ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ねことダメなまほうつかい-2

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匿名ユーザー

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 謹慎期間が終わり、猫草とすっかり仲良くなったルイズの元に一通の手紙が届きました。
 アカデミーではたらいている一番上の姉からです。
 その手紙には猫草といっしょに呼ばれたふしぎな植物のことが書かれていました。
 あの植物はハルケギニアのどこにもない新種の植物で、痩せた土地でも育てやすく
 栄養豊富で保存しやすくて、簡単な調理でもおいしく食べられるという素晴らしいものでした。
 ルイズは自分を助けるために生き返っただけでなく、こんなにも素晴らしい贈り物まで持ってきた
 猫草のことがますます好きになりました。
 そして手紙の最後に、この植物の名前を決めてほしいと書かれていました。
 ルイズは困りました。
 彼女はなにかに名前をつけるのがとても苦手で、いまだに猫草にも名前をつけていないのです。
 それにあの植物はひょっとしたらハルケギニア中に広まるかもしれません。
 妙な名前をつけるわけにはいきませんでした。
 とても困ったルイズはギーシュに相談することにしました。
 土系統の家系で、芸術家肌の彼ならいい名前を考えてくれるかもしれません。

「ねえギーシュ、どんな名前がいいかしら」
「う~ん、作るのも食べるのも簡単なら、Make.In、メークインなんてどうだろう」

 その簡単で覚えやすい名前を気に入ったルイズはさっそく手紙を送りました。
 もちろんその手紙にはギーシュが考えた名前だということも書いてあります。
 ずっと未来のおはなしになりますが、このメークインと名づけられた植物は
 ハルケギニア中を襲った飢饉から多くの人を救うことになります。
 そして、その植物は後にキラークイーンと名前を変えてみんなに親しまれることになります。

 あの決闘以来、ルイズは生徒たちから馬鹿にされることが少なくなりました。
 それはルイズが見せた勇気と猫草の主人を思いやるこころが多くの生徒たちに
 伝わったからです。
 ルイズとその使い魔の絆の深さをまわりの生徒は羨みました。
 そして、自分たちも負けないように使い魔たちとの絆を深めていきました。
 教師や学院長もルイズと猫草を優しく見守っています。
 相変わらず魔法は使えませんがルイズと猫草は毎日を楽しく暮らしていました。
 そんなある日のことです。
 毎年学院では国の偉い貴族たちを招いた使い魔の品評会が行われます。
 そして今年はなんと、この国のお姫様であるアンリエッタ姫が観賞に訪れるのです。
 ルイズとギーシュは困ってしまいました。
 アンリエッタ姫と幼なじみのルイズはなんとか姫様にいいところを見せようと考え、
 ギーシュはきれいなお姫様にカッコいいところを見せようと思い、ふたりで頭をひねっていました。
 しかし、当日になってもいい考えは浮かびませんでした。
 はなしは変わりますが、この国は最近ある盗賊に悩まされていました。
 その盗賊の名前は土くれのフーケといいます。
 神出鬼没で貴族の屋敷ばかりを狙って盗みを働くフーケを捕まえようと、魔法衛士隊まで
 駆りだされましたが一向に捕まえることができません。

「そろそろわたしの番だわ、あの子ったらどこにいったのかしら」
「あの猫くんなら、たぶんぼくのヴェルダンデといっしょにいるよ」

 ヴェルダンデとはギーシュの使い魔の大きなもぐらのことです。
 猫草はずんぐりむっくりしたヴェルダンデがお気に入りでよくいっしょに遊んでいるのでした。
 どうやら二匹は会場の反対側の広場でお昼寝をしているようです。
 さっそくふたりは二匹を迎えにいきました。

 二匹を迎えに広場にきたルイズとギーシュはおどろきました。
 なんとそこには今まで見たことがないとても大きなゴーレムが腕を振りかぶり、
 ご~んご~んと学院の壁を殴っているのです。
 それは学院の宝ものを盗もうとやってきた土くれのフーケが作ったゴーレムでした。
 ふたりは慌ててゴーレムを攻撃しますがまったく歯がたちません。
 無駄とわかりましたがもういちど攻撃しようとしてゴーレムを見ると、胸の辺りに
 なにかがいました。

