ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ-11

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匿名ユーザー

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あ、ありのまま今起こったことを話す!

僕は、愛しのモンモランシーからもらった香水をうっかり落としてしまった。

その日は良い陽気で、友人達との会話も弾んでたしワインもおいしかった。
だけどまだそんなドジ踏むほど酔っちゃいない…!
だから、落とした事に関して僕に非は無いと先に言わせて貰おう。あえて言うならこのポケットが悪いんだ!

それはともかくなんだ。
さっさと拾いたいところだったけど、実は僕は浮気の真っ最中なので不用意に拾う事は出来ない。
まだ手を握った位だが、貴族としてオトコとして可愛らしいシニョリーナを泣かすわけにはいかない。

その香水が大切な物であることも事実!
だが…大事なものだからこそ不用意に拾う事はできない。
大事な物だからってうっかり拾って浮気がばれるなんてことになったら…正に本末転倒だからね。

僕はそう思いそ知らぬふりで友人達と談笑を続ける。
先ほど言った理由から談笑を続けながらも僕がどうしようかと悩みだした瞬間、床に落ちた香水の前に亀が通りかかった。
その亀には見覚えがあった。
何せその亀の甲羅には鍵が刺さっていたからね。

そう…確かコイツは。
そうだ、ゼロのルイズの亀だ!

だが亀に何ができるわけでもない。
と、僕が思った瞬間に目の前に香水の瓶が現れた。

「おい、落としたぜ」

その亀は間違いなく僕に言った。
亀のくせにレビテーションを使って僕の前に香水瓶を差し出したことからそれは間違いないだろう。

「?何の事だね?僕の物ではないが…」

咄嗟に僕は嘘をついた。
苦しいとは思うが、この場さえ切り抜ければどーとでもなる!
見た目どおり、亀は間抜けだった。
敬虔な教徒である僕にはブリミルのご加護があるらしい。
内心、僕は笑みを浮かべていた。それが顔に出てくるのを抑えようとしたが、駄目だ。
どうしても笑顔になってしまう。

「そうか。確かに女ものっぽいしな…悪かったな」

亀がしゃべるのには驚かされたが、僕の期待する返事を聞いた安堵から笑ってそれを許し後で回収する事にした。
やれやれ、亀が間抜けで助かったよ。

後は機会を窺い取り戻すだけだ。
友人達との談笑に戻りながら僕は亀がどうするか聞き耳を立てていた。

亀がメイドを呼び止める声が背中に聞こえた。

いいぞ!気が効くじゃあないか!

僕はそう思った。なのに…!

メイドはまぁ、平民にしては中々可愛いんじゃないかな?
亀相手にも笑顔を見せてしっかり相手をするのはちょっとだけ好感が持てるじゃないか。

「亀なのにしゃべれるなんて凄いですね。それで御用はなんでしょうか?」

その亀は…!メイドにこう言いやがったんだ!

「あぁ、コイツが落ちててな。誰かが踏んだり蹴って割っちまっても手間だし、すまねぇがコイツをゴミ箱に捨てといてくれないか?」
「は「貴様何をするだー!」」

しまった!
思わず声を張り上げたせいで注目が集まるのを感じる!
不味い、不味いぞ!

狼狽しながらサッと動かした視線には興味本位にこちらを見つめる同級生、下級生、上級生までいる!
…僕は震える指で髪をかきあげた。それを目ざとく見ていた友人達がニヤニヤしている気がしたが、黙っているなら何も言わない。
だから待っていてくれ。

「なんだよ?アンタのじゃないんだろ?」

亀の指摘に僕は言葉に詰まる。
確かにそう言ったが、ちょっと位感づいてくれたっていいじゃないか?
思っても仕方が無い…僕はこれ以上注目を集めずにすませようと一つ咳払いをした。

「も、勿論だ。だが「あぁ…なるほど。わかったぜ」」

どもる僕を見ていた亀は、何故か合点が行ったような様子でメイドから瓶を返してもらう。
おお!もしかして察してくれたのか!?

一気に好転した事態に僕は余裕を取り戻す。
なんだつまらない、周囲からそんな声が聞こえたような気がするがしったこっちゃない。
僕は震えの止まった手でワインを飲んだ。

渇いた喉に染み渡る良い味だった。

「助かったぜ。言われなければひどい事をしちまうところだった…あんたは紳士のようだな。私はカメナレフと呼ばれている。よかったら名前を聞かせてくれないか?」

難関を乗り越えて一服する僕にそう言葉がかけられた。
言ったのはルイズの亀。
散りそうだった好奇の視線が引き止められてしまった。

だが、世辞を言われて悪い気はしない。
それにコイツには助けてもらうことになるわけだしね、僕は亀相手にだが、奇妙な友情が芽生えるの感じた。
名前を教えてやってもいいんじゃないかって位にはね。

