ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ-外伝3

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匿名ユーザー

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あ、ありのまま出合った男について話すよ!
わ、私はガーゴイル女と入れ替わって侍女に変装していた。
誰も気付かない完璧な変装だったさ。

でも、ゲルマニアから来たその卑しい成り上がりは私の事をあっさり見抜いた。
私を知ってる者が手を回したとかそんな感じじゃあない!
あの目。時々お父様が見せるような冷やかさが、私に向けられたんだ!

だがその男は、手下だったナイフに操られて裸で踊らされていた哀れな私からナイフを取り上げ、上着を着せた。
やっと体が自由になった私が我に返る前にそいつはそのまま、こ、この私を抱き上げて部屋を出たんだ…
他の連中は手をこまねいていたり生意気にも面白がってただけだったのに、迷う素振りも見せなかった。

少し長めの黒髪と微妙な光の加減で抱きかかえられている間そいつの顔を見ることは出来なかった。
余り嗅ぎ慣れない匂いがして、さっきまでの状況のせいで落ち着かなかった私はすぐに調子を取り戻す事が出来なかった。

「運が良かったじゃないか! 私に恩が売れて。ガリアの王女であるこの私にさ!」

後から考えると、自分でも不思議に思う位に私は声を張り上げていた。

「私は義理堅いからねぇ、例えお前がゲルマニアの成り上がりでも例はしてやるさ」

そいつの部屋まで行き、下ろされてからやっと私はそれだけ言った。
放されてすぐ、私の頭脳はもう動き出してたんだ。
こいつもゲルマニアの下賎な成り上がりどもの一人。
どうせコネ欲しさにやったんだろうけど、そうはいかないよ!
ちょっとした手土産一つ持たせてあしらってやる。
私はそいつが被せた上着で体を隠しながら笑みを浮かべていた。
なのに、そいつは妙に爽やかな笑みを浮かべてこう返してきた。

「必要ありません」

私は耳を疑った。この私のせっかくの申し出になんてな奴!

「なんだって? まさかとは思うけど、王女であるこの私の礼がいらないって言ったのかい?」

聞き返すと、そいつは頷いて肯定した。
侮辱に手が震えるのがわかった。こうまではっきりと申し出を拒否されたのは初めてのことだ。
コイツは、この生意気なゲルマニア貴族にまで…!城の連中と同じように私の礼になんて何の価値もないとでも思っているの!?
そいつも多分、私の手が震えていた事には気付いていたはずだけど、顔に浮かんだ笑みは不敵で、どこか優しげだった。

「貴方を助けたのは…僕が貴族を目指しているからです。僕は貴方があんな真似をする人ではないと知っていた。だから助けました」
「はんっ、だから礼はいらないって? とんだ大馬鹿者だね!」

挑発するように言っても、まるで堪えた様子がない。
ガーゴイル娘の方が、無表情な分ましじゃないか!
腹立たしい気持が胸で渦巻いていく。そいつは一度体を洗い流してすっきりされてはどうかとか、そんな提案と侍女達を呼ぶよう言ってある事を私に教えて、背中を向けた。

「では僕は失礼します」
「待て、家名位聞いておいてあげようじゃないか」

私は、そいつを呼び止めていた。
このままにしておくとやられっぱなしなようで気分が悪い…!
あのガーゴイル娘やメイド達で遊んだ位じゃ早々晴れそうに無い位に私の機嫌は悪かった。

「感謝しな。ガリアの王女に名前を覚えてもらえるなんて、名誉な事なんだよ?」
「ローマ」
「ローマ? お前に似合いの奇妙な名前だね!」
「最近つけた名前ですからね。分割統治されていた領地を買い戻した折りに、少し名前を変えたんです」
「分割統治?」

眉を顰めた私を子供にモノを教えるような口調でローマは説明する。
古くから受け継いでいた領地があったが、当主不在で受け継ぐ者が長い間決まらなかったので周囲の貴族達が少しずつ少しずつ、切り取っていた。
自分が継ぐ権利を有していると知ったので、愛想良くしながら裏では今も奪い返した領地を狙っている彼らと争っていることなど…少しだけ、コイツも周囲が全く油断なら無い状況を抱えているんだと知って本当にちょっとだけ親近感を覚えた。

