ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-28

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匿名ユーザー

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「ヴァリエールの名に懸けて必ずお前を八つ裂きにしてやる!!」
いつもの見慣れた自分の部屋、わたしはベッドから身を起こした。
「・・・夢か」
ドン ドン ドン ガチャガチャ
乱暴にノックされ、ドアを開けようとする音が聞こえた。
しかし、鍵をしっかりとかけているのでドアは開かない。
カチリ ガチャ
鍵が勝手に外され、返事も待たずにドアが開けられた。
こんな事をする奴は一人しかいない。
「ちょっとキュルケ『アンロック』は止めてって何時も言ってんでしょーが」
わたしの文句にかまわずにキュルケはズカズカと部屋に入ってきた。
「あのね、朝早くから『八つ裂きにしてやる』なんて聞かされた日には
何事かと思うじゃない」
「あ・・・ご、ごめん。寝言、聞こえちゃってた?」
「寝言ォ?あんた思いっきり叫んでたわよ」
「だから、それは謝るわよ。起こしちゃったみたいね」
わたしは素直に頭を下げた。完全にこちらが悪いのだ。
「いや、それはいいんだけどね」
急にキュルケの態度がしおらしくなった。
「一体『誰を』八つ裂きにするの?」
キュルケが上目遣いに聞いてきた。
「誰って、あなたには関係ないでしょ」
そう、これは、わたしの問題。
「ひょっとして、あの『子爵さま』なの?」
ワルドの事を言っているのだろう。
「・・・違うわ」
キュルケが目をパチクリとさせた。
「ありゃ、違うの?」
「違うわ」
わたしは即答する。
「じゃあ誰よ?」
キュルケがしつこく訊ねてくる。
「それは・・・」
「それは?」
キュルケが続きを促すように復唱する。
「オ・・・」
「オ?」
キュルケが身をググッと前にのめり込ませてきた。
「思い出せない」
キュルケが道化師ばりにズッコケた。
「下着、見えてるわよ」
「おちょくってんの、あんたわー!」
キュルケが怒って出て行った後、身支度を整えながらデルフリンガーに問う。
「ねえ、デルフリンガー」
「なんだ?」
「わたし、寝言を言ってたのよね?」
「みてえだな」
「『誰を』八つ裂きにするか言って無かった?」
「いや、名前は言って無かったな」
「そう」
わたしは、一体『誰を』八つ裂きにしようとしていたのだろう。
そもそも何故そんな事をしようと思ったんだろう・・・思い出せない。
「まあ、何かの拍子で思い出すか・・・」
「なあ、貴族の娘っ子」
「なによ?」
「なんで俺っちを持ってんだ、授業に行くだけだろ?」
「いいじゃない別に、倉庫に入りたいわけ?」
「いや、そういうワケじゃネーけど・・・」
デルフリンガーはプロシュートが持っていた数少ない私物の一つ・・・
わたしはプロシュートが居ないことを常に戒めるためにデルフリンガーを
杖代わりに突いて持ち歩いていた。

