ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-44

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匿名ユーザー

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遂に艦隊出撃し、どこか人が少なくなったような首都トリスタニアをお馴染みのローブで身を包み歩いているのは、ご存知…もとい久しぶりのフーケだ。
「はぁ…わたしもヤキが回ったかね」
そう呟いたのは、今頃部隊を率いてある場所に向かっているある男のせいだ。
フーケ自身は、裏の情報を生かしトリステインの内情を探るという事で別に動いていたが、正直乗り気ではない。
一応の義理はあっても義務は無いし、あの男を嫌悪しているというのが大きいだろうが、それでもやらなければ己の身が危ないのだ。

そろそろ、合流するかとして人通りの少なくなった通りを歩いていると、後ろから肩に手を置かれた。
ロングビル時代の習慣で蹴りが飛びそうになったが、目立つと不味いので耐える。
「悪いけど、わたしはあんたみたいなヤツは知らないよ。向こうへ行きな。蹴り殺すよ」
少なくともこんなヤツに肩に手をおかれる覚えは無い。
適当にあしらったつもりだったが、その手に力が篭る。
杖を引き抜き、追い散らそうかと思ったが、そうする前に相手が声を出したが…フーケの頭の中に絶望ォォォォだねッ!という妙な髪形の男の声が響いた。
「よォーーー会いたかったぜぇ~?フーケェ」
その声がフーケには地獄の門番の声に聞こえた程だ。
恐る恐る後ろを振り向きフードを被った相手の顔を見て、相手がそれを外した瞬間、息が止まる。
胃が痙攣し反吐を吐く一歩手前だ。
だが、それでも反吐の代わりに声を吐き出そうとするが巧くいかない。
「で、で、で、で、ででででで…」
「あ?何だよ」
「出たァーーーー!!」
「ルセーな。人を化物みたいに扱うんじゃねぇ」
やっとの思いで叫びと共に息を吐き出したが、想定外にも程がある。
「な…なんで、こんな所に…あの娘と一緒にアルビオンに……あぐ!」
「こんな所で何叫んでんだてめーは。そういう事は向こうで話しようや……な?」
かなりうろたえていたフーケが大人しくなったが腹が少し凹んでいる。
グレイトフル・デッドで殴ったためだ。
本気で吐きそうなフーケを半分引き摺りながら人気の無い場所へ連れて行く。
さながら事務所の奥に連れて行かれる債権者のようだ。
人は居たが、全員関わる気は無いようで誰も寄ってこない。
都会が寒いのはどこでも同じである。


「ゲホ…!…いきなり何すんだい!」
「あんな場所で騒いだら困るのはオメーだろ?感謝しろよ」
確かにそうだ。未だフーケの首に掛けられた懸賞金は解かれてはいない。
もっとも、殴る必要も無いのだが。
「…そもそも、なんであんたがこんな所に居るのさ」
「使い魔ってのクビになったからな。仕事探してんだよ」
言いながらスデにルーンの消失している左手を見せたが、半信半疑っぽい。
「馬鹿言うんじゃないよ。契約ってのは死なないと解けないんだ。見たところ、死体ってわけでもないし」
「死人か。ま…似たようなもんだろ」
実際の所イタリアでは死亡扱いなので一回死んでいると言ってもいい。

「で、仕事って何さ」
「クロムウェルって奴を殺りに行くんだが…ワルドと組んでたって事は『レコン・キスタ』だよな。アルビオンの道案内しろ」
「…は?」
「いや、アルビオンに行く方法は分からねーわ。行けたとしても地理が分かんねーわで、お前に会えて助かったぜ」
何言ってんの?この人。という目を向けてきているが、無理も無い。
「聞こえなかったか?オメーの組織の頭を暗殺するから案内しろ。って事だ」
「…何言ってるのか分かってるのかい?つまり、あたしは敵って事だよ」
最初こそテンパっていたものの、そこは一級の盗賊。
暗殺という言葉を聞いて顔付きが変わった。
「その態度、聞く耳持たない。…って事か?」
「他を当たりなよ。せいぜい無駄な努力でもするんだね」
まぁ無理も無い。
敵にいきなり協力しろと言ってするやつは居ない。

「仕方ねーな……ああ、言い忘れたが肌の手入れはしといた方がいいぞ。『歳』取ると…シワが出るって言うからよ……」
「わたしはまだ23だよ!シワなんて……ハッ!」
そこまで言うと思い出した。
こいつの…!この男の魔法を越えた能力をッ!
(ま…まさか…)
急いで杖を取り出し、錬金で鉄板を作り覗き込んだが本気でヤバイと思った!
「と…歳を取っているッ!」
「じゃあな。『そのまま』元気でやれよ」
半ば唖然とするフーケを後にとっととその場を後にする。
無論、直で適度に老化させただけとはいえ、永久持続するわけではない。
スタンド能力を詳しく知らないからこそ通用する…ハッタリである。
「ま、待ちなよ!話は最後まで…」
やっとこさ我に返ったが、ぶっちゃけもう居ない。
スデにフーケの遥か先を後ろ手を振りながら歩いている。

