ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

外伝-5 コロネは涙でセットされている

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外伝5 コロネは涙でセットされている

ハルケギニア世界最大の都市であるガリアの王都リュティス。
その東端に位置する巨大な王城ヴェルサルテイル宮殿。
王家の紋章である組み合わされた2本の杖が描かれた旗を掲げるその宮殿は、世界中から招かれた建築家や造園師の手による様々な増築物によって現在も拡大を続けている。

中心にあり王が政治を行っている薔薇色の大理石で作られた『グラン・トロワ』
その第一王女がいる桃色の小宮殿『プチ・トロワ』など様々な宮殿や、劇場さえ宮殿内には存在する。
だがその一方で、使われなくなって久しい建造物も多い。
暗愚な王が建てた建造物や、あるいは美しさや機能性から使われている建物も重大な事件が起きた場所には暗幕がかけられていたりする。
敬遠される場所の数も増え続けていく様が、如何にヴェルサルテイル宮殿内にて政争が行われてきたかを現していた。
そんなハルケギニア内でも有数の美しさと醜さを持つ宮殿内で今日は珍しいことが起きていた。

「父上ッ私嫌です!」
「イザベラ、不躾になんだね? 親子であれ我々が守るべき礼儀も怠るほどの事だ。よほどのことなのだろうな」

ガリア王家の血を引く者特有の青みがかった髪をした二人…この宮殿の主ガリア王ジョゼフ一世とその娘、王女イザベラが会話をする事自体珍しい。
王は政治を省みない上に魔法を使えない無能と陰口を叩かれている事は有名だが、彼はその上に子供を余り顧みない人だった。
それはイザベラの仕草一つにも見ることができる。
教育に力が加えられなかった為王族が身につける、例えば今対峙している父のような優雅さは無く、粗野な仕草を身につけてしまったしそれが似合ってしまうといった点から。

そんな親子にあって、イザベラが息も荒く父親に詰め寄る事など更に無い…というより、初めてのことだった。
イザベラにとって父親は酷く距離のある相手。
魔法に関しては無能な所は父に似たという逆恨みと優越、それ以外は優秀なことへの嫉妬など様々な感情があったし…何より弟殺しを行ったという噂が本当だという確信が、イザベラにはあったからだった。

だが今日ばかりはその苦手な父とも対峙せねばならなかった。
年相応より多少豊かな胸に手を当ててイザベラは自分ほど大きな娘がいるようには見えない美丈夫の父を見上げた。
睨みつけようとさえしたが、冷たい父の目を見て視線は弱まった。少し気圧されながらも今朝聞いたばかりの事を言う。

「ええッ、聞きましたわ。私を追放するとはどういうことですか!?」
「なんだその事か」

ジョゼフは娘の怒声にも涼しい顔をしてそう返した。
その余りに素っ気無い返事にイザベラの勢いはまた殺がれ、ジョゼフはそんな娘に視線を向けたまま趣味の一人遊びを再開する。
娘の相手をしながら一人で差し続けるのはジョゼフにとってはそう難しいことではなかった。

「で、では、本当なのですか?」
「正確には修行の旅に出すという事だがな」

父の態度に戸惑う娘に返事を返しながら、ジョゼフはまた一つ駒を動かした。

「同じことですわ!」
「イザベラ、少し落ち着きなさい」

また騒がしくなった娘に煩わしそうな視線を向けたジョゼフはシニカルな笑みを浮かべた。
イザベラは自分の表情の変化を見て、嫌な予感を覚えて身を硬くしたイザベラの反応を面白がるように言う。

「宮廷内で王女が裸で踊ったなどという醜聞が流布されていてはこの位のことも必要であろう」

ジョゼフの言うとおり、宮廷内では今一つの醜聞が流れてまだ沈静する気配を見せていなかった。
先日とある貴族が開いた催しの中で、イザベラが裸で踊ったという話だ。
(当然ながら口止めしてはいたので)どこからその話が流れたのかは不明だが、騒ぎ立てて更に否定すれば逆に信憑性を持たせると、ジョゼフは大した手を打たずにいる。

イザベラはその時の事を思い出し顔を真っ赤に染めながらも、その事を理由に挙げられるのは理解していたのか間髪入れず反論した。
不名誉極まりない噂が流れていようと外に放り出されるよりはましだ。