「何、当然のことしただけさ。僕はギーシュ。武門の家グラモン家」
「ギーシュか、もう一度礼を言っておくぜ!」
「あぁ、ルイズの使い魔君。いいんダヨ別に。貴族として当然ことだからね」

心のどこかでまだ動揺してしまっていたらしい。
酔っ払ったような語調で言ってしまったが、間抜けな亀は気付かなかった。フフッいいぞ。凄くいい!
亀はまたレビテーションのような力を使って香水を運んでいく。


それにまた驚かされるが、いやいやお陰で助かっ…

「貴様っ!何のつもりだ!?」
「あん?ギーシュ。お前が教えてくれたんじゃねーか」

なんと、亀はテラスに行き香水の中身を捨てやがった!
奴がわけのわからないことを言う間にも、香水の中身が…あぁ!
モンモランシーの僕への気持がこもっているせいか!?

言葉では言い表せないほどに…香水が、モンモランシーに貰った香水が!
風に舞い光を受けて美しく散っていく。

僕の口は、間抜けに開いていたことだろう。追い討ちをかけるように亀が言う。

「ゴミはゴミ箱に捨てる。だが容器の中身は空にする…誰だってそーする」

重々しい口調、しかも断言している!
なんだコイツ?

僕の中に流れるグラモンの血が、亀の口調に込められた真意を嗅ぎ取ったのだろう。
亀の言葉に、僕は知らず一歩退いて椅子にぶつかった。

「時々忘れちまうんだが、ギーシュ。お前が教えてくれて助かったぜ」

こ、コイツ何をいってるんだ?
回収の時そんな作法があるなど聞いたことがない!
この亀の故郷の作法だとでも言うのか?
い、いや…それこそまさかだ。亀の世界だぞ?
ということは…つまりコイツは、天然とか、うっかりなんてちゃちなもんじゃない…!

はっきりと浮かんだその考えに、僕はもう一歩退いてしまい…椅子が倒れたが、僕はそんなものに構う余裕など無かった。

こ、コイツ。間抜けと思っていたが、まさか!

冷や汗が流れる度に、僕の中でその思いつきが正解だという思いが強くなっていく。
戦慄する僕に、気の良さそうな態度で言い終えた亀は、集まった観衆の好奇の視線をより一層集めようとするかのように、メイドへ空になった香水のビンを投げた。

空中で回転するビンはスローに見え…その間に僕の耳にははっきりと周りの囁き声が聞こえた。

嫌になるほどはっきりとだ!

「おい、あれってまさかミスモンモランシーの?」

ほら、もう誰かの囁き声が聞こえる。し、しかし誰だ!? 何故モンモランシーの物だと断言できる!?

疑問が一瞬僕の頭を過ぎったが、僕は狼狽する心をなんとか抑えようと必死だったのですぐにそれは忘れてしまった。
しかもその試みは無駄だった。忙しく脈打つ心臓の音はもはや静まる事を忘れていた。

もう僕のシャツは汗びっしょりで…足も震えている。
頼む。言わないでくれ。お願いだ…!
僕は自然と始祖ブリミルに祈りを捧げていた。
神に縋るのは自分に出来る事を全てやりつくした後、そう教えられていたが、今が正にその時だった。

僕にはもう…

もう…縋るものがそれしか残っていないんだ……

僕が何かを言おうと、更に泥沼になるだけじゃあないのか?
そんな諦めの言葉が僕の胸を埋め尽くしていて気の利いた言葉が浮かんでこない。

「え?あれ落としたのギーシュじゃないのか?」

ついに…ついに誰かが言ってしまった。
知らず握り締めていた手から力が抜けて解けていく。

僕は『終わった。何もかも』と心の中で呟き…訪れてしまった終わり、既に心のどこかで覚悟していた恋の終わりをどこか心穏やかに迎えて肩を落とす。
防ぎたかった最悪の事態に陥ってしまった、そう思った。

だが…


本当の最悪とはこの先にあったんだ。


まだこの程度なら振られるだけ…そう言ってしまっても、いい!と思うほどの最悪が、どこかから囁かれた。

「わかったぜ…これはつまり!ギーシュはモンモランシーと付き合ってたけどゴミみたいに捨てるって事なんだよ!」

は?

