ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アンリエッタ+康一-34

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匿名ユーザー

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「で、カッコつけてみちゃったものの、一体どーすればいいと思う。ACT3?」
若干気が抜け気味な声で康一が自らの精神の力、ACT3に尋ねた。
『非情ニヤベー感ジデス。何モ考エテイナカッタノデスカ?S・H・I・T。』
OH!とスタンドのくせにACT3が呆れて天を仰いだ。

「だからお前に何か考えがないか聞いてんじゃあないか。それと言い方が微妙にムカつくぞ」
自分の精神から生まれた存在に呆れられるというのは結構ムカついたりする。
何で自分に自分をバカにされなきゃあならないのだ。
普段こんな物言いはしない康一だが、ACT3に対しては多少荒っぽい言葉遣いにもなろう。

『ヤレヤレダゼ、ッテヤツデスネ。…ストップ!ソンナニ怒ッタ顔シナイデクダサイ』
「だったら、何か、いい手があるんだろうね?」
無かったらブチのめすぞ、と言わんばかりの康一が凄みを利かす。
そんな康一の問いかけに、悩んでいるような表情のACT3が逆に尋ねた。

『因ミニ、ソレハ康一様ガ生キ残ル方法ナノカ。
ソレトモ、マザリーニ氏ヲ優先スルノカ。一体ドチラデショウカ?』
ACT3にふざけた様子は一切無い。声音も表情も、立ち居振る舞いに真剣さが滲んだ言葉だった。

突然だが、スタンドの覚醒とは実に様々な要素が絡み合っている。

康一の場合、虹村形兆が所持していた『矢』に刺されてスタンド能力に目覚めた。
しかし彼は貫かれた矢によって一旦は死亡しかける。
だが康一の親友の一人。東方仗助の能力によって傷を治され、一命を取り留めた。
その上で広瀬康一はスタンド使いとなり、様々なスタンド使いが起こす事件に巻き込まれてゆく事になったのだ。

『エコーズ』は三つの形態を持つスタンド。
このスタンドは本体である康一が精神的に成長するたびに、段階を経て成長していった。
ACT3に成長した際は、今までとは比べ物にならない怒りを康一は感じた。
怒りからくる闘争心と、傷ついた空条承太郎を守ろうとする心が、康一を成長させたのだ。

その精神は如実にACT3にも現われている。
特殊能力、3・FREEZEは対象を超重くする。迫り来る敵の動きを止め、仲間を守る為に生まれた力。
自我を持ったスタンド。故にそれは本体のあり様を映し出す「鏡」とも言える存在。
確実に康一が持つ、守ろうとする心はACT3にも受け継がれている。

そのACT3の守ろうとする心が生み出すのが、康一への問いかけだった。
スタンドは本体の心によって性質を変える。いわゆる純粋さを併せ持つような気がする。
純粋であるために歪な心から生まれる能力は歪になってしまう事もある。
否、人間というのは大小に関わらず、どこかしら歪んだ面を持っているのかもしれない。

それでもスタンドには一本の筋のようなものが生まれる。
見紛う事なき輝ける精神から生まれた能力は、また輝く精神を持つ存在になる。
『サア、ドチラデスカ?命令シテクダサイ、私ハソノ言葉ニ従イマス』
ACT3は心のままに康一へと問いかけた。

精神には精神、心には心で返すのがスタンド使いの流儀。
康一は僅かに呼吸を整えて言った。
「…もちろん、僕とマザリーニさん。二人で生き残る方に決まってるッ!」
『Good!最初カラ選ブト分カッテイマシタガ、本人カラ聞イテミルト、グッとキマスネ』

何だか少年のように笑うACT3を見て、逆に康一は苦笑してしまった。
『正面カラ突ッ込ムノハ死ニニ行クヨウナモノ。
ドウニカ不意ヲ突イテ、先手ヲ打ツノガ最良ダト考エマス。
幸イコチラハ一人ナノデ隠レテ攻撃スルノハ容易イ。ソレヲ利用シマショウ』

確かに現状それぐらいしか使えそうな手が無い。
恐らく前方から廊下を突き進んでくるだろう敵の三人を考え、康一は手近な部屋に隠れようとドアノブに手を掛ける。
探知の魔法で位置を気取られる前に、一撃で戦闘不能に追い込めるならこちらが有利。
が、手を掛けたとたんにドアはノブを捻っていないのに内側へと開く。

(ちゃんとドアが閉まってなかったのかな?)
鍵が掛かっているよりは良いが、何か不気味な感じがする。
開く、開く、ドアは止める間も無く開ききる。そして。
「…うっ」