「あ、あれは地下水の裏切りが「イザベラ。それがお前が悪いということだ。地下水が? 違うな。我々の周りに裏切りを考えぬ者などいるかね?」

反論を笑みを浮かべたまま真っ向から切捨てた父から、イザベラは頭を垂れて視線を外した。
その手は強く握り締められ、悔しそうに震えていた…そう考えているなら何故自分を放り出すのか!
無意識に、何故と尋ねて冷たく答えられるのを拒否したイザベラはそれ以上ジョゼフと口論を続ける事ができなかった。

「わかったならば旅の用意をしろ。旅の間の身分などは用意してやる」
「…わかりました」

肩を落として部屋から出て行こうとする娘にジョゼフは思い出したように言った。

「あぁそれと、他国で王家の血を引きながら系統魔法を全く使えないメイジがいたらすぐに知らせるのだ」
「はい。父上」

力の無い返事を返し、イザベラは部屋から出て行く。
ジョゼフは何事も無かったかのように一人遊びを続けた。

そして不意に手を止める。
駒を持った手が震え次第にそれは肩へ、全身へと及び…ジョゼフは逆の手で顔を抑えて笑い出した。
駒を放り捨てた手で盤上を叩きながらジョゼフは笑い続けたが、それもいつしか止んでしまう。
ジョゼフは嘆いた。

「実の娘を、不慮の事故で失ってしまうかもしれぬ状況に追い込んでもこんなものか! シャルル、やはりお前の忘れ形見を失うしか手はないものか!」

このガリアでは政治的な闘争はそれこそ日常的なものだ。
スキャンダルを探しあい、派閥を作り、最悪は暗殺する…
ジョゼフには娘一人しかおらず、失えば潰されているとはいえシャルルの残した真の王位継承者を認めざる終えない…
それが総意にはならないだろうが、そう思う者は当然いるだろうし先走る者も出てくるだろう。
楽しみだった。それがどれだけ胸を痛めてくれる結果になるか…だが娘を暗殺されてもジョゼフはシャルロットをまだ殺しはしないだろう。
もう殺してしまっては一体誰がジョゼフの胸を痛ませてくれるというのか?
アルビオンで内乱を誘い、被害者が増えてもまだ胸は余り痛まない…もっともっと大きな戦にしなければならないというのか。
ジョゼフは笑い、立ち上がった。あぁそうだったと公務を思い出し部屋を後にする。
最近就任したばかりの枢機卿が、遠くロマリアからジョゼフを訪ねてきているのだった。
娘の事など忘れたように、ジョゼフはそれから何日もの間宴を開きその枢機卿と飲み食いを楽しんだ。


その頃ジョルノは亀の中で悩んでいた。
テファには見せられないパッショーネの仕事を行う時など、一人になりたい時に入る亀の中はジョルノの好みに合わせて内装も整えられており一人静に考え事をしたりするのにはとても適した場所だ。
遠慮なく考えや趣味に没頭できるプライベートな空間で、ジョルノはテファには見せない苦悩する表情を露にしていた。

トリスティン、ゲルマニア、ガリアの麻薬市場にも乗り出したジョルノがこちらで作った『パッショーネ』だったが、ちょっとした抵抗にあっているということが一つ。
アルビオンで暴れるパッショーネの存在に気付き、待ち構えている者達がいる。
予想していたことだが、小さいピザの分け前を渡すまいという感情のほかに、アルビオン人やアルビオン人に組する裏切り者が入ってくることを生理的に嫌うトリスティン人なども多くいて中々手強い。
それは既に血で血を洗う闘争に移行しており、ジリジリと範囲を広げていくしかない状況だった。

そして二つ目の問題であり最大の問題は、麻薬を止める手が『合法的には存在しない』ということだった。

現在、ジョルノの元に手中に収めたアルビオンの麻薬市場の情報が揃い始めるようになり始めている。
特に下へと回る麻薬の情報を多く集め、例えばジョルノがこのハルケギニアに来て最初に手に入れた劣悪な麻薬を誰が回したのか?
なども調べているのだが、結果は売り上げから予想できていた通り、貴族からだった。

