ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔-22

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匿名ユーザー

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時間的には少しばかりさかのぼることになるが……
トリステインの領土に、太陽の恩恵が下されるまであと寸刻の猶予がある時。
ラ・ロシェールを走る街道に三人の歩く人影があった。
「いったいどこまで私達を連れて行くつもり? それに埠頭は逆よ?」
キュルケがうんざりした様子で、前を歩くルイズに話しかけた。
タバサも同意する。
三人はラ・ロシェールの町を離れ、山道を下っていた。
ラ・ロシェールの埠頭からは遠く離れている。

「信用しなさいよ~。私、あなた達は『仲間』だと思っているのよ?」
「今から任務の『秘密』を喋ろうとしている私を疑おうなんて、可笑しいんじゃないの?」
微笑みながら返事をし、それでも歩きをやめないルイズを見ながら、『それもそうか』とキュルケは思った。
おそらく今回、ルイズは、アンリエッタ王女の頼みで行動しているのだろう。
ならばこの旅は国家的な規模の陰謀に発展するかもしれない。
しかも、自分達は勝手についてきた部外者なのだ。ルイズはその部外者に任務の詳細を喋ろうとしている。
おそらくラ・ロシェールの町の人にも聞かれたくない内容なのだろう。


しかし、タバサにとっては一辺の疑問が頭から離れない。
ルイズは昨晩、『明日の日の出の時刻にでるアルビオン行きの船に乗る』といっていなかったか?
いま、空は東のほうから明るくなっている。
もうすぐアルビオン行きの船が出航する時間だ。
今から走っても船の出港には間に合わないかもしれない。
否、たとえフライの魔法を使っても間に合わないだろう。

そのとき、三人の体を熱風が包んだ。
風にあおられ、ゆれる二人の学院のマントに、太陽の光が当たりはじめた!
日の出だ。
遠くに見えるユグドシラルの化石の埠頭から、一隻の飛行船が飛び立つのが遠めにも見て取れた。
「ちょっとルイズ! あなたあの船に乗るんじゃなかったの!」
「任務が果たせなくなる」
しかし、二人の前方を歩く桃色の髪をした少女は歩みをやめない。
むしろ、さらに埠頭からズンズンと離れ去る方向に歩みを速めた!

キュルケはルイズの肩をつかんだ。
同時に、キュルケの手のひらにおかしな感触が走った。
何か『グニャァ』としていて、肩をつかんだというより、ゼリーか海綿をつかんだ感触に近い。
ルイズの姿をした人物は、キュルケが己の体に触れるのを待っていたかのように突如歩みを止めた。
そして振り返り、突如大口を開けて笑い始めた。


「い~えェ。『ルイズ』はあの船に乗る。そして、私は私の『秘密』を話す。任務は依然として完璧に続行中ですよォ~。キュルケさんにタバサさん!」

「ルイズ? いえ、あなたは!」
「何者」
とっさにキュルケはルイズの元から離れた。タバサはすでに戦闘体制に入り、自分の杖をルイズの姿に向けている。

「気がつかなかったのかい? 俺が君達と歩いている間、君達よりもはるかに身長が高くなっていることに」
「俺の名はルイズじゃぁーない。『ラバーソール』だ。そして、これが本来のハンサム顔だ!」

いままで。そこにルイズの顔があった。
それが、ルイズの顔が、黄色く、醜く溶けていく!
ルイズの顔は、完全に黄色い肉塊に変化してしまった。
中から男の顔が、薄笑いをしながら二人を見ている。

「約束どおり『秘密』を話してやろう! 俺の任務は、お前ら二人をあの船に乗せねーことだぜッ!」
「ルイズがウェールズ公に会うときに、ルイズの味方はできるだけ少ないほうがいいんでな」

「系統魔法じゃない……」
「まさか……『スタンド』?」
「ほう……この世界に『スタンド』の存在を知る人間がいたとはなぁ~」

「だが! キュルケさん、自分の手をみなさ~い。君の手に、一部だが我がスタンドが食いついているぜ!」

キュルケがあわてて自分の手を見ると、小指のところに黄色い肉片がこびりついていた。
むずむずする感触がある。それに、少しずつだが肉片が大きくなっている気がする。

「いっておく! それに触るとどんな場所にも食らいつくぜ。じわじわ食って大きくなるスタンド。それが我が『イエロー・テンパランス』!」



「まず、キュルケさんよぉ。あなたをいただきましょうか」
そういいながら、男にまとわりつく肉が一瞬のうちにキュルケに襲い掛かった。
「クッ!!!」

あまりにも男のそばにいたため、キュルケはその攻撃をよけることができなかった。
全身を黄色い肉片に覆われていく!