「当主不在の間に領地を切り取られてしまいました。今買い戻すか奪い返すかしている所なんですよ」

ローマはそう言って姿を消した。
私は帰途の間、そいつの事を考えていた。

とりあえず、父上に話してみようかしら?
無作法をしてゲルマニアの田舎モノ如きに舐められるわけにもいくまい。

「お前達もそう思うだろう?」

怯えながら返事をする召使達で暇つぶしをしようとイザベラは目を向けたが、気が乗らずそのまま眠りについた。
馬車の中は揺れるし、普段眠っているベッドと比べれば天と地ほどの硬さ…数時間後目覚めたイザベラはそれを思い出し、寝違えて痛む首を抱えて泣いた。


イザベラと別れて暫くしてから、ローマ…ジョルノは懐からナイフを取り出した。
園遊会は既に終わり、片づけをする召使たちの間をすり抜けて目立たぬようにジョルノはアルトーワ伯の屋敷を後にしていた。
ジョルノの馬車まではまだ少しある。

「ここは良い国ですね。市場としても、アンタが手に入る位に運もいいようだ」

別れたばかりのガリア王女を躍らせていたナイフにジョルノは話しかける。

「人を操る能力を持つインテリジェンスナイフ。アンタには僕を手伝ってもらう」
「報「あの人に引き渡せば、報酬分は稼げそうだな」このどS野郎!」
「野郎? 僕の事はボス、と呼んでください」
「偽名か」
「いいえ。夢の職業ですよ」

黒い金でゲルマニアの土地と貴族の地位を買い取ったジョルノは爽やかな笑みを浮かべた。
それに危険な臭いを感じたのか、ナイフがその能力を発揮してジョルノの意識を一瞬にして乗っ取る…と同時にナイフはアリに姿を変えられて地面に落ちた。
手から離れたお陰で意識を取り戻したジョルノは、アリを拾い上げて光り輝くような爽やかな笑みを浮かべた。
何処かへ行こうとするアリを拾い上げ、少し力を込めながらジョルノは囁く。

「アンタには既に呪いをかけた。それを抑えているのは僕の意思だから僕を乗っ取るとアンタは呪いが発動してアリになる…理解したかな?」

本当はゴールドエクスペリエンスで与えた生命エネルギーを意識を奪われるギリギリで発現させただけだが、こう言った方が懲りるとジョルノは考えていた。
アリに与えられた生命エネルギーが解除され、ナイフは元の姿を取り戻す。
先ほどと変わらぬ実戦にも耐え得るであろう肉厚のナイフが現れる…ただし、ガクブルしながら。

「よ、よくわかったぜ。ボス」
「ベネ」

震える声の物分りの良さに満足したようにジョルノは言う。

「アンタを退屈させるような真似はしない。それだけは約束しましょう」
「あ、ああ。俺としちゃそれが一番だが…よくわかったな?」

訝しむナイフに、ジョルノは返事を返さずただ爽やかな佇まいだけを保っていた。
そのままジョルノは深い青に染まった馬車に乗り込む。
馬車には、既にテファが乗り込んで待っていた。

「ジョルノ、お疲れ様」
「ありがとう。お待たせしてすみません」

殊勝な顔を見せるジョルノにテファは首を振る。
ジョルノはそれを見ながら向かい側の席へと腰掛けてテファの言葉を待つ。

「ううん、ジョルノは良い事をしたんですもの。聞いたわ!王女様を助けたって」
「あぁ、そんなこともありましたね。じゃあそろそろ、亀を迎えに行きましょうか」

今回の旅の収穫などを話しながら、二人はガリアを後にした。
紅茶を淹れ、お土産にと頂いてきたお菓子と一緒にしてティータイムを楽しむ時間的余裕さえあった。
その時、穏やかな午後の日差しが車窓から入り込み、ジョルノの腰に差されたナイフが痛々しく光を反射した。

「ボス、鳥が来るぜ」
「ああ」


テファに届かない微かな声にジョルノは返事をした。
それから程なくして足に小さな筒を提げた鳥が2羽。馬車の周りをとびはじめる。ジョルノは窓を開けた。
鳥はすぐに窓から馬車内へと侵入する、そして親に擦り寄る幼子のようにジョルノの手にとまり、頭を指に擦り付ける。
テファが歓声をあげた。ジョルノは鳥の足についた筒を開き、テファに一羽渡す。
礼を言うテファに首を振って、ジョルノは中に入っていた手紙を読んだ。

「すいません。さっき亀を迎えに行くって言いましたが、あれは嘘でした」
「え?」
「寄り道します」

ポルナレフを迎えに行くのはまだ少し先のことになりそうだ。


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