ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

おはよう!格差ごはん

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今、シーザーはルイズの後に従っている。
ルイズ自体は先ほどのやり取りからか機嫌を損ねたのかズンズンと振り向くことも無く先に行く。
シーザーには背中しか見えないが顔を見るまでも無く「私、不機嫌よ!」といった表情をしているであろう。

 気まずい…非常に気まずい…
 確かにおれがからかったのが悪いのかもしれないが、こうもダンマリを決めこまられると声も掛けづらい…

シーザーはそう考えて、この重苦しい雰囲気の打開の為にどう声を掛けるか頭の中であれこれ考え、俯きながら歩く。
するとルイズの足が止まった。自然、シーザーの足も止まる。
何故立ち止まったのかルイズに尋ねようと目線を上げると見たこともない光景が広がった。
やたらと長いテーブルが並んでいた、一つのテーブルで100人は優に座れるであろう。それが三つ並んでいるのだ、たかがテーブルでも迫力がある。
ルイズと同じ色のマントを着けている生徒は真ん中に、左隣のテーブルには少し大人びた生徒が思い思いに歓談をしている。彼らは三年生なのだろう、彼らのマントは紫色だ。
右隣には茶色のマントを身に着けたメイジ達であった。推測するに一年生だろう。まだ学園生活に慣れていないのだろうか、顔が強張っている。
その様子がシーザーには微笑ましかった。自分がリサリサの所に行った時もあのような感じだったからだ。
過去のことを思い出した所為であろうか、今朝起きた原因になった夢を思い出した。

究極生物となったカーズ、軍用機に乗って逃げるJOJO、火山へと諸共に突っ込むJOJOとシュトロハイムというナチス軍人、赤石の本来の使い方、噴火する火山。

思い出すごとに暗澹な気分になってくる、特に最後の光景が夢とは思えない圧倒的な現実感が有った。

 あれは所詮夢でしかない!何を不安になることがある。ああいうことにしないために戻るんだろ?
 ならば今は目の前の壁に集中するべきだろう


割れないシャボンとめげないメイジ
おはよう!格差ごはん


ルイズはそんなシーザーが考えていることなど露程も知らない。
だが、この『アルヴィーズの食堂』の豪華絢爛な装飾に茫然自失したのだろうと考え、先ほどのやり取りの鬱憤も多少晴れた。
自然、機嫌も良くなる。機嫌が良くなれば口も軽くなってくる。

「これが『アルヴィーズの食堂』よ。ここ、トリステイン魔法学院で教えるのはメイジとしての教育だけではないのよ」

どう?すごいでしょと言わんばかりの表情である。
シーザーも先ほどのダンマリよりもマシなのでその話題に飛びついた。
彼は生粋のイタリア人だ。不機嫌な女の子が居たら機嫌を良くさせたいというのはシーザーという人間の根元に根付いている。

「たしかにこの食堂は凄いな。ここまでの物は見たことが無い」
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』っていうモットーのもと、貴族たるべき教育も受けるのよ」
「なるほどね、だからこその…」
「そうよ、だからこその貴族の食卓にふさわしいこの食堂。平民なんかには一生入ることも出来ないんだから感謝してよね」
「たしかに、この隅々まで行き届いた装飾などは見たことが無い」

シーザーも高級レストランに入った経験はあるが、今目の前にしているのは今までのとは次元が違う。
全てのテーブルには飾りつけがされている。しかし、一つ一つの装飾のレベルの桁が違うのだ。
テーブル自体もそうだが、上品な装飾の燭台。目立つような物ではないが自己主張している数々の花に、籠に盛られた瑞々しい果物。
一つ一つはシーザーも過去に入店した所に有るだろうが、それら一つ一つの調和が見事に取れている。
だが、何よりも目を奪われたのは壁際に並んでいる小人の彫像である。
失踪する前の父がナポリ一の家具職人だった影響だろうか、シーザーはその彫像に興味が沸いた。

「アレは一体何なんだ?」
「あぁ、アレはこの食堂の名前の由来にもなった小人よ」
「本当に良く出来てる…今にも動き出しそうだ。まさか夜中に動くなんてことはないよな?」
「よく知ってるじゃない、動くわよ」
「動くのか!」
「動くっていうか踊ってるわ。ほら早く椅子をひいてちょうだい、なに落ち込んでるのよ。気の利かない使い魔ね。」