一分後
「どうした?そんぐらい走っただけで息切れするたぁスタミナ不足だな」
「ハァー…ハァー…待ちな…って言ってるだろ…!」
「おいおい、聞く耳持たないんじゃあねぇのか?」
程よく50手前ぐらいまで老化していたフーケが猛ダッシュでプロシュートを追いかけていたが
やはり老化の影響でもうバテて息が上がっている。
広域老化進行中なら死んでもいいぐらいなのだが、そう考えるとまだ運が良い方だろう。

「き、気が変わっただけだよ。案内するよ。アルビオンをね」
職業柄、多少の脅しや尋問などには意にも介さないだろうが
この場合は別だ。
キュルケにおばさんと言われてはいるが、まだ23。
言わば『絶好調ッ!誰も僕を止める事はできないッ』的な年齢である。
だからこそ、この老化の能力はキツイ。女性であるならなおさらだ。
『レコン・キスタ』にもそれ程拘っていないのもあるが、あったとしても多分結果は同じだ。

「いやいや、オレとしても無理言ったと思うしな。オメーにも都合があるだろうし、残念だが他を当たるよ」
多少演技掛かっているが、追い込む為の一手だ。
普段のフーケなら通用しないだろうが、ディ・モールトパニくっているので、こうなればトコトン追い込んで利用しやすくすることにした。
まさに外道…いや、まさにギャング!
「……あ……ない……」
「何ィ?聞こえねーなァーーー」
なおも先へ進もうとしたが
フーケの呟くような言葉に対し、某六聖拳伝承者のように返す。
女だろうが、敵であるならば手加減無用というだけに一切の容赦は無い。
スト様もビックリだ。
「わ…わたしに、アルビオンを案内させてくださいッ!!」
「そこまで言われちゃあな。しっかり頼むぜ」
逆に向こうから頼んできたところで、あっさりと承諾の意を示す。
テープがあれば録音しておくとこだが、無いので仕方ない。
手のひら返したように態度を変えたプロシュートにハメられた事に今更気付いたフーケだがもう遅い。
強要され渋々承諾したというのなら、途中で反抗する機を窺う気にもなるが
ハメられたとはいえ自分から頼み込む形になってしまったのでは、精神的な残り方が違う。
黄金や漆黒と呼ばれるような精神を持っていれば別だろうが、生憎とフーケはそこまでは持っていない。

「こ、この…悪魔が憑いてるんじゃなくて悪魔そのものだよ……」
地面に手と膝をつき、力なく顔を地面に向けているフーケがやっとの思いで言葉を吐き出したが
敵組織を広域老化でまとめて潰した時なぞ、悪魔はもちろん死神だの何だの言われているので今更気にしたりはしない。
当の『悪魔』は淡々と返すだけだ。
「ああ、よく言われる」

猫に弄ばれる鼠と同じだ。
相手の気分しだいでどうにでもなる。
窮鼠猫を噛むと言うように、隙を見て魔法で攻撃ぐらいはできるだろうが
所詮、鼠の攻撃。少しひるむぐらいですぐに追いつかれる。
そうすれば老化という、ある意味死ぬより最悪な能力が待っている。
まして、射程は200メートル程もある。到底逃げ切れるものではない。

完全に何かを諦めたような目でこっちを見てきているが、全く悪いとは思っていない。
一応、殺る、殺られるを体験した仲なので、殺らないだけマシというヤツだ。

「で…案内するのはいいとして、アルビオンへはどうやって行くつもりだい?」
「その辺りも期待してんだがな。どうやってここまで来たんだよ」
「こっちはワルド連れての隠密。行きだけの一方通行だよ」
「あのヤローか…オメー確か盗賊だったよな。裏のルートとかで無いのか?」
「無理だね。あったとしても、これからドンパチやろうって国に好き好んで行くやつが居るもんか」
「あ?オメーの帰りはどうすんだ。大体、何しにきたんだよ」
戦時とはいえ、フーケが出たとなれば追われる事は確実である。
そんな国に目的も無しにやってくるとは思えない。
「ヤボ用だよ。あんたが気にする事じゃないさ」
「まぁいいがな…仕方ねぇ、ジジイに頼むとするか。あんだけ歳食ってりゃ何か知ってんだろ。行くぜフーケ」
あのジジイになら知られても、何とかなるだろうという事からだったが言いながら後ろを振り向くと、見た瞬間速攻でフーケの肩を掴んだ。
「おい、テメー…言った傍から何逃げようとしてんだ」
「い、いや…あの学院に行くのはちょっとね」
あの場所で一犯罪やらかしたのだから、行きたくないのは当然だが少しばかり様子が妙だ。
「…何か妙だな。何かあんな?おい」
「あー…いや」
ハッキリ言わないので、顔を近付け尋問する。
正直距離が近いが、ペッシ的対応である。

