ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-19

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「ははは、ルイズ、君の使い魔は恐ろしく強いね。スクウェアの僕ですら歯が立たなかったよ」
「…だから止めようとしたのに」

気絶し、数本骨折したワルドはすぐにルイズが呼びつけた水のメイジに治療され、事なき事を得た。

「ワムウも、任務中に味方を怪我させるなんて…あとでキツくいっておかないと」
「いやいや、僕が吹っかけた喧嘩なんだ。返り討ちにあった僕の自業自得さ」
ワルドはなんの恨みもないのか、爽やかに笑いかける。
「まだ出発まで一晩ある。これくらいの傷、全く影響しないさ」
その笑みの隙間からは白い歯が覗けた。

 * * *

「仮面の男、で呼べばよかったわよね?」
「ああ、その通りだ。こんな重要なことを忘れるとはもう年かね?」
フーケは笑みを崩す。
「…わたしの、年が…なんだって?」
「認めたくないものだな!自分自身の、老い故の過ちというものを!」
「この私が『行き遅れ』みてぇーだとぉ!?」
フーケがガタンと立ち上がる。
「確かに聞いたぞこらあああッ!!」
「見せて貰おうか!土くれのフーケの性能とやらを!」
仮面の男も杖を抜く。

結局、数秒後にフーケが折れる。
「どうしたんだい、イラついて、あんたらしくないよ?」
「別になんでもないぞ行き遅れ」

ビキッ、とフーケの眉がつり上がるが、なんとか笑みを崩さない。
「わかったわ、なにも聞かないからぶん殴られる前にとっとと用件話しな」
「あの相棒、とは会ったな、どういった作戦を立てたんだ?」
「使い魔だけかと思ったらおまけまでついて来たって言うんでね、各個撃破することにしたわ。
二束三文で雇った傭兵どもで正面を襲う。そこであんたたちに裏口から逃げてもらう。
そうして残った奴らが前に集中している間に、予想外のところから仕掛ける。あいつの攻撃を
最初に食らった奴を始末する間に私が時間を稼いで、始末し終えたらあいつがそのまま強行突破。
残りの数人を戦闘不能にしている間にルイズとワルドが裏口から逃げてく寸法さ。あんた達の脱出は任せたからね」

ふむ、とワルドが頷く。
「なるほど、奴の能力なら妥当だろう。遠距離戦は向いてないが、背後から急襲をかければ俺くらいでなければ
どうにもならん。脱出に関しては任せてくれたまえ、筋肉バカとガキどもくらい簡単に説得できる…
ところで、最初に仕掛ける相手は誰なんだ?」

フーケは首を傾げる。
「さーね、そのとき一番近くにいる奴じゃないか?一々そこまで決めてないよ」

ワルドは身を乗り出す。
「ならば…先にあの使い魔をやれ、肉片すら残すなよ」
「…なにがあったかしらないけれど、あいつは頼まれなくても残すことはないさ」

 * * *

出かけていったワルドを待つ酒場で待つ一行。
案の定二日酔いのギーシュは飲ませてもらえない。
「酒!飲まずにいられないんだあッ」
「アルビオンまで酒は送迎してくれないわよ」

ドアが開く。
ワルドが入ってくる。
「皆、いいニュースだ」
その言葉にワムウ以外の注目が集まる。
「足りない馬力を僕の魔法で補うということで、交渉が成立した。もっとも、貨物船だが贅沢は言っていられない。
皆、出発の支度をしろ!」

ワルドが声を張り上げた途端、銃声が轟いた。
「ヒャッハッハッ酒だ!女だ!」
「ヒャッハー!ここは通さねえぜ!」
「面倒だ、全員やっちまうぜ!」

貴族の宿「女神の杵柄」の客とは思えない風貌の連中が武器を入り口周辺で振り回している。
蜘蛛の子を散らすように客が逃げていくが、一行は逃げるに逃げられない。
腕はあまりよくないが、一応彼らの近くを銃弾が飛び交っていたからだ。
同じく、奥にいた店長も体を伏せ、震えている。
数人のモヒカンが武器をもってこちらへ向かってくる。

