィードが声を上げる。
「てめえには関係ねえ、おとなしくしてな」
「剣を持った人が二人、銃が二人、槍まで持ってるのね…ミノタウロスの人は大きな斧をもって…
怖いのね、恐ろしいのね」
少々わざとらしいがどこかに潜んでいるであろうタバサに武器の内訳を伝える。

そのとき、ある男が一人顔を覗き込んでくる。
「お前……ジジじゃねえな?」
シルフィードが変装した娘ではないと見破る。
「ジジじゃねえ?あの村で売れそうな娘っていったら、他に誰がいるんだ?」
「イワンのカミさんのガキどもなんて、金もらったって引き取りたくねえや!」
男たちは下品に笑う。

「しかし、こいつはジジじゃねえぞ、てめえ誰だ?」
「ちがわないのね!シルフィはジジなのね!きゅい!」
シルフィードは自分から名前をバラす。
「シルフィっていうのか、身代わりになるなんて健気だねえ」
「なかなか別嬪じゃねえか、こいつの方がジジより高く売れそうだぜ」
拳銃を握ったデブがそういうが、ミノタウロスの格好をした男は反対する。
「そういうわけにもいかねえだろ、こいつなんだか怪しいぜ…おいお前、本当に何者だ?
もしかしたら、領主の手先かもしれねえ」
「ち、ちがうのね」
「じゃあエズレ村の村長の名前を言ってみろ」
シルフィードは冷や汗を垂らす。

「どうした、村長の名前がいえねえのか!」
ミノタウロスの男は強い口調で言う。
「きゅい」
「きゅいじゃねえだろ!」
男たちは警戒の度合いを強め、武器をシルフィードに向ける。

そのとき、男たちの肩や手に向かって氷の矢が飛んでくる。
「な、なんだァーーッ!」
「次は心臓を狙う、動かないで」
悲鳴をあげた男たちに、現れたタバサは淡々と告げる。
ほとんどの者が肩や腕を狙われ、戦力として役に立たなくなったので、彼らはしぶしぶ武器を捨てた。

「こいつら、ほんと許せないのね!針串刺しの刑にしてやるのね!」
優位に立ったシルフィードは強気になる。
「仕返しはあと、縛り上げて」
タバサに言われ自分に巻きついていた縄を使い男たちを結びあげる。

縄で縛られた男たちにタバサが尋ねる。
「リーダーは誰」
返事がない。ただししかばねではない。
「正直にリーダーは出てくるのね!早く早く早く早く!」
「私だ」
後ろから突然声がした。
振り向いてタバサがそこの男に杖を構えるが、男の方が詠唱が終わるのが早かった。
先ほどタバサが放ったのと同じ、氷の矢が飛んで来る。
その氷の矢は、タバサの杖を吹き飛ばす。

「これはこれは、こんな辺鄙な地へようこそ貴族様、
おもてなしはできませんのでごゆっくりというわけにはいきませんがね」

四十過ぎほどの、身なりの汚いメイジが杖を構えて立っていた。
男が風の魔法で男たちを縛っている縄を切り裂くと、男たちはシルフィードから武器を奪い、二人を囲む。
「誰?」
タバサが短く尋ねる。
「名前などはとうに捨てましたが、そうですな、オルレアン公とでも呼んで貰いましょうか…
兄に冷や飯を食わされて家を飛び出て、現在は不幸な少女たちの収入を確保させてあげる仕事をしていてね」
「素直に人売りだって言うのね!」
シルフィードが声を張り上げる。
「そう呼びたいのならそうすればいい、まあどちらにせよ大人しくすることだな、不幸な少女たちよ。
おい、こいつらを縛り上げろ!」
メイジがそう言うと、男たちが寄ってくる。
「お前たちみたいな奴ら許せないのね…シルフィとワムウさまならこの程度の人間どうってことないのね!
たーすーけーてーワムウさまー!」
シルフィードが叫ぶが、ワムウが来るような気配はしなかった。
「きゅいきゅいー!や、やめてー!」

タバサたちを縛ろうとし、男たちが近づいてきた瞬間、メイジの杖が吹っ飛んだ。
腕を折られたメイジは悲鳴を上げる。
「ぎいやあああああああああッ!」
「ワ、ワムウさまなの?」
リーダーが悲鳴をあげ、なにごとかと男たちは振り返った。
そこには高さ二.五メイルほどの大斧を構えた影があった。
しかし、それはワムウではなかった。首の上にあったのは…牛の首、
ミノタウロスであった。

「ほ、本物だああああッ!本物のミノタウロスだああああッ!」
「怪物!人外!夜族!物の怪!異形!……化物だああああッ!」
拳銃をもっている男たちはそれでミノタウロスを撃つが、厚い皮膚がそれを止める。
パニックになった男たちはからがら、逃げ出した。

大斧を構えたミノタウロスは、向きを変え、シルフィードにゆっくり近づいてくる。
「たすけてなのねーッ!今日は十三日の土の曜日じゃないのね!出番は来月なのねーッ!きゅいきゅいーッ!」

そのとき、上から人影が降ってくる。
人影がミノタウロスの目の前に着地する。
ワムウが肩を鳴らして立っていた。

「たすけにきてくれたのね!さすがワムウさま、信じてたのね!きゅいきゅい!」

ワムウはシルフィードの言葉を無視し、ミノタウロスに向き合う。
そして、後ろも向かずにタバサたちに告げる。
「お前らはとっとと帰るなり、あいつらを追うなりすきにしろ…ミノタウロス、決闘だ」

ワムウは有無を言わさず拳をミノタウロスの胴に叩き込む。
堅い皮膚すらもその拳は貫通し、ミノタウロスが後ろに倒れ、血が流れる。

倒れこんだミノタウロスは慌てて手を振り、ワムウに言う。
「待て、私は敵ではない」
しかしワムウは聞く耳を持たない。
「目の前に獲物がいる鮫が手を止めると思うか、ジンベイにしろ、シュモクにしろ、シンジュクにしろな」

もう一発追撃をしようとしたとき、杖を拾ったタバサがワムウに杖を向けた。

「……何の真似だ?」
「少なくとも結果的には私たちを助けてる。話くらいは聞いてあげるべき」
「別に味方であろうと俺は構わんのだが…」
「しかし、すさまじい拳だな、俺が言うのもなんだが、化け物染みている」
起き上がったミノタウロスは左手に杖を持っていた。
「イル・ウォータル……」
ミノタウロスが呪文を唱えると、ミノタウロスの傷がふさがっていく。
「あなた何者なのね?系統魔法を唱えるミノタウロス、いや亜人なんて聞いたことないのね」
「そうだな、わたしが何者か気になるだろうな。説明してほしいなら、ついてきたまえ」
ミノタウロスは歩きだし、洞窟の中へ入っていった。

タバサを先頭に、シルフィードはワムウによりかかりながら、ワムウはめんどくさそうについていった。



To Be Continued...

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