「あ、あれはぼくのヴェルダンデ!」
「見て!頭にはあの子がいるわ!」

 ゴーレムの胸からヴェルダンデが顔を覗かせ、あたまには猫草が生えていました。
 二匹はお昼寝の最中にフーケの作ったゴーレムに巻きこまれてしまったのです。
 ヴェルダンデはもぐらなので土は平気でしたが、猫草は怒っていました。
 せっかくルイズがきれいにお手入れしてくれたからだを土で汚され、お昼寝まで
 邪魔されたのです。
 猫草はマヌケな盗賊のあたまに全力で空気弾を撃ちこみました。

「ギニャアァーー!!」

 絹を裂くような悲鳴と共にゴーレムから人が落ちてきました。
 ギーシュが魔法を唱えて落ちてきた人を受け止めます。
 それと同時にゴーレムはがらがらと崩れはじめました。
 ヴェルダンデは崩れるゴーレムの中を掘り進んで逃げ出し、猫草は空気の膜でからだを
 包んで地面に落下します。
 落ちてくる猫草はボヨヨ~ンとルイズの胸の中に収まりました。
 そしてふたりと二匹は落ちてきた人の顔を覗きこみました。

「この人って、学院長の秘書じゃない!」
「ああ、たしか名前はロングビルだったかな。年齢は23歳、結婚適齢期はすぎているが
 魔法学院美女ランキングで常に上位をキープしているね。スリーサイズは上から…」

 手帳を取りだしてセクハラまがいの説明をするギーシュを無視して、ルイズは猫草を
 地面に置くとロングビルこと土くれのフーケを縛りあげました。
 ちょうど縛りあげたころに、こんなこともあろうかとロマリア彫刻のように美しく鍛えあげた肉体を
 見せびらかしながらマザリーニ枢機卿があらわれました。

「なんと!君たちふたりがフーケを捕まえたのか!」
「いえ、わたしたちではありません。この使い魔たちが捕まえたのです」

 マザリーニ枢機卿は、ううむとうなりました。
 使い魔と主人は一心同体ですが多くの貴族たちは自己顕示欲が強く、使い魔の手柄を
 自分の手柄にしてしまうことが多いのです。
 ですがルイズとギーシュは誇らしげに手柄を使い魔にゆずりました。
 そしてアカデミーからの報告で、ルイズの使い魔が国のためになる植物を持ってきたことを
 マザリーニ枢機卿は知っていました。
 もちろんその植物の名前を決めたのがギーシュということも知っています。
 マザリーニ枢機卿は感激の雄叫びをあげながら新レベル7のポージングでふたりと二匹の
 栄誉を称え、略式ではありますがシュバリエの称号を与えました。
 ルイズとギーシュは顔を引きつらせながら喜んでそれを受け入れました。
 そして、猫草とヴェルダンデにはおいしいものをたくさん食べさせてあげました。
 もちろん品評会の優勝もこの二匹で決まりです。
 偉い貴族たちが新レベル6のポージングで見守る中、顔を引きつらせたアンリエッタ姫から
 お褒めの言葉をいただき、ルイズとギーシュは引きつった笑みを浮かべながら喜びました。

 ルイズは猫草が大好きでした。
 彼が使い魔になってからいいことばかり続いています。
 ルイズが昼間のことを思い出しながらうふふと笑い、猫草を撫でていると扉が叩かれました。

「ノックしてもしも~し!ルイズ、わたくしですわよ!」
「こ、この声はもしかして!」

 ルイズは慌てて部屋の扉を開けると、なんとそこにはアンリエッタ姫がいるではありませんか。
 アンリエッタ姫を部屋の中に招き入れると、ふたりは仲よく抱きあいました。
 それからふたりでむかしのはなしを楽しく語り合いました。
 楽しいはなしを語り終えると、アンリエッタ姫はゲルマニア皇帝との結婚が決まったと悲しそうにいいました。
 ルイズも悲しみました。
 アンリエッタ姫はアルビオン王国のウェールズ皇太子と愛しあっていたのです。
 ですが、いまはレコン・キスタと名のる貴族たちの反乱でアルビオン王国は滅びようとしていました。
 アンリエッタ姫も皇太子様を救おうとがんばりましたがどうにもなりません。