貴族が戯れで手を出した女性と楽しむ為に使ったのが最初で、それに加えてタバコに少量混ぜたりして使い、それを女の所に残す…という形が最も主要なケースだった。
それは運良くアルビオンの大貴族か王族の中に溺れる者がいたのか、偶々禁止されている麻薬だったからそういう形が主になる。

だが…では貴族はどこからその麻薬を手に入れたのか?
起点を探すよう指示したジョルノの元へ届いたのは、現代人の若造に過ぎないジョルノにとっては聊か予想外な答だった。

出所は薬などを取り扱う店だった。
ジョルノが消そうとしていた麻薬の多くは、麻薬ではなかった。
秘薬や医薬品…言ってみれば『合法の薬』だった!

傭兵の痛み止め、貴族には高揚効果から魔法を強化する秘薬。
タバコなどと同じ嗜好品として、あるいは理屈はわからないが水の秘薬などとして合法的に商いされている品物…!

一部は神聖視さえされており、麻薬に近い認定をされているのは本当に極一部。
それらの薬の一部の効果、快楽を得たり強い幻覚作用などを引き起こすものが彼らのモラルに反したので禁止薬物とされているだけだった。

ジョルノが消そうとした物が麻薬と指定されるに至った理由…忌々しい逸話は、好奇心を誘うスパイスとしてしか機能していない。

麻薬と考えていたのは平民の間で使われる隠語に近く…
麻薬と読むのは全くの誤訳で正確には違う意味を持っている単語だった…!

裏市場で出回っていた理由は『貴族だけがそれを管理し手に入れている状況』では、痛み止めなどを必要とする傭兵達や盗賊達が”必要量を得るにはこうするしかなかった”という結果だったことがわかっていた。

一方で、極一部の人間の輪の中で少しだがその危険性も知られているということもわかったが…その効果の高さから貴族にも平民にも必要とされる”薬”なのだ。
最低ランクの麻薬の材料は、薬を作った後の言わば残飯処理。

そんな物でも少しは薬の効果があるので必要としている者もいるようだという結果だった。

元々ヘロインが医薬品だったことを考えれば予測してしかるべきだったのだろう。
ジョルノは一枚の報告書に目を通して眉を寄せた。

「裕福な平民の家庭にあるのは中身が『麻薬』でも『万能薬』とはな」

皮肉気な笑みを浮かべてジョルノは報告を流し見していく。

そうした事情に加えて、ハルケギニアには成分表示義務などが無いことが更に頭を悩ませる。
極端な事を言えば、睡眠薬や鎮痛剤の中身が80%ヘロインであっても謳い文句通りの効能があれば問題無い。

それに(ジョルノにとっての)麻薬の多くが(先ほどあげたように)使い方によっては秘薬などになる為、成分的にも問題は無い…所か効果は高いのでジョルノの価値観で言う薬よりも重宝される。
また貴族の物にさえされていないのだから、当然平民の口に入る物に動物実験などが義務付けられているわけでもない。
識字率がかなり低いこのハルケギニアではそうした表示を義務付けた所で表示内容を理解できる人間が多いわけでもない。
強力な薬なら…いや幼児に与えるにはほんの一滴が問題となりかねないのにそれを明確に計ることが民衆には困難という状況でもある。

ジョルノにそう言った事を教えた男、ミノタウロスメイジのラルカスは苦笑した。
牛の頭である為うまく笑えているとはとてもいえなかったが、ジョルノらと共に行動を始めて少しずつ表情が増えていた。

「ボスが薬についてここまで詳しいとは思わなかったが、本当のことなのか?」
「…成分に多少の違いはありますが、僕の故郷では社会問題にもなっていますからね」

ラルカスはジョルノの返事に、秘薬や医薬品として使っている物の危険性に戸惑っているようだったが、それはジョルノも同じだった。
社会から弾かれた者達などより、一般家庭こそ問題かもしれないというのだから…「困ったものです」
子供を夜寝かしつけるのに麻薬を混ぜた飲み物を少し与えたりすることもあるという一文を見て、ジョルノは一瞬見間違えたのかと思った。
どうしていくか、ジョルノは少し考えた末今すぐに結論を出すのをやめることにした。