「おら、大人しく死にやがれ!」
しかしワムウは気にも咎めず歩き出す。
「あ?てめぇこのボウガンが目に入らねえのかァーーッ!」

モヒカンはワムウに向かって弓を発射する。
発射した、つもりだった。
「どうだァアアア、でっかい穴があいたぜえええッ!…な、なんでそんな平然としてるんだ…
…なるほどうわははははははは は、これは俺の体でしたァぁぁぁいつのまにかァァァ!!」
発射しようとしたときには彼の腕はなかった。
発射したつもりになったときには彼の胴体は無かった。
話し終えたときには体も残っていなかった。

「参ったな、これでは出発できん」
ワルドが呟く。
「明らかに私たちを狙ってるわね、やっぱりあの物盗りも貴族派が一枚噛んでたのかしら」
ワルドはため息をつき、低い声で言う。
「諸君、すまないが、この目的地には僕とルイズさえ辿り着ければいい。君たちには…」
「囮」
続きをタバサが言う。
「そう、囮をお願いした。僕たちは裏口から出て、そのままアルビオンに出発する」
「ま、仕方ないわね。私たちは何をしにアルビオンに行くかすら知らないんだから」

決まりかけたころ、ワムウが声を出す。
「待て」
「なんだね、ワムウ君」
「その裏口から埠頭までほぼ一直線、敵の狙いは詳しくはわからないが、時間稼ぎならここより船や港を襲うなり
買収した方が確実だろう。つまり、敵の目的は時間稼ぎではなく俺たちの命ないしは身柄、所持品ということだ」

ワルドが眉をひそめる。
「なにがいいたい?急いでいるんだ、手短に頼むよ」
「ここを襲うと決めた以上、裏口にまで気を回さないということは無いだろう。それに、その裏口から埠頭までは
暗い倉庫街、暗殺にはもってこいだ。人間の目が4つでは到底足らんな。エシディシ様も言っていた、包囲した際には
一つだけ逃げ道を残し、そこを叩くとな。誰だってそうする、俺だってそうする」
「じゃあ、どうしろって言うんだね?」
苛ついたようにワルドが尋ねる。

「突破だ、俺が少々暴れればこの程度数分でケリがつく。暗殺されるのを防ぐには目が多いほうがいい。
戦力をここに集中させているなら、なおさらだ。戦力で勝っているのに決戦から逃げるのは間違いだろう」
「な…」

ワムウは有無を言わさず銃弾の雨と敵の森の中に突っ込んでいく。
銃弾が当たるものの、皮膚が弾き返し、射手をものの数秒で何人も食い尽くす。
「ひいいいッ!」
「あべしッ!」
「ヤッダバアアアアアッ!」
「もう一度…ぬくもりを…」

店内は阿鼻叫喚の様相を示す。

そして、二分後には、襲ってきた敵は一部しか残っていなかった。数ではなく、体積でだ。
たぶん数ヶ月は営業停止確実だろう。

「では、行くぞ」
行こうとしたワムウに、店主が感謝する。
「あ、ありがとうございます…この店は、祖父の代から受け継いでいて…」
ワムウは無視し、背中を見せ、店を出ようとする。
そのワムウに店主は礼をし、頭を下げる。

その瞬間、店主の頭が崩れ、ワムウを黄色い肉が襲った。
「この田吾作がァーーッ!多少心得があるらしいが、この『イエローテンパランス』に敵は無ァいいいッ!」
ワムウを黄色い肉が襲うと同時に、屋根が崩れ落ちる。
「落石注意報だよッ!」
岩石で穴だらけになった店をフーケのゴーレムが見下ろしていた。


To be continued.


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー