ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-25

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匿名ユーザー

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「ワルド、単刀直入に聞こう。なぜ、ウェールズを殺した?敗戦は確実な以上、貴様らがその気になれば
殺すのは簡単なはずだ」

ワルドは首をかしげる。
「言ってることがよくわからないな、その気になったからここで殺したんじゃないか」
「ならば言い換えよう、なぜ戦士を戦いで死なせてやらなかった?」
ワムウのかつてない気迫に、ルイズは鳥肌がたつ。

「なにを言っているんだね君は、これは決闘でも訓練でもない。戦争だ。アルビオンの腐りきった王族の
名誉など考えているのかね?『目的のためには手段を選ぶな』、これがレコン・キスタの標語でね、
頭から潰せば崩壊も早いと考えればこんなのは必然さ。もちろん、国王も僕の献上した
とびきり上等なワインを飲んで、そろそろ部屋で遺体になっている彼が見つかる頃だろう。
彼らは死ぬために戦っている。そんなオークのような相手に真っ正面から戦うなど愚の骨頂だ。
むしろ、死ぬと決まった相手を早めに殺し、僕たちの兵を生かす。これが善い事でなくて
なんだというんだね?中立の視点から見てみればわかることさ」
「戦士の名誉と、名誉など考えないものの命、どちらが軽いかは明白だ」
「価値観の相違、というやつかな、もっとも君と合わせるつもりはないしね。が、喜びたまえ、
君は風のスクウェア、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドとの戦いの中で死ねるのだからね」

ワムウが口の端を歪める。
「俺を殺すだと?笑わせるな、人間が。波紋も使えない、戦士としての誇りもない、そしてこの
風の流法の使い手に風のスクウェア、だと?年季の違いをわからせてやろうか」
「確かに君は強い、強いがしょせんは力だけのオークにすぎないね。そこらの風のスクウェアになら勝てる
かもしれないが、僕は『立ち向かうメイジ』だ。いくら、力があろうとも運命には勝てない。
僕は運命に立ち向かい、過去に立ち向かい、聖地に立ち向かい、全てを乗り越える能力を
ブリミルから授かったのだ!忠告してやる、『遊び』のときと同じに思わない方がいいぞ」

そう言って、ワムウは五体に分身する。
「あれが奴の能力とやらか」
「違うわ、あれは遍在。風の魔法よ。能力とやらがあるなら、たぶん他のはずだと思うわ」
「おでれーた、自由自在に動かせる遍在四体とは滅多にみれねーぜ相棒。おそらくあいつらも同じように
魔法を放ってくる筈だぜ。ただ、おれっちの勘だが、ただの遍在じゃあない気がするぜ」
ワムウはデルフを鞘に押し戻し、スレッジハンマーを構え、ルイズと一緒に柱の影に隠れる。
「そう、集団戦で心強い火や巨大なゴーレムを生み出す土、治療から工作まで行なう水をさしおいて、
風が最強と言われる所以は…確か…」

ワルドと遍在は、風の刃を続けざまに放ってくる。
同時に撃たず、一定の間隔をあけ、途切れないように撃ち、風の弾幕を作る。
何発か隠れている柱に当たり、柱が軋み始める。
「そう、狭い場所での決闘こそ、風のメイジの独壇場。昔は貴族同士の決闘が重視されていたから
風が最強という名誉を受けていたって習ったけれど…」
「なるほど、この狭い室内で二人相手にするにはまさにうってつけというわけか。
だが、惜しいな、ワルド。俺も決闘は得意でな」

ワムウはデルフを左手に持ち、言うが早いか、風の弾幕へ突っ込んでゆく。
スレッジハンマーとデルフを盾にし、遍在の一人に飛び掛かる。
あっというまに一体の遍在のみぞおちにスレッジハンマーの一撃を叩き込み、遍在は床にくずれる。
飛び掛かった勢いで近くの柱に転がり込み、振り返って次の攻撃に備える。
数カ所血が出ているものの、柱の男の治癒力でふさがっていき、ほとんどダメージはない。

「遍在が五体揃っているもっとも有利なときに仕留められんとは、あれだけ豪語した割に聞いてあきれるな、
一人ずつ、詰将棋のようにかたをつけてやろう」

ワルドは三体をワムウの方向に向け、エアハンマーを放ち始める。
鋭さはないが、風の槌であるゆえ、ワムウにたとえダメージがなくともよろめかせることはできる、
とみて呪文を変えてきたのだろうか、同じように三体は交互に呪文を放つが、人数が減った分間隔が開いている。
残りの一体はルイズのいる柱へ向かう。