すぐに答が出せそうに無かったし、今はポルナレフと合流するという目的もある。それにテファ達の事もあるのだから。
やるとすればこのまままともな薬を作る研究などを行うしかないだろう。
報告書を整理し、ラルカスを連れてジョルノは瓶を一つ持ってカメを出る。
天井を抜けたそこはトリスティンの森の中だ。テファの待つ馬車は少し離れた場所で停止している。
木々の隙間から少し詰まらなさそうに本を読んでいるテファの姿が見える。

ジョルノはテファにはギャングの仕事については教える気が無いので、面倒だが離れてから亀の中に入っていたのだった。
馬車へ向かい歩き出すジョルノの後ろをラルカスは亀を持って追いかけて尋ねる。

「しかしボス、いつまでこんな所にいるんだ? もう一時間近くにはなるが」
「ガリアで知り合った貴族と待ち合わせをしているんです。彼が来るまで、でしょうね」

そう言うジョルノの髪は普段のコロネではない。
ゲルマニア貴族のジョナサンはコロネにはしていないし黒く染めていないからだ。
今朝ちょっとした時間をかけて、テファに手櫛と整髪料でセットされる間不満げな態度だったのがラルカスとラルカスが持つ『地下水』には印象に残っている。

「あ、ジョルノ。ラルカスさんも、お帰りなさい」
「ええ、ラルカスさん。まだ相手も来ませんしコーヒーでも淹れましょうか」

草を掻き分ける音を聞いていたテファが本から顔を上げて出迎えたが、ジョルノは素っ気無く返して亀から持ち出した瓶を掲げた。

「コーヒー? あの東洋の真っ黒なやつか?」

はいと返事をし、ジョルノは先ほど読んだ報告書と一緒に届いた瓶を一つラルカス達に見せる。
黒い粉が入っているのを見たテファとラルカスは奇妙に思ったようだが、ジョルノは構わずコップなどを用意していく。
報告書を読むついでに亀の中で挽いたばかりの粉は、瓶の蓋を開けるなりその芳醇な香りを周囲に振りまく。
だが嗅ぎ慣れないテファ達にとっては妙な臭いとしか取られなかったようで、二人共どういっていいのか困っているような顔をする。

「ラルカスさん、お湯を用意してもらえます?」
「あ、ああ」

ラルカスは短剣を取り出し、ジョルノが差し出したポットの中の水を暖めていく。
ジョルノに素っ気無く返されたテファは馬車に向かっていた。
二人が戻ってきたので今はもう本は必要ない。
テファは本を馬車に置いた小さな鞄の中へと仕舞ってから三人?の元へ戻る。
その時には、ミノタウロスの系統魔法によって沸騰させられた湯を使い、ジョルノが真っ黒い飲み物を用意していた。
笑顔は爽やかだが、飲み物はどす黒い…テファが視線を向けると、ラルカスもなんともいえない表情をしていた。

「どうぞ。砂糖もたっぷり入ってますから飲みやすいと思いますよ」
「…ジョ、ジョルノはやっぱりその髪型の方が似合うわね」
「僕はあれが気に入っているんですが…まぁ仕方ありません」

髪型に関してはちょっと同意できないなとジョルノは言いたげだ。
そして二人が躊躇う黒い液体をおいしそうに飲んでいく。
昔ほどの高級品ではなくなったが、それでも今も結構な値が付く砂糖をどばどばと注いで作られた飲み物だ。

「嫌いな匂いでしたか?」
「う、ううん。飲んでみるわ」

尋ねられたテファは慌てた様子で首を振り、コーヒーを口にした。
ちょっとドロっとしていて匂いも馴染みがなかったが、飲んでみると案外…ラルカスはそれを見てホッとしていた。
あれだけ砂糖を入れて飲まないのは勿体無さ過ぎるしな、とラルカスもコーヒーを口にした。

「いいかもしれませんな。案外流行るかもしれません…所でその待ってる貴族ってのは誰なんだ?」

「トリスティン貴族のバーカンディ伯爵です。婚約者の家にちょっと顔を出す羽目になったからこの機会にネアポリス伯爵を紹介したいそうです…なんだか今にも逃げ出しそうな様子でしたけどね」

