ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-21

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匿名ユーザー

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「さて、では急ごうか」
刺客を倒し、桟橋へと急ぐ。
先頭がワルドで、次いでキュルケ、ルイズ、タバサ、ギーシュ、殿はワムウ。
ワルドはルイズと並ぶことを主張したが、ワムウの狙われる危険の最も高いのを
近くに置くわけにはいかないと鶴の一声で順番が決まった。

長い長い階段を上り、巨大な樹木が丘の上に見えてくる。
開けた場所であるため、襲撃はしにくいと判断し、木の根元まで全員が一目散に走る。
ワルドが上る階段を見つけ、全員がスピードを落とし慎重に上っていく。

警戒していたためか、背後の踊り場からフライを使って追ってきた仮面の男に全員はすぐ気づく。
「戦っている暇は無い!全員走れ!」
仮面の男は階段に着地し、魔法をワムウとギーシュの間に放つ。
間一髪ギーシュはかわすが、足元の木の階段は木っ端微塵に砕け、ワムウは孤立する。
キュルケが階段を上りながら悪態をつきつつ魔法を放つが、男はフライで上昇してかわし、そのまま一行の
前まであがろうとする。

ワムウは足が浮き、魔法で反撃できなくなった瞬間に尖った階段の欠片を投げつける。
男はフライで後ろに下がり、階段から離れ巨大な樹木、世界樹の枝に着地し、飛んできた欠片に閃光を放つ。

その閃光は欠片を飲み込み、そのままワムウに向かっていく。
ワムウは大きくジャンプするが、その足に閃光が直撃する。
しかしダメージはないのか、一行の最後尾に何事もなかったかのように着地する。
ワルドはワムウの無事を確認した後、元のスピードで上り始める。
仮面の男に魔法とワムウによる投擲を浴びせるが、どれも決定打にはならない。
ワルドが杖を一振りし、風の槌による打撃を与えると、男は枝から転落していった。

「ワムウ、大丈夫?」
「あれはライトニング・クラウド、風の使い手による上級呪文だ。しかしあまり痛みはないところを見ると大丈夫のようだね」
「そうでもない、いくら体を鍛えても雷への抵抗力をつけるのは難しい。踊るとしたら難儀になったな」

ワムウの足を見ると焼け爛れ、常人なら歩くのもままならないような傷に見えた。
「ワムウ…」
ルイズは心配するが、ワルドがそれを制する。
「確かに彼の傷は心配だが、いつ次の敵が襲ってくるかはわからない。歩けるようではあるし、
もう少しの間怪我をおして進むしかないだろう」
「当然だ、これしきの傷で足手まといになることこそ戦士の恥だ」
「彼もそういっているし、では進もう」

階段を一行が上っていき、一艘の船がロープでつながり停泊している。
「すまない、色々と巻き込まれて遅れてしまった」
「俺が船長の赤鯱だ。なあに、どうせ出航の予定は無かったんだ、金さえ弾んでもらえるならいくらでも待つわ!
しかし、なんだって今商売でもないのに戦争中のアルビオンに行くんだか、気が知れんね…そうそう、急ぎの客が
一人いてね、同席してもらうが構わんね?」
「ああ、構わない」
「なら出発としますかい、出航だ!もやいを放て!帆を打て!」