ワムウは、柱を飛び出し、デルフをルイズに向かう遍在に投げつける。
「久しぶりに使ってもらえると思ったらこんな使い方かあああ相棒うぅーッ!」
飛んできたデルフを遍在は魔法で弾く。
振り向かせ、ルイズに向かうまでの時間を稼ぎ、その間にワムウは風の槌の隙間を突破し、
遍在に飛び掛かり、飛び蹴りを食らわせる。


そうなる、筈だった。
ワムウは誰もいなかったはずの空間、先程遍在を一体倒したはずのあたりから
『ライトニング・クラウド』を背後から受け、倒れ、周りに遮蔽物のないあたりの壁に『エア・ハンマー』で
叩きつけられる。
ルイズも同様に、遍在からエア・ハンマーを食らい、同じ場所に吹っ飛ぶ。
「だから言っただろう、力じゃぼくには勝てないとね」




「貴族派は約束を守らず、先程攻撃を開始しました!」
「国王、崩御ォーーーッ!」
「ウェールズ皇太子様、ワルドの裏切りにかかって戦死いたしました!」
「『イーグル』号、貴族派『テメレイル』号の砲撃を受け、撃破されました!」

正門の手前、アルビオン王党軍は大混乱の最中であった。
守るべきはずの者が乗った『イーグル』号が無残にも撃沈され、泣き崩れる者。
国王及び皇太子が立て続けに亡くなったと聞かされ、自暴自棄に突撃し矢と銃弾と魔法の餌食となる者。
どうすればいいかわからず、オロオロとする者。
友人の死体を抱え、半狂乱になる者。
もし今敵が雪崩込んでくれば、まともに応戦もできず皆殺されるだろう。文字通り、虐殺、殲滅、崩壊だ。

「小隊長は自分の部隊をまとめよ!小隊長が戦死している場合若い番号の分隊長が小隊長を努めよ!
まとめた後は応戦を開始し、各隊長は部隊の生存者数をオールド・パリーに報告した後指揮に移れ!
あと数十分間、正門前の堀の端を死守せよ!」
シャチがそう叫び、彼の正規兵・水兵・メイジ混成部隊が応戦を開始する。

「ギーシュ、間違ってもゴーレムなんか作らないでよ、どうせ一分も持たないんだから精神力は
温存しときなさいよ。代わりにバリケードかなんかでも錬金しなさいよ
「自分の能力くらいわかってるさ、今バリケード作り始めてるから、数十秒待ってくれ」
「野郎ども、突撃してーのはわかるが堪えろよ、ただあそこに一歩でも入った奴は
容赦しねえで一人残らず止めやがれ」
「使えるものは好きに持ってってください、全部5エキューで構いませんよ。
…釣りはいらないって、じゃあアフターサービスです、この地下水ってナイフもおまけしますよ。グッド!」

城中から、部屋中から、船中から、港中から、ダービーが叩き売りしているわけのわからぬ珍武器ですらも、
武器として使えそうな者は片っ端から集め、とりあえず動けそうな奴に手当たり次第配っていく。

正門前はキュルケとタバサを他のメイジや銃兵、射手が援護する。
「シャチさん、できるだけ効果的に足止めのためだけに使って精神力は温存してるけど、
いつまでも持たないわよ!」
「わかってる、わかってるがもう作戦もなにもない、なんとか堪えてくれとしか言えない。すまんな、
こんな指揮官で。代わりに援護する銃兵を増やす、ミスタ・ダービー、銃二十丁、釣りはいりませんので
そこの兵に持たせてください、持った兵はバリケードの内側から彼女らの援護にあたれ!
オールド・パリー、大方の生存者報告は終わりましたので港の方の指揮に移ってください、こちらは
私が受け持ちます。…あと、数十分なんだ…どうか、皆頑張ってくれ…」

ありったけの飛び道具で城の上から、横からも足止めの威嚇をするために攻撃する。
正門上にある部屋の窓から何人かの兵士とともにギーシュが攻撃する。
ドットのためキュルケやタバサほど威力があったり正確な攻撃はしかけられないが、
多少窓枠が壊されても修理ができ、また攻撃はドットであるゆえ精密さはあまりないが、
上から石の礫が落ちてくるため、なかなか派手で威嚇には十分であった。
ギーシュは一息ついて、祈るようにつぶやく。
「もし、ワムウが来れれば…早く終わるかもしれないな」