笑いながら言うとジョルノはコーヒーを飲み干してラルカスに片づけを頼む。
最も得意とする属性が水であるラルカスなら水洗いくらい余裕だったので、最近の洗い物はラルカスの役割になりつつあった。
ジョルノは馬車にもたれかかりそのバーガンディ伯爵が来るはずの方角を見る…さりげなくテファがその隣に移動し、ラルカスは揺れる革命的な物体をさりげなく鑑賞しながらコーヒーを飲み干す。

「ジョルノ。来たみたいだぜ」

テファの前である為、ボスではなくジョルノと地下水が呼ぶ。
地下水に言われたジョルノは目を凝らす。
するとゆるく孤を描き向こう側が見えない道から一台の馬車が走ってくるのが見えた。
注意深く観るまでもなく馬車にはバーガンディ伯爵家の紋章が刻まれている。
馬車は程なくジョルノ達の前まで来て停車し、御者が扉を開けるのも待たずに人の良さそうな20代男性が降りてくる。
特筆する点は無いが、清潔感のある服に身を包み、髪をポマードでストレートバックスタイルに整え手には杖を持つ。
極一般的な貴族だった。

「ネアポリス伯爵、遅くなって申し訳ありません」

伯爵は現れるなり年下の伯爵に頭を下げた。

「バーガンディ伯爵。御気になさらないでください。彼女達といれば退屈することはそうありませんから」

そんな伯爵にジョルノはテファ達の存在を視線で促しながらバーガンディ伯に相変わらずうそ臭いほど爽やかな笑みを見せた。
バーガンディ伯は一言こう零した。

「羨ましい……!」

真に、真に力の篭った一言だった。
ジョルノ達はどーしたのこの伯爵と目配せをしあう。
それに気付いた伯爵はお二人の事ですよと羨望の視線を送った。

「ネアポリス伯爵は恋人と仲がよろしいようで…」
「こい…?」

ジョルノは不思議そうな顔をした。
ラルカスが首を振るのも無視してバーガンディ伯に言う。

「ハハ、私達はそんな関係じゃありませんが。貴方こそ美しい婚約者にこれから会いに行くのでは?」
「…あ、そう…ですね。はい。確かに美しいんですが…その、私は彼女がちょっと苦手で」

テファを気遣うような表情をちらと覗かせてから、バーガンディ伯は苦笑した。

「そうでしたが…しかし、婚約者とお会いになる所に私のような粗忽者が行くのは少々気が「いえ、ぜひ一緒にきてください! 誰かに来てもらわないと私の身が…ゴホンっ貴方のような方ならきっと歓迎されますよ」

フフ、どこか陰のある笑みを浮かべるバーガンディ伯爵にラルカスはやめた方がいいんじゃあないか?とジョルノに目配せした。
このまま付いていっても竜の尾を踏むようなものかもしれない、とラルカスは思う。
だがジョルノは全く構わずバーガンディ伯を自分の馬車へと促したた。

「そうですか。では早速参りましょうか」
「も、もう行きますか!?」
「はい、確か以前窺ったお話ではそろそろ行かねばちょっとしたトラブルに会うと遅れかねませんから」

ジョルノの返しに、バーガンディ伯は一気に表情を青くし、怯えた様子でジョルノの手を掴んだ。

「それは困りますね!急ぎましょう!!」
「…そんなに怖いんですか?」

馬車に連れ込まれながらジョルノは尋ねる。
バーガンディ伯は言葉に少し詰まりながらも言葉を返した。

「わ、私も彼女が嫌いではないのです。で、ですが…彼女は、その…私より年齢、家柄、メイジとしての実力、宮廷内での実績、その他何もかも上回っている上に少々きつい所が…」

言うなりバーガンディ伯は胃の辺りを手で押さえる。
ジョルノがそれを気にする間さえ与えず伯爵は懐からピルケースを取り出し丸薬を一つ飲み干した。

「…そんなにきついんですか?」
「と、時々は優しいんですよ? でも、その…最近は月に一度は砂糖が吐けそうな詩の一つも送らねば余り好ましくない事態に…おい! 早く、早く出してくれ!!」

全員を乗せたジョルノの馬車は、妙にびくびくしたバーガンディ伯爵に急かされかなり急いで走り出した。
向かう先はヴァリエール公爵領…バーガンディ伯の婚約者エレオノール嬢?の実家へ向けて。


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