 改めて現状を確認すると眩暈がしてくる。本当におれはもと居た所に帰れるんだろうか?
 まぁ今は目の前のことに集中するべきか。
 そして使い魔云々以前にレディファーストだ、まずは椅子を引いてやろう。

シーザーは恭しくルイズに椅子を引いてやる。
ルイズは礼も言わずに引かれた椅子に座った。続けてシーザーも隣の空いてる椅子に座った。

「しかし朝から凄い量だな」

シーザーの言も最もである。まずはメインであろう大きな鳥のローストがデン、デン、デンと並んでいる。大人数で分けて食べるのであろうが、迫力がある。
他にも大皿に山盛りになっているマリネであったり、鱒の形をした大きなパイ。それにワインなどが並んでいる。
正直、朝から食べるものじゃない。

「しかし、昨日から何も食べてないしな。ここは調理してくれた人に感謝しつつ…」

ふと、隣から冷たい視線を感じて一旦目の前の料理から目を離す。
その視線の主はルイズであった。なんかこう、目が据わっている。先ほどまでの機嫌は一体何処へ消えたというのだ。

「一体どうしたんだいシニョリーナ、おれはこれからこの料理を食べようと思うんだが」
ルイズは無言で床を指差した。そこには皿が置いてある。
特異な能力を持っている人間が見たら「かもすぞー」とでも聞こえるかもしれない。
しかし、ここにはそんな人間は居ないのでポツネンと寂しく置かれた皿しかない。

「皿があるな」
「あるわね」
「テーブルの上に有るものとは天地ほどに差が有るものが置いてあるな」
「ほんとはね、使い魔は外なの。アンタは私の特別な計らいで床ね」

 別の世界だかなんだか知らないけどこの生意気な犬を使い魔然としなきゃまた周りからバカにされるわ。
 そのためにはこういった食事を使ったこういった躾をしなきゃ。
 使い魔の躾は最初が肝心だし、ここいらで上下関係をビシッと叩き込まなきゃね!

シーザーの目に映るはテーブルの上の物に比べること自体が間違っているような食べ物であった。
二、三の申し訳程度な肉のかけらがスープの中で揺れている。皿の端にはこれまた硬そうなパンが二切れ、ポツンと置いてある。
もう一回テーブルの上の料理を見る。朝食とは思えない豪華さだ、否が応にも涙が出てくしまいそうだ。
正直、貧民街で食っていた物の方が目の前のスープよりもマシかもしれない。
しかし、今は丸一日以上は物を食べていないということで強く主張してくる腹の虫を治めるのが先だろう。

「まったく、色々な意味で涙が出てくる」

空腹加減と比例した力ない呟きは虚空に吸い込まれるように消えた。
幸いなるかな、ルイズ他の貴族達は何やら始祖ブリミルやら女王やらに感謝の祈りをしている。
正直な話、何処がささやかな糧なのかと本当に思っているのか問い詰めたい。
いや、むしろ問い詰めるというよりか断固抗議したい所だが今は食うのが先決だ。
動物は食べられる時には食べて腹に溜めておく、そして力を蓄えておくのだ。
それをシーザーは理屈ではなく貧民街時代の経験から悟っていた。

 しかしこれじゃあ本当に野良犬と同じか、 ルイズの台詞もある意味的を射ているな…
 だが、飼い慣らされはしねぇ、今は使い魔とやらをしながらあそこへ戻る手段を何としてでも探さなければならない!
 出なければ俺はツェペリの姓を名乗る資格はないんじゃないのか?

だがまずは何にしても腹を満たすことだ。
だが、この硬そうなパンの切れ端とスープだけでは流石に足りない。

「なぁ、せめてそこのローストチキンを少しくれないか。これじゃあ足りない」
「ダメよ、肉は癖になるもの。ほらこの皮をあげるわ」
「あぁ、涙が出てきたよまったく」

こうして、シーザーのハルケギニアに来て初めての朝が幕を開けたのである。


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