「さてどうした、ワムウ君。あの程度の電撃じゃ死はおろか、気絶もしてくれないんだろう?
僕は、君を高く評価している。…できれば、ルイズと一緒にレコン・キスタにきてくれれば
頼もしかったんだが、そうはならない以上、念入りに殺させてもらおう」

ワルドの遍在三体が、ルーンを唱え始める。
周りに遮蔽物もなく、ワムウの射程は見切ったのだろう、三体は一斉に雷撃を放とうとする。

「ワムウ、一端逃げるわよ」
「…どこにだ?」
ワムウは舌打ちするが、さすがにあれだけの攻撃を真っ向から受ける気にはならなかったらしい。

「決まってるじゃない」
ルイズは杖を壁に振り、壁に爆発で穴をあける。
「わざわざ相手の得意な場所で戦うことないでしょ、どうやって外に出ようと思ってたけど、
好都合なところにこんなところに飛ばしてもらったからね」

ワムウはルイズを抱え、穴を無理やり広げながら外へ飛び出す。
そのまま身をかがめ、間一髪で雷撃をかわす。

「さすが僕のだったルイズ、機転が利くね。確かに風相手なら室内で戦うのは不利だろうね」
「誰があんたのルイズよ、あんたのものだったときなんて一秒たりともないわ!」

ワルドも同じように魔法で壁に穴をあけ、遍在たちが全員外に出てくる。
すかさず、ワムウが突っ込もうとするが、ルイズが止める。
「気持ちはわかるけど、あいつのいう通り力だけじゃ勝てないわ、あいつの能力を探るのよ…
なんか、変な感じがするのよね」
「おう、俺っちも今までみた遍在とはなんか違う違和感を感じるぜ、なんだろうなあ」

遍在たちは詠唱を終え、魔法を放ってくる。ワムウはルイズを抱え、教会の上に飛び乗る。

「ねえ、ワムウ。遍在が背後から来たとき、なんか気配とか感じなかった?」
「全方位の風の動きを見ている。全員の体は風で動いているようだからな、普通に来たならわかるが、
あれは一瞬で先ほど倒した死体から『出現』したように感じた」
「死体…?そうよ、死体よ!おかしいのはそれよ!遍在は倒したら消えるはず、死体なんて残らないわ!」
「ご名答」

いつのまにか外に出ていた遍在が一人欠け、教会の中から飛び上がってくる。
「この距離ならかわせまいッ!ライトニング・クラウド!」
電撃が杖から放たれ、ルイズたちを襲う。
「相棒!俺であの魔法を防ぎやがれ!」
デルフの体が光る。
剣は雷撃を吸い取り、霧散させた。
「これが俺の本当のハンサムな姿さ!相棒、ちゃちな魔法なら全て吸い取ってやるぜ!」
デルフリンガーは今研がれたかのように、光り輝いていた。
「なるほど、それは便利だ」
ワムウはデルフリンガーをワルドに投げつける。
「そりゃないぜ相棒ぅーッ!」
ワルドの遍在はエア・ハンマーで弾こうとするが、風は吸い取られ遍在に深々と突き刺さる。

下のワルドの遍在が呟く。
「なるほど、ただの剣ではなかったようだな。さて、どうしたものか、面倒だ、降りてこい」
「いいだろう」
ワムウは飛び下りようとする。
「ワムウ、後ろよ!」

なんと、先ほど倒した遍在の背中から他の遍在達が出てくる。
「一斉にでてくるわァーーッ!」
遍在達は雷撃を一斉に放つ。
「ちょっと痛いけど、我慢しなさいよ!私は二回目なんだから!」
ルイズは杖を振り自分たちの目の前で爆発させる。
爆風でワムウたちは吹っ飛び、教会の下にワムウがルイズを抱え、着陸する。
「あれが、あいつの能力ね…」
ルイズが呟く。
「そう、ご名答…僕の能力を、僕と親しい者の間では『TATOO YOO!』と呼んで使っている。
たぶん君たちが察している通り、もちろんこれは魔法ではない。スタンドだ」