「……メンヌヴィルって聞いたことないかい?」
「知らねーな。誰だよ」
「白炎のメンヌヴィル。伝説とまで言われてる傭兵で戦場とは言え楽しみながら人を焼き殺すような外道さ。そうさね、あんたがあの森の中でわたしの腕を掴んだ時のような目をしてたよ」
そうは言ったがフーケ自身はメンヴィルとプロシュートが似ているっちゃあ似ているが、全く同じだとは思っていない。
メンヌヴィルというのは、人を笑いながら殺せるようなヤツと見たが、プロシュートはそうではないと見ている。
必要があれば老若男女区別なく殺るという点では違い無いだろうが、少なくとも楽しんだりはしていない。
もっとも、『ブッ殺す』と心の中で思った時点で足元に死体が転がっているような男とどっちがマシと言われれば迷うとこだが。

「あいつは、こっちに来る前に、オーク鬼を20匹焼いたんだ。
  楽しそうに話してくれたよ、人が好きだから焼く。その焼ける匂いが興奮させるんだと。わたしとした事が背筋が寒くなったよ…あれは」
「で?そのメンヌヴィルがどうした」
「……あー、もう仕方ない、言ってやるよ。
  …今、学院を襲ってるのがメンヌヴィルの部隊なんだ。人質にするつもりさ」
そう聞いたが、中々良い手だと思う。
戦争なんだから、何でもアリだ。卑怯もクソも無い。やられた方が悪いという価値観だけに、全く敵対心というものが沸いてこない。

「そうか。ならすぐに人が死ぬ心配はねーな。行くぜ、おい」
「…やめときなよ。助けに行くつもりなんだろうけど」
「誰が助けに行くなんざつったよ。アルビオンに行く為にジジイの手を借りたいが敵が居るから排除する。シンプルで良いじゃあねーか」
「行きたいなら一人で行っとくれ。わたしは死ぬ気は無…」
踵を返そうとしたフーケだが、何かにガッシリと掴まれて動けないでいる。
プロシュートの両手は空いているし、周りに人は居ない。
「そうか、なら選ばせてやるよ。オレと学院に乗り込むか…ここで老化するかだ。オレはどっちでもいいぜ?」
「…ッ!」
選択とあるが、行くも地獄、退くも地獄というやつだ。
ベネ(良し)という選択肢は一切存在しない。
「こ…このドSめ…」
ドSと言ったが、ギャングであるからには自然とそうなるものである。
ブチャラティでさえ、必要があればジッパーを使い尋問をしている。

フーケがカタギであれば別にこうもしないが、メイジであり、敵であるからには容赦はしない。
第一、存在を知られたからには、余計な事を…特にワルドあたりに知られたらやりにくくなる。
一段落付くまで手放す気は全く無い。

「分かったよ!行けばいいんだろ!行けば!」
半ばヤケクソだが、まだ学院に乗り込むほうが先があると判断したようだ。
「心配すんな。白炎って事は火だろ?なら一瞬でカタが付く。オメーの出番はねーよ」
無論、巻き込むだろうが仕方の無い犠牲というやつだ。
巻き込むとは言っても馬鹿みたいに火を放っていなければ、解除すれば十分助かる。
敵が死ななくても、倒れている間に杖をヘシ折るか殺ってしまえば何も問題無い。
(火だと都合がいい…どういう事だ?あの宿の時、偏在はともかく一緒に居たタバサって娘は老化してなかったね。確か二つ名が…)

「雪風…か。そうか、あんたの妙な力は温度で変わるんだ。周りの温度が低ければ効かない。そうだろ?」
「50点ってとこだな。だが、流石だな。名うての盗賊ってだけあった中々の洞察力だよ」
「ま、まだ何かあるのかい…」
「何、そんな大した違いじゃねーよ。周りの温度じゃあなくて、体温ってとこだがな」
「どう違うんだよ」
「体温だからな、氷かなんかで冷やせばそれでいい。ま…動き回っちまえば関係なくなるが」
「…そんな弱点話していいのかい?情報持ってクロムウェルのとこに駆け込むかもしれないよ」
「困るのはオレだしな。オメーを巻き込んで足手まといになられる方が厄介だ。それにだ…」
「へぇ、言ってくれるね」
手の内をある程度晒した事に多少安堵し、メンヌヴィルと組むよりは良いかと思ってきたフーケだったが…甘かった。
フーケの肩をガッシリとグレイトフル・デッドで掴み、スゴ味と冷静さと殺意が混じった声で言い放つ。
「裏切ろうとしたら直を叩き込めばいいだけだからよォ。直触りは…関係無いんだぜ…?」
「あ…あ…」
なおも続けるが、フーケは聞いちゃいない。
「オレに直を使わせないようにしてくれる事を期待してんぜ。えぇ?おい」
そう言ってグレイトフル・デッドの手の力を強めた瞬間、人気の無い裏路地に若い女の叫びが響た。


プロシュート兄貴&フーケ ― チーム『はぐれ犯罪者コンビ』ほぼ一方的に結成


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