最初、それを聞いた僕の頭は真っ白になった。

周りにいる観衆達もそうだっただろう。だが彼らはすぐに立ち直った。

そうすぐに…

「「「「ナナナナンダッテー!」」」」

思考を停止した僕を置いてけぼりにして、細波のように静に…だが深く素早くその出鱈目は浸透していった。
僕は違うと否定したかった。

だがそれよりも先に誰かが合点がいったとでも言いたげな重々しい声で言う。

「なるほど…全ては、ギーシュのパフォーマンスって事か…それなら説明がつく。こんな人目につく場所…それも昼食が終わったばかり、皆が談笑を楽しもうかって時の食堂で香水のビンを落とすなんてありえないからな」
「だが君。よく考えても見てくれたまえ。普通、この衆人環境の中で中身まで捨てるか? 成る程…これが正に外道って事か。吐き気を催すぜ。昼食の余韻が台無しだ」

皆の気持を代弁する言葉だったのだろう。
吐き気を催す! 
その言葉と共に、周囲の視線は急速に冷え、冷たい熱とでも言うような恐ろしいものを帯びていった。

ち、違う!違うんだ!

真っ青になりながら周囲を見渡すが、既に周りの視線は極低温!
ブチ砕けてしまいそうな寒さの中、僕はその中に、美しいものを見たんだ。
それは友人達に守られたモンモランシー…僕の愛しいあの人が、見事な縦ロールを風に靡かせ去っていく様子が見えた。
追いかけようとするが、亀が視界に入り僕は足を止めてしまった。

しかもそこへ―「ギーシュ様っ!」

「ゲ、ケティ…」

僕の止まっていた足は、モンモランシーを追いかける所か逆に…一歩退いてしまった!
それが、またいけなかったんだ!

まだ手しか握った事の無い浮気相手が僕に抱きついてくる!
柔らかい感触は嬉しい…それだけは胸を張って言える。
そこに関しては、僕に嘘は無い。紛れも無い真実がそこにはある…着やせするタイプと見た!

だが…だが今はもう少し、もう少しだけでいいんだ! 空気読んでくれ!

「申し訳ありません!私、貴方を勘違いしておりました…貴方は、ミスモンモランシーと付き合っている、と…」
「あ?え?」

ば、ばれてたの?

そう思いながら周りの視線に怯える僕は視界に収まったままだった亀のこう、僕も初めて向けられたんでよくわからないんだが…殺気立った視線を感じた。
亀は、先ほどの場所でまだ僕をジッと見ている。
ふいに僕は気付いた。

コイツ、やはり計算か?

僕は悔しさに歯を強くかみ締めていた。
ケティはそんな僕を邪魔するように…自分の存在を主張するように更に力を込めて抱きついてきた。

「そんな私の為にこんなことを…! あぁ、貴方が私だけを持ってくださっていることが、頭でなく心で理解できましたわ!」

OK落ち着くんだ。ギーシュ、父上も言ってたじゃあないか!
たとえ一見四面楚歌な事態であろうと、どこかに希望が「最低だな、ギーシュ。いや、ここはあえてゲーシュと呼ばせてもらおう! うっかり騙されたぜ…まさかここまで計算してたなんてな。恐ろしい野郎だぜ」

冷静になろうとする僕にかけられた侮蔑の言葉は、間違いなく亀から発せられていた。

…ハハ、もう間違いない。

顔を俯かせ、僕は笑っていた。
ケティが不思議そうな顔をして、僕を見つめてくる。
だがそんなものはどうでもよかった。

コイツ計算だ。この食堂で、敵はコイツだったんだ!

間抜けな亀なんかじゃなあない!

恐るべき敵だったんだ!

「ちょっぴりでも紳士だと思っちまった私の間違いだったな! 平気でかつては好きだと言った女を泣かせるとは、紳士どころか男の風上にもおけねー!!」

その言葉に同調する雰囲気が、食堂を包んでいた。


深い、僕にとっては逸れに加えて重過ぎる深い沈黙が食堂を包んでいたような気がした。
給仕達や、アルヴィース像までが僕に白い目を向けて見下しているような気がした。

もう…もう駄目だ。

「このギーシュ…もはや、容赦せん!」
「あん?」

僕の突然の雄叫びは亀の癇に障ったようだが、むしろそれがいい!
僕はポケットから真っ白な手袋を!

『命を惜しむな。名を惜しめ』

この学院へ入学した時にその言葉と共に父上から頂いた純白の手袋を取り出した!
同時に教わっていたこの手袋の正しい使い方が、今ははっきりと理解できていた…この手袋は、この亀のような奴に投げつける為の物だ!

そう思った時には既に僕の怒りが正当な事、なんら恥じるところが無い事を表すかのような白一色の手袋が宙を舞い、亀へとぶつかっていた。

『決闘を申し込む!そう思った時には既に決闘は始まっているんだ!』

兄上、未だその境地には至っておりませんが、思った時には既に投げつけておりました。
今なら兄上の真剣な眼差しが僕にも理解できる。

「キサマァッ!決闘だ!」

僕の手はかつてない力で握り締められ、かみ締めた奥歯が砕ける音がしていた。
血の味が口に広がり、心臓の音がうるさくて周りの音も聞こえない。
僕の怒りは今、頂点に達しているのだ。

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