ルイズがワムウに耳打ちする。
「ねえワムウ、あの遍在の死体食えないの?」
「難しいな、食っている最中に中から雷撃を食らえば流石の俺でもダウンしかねん。そもそも
中で風が渦巻いてその魔料で動いているようだからな、食えるかどうかもわからん」
「じゃああの喋る剣で吸い取れないの?魔法なら吸い取れるんじゃないの?」
「教会の上の奴に刺さったままだな」
「しょうがないわね、なら一撃必殺よ」


教会の中の遍在の死体に移っていく。
僕の遍在は不思議なことだが、普通の遍在と違い、スタンド能力の影響だろうか、
なぜかやられても本体が魔法を解くまでは死体として残り続ける。
安全な距離から詠唱し、背中のタトゥーから腕だけ出して魔法を放つこともできる。
遍在を一体刺客として差し向け、遍在を倒して油断したところを暗殺する。
広範囲に遍在を散らばらせ、敵を見つけた途端に一カ所に遍在を集中させることもたやすい。
ノーリスクで強行偵察や背後からの攻撃や挟撃も思い通りだ。
派手さは無いが、一瞬で移動できる、というのはどんなことにも利く応用性を持っている。
ある軍人はこう言った。
『私の軍人としての一生の半分は、あの丘の先に敵がいるか悩み続けることであった』
僕は、その悩みを克服したも同然である以上、魔法衛士団の隊長などで燻っているべきではない。
レコン・キスタで戦果をあげて、権力と人脈を手に入れれば、母の死についてなにかわかるかもしれない。
そのためにも、残念なことであるが、僕の婚約者には死んでもらう必要がある。
運命と過去に立ち向かうには、これくらいの覚悟がなくてどうする、ワルド。

遍在を二体教会から出す。本体は中で待機させる。
ついでにひっつかんできた剣がカタカタ言っているが、無視する。
ルイズが、大きなハンマーを両手でぎこちなく構えているが、ワムウが見当たらない。
逃げたということは考えられない。周りは草原、隠れる場所などないし、
逃げるとしたら我々の軍の包囲に突っ込むことになる。もう少し言えば奴の性格からして
ルイズを放って逃げる、というのは考えにくい。ルイズがワムウを連れて行くならともかく。
奴はなにか能力を隠していたのだろうか、透明になる能力、だろうか。
奴は風の流法を使うなどといっていた…確か透明になる魔法を水と風のスクウェアの一部が使った、
という話を聞いたことがある…水水水風、だっただろうか。
水蒸気を体にまとわせ、光を反射させることによってあたかもそこに人がいないように見せかける。
奴はメイジではないようだが、なにかおかしな能力を使う。そもそも人でない以上、先住魔法の
一つや二つ隠していても不思議ではない。ここは遍在を囮にして、様子を見てみるか・・・

ワルドは遍在を一体無防備に出す。
しかし教会の中に戻したもう一体の遍在が詠唱し続け、いつでも遍在の背中から攻撃をできるようにする。
「どうした、来ないのかね?ルイズ、ワムウ」
挑発してみるが、ルイズは杖を向けたまま動かず、ワムウも襲ってこない。
ルイズに魔法を放ってもいいが、正面から放つとなると尋常ではない速さで爆発が襲ってくる。
この距離で先に放てば、良くて相討ち、悪ければ無駄死にだろう。
さすがに遍在をここで意味もなく失うというのは少々辛くなってくる。
ならば、背後から攻め落としてやろう。

教会の上に本体を一体出す。
背後から奇襲するため、詠唱中でフライを使えないのは困る。
多少危険だが、教会の中に本体を放置しておくよりはマシだろう。
あの破壊力で透明なら数体犠牲にしなければ止められない。
教会に入ってきて1/3で自分がやられるってのは御免被りたい。
一発囮の遍在に軽く魔法を放たせ、その隙にフライで背後の木へ飛び移る。
上手くルイズの反撃をかわせたようだ、詠唱をさせる。
ワムウを殺せないのは少々後が怖いが、現在の目的はルイズごと手紙を奪う事だ。
ルイズを後ろから抱え、他の遍在のタトゥーにルイズごと移動すればいい。
おそらく、どこかにワムウが潜んでいるのだろうが、僕にスタンドならば逃げおおせることは容易。
意を決して、背後からルイズに飛び掛かる。