タバサはとっさに杖をふり、アイスストームを唱えた。
魔法を向けた相手はキュルケではなく、敵の本体、ラバーソールだ。
全スタンド能力をキュルケにけしかけている今、敵本体の胴はがら空きだ。
タバサはそこに向けて自身の魔法力を、思い切り叩き込んだ。

しかし、男は一瞬で自身の肉体に、すべてのイエローテンパランスをまとわせ、魔法の風と氷をスタンドで受け止めた。ラバーソールは余裕のある口ぶりで、タバサを褒め称えた。
「なかなかやりますねェ~。あの状況で本体を攻撃するとは……あなた、スタンド使いと戦う素質がありますよ~」
「うそ…あれだけの魔法を食らっても本体は無傷なの?」
敵スタンドの攻撃から開放され、よろよろと立ち上がったキュルケが、敵と距離を離しながらつぶやいた。
彼女はとっさに自分の手を見た。肉片が取れている。今の彼のスタンド能力では、タバサ一人の魔法を防御するためには『スタンド』を全力で使わないと防御しきれないらしい。

「どうする~?」

二人は同時に、フライの魔法を唱えた。
キュルケとタバサは同時に、垂直に急上昇していく。
「シルフィード!」


二人は空中でシルフィードの背に乗りこんだ。
「あの能力…確かに脅威だけど、肉片を私の右手から離したのは失敗ね」
「この距離なら、彼のスタンドは射程範囲外」

だが、ふと竜の背から下界を見ると、道には誰もいない。
いつの間にか、男の姿がなかった。

キュルケは思った。この状況で、あのスタンド使いの姿が見えないのはとっても不気味だわ。
でも、と思い直す。
「このまま港に向かって、ルイズたちがアルビオンの『どの港まで行った』のか聞き出すわッ!」
キュルケの言葉に、タバサが相槌をうった。
「それを知ることができれば、私達の勝利」


港まで風竜に乗っていった二人は、ユグドシラルの枝のひとつ、埠頭になっているところに一人の長身の男性がぶらぶらと歩いているのを発見した。たしか、あの埠頭はアルビオン行きの船が出発した埠頭のハズだ。
「あそこっ!」
キュルケが叫ぶと、タバサも心得たもので、即座にその男の前にシルフィードを舞い降りさせた。

「ねえ、あなた。お願いがあるの! さっき出て行ったあの船、アルビオンのどの船にいったのか知ってる?」
男は面食らったように答えた。タバサの使い魔が物珍しいらしい。シルフィードをじろじろと見ている。
「そりゃ知ってるが。もしかしてあんたら、その竜であの船に追いつくつもりか?」
「いえ。船には追いつけないでしょうけど、乗客の行き先には追いつけるかもしれないでしょ?
 お願い! 知ってるのなら教えて!」


「いやだね~。俺が教えたところで、俺に何の得があるって言うのさ?」
男はシルフィードの尻尾をなでながら、キュルケの懇願を拒否した。


おかしい。
タバサは直感した。平民なら、竜に気安く触るなんてまねはしない筈だ。
むしろ、恐ろしがって近づかないほうが自然だ。『普通の平民』なら。


「キュルケ! シルフィード! その男から離れて!」
「俺の得ってより……おもいっきり損になるよなぁ~! お二人さんよぉ~!」
男がみるみるうちに見覚えのある姿に変形していく!

ラバーソールだ!


「きゅい!」
シルフィードが慌てた声を出した。竜の尻尾に、肉片がへばりついている。
その肉片はモジュモジュと蠢いていた。僅かずつだが、シルフィードの尻尾を消化しているようだ。

「これで、お前らは俺を倒すしか方法がなくなったって事だよなぁ~!」
「竜がいるってのにはちと驚いたが、その状況でアルビオンに飛んでいってもよ。『イエロー・テンパランス』が、途中でその竜を食い尽くしてやるぜッ!」
「挟み撃ち」
タバサの声にうなずいたキュルケは、ラバーソールをはさんでタバサと一直線上になる位置に移動した。
「でも、これで私達をヤル気にさせたわね」

「どうかな? 俺の『スタンド』はな……」
不敵に笑うラバーソールを無視し、キュルケはタバサに叫んだ!
「やるわよ! どちらかがスタンドをひきつけて、どちらかが本体をたたく!」
二人は同時に魔法を唱え始めた。