教室に入ると、クラスメイトたちが取り囲んだ。
顔を見渡すと、いつものバカにしたような表情ではなく
何か聞きたそうな顔をしてた。
タバサ、キュルケ、ギーシュも同じように取り囲まれていた。
「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでいったいどこに行っていたの?」
モンモランシーが腕を組んで話しかけてきた。
どうやら、ワルドと出発するところを何人かに見られてたみたいね。
タバサは何事も無かった様にじっと本を読んでいる。マイペースな子ね。
キュルケは化粧を直している。あんた人前で・・・娼婦か?
ギーシュは足を組み人差し指を立て上機嫌に笑っていた。
      • しょうがないわね。
わたしは人壁をかきわけギーシュの頬をひっぱたいた。
「なにをするんだね!」
「軽々しくしゃべらないでよね」
わたしは真剣な顔でギーシュに頼んだ。
「・・・すまない、調子に乗りすぎてしまったようだ」
ギーシュは姿勢を正し黙ってしまった。
しかし、その事が逆に好奇心をツンツンと刺激してしまったみたいだ。
再び、わたしを取り囲みうるさく騒ぎはじめた。
「ルイズ!ルイズ!いったい何があったんだよ!」
「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれて、王宮までお使いに行ってた
だけよ。ねえギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」
ギーシュは素直に頷いた。べネ!(良し!)
キュルケは意味深な微笑を浮かべた。このツェルプトーは・・・。
タバサはじっと本を読んでいた。ホント、マイペースな子ね。
クラスメイトたちはつまらなそうに、負け惜しみを並べながら席へと戻っていく。
「そうよねゼロのルイズだもんね、魔法のできないあの子に何か大きな手柄が
立てられるなんて思えないわ!」
モンモランシーがイヤミったらしく言った。我慢我慢。
「フーケを捕まえたのだって、あなたじゃなく、あの怖い使い魔にまかせっきり
だったんじゃないの?」
わたしが言い返さない事をいい事に言いたい放題にいってくれるわね。
「だいたい、何であなたがあの使い魔の剣を持っているのよ?」
「預かっているのよ」
「なんで?」
キュルケといいモンモランシーといい、しつこく食いついてくるわね。
「死んだのよ・・・だから、わたしが持っているの」
どうせ隠しても、いずれバレるのだから言ってやった。
「へえ」
モンモランシーは目を細め口元をつり上らせた。
「ひょっとして殺されたのかしら、あの使い魔、ギーシュを倒したぐらいで調子に
乗ってたんじゃないの?」
イマ ナンテ イッタノ コイツ
「取り消しなさい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ひっ」
モンモランシーが悲鳴を上げた。
「プロシュートの侮辱を取り消しなさいって言ってんのよ」
「睨まないで、睨まないでよ」
モンモランシーが首を振りながら後ずさる。
「あんた、わたしをなめてんの!突っ掛かってきておいて今更被害者気取り?」
「ひっ、その『目』で睨まないで」
「謝りなさいって言ってんでしょうが!」
怯えるだけで、ちっとも謝らないモンモランシーに
だんだん我慢がならなくなってきた。
キュルケがわたしとモンモランシーの間に割って入ってきた。
「ちょっとルイズ、あんたマジで恐いわよ。その目、まるでダーリンみたいよ」
プロシュート?
「あははははははははははははは」
何言ってるのコイツ。突然に笑い出した、わたしを間の抜けた顔で黙って見る
クラスメイトが更に可笑しかった。
「ははははははははは、ふざけないで!!」
わたしはキュルケに一喝した。
「ルッ、ルイズ?」
「キュルケ、あんたの目は節穴なの、わたしの目がプロシュートみたいですって
冗談でも二度と言わないで!!」
「ご、ごめん悪かったわルイズ」
やけに素直に謝るキュルケを置いて、わたしはモンモランシーに向き直した。
「さて、謝ってもらおうかしらモンモランシー」
モンモランシーは涙目になりながら杖を抜いていた。
「なによゼロのルイズのくせに。ちょっと恐い目ができるからって、
いい気にならないで」
魔法で黙らせるつもり?上等じゃない。
「モンモランシー頭上、二メイル」
「へ?」
わたしは素早く杖を抜き呪文を詠唱する。
「ファイアーボール」
狙い通りにモンモランシーの頭上で爆発が起こる。
爆発によりクラスメイトたちは耳を塞ぎしゃがみこんだ。
モンモランシーは腰が抜けたのかヘナヘナと座り込んだ。
「どうするのモンモランシー。あなたが、わたしを溺れさせるのが早いか。
わたしが、あなたを爆発させるのが早いか試してみる?」
モンモランシーが顔を見上げ睨みつけてきた。
「わたしの方が早いわ。わたしは、たった今、唱え終わったんですもの」
モンモランシーが杖を振るうと、わたしの顔が水で覆われた。
「ゴボッ」
なんたる失態、威嚇せずに当てとけば良かったわ。
どうする?
デルフリンガーなら、この水を消すことが出来る!
鞘から外し、刃を水に触れさせれば・・・
「ほほほ、どうしたのゼロのルイズ。まともに喋る事も出来ないみたいね」
モンモランシーが立ち上がり、勝ち誇るように笑う。
「頭を下げなさい。そうすれば『許して』あげるわ」
『許す』ですって?これで頭を下げることが出来なくなったわ。
それは、わたしの『誇り』が許さない。

頭が下げられないのなら剣を持ち上げれば・・・
重い・・・うまく力が入らない。
「ガボッ」
わたしはデルフリンガーを手放し、水をかき出そうと手を突っ込む。
バシャバシャと水をかき出すが、まったく効果が無かった。
「ほほほ、不様ねゼロのルイズ。さあ、頭を下げなさい」
誰が下げるもんですか・・・息が出来ない・・・
いや、息を『吸う事』ができない。
『吐く事』は出来る・・・そして呪文を唱える事も・・・
「イン・・・エグズ・・・ベッド・・・ブレイヴ・・ブァイアボール」
わたしは自分に向けて杖を振る。

どぱん

水表面に爆発が起こり、わたしは机に寄り掛かった。
すううううううぅ、空気がこんなにも旨かったなんて知らなかったわ。
「な・な・てま・を」
モンモランシーが目を見開き口をパクパクとさせていた。
なんてまねを?
よく聞こえないわ、耳が潰れたかしら・・・
「さて今度はこちらの番ね『覚悟』はいいかしらモンモランシー?」
モンモランシーは口をパクパクさせている。
ごめんなさい?許して?
「ごめん、聞こえないわ」
『ヤル』と心の中で思ったのならスデに、その行動は完了している!
「ファイアーボール」
モンモランシーの顔面が爆発した。
いや、正確に言うとモンモランシーの目の前で爆発が起こり直撃した。
顔面血まみれになりながらモンモランシーは倒れた。
すぐさまギーシュが駆け寄り、モンモランシーの顔にハンカチを被せ
お姫様抱っこをした。
ギーシュが黙って、こちらを見つめている。
「どうするのギーシュ?敵討ちってんなら受けて立つわよ」
もう後には引けない・・・トコトンやってやるわ。
ギーシュの目には敵意が無かった・・・
黙って首を横に振り、ペコリと頭を下げてから教室から出て行った。
わたしも治癒を受ける為に、おぼつかない足取りで医務室に向かった。

次の日から、わたしに面と向かって『ゼロ』と呼ぶ者はいなくなった。


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