船が浮き始め、ワルドは杖を構え船後部の風石室に向かう。
「さあ、君たちも乗りたまえ」
ワルドが促し、一行が乗り込み、部屋に案内される。

「無粋な貨物船でね、洒落た部屋は無いが文句は言わんでくれよ」
そういって船員は扉を閉めた。

「同席してる相手が一人居るといっていたが…」
ギーシュが呟き、隅で商品なのだろうか、大量の荷物の整理をしている男が居る。

ルイズは男を見て絶句する。
「あ、あんたは…」
「なんだ、急ぎの貴族とは君たちか、偶然だね。どうだね、私としてはリベンジでもしたいところなのだが…」
「武器屋の店主、ダービーッ!」
「覚えていて頂いて光栄だね、グッド」
「なんだね君たち、知り合いなのかい?」
ギーシュが首を傾げる。
「ちょっとワムウ君の持っている武器を賭けてギャンブルをしてね、ご覧の通り私は負けたわけだよ」
「ふーん…君達もけっこう悪趣味なんだな、そんなボロ剣を賭けるなんて」
ギーシュはワムウの持っている剣を一瞥しながら言う。
「おれっちがボロ剣だとは失礼な小僧っこだな」
「僕よりセリフもないくせに何をいってるんだね、君は」
「何の用でアルビオンに行くかは知りませんが十中八九戦争関係でしょう、どうです、
私の武器なんかを買っていっては…全長39㎝、重量16㎏、装弾数6発の13㎜拳銃などもはや
人類では扱えない代物もありますがワムウ様なら…あとは衛星付鉄球が数個と、空気砲なんかも…
目玉商品は必ず当たって、しかも投げた後戻ってくる槍ですな…名前はグンニグル」
「いらん」
ワムウは即答する。
「そう無下にしないでくださいな」
「武器は興味が無いが、ギャンブルは興味があるな」
ギーシュが話に割り込んでくる。
「ちょっとギーシュ、やめなさいよ」
「フフ、お嬢さん。『魂を賭ける』のを危惧しているのなら杞憂ですよ…まあアルビオンにつくまでの
暇つぶしのようなレートで…そうですな、麻雀牌を使ったギャンブルがありましてな…
レートは貴族様なら点1ドニエ程度で構わんでしょう?」
「ああ、構わないよ。それよりルール説明をしてくれ」

「もう、止めたのに」
ルイズがため息をつく。
ギーシュはもうやめる気はなさそうだ。
キュルケは本を読むタバサにちょっかいをかけている。
「それより、ワムウ。さっきの魔法受けたところ見せなさいよ」
ルイズが足を出させると、先ほどの怪我の部分を見つける。
柱の男の治癒力である程度治っているものの無残にも足はえぐれ、焦げ付いていた。
「ちょっと!なんでこんな大怪我だってのに黙ってるのよ!薬を探してくるわ!」
ルイズはギーシュと話していたダービーに割り込み、財布を出し、薬を買ってくる。

「ほら、これ塗るから。ちょっと染みるけど我慢しなさいよ」
まるで子供を扱うような言い方にワムウはニヤリと笑う。
「こういう怪我をしたときはご主人様にちゃんと言うの、わかった?」
「お前にもそんなところがあったのだな」
ニヤニヤしながらワムウは言う。
「な、なによ、心配してやったのにその言い草は何よ」
「まあいい、感謝くらいしておいてやろう」


 * * *


「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
『おれは奴と点1ドニエでギャンブルをしていたと思っていたらいつのまにか100ドニエすっていた』
な…何を言ってるのか わからねーと思うが、僕も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
竜巻ヅモだとか背中が煤けてるぜだとかライジングサンだとか、僕は本気を出さなかったわけでは断じてねえ
もっと恐ろしいギャンブラーの片鱗を味わったぜ…真っ白に燃え尽きたよ…」

マントすらかっぱがれたギーシュは寒そうに肩を抱える。
「だから言ったでしょ」
ルイズは言わんこっちゃない、という口調で話し掛ける。
「でも、あれほどとは思わなかったよ…」
落ち込むギーシュを尻目に、ワムウは空を眺める。
そして、なにかを見つける。
「あれがアルビオンか、浮遊大陸とは素晴らしいな」
ワムウが雲の向こうを指差す。

「なに、本当かね!僕もアルビオンを見るのははじめてなんだ」
ギーシュが真っ先に飛びつき、身を乗り出す。
「うおおおおお!あれがアルビオンか!」
ダービーも興味を示したのか、船室から出てきて望遠鏡を構える。
「いつみても綺麗ね、『白の国』は」
キュルケも読書を続けようとするタバサを無理やり引きずり出し、アルビオンを見せる。
「あんたもたまには本じゃなくて外を見なさいよ」

「杖を立てろ!ニョホホ ニョホホ~ヴェルダンテがついてゆく~♪
島がみえるよ ギーシュ~島がみえるよ ギーシュ~♪
ギーシュ ギーシュ ギーシュとなかまたちぃいいい~♪」
「ワムウ、あいつ黙らせてほしいんだけど…」
ノリノリのギーシュの後ろにワムウが立ったとき、船員が声を張り上げた。

「三時の方向、上方雲中より船舶接近!」
船長が声を聞きつけて、双眼鏡片手に出てくる。
「貨物船や客船の類じゃねえな、軍船か、空賊船か…どちらにしても出くわして得なことはねえな、
野郎ども、全速力で十一時の方向、下方に進ませるぞ…相手のケツをとってそのまま逃げ切っちまえ」
「船長、それが…かなり大規模な空賊船のようで…武装も馬力も段違いのようです…」
相手の船は砲弾で威嚇射撃をしてくる。旗色信号が見える。

「停船命令です、船長」
「どうなんだい、貴族さんよお」
船長は横目でワルドを見る。
「そうだな、船が急降下する前に一発くらいは魔法を当てられるかな」
船長は舌打ちする。
「やむをえん、停船するぞ。裏帆を打て」


To be continued.


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