氷の矢と炎の矢。
エア・ハンマーとファイアーボール。
ウインド・ブレイクとロッド・フレア・ボム。
エア・ストームとファイア・ウインド。


どの魔法も、一人の平民を倒すには十分すぎるほどの威力があった。
しかも、微妙にタイミングをそらしながら放たれるそれは、もはや魔法の嵐。
この攻撃の連鎖に耐えられる平民は、いや、スクエアクラスのメイジとてごくわずかにしかいないだろう。


魔法の渦。

スペルの嵐。

火と風の狂想曲。

炎が凍り、氷が燃えた。


この光景は、周りの地形を削り取るほどの威力を示した。

「どう? やった?」
キュルケが向かいにいるはずのタバサに向かって叫ぶ。
あたりは大量の水蒸気が発生し、ひどく視界が悪い。

「!」
タバサは絶句した。

『それ』は、霧の中から現れた。
「残念だったね~。人の話は最後まできこうぜ? この田吾作どもがぁ!」

『それ』は、黄色く、ラバーソールの本体をすべて覆っていた。
「俺のスタンドは氷も火も効かねえ。お前らの魔法エネルギーはな、ぜぇ~んぶ、イエロー・テンパランスがいただいたぜッ!!!」

『それ』は、フーケの土のゴーレムより大きかった。


「う…そ……」
タバサが信じられないような口調でつぶやく。
キュルケも同感であった。


「さて、君達は魔法を乱発したおかげで、つかれているよーだな」

「そして、代わりに俺のスタンドはこんなにパワーアップ!
 今なら、防御しながら二人を同時に攻撃するなんて『ヨユー』だぜッ!!」
ラバーソールは勝利を確信した笑顔を浮かべ、告げた。


「さて、本来の俺の任務はお前らをここで足止めするだけなんだがな。ニューカッスル城にいるとかいう、ウェールズ公には莫大な賞金首がかかっていてな……エキュー金貨で三十万だ。名残惜しいが、君らにはもう死んでもらうよ……でねーと、俺がヤツを暗殺できなくなっちまうからなぁ~」
「……フフ」
「アッハハハハハハハ」

キュルケとタバサ。
窮地だというのに、同時に、二人ともおかしそうに笑い出した。
「何がおかしい!」

「ハハハ、私達はね、ルイズの行き着く先を知りたかっただけなのよ」
「あなたの倒し方は、すでにできている」

「フンッ、強がりを! とどめだ! 『黄の節制』を食らえ!」
二人に、黄色い巨大な消化機構が襲い掛かる。そのスピ-ドは少女達を容易に圧殺できるほどである。

「だめねえ、あなた」
しかし次の瞬間。
キュルケが不敵に微笑みながら杖を振ると、突如二人を襲っている肉塊が空中で停止した。


「何ッ!」
「『レビテーョン』も知らないなんて、あなたこの世界の出身じゃないみたいね。
 案外、ダーリンと同じ世界からきたのかも。でも、あなたの『それ』。スタンドで本当に助かったわ。実体化しているとはいえ、かなり軽いもの。この程度なら、持ち上げるなんて『ヨユー』ね」
そういいながら、キュルケは『イエロー・テンパランス』をさらに高く持ち上げた。
『イエロー・テンパランス』は、肉片攻撃を仕掛けることができないほど高く、遠くに持ち上げられている。

スタンド使いとしての攻撃手段を封じられた男は、あせった様子で一人逃げ出そうとした。
しかし、彼自身の体も中に浮き上がっている。
「無駄口」
男に向かって杖を向けているタバサがシルフィードに乗った。キュルケも同行する。


「さて、早速ウェールズ公の下へ行きましょう。タバサ、あなたの風竜はニューカッスルまで飛べる?」
「平気」
「きゅい~」
「ほら、情けない声を上げないで。ちょっとの辛抱よ。後でおいしいご飯を買ってあげるわ」
情けないシルフィードを、キュルケが励ました。

「あなたについた肉片。徐々にしか侵食していない。弄繰り回さない限り、しばらくは平気」
タバサのその声が効いたのか、風竜は機嫌をある程度取り戻したようだ。



ラバーソールは気づいた。こいつら、俺を完全に自分を無視してやがる。
彼は自分の行く末がとても不安になった。
「俺をどうするつもりだ!?」
「そうね…私達はあなたと違って、命までとるようなまねはしないわ。安心なさいな」
「再起不能にはなってもらう」
「どーいうことだ?」


「高度は二千メイル程で良いかしら? アルビオンに向かう途中、あなたを捨てるのよ。ポイッとね」
「もし死んだら謝る。多分」

男は自分が完全に敗北したことを悟り、絶望のうめき声を上げた。
「……うああああああああああ!!!!!!」



To Be Continued...





→超常相撲 ラ・ロシェール場所
留学生ペア ○  ● ラバーソール
     (不法投棄)

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