「ルイズ、あなたにお願いがあって参りました」
「はい姫様、なんなりとお命じ下さりませ」

 アンリエッタ姫はルイズにウェールズ皇太子から、むかしの恋文を取り戻してほしいとお願いしました。
 もしそれがレコン・キスタの手に渡るとゲルマニア皇帝との結婚が取りやめになり、
 この国はとても強いレコン・キスタと一国で戦わねばならなくなってしまうのです。

「かしこまりました姫様。わたしの命に代えても必ず手に入れて見せます」
「お願いしますわルイズ、それにあなたの使い魔にも」

 アンリエッタ姫は猫草を撫でようと手を伸ばしました。
 ルイズもほほ笑みながらそれを見ています。
 アンリエッタ姫に撫でられながら、猫草はきらきら光る冠が気になって仕方がありませんでした。
 だから、空気弾でそれを打ち落としてしまったのも仕方がないことなのです。

「ギニャアァーー!!」
「ひ、姫様!ア、ア、アンタなんてことを!」

 怒るルイズを無視して猫草は手に入れた冠をぺしぺしと叩きます。
 ルイズが吹っ飛んだアンリエッタ姫を起こして謝ろうとしたとき、ギーシュが部屋へと入ってきました。 
 なぜ彼がここにいるのか、それはアンリエッタ姫を影ながら護衛、というよりストーキングしていたからです。

「ギーシュ!アンタなんでいるのよ!」
「そんなことよりもだ、姫様!あなたは間違っています!」

 ギーシュの家は代々軍人の家系です。
 彼は父や兄たちから上官の負う責任の重大さを聞いて育ってきたのです。
 だからギーシュはアンリエッタ姫の、お願いという形をとり責任逃れをするその態度が許せませんでした。
 それに叱られることに慣れていない姫様をあえてお叱りすることで、覚えをめでたくしたいという
 下心もありました。
 アンリエッタ姫はギーシュの言葉を聞いて目が覚めました。
 それから冠をもてあぞぶ猫草を見ました。
 ルイズの使い魔はその卑怯な態度が許せなくてアンリエッタ姫を撃ったのです。
 アンリエッタ姫はそう思いましたが、猫草はそんなことは知ったことではありません。
 彼はふつうの猫よりもちょっと変わっただけの猫なのですから、自分のやりたいことをするだけです。 
 アンリエッタ姫はウェールズ皇太子あての手紙と、水のルビーをルイズに与えました。
 そして姿勢を正してふたりに命じました。

「あらためて両シュバリエに命じます。アルビオン王国に赴き、必ずや手紙を奪還するのです」
「「杖にかけて!」」

 翌朝、ルイズとギーシュが馬の準備を終えて旅立とうとすると、魔法衛士隊の制服に身を包み
 グリフォンにまたがったひとりの立派な青年があらわれました。
 彼の名前は、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。子爵という地位に登りつめて
 魔法衛士隊の隊長に抜擢された、閃光の二つ名を持ち風を自在に操る高貴なる魔法使いです。
 そして、ルイズの婚約者でもありました。

「やあ僕のルイズ!とても美しくなったね!」
「こ、困りますわワルドさま」

 婚約者であり、憧れの人でもあるワルド子爵との思わぬ再開にルイズは頬を赤く染めました。
 だからワルド子爵の風にゆらめくヒゲを、胸に抱いた猫草が獲物を狙う目で見ていたことに
 気づかないのも仕方のないことなのです。

「ギニャアァーー!!」
「ワ、ワルドさま!」

 猫草の手加減なしの空気弾を間近で受けたワルド子爵は、哀れなことに顔が某国の不動産王が
 発想のスケールで負けてしまった、とても強い男の攻撃を受けたみたいになってしまいました。
 そして、吹っ飛んだワルド子爵のふところから一枚の手紙が舞い落ちました。
 それを見つけたギーシュがいけないことと知りつつも好奇心からその手紙を見てしまいます。
 手紙を見たギーシュはとてもおどろきました。
 その手紙には秘密の任務についてのことが細かく書かれていました。
 そして、なんと手紙のあて先はあのレコン・キスタの総司令官であるオリヴァー・クロムウェルでした。
 ワルド子爵は裏切り者だったのです。
 このことはアンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿へと伝えられ、ワルド子爵は捕まりました。
 アンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿から感謝の言葉を賜り、ルイズとギーシュはたくさんの貴族たちに
 新レベル4のポージングで見送られ、顔を引きつらせながら意気揚々と旅立ちました。


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