「闘技…『神砂嵐』!」

体がズタズタにされる。至る所の骨が折れる。腕が動かない。杖も振れない。
夥しい量の血が出てくる。足はピクリとも動かない。肩の筋が裂ける。

ワムウはルイズのすぐ近くに潜んでいた。
近くというか、目を疑った。ワムウは、ルイズの『中』に潜んでいた。
まだ生きているのは幸運だろうか、ワムウの剣が盾となったのか。
あれだけの威力の攻撃を受けたというのに、傷一つついていない。
ルイズとワムウが迫ってくる。
精神力を振り絞って、スタンドを発動させ、移動する。


ルイズは、ワムウを体の中に潜ませていた。
ワムウが吸血馬の中に潜んでいたように、モットの屋敷で衛士に潜んでいたように、
ルイズの体にワムウを潜ませていた。
「血が出るってことは、いきなり当たりみたいね」
ルイズ達は、ボロ雑巾のようになったワルドの本体に近づいていく。
後ろから雷撃が飛んでくるが、距離がありすぎた。苦もなくかわす。

視界をワルドに戻すと、ワルドは消えていた。
グリフォンが教会に突っ込み、ワルドの遍在が本体を抱え、逃げ出していく。

「どうやら、逃げられたみたいね」
「飛ばれてはどうにもならん、口惜しいが逃がすしかないな。だが、かなり強い者であった。
精神は戦士とはほど遠いが、雪辱戦で向かってくるときが待ち遠しいな」
「雷撃食らってフラフラになってるってのに、あんたらしいわね。足が痺れて『神砂嵐』が
放てない、っていうから体貸してあげたくらいなのに」
「まあいい、だいたい治った。とにかく正門に急ぐぞ」
「待って」
ルイズがウェールズの骸の横に座り込む。
ワムウも覗き込むと、ワムウの持っている指輪と虹を作る。
「…姫さまのために、持っていかせてもらいましょう」
ルイズは指輪を綺麗な指から引き抜き、手紙と一緒にしまいこんだ。



ギーシュは精神力が尽き、見よう見まねで倒れた味方の銃を撃っていた。
「やれやれ、まさか貴族だってのに銃を撃ち続ける羽目になるとはね」
正門の兵士も武器が尽き始め、もう敵は目前に迫っていた。
タバサとキュルケももうドットクラスの魔法すら散発的にしか撃てない。
ダービーはもうタダ同然で武器を売りさばいている。

「やれやれ、遅いぞワムウ君」
ギーシュが汗だくになりながら声をかける。
「シャチさんは?」
「けっこう前にパリーさんと一緒に港に行ったわ、なにやるのかしら」
「どうやって脱出するのよ」
「そこはもう考えてないわよ、シルフィードが飛び立てるようなそこの庭にでてったら
数十秒で蜂の巣ね、泥船だとわかってて乗り掛かったんだから諦めなさい」
死守するよう言われた橋に敵が一斉に雪崩込んでくる。
「橋は落とさないのか」
「私たちに言わないでよ、落とすのは待ってくれって言ってたし」
キュルケも首をかしげながら言う。

そのとき、ルイズが気づいた。
「ねえ、あの船、私たちが乗ってきた貨物船よね?」

斜め上を見ると、貨物船が進んでいる。
パリーとシャチも乗っている。
貴族派も気づいたのか、上空に向けて攻撃をし始め、貨物船が火を噴き始める。

「確か、硫黄を積んだままだったわよね、まさか…」
ルイズが感づく。
貨物船は火を噴きつつも、落下の勢いと出力を全開にし、どんどん加速していく。

「アルビオン王家の誇りよ、精神よ!永遠なれ!」
敵が雪崩込んできた橋に火の秘薬を積み込んだ貨物船が突っ込み、橋と貴族派の兵士が音を立てて
崩れ落ちていく。轟音をたてて貨物船は爆発した。

「シャチさん…」
ルイズが漏らす。
タバサが口笛を鳴らす。
「申し訳ないけど時間がない、脱出する」
シルフィードが城の中から這い出すように飛び、中庭に着陸する。
ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、ダービーが乗り込むが、ワムウは乗り込まない。
ルイズはいいたい事を察する。
「ワムウ、これはアルビオン王家の戦いなの。それに私たち客人が水をさし続けるわけには
いかないのよ、命を賭けて脱出の時間を作ってくれた彼らの意志を無駄にする気?」

ワムウは、銃を構えた貴族派の兵士に石をぶつけ、シルフィードに乗り込む。
一行は、ニューカッスル城を脱出した。



To Be Continued...


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