呻き声だと康一が理解する間も無く、ドサッ!と音を立てて何かがドアの前に倒れた。
部屋の内側、ドアのすぐ横にあった物がドアが開いた事で倒れてしまったのか?
そんな事を思った途端、かなり不味い事に康一は気が付いた。
今の物が倒れた音はかなり大きかった。そして夜の静まり返った城に、そんな音はよく響く。

間違いなく今の音を聞きつけて敵はこちらにやってくるだろう。
不意を打って攻撃するのは、これでパーかもしれない。
心の中で激しく舌打ちしながら、康一はこれからどうするべきかを考えなおす。
時間は残り少ない。そもそも時間が残っているのかさえ疑わしいというのにっ!

『……様ッ!康一様!』
康一は自分の名前を呼ばれた事でハッとして振り返る。
そこにはかなり焦った感じのACT3が視線をドアの向こうにやっていた。
一体なんだと思い、反射的に視覚を同調してみる。

そして見た。瞬間、硬直しかけるが何とか持ちこたえ、今度は自分の目でそれを見る。
倒れた者。誰か自分の目の前に倒れた人がいた。
まず目に入ったのは金の輝き。一際目を引くその金色の髪を康一は一度見ていた。
既視感が康一に倒れた人が誰なのかを教える。

「この人は…確か…かなりキツイ感じの……まるで由花子さんみたいな人…ッ!」
山岸由花子に聞かれたらラブ・デラックスで絞め殺されること請け合いのセリフである。
康一は明らかにロクな覚え方をしていない。
倒れている彼女は今夜康一が見回りの際に声を掛けてきた女性。
男を引き付ける美しい相貌の女性の名は、エレオノール・ラ・ヴァリエール。

康一の主人のアンリエッタと血の繋がりのある由緒ある家柄の子女だが、異世界人の康一には知るはずも無い。
よって康一の認識での彼女は、微妙に性格がキツめの可哀想なお姉さんといった感じだ。
大切なのは、何故彼女がこんなところに倒れているのか。
今まさに戦闘の最中だというのに、こんなヤバ過ぎるタイミングで現われてきたのか、ということである。
自分とマザリーニが襲われているのに巻き込まれていたのか?

しかし現実は無情にも康一を更に追い詰める。
「「「………………」」」
僅かに聞こえてくる零れた言葉。少しだけ康一は目を向ける。
そこには影が三つ。六つの瞳が康一を見据えていた。

明らかに呪文の詠唱。命の危機。体を動かす。
ダンッ!と力の限り地を蹴って、エレオノールをACT3で抱え康一は部屋の中へ飛び込むッ!
「うおおおおおッ!」
火炎の爆裂、氷の破断、鉄槌の粉砕。三つの魔法が康一を襲う。

火炎はその熱量が皆全て焼き払い、氷はその場で爆ぜて周囲に氷弾を撒き散らし、幾つもの鉄槌が雨の如く降り注ぐ。
殆んどは康一の立っていた部屋の前辺りに効果範囲を設定していたらしく多くは回避できた。
しかし残りの余波といえど三つ集まれば相当な打撃力
康一は成すすべもなく壁へと吹き飛ばされて激突。

「あぐッ!」
したたかに背中から打ち付けられ酸素と胃液が喉から零れた。
だがさすがと言うべきなのか、ACT3で抱えたエレオノールはしっかりと受け止めている。
半ば反射的な行動だったが、いかにも康一らしい行動といえるだろう。

しかし状況が悪すぎる。奇襲をかける筈が逆に奇襲され、一人で身軽に行動するという僅かなアドバンテージもなくなってしまった。
元々三対一だったのに今は更に一人守る者が増えてしまっている。
さすがの康一も冷汗が止まらない。一体どうすればいいのか。

後何秒で追撃が部屋の中に放たれるだろう。
そうなれば魔法が康一とエレオノールは一瞬の内に死亡。
冷凍肉がハンマーで砕かれ焼肉にされるのは想像を絶する。そんな死に方はゴメンだ。
何とか活路は無いのか。だが先ほど体を打った衝撃が僅かに思考を狂わせていた。

僅か数秒の狂い。しかし今の康一には死に至る狂いだ。
思考が纏まらず自分の意志を何処に向ければいいのか分からない。
擦り切れそうな精神的圧力。思考が無意味にループしてしまう。
こんな簡単に追い詰められるなど想定してなかった。

どうする!?どうする!?どうする!?



そして僅かに時が過ぎてから、部屋の中に魔力が渦巻き、派手に魔法が弾けとんだ。


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