ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-6

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匿名ユーザー

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ゴォォォオオォォ

(ン…こいつ、は…?)

うっすらと目を開けた東方仗助が見たのは窓ごしの吹雪
窓というのは車の窓だ
いつか、どこかで見たことのあるこの光景
身体を起してみようとするが思うように動かない
                         ・ ・ ・ ・ ・
車の助手席に寝かされていた仗助は小さかった
シートベルトでがっちり止められ、すこし油断すると意識がモウロウとしてきた

「なんてことッ!」

ハッキリと聞き覚えのある声
妙に若すぎる気がするが間違いない、おふくろだッ

「家にいる時、救急車を呼ぶんだったわ!
 救護の人に「ただのカゼですよ」って言われようとも
 仗助をこの雪の中へ連れ出すんじゃあなかったわ!」

そういえばカゼだった
もう何日も高い熱を出して寝込んでいた
最初はノンキこいてたおふくろも
二日目には真っ青になっていた
こんなにひどくなるとは誰も思わなかった
今は病院へ車を出して急いでいたが
雪にタイヤをとられて動けなくなっていた
ここらは畑だ
窓の向こう一面、ナンにも見えないッ

マズイのは仗助だけではない
このまま誰もここに来なかったなら
吹雪の中、明日までここに放置されるのならッ

(おふ、くろ…)

ギャルルルルルン
ガリッ ガガガッ

アクセルを踏み続ける母に仗助は思った
「誰か助けに来てくれ」と
まだ小さくて弱っちい彼自身には
どうすることもできはしなかったのだから
だから彼は望んだのだ
「ヒーロー」の登場を
そして…彼は来た

(…あれ?)

何かおかしい
そう、確か…ヒーローは「彼」だったはずなのに

(なんか…チビ!! だなァ…?
 それにこの雪ン中、マントにブリーツってよォ~)

足首までめり込む雪の中をズカズカ踏み進んできたのは女ッ
チビとまではいわないが
なんというかこれは…やっぱり、オカシイッ!?
その、桃色がかったブロンドの髪の女が車をのぞきこむと
仗助の母は気おくれしながらジャケンに言った

「何の用? あっち行きなさいよ」

女はそいつを完ッ璧に無視コイて
魔法の杖を振っていた

「アンロック」

ドボォォ

そしてナゼか爆発
「解錠(アンロック)」なのにッ
ドアだけブッ壊れて飛んでいったから
そーと言い張ればそーなのかもしれないが
仗助と母は雪を浴び
口からプスプスとケムリを吐き上げながら
ジト目というか何というか
「アキレた」ともチョット違って
でも、とにかくそーゆーナマ暖かい目つきでそいつを見るしかなかった
      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
だが、真にワケがわからないのはそこからだった

「な、待ッ…コラ!! アンタッ
 何する気、仗助にィィィ―――ッ!!」

女は助手席に腕を差し込むと仗助を取り上げ抱きかかえ
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その唇に顔を近づけてきたのだッ

「いつまで寝てンのよ
 さっさと目を…覚ましなさいッ」

(おい…ちょっ、これはッ!?
 ナニをする気だ、ナニをッ
 もしかして、もしかするのかぁ~~~
 まだ心の準備が!!
 純情なんスよ仗助くんはッ
 こういうのは、その、モット色々手順をフンでだな…ロマンチックに
 つーかオマエ誰ェェェェェ―――――――ッッッ!?)

「おぅわぁぁあぁ―――ッ!!」

グワン

「きゃ…」

ガツーン

仗助の目に火花が散った
頭というか顔面に何かブツカった
イタかった仗助が思わずまわりを見回すと、
少し広めの部屋でベッドに寝かされていたことを理解した
窓を見ると、今は夜
ビビッた拍子にはね起きたらしい
そして次に気にしたのが
今、顔をブツケてしまった何かは一体?

「イッ、タッタッタタ……うぅッ」

すぐにわかった
そばに誰かうずくまっていた
顔をおさえているのは
同じように顔をぶつけたからだろうか?
しかし、それにしても

(なんだぁー この服装
 ハウス名作劇場に出てくる召使いサンじゃねーのか?
 ってェと、ここは一体…)

もう一度、まわりを気にする
ズイブンとアンティークな趣味の部屋だった
こういうのも探せば珍しくはないだろうが
中世っぽさがとかく徹底されているのだ

(ヨーロッパの貴族サマ気取りかよォォ―― この家の主人はッ
 だけど待て、オレに一体何があった?)

東方仗助は記憶をたどる
どこからオカシクなったのか?

「そうだ…オレは確か
 亀、イジってたよな?
 恐怖を克服しとこうと思って…入学式の後で」

口に出し、ひとつひとつ確認していく
やっと痛みのおさまったらしい「ハウス名作劇場」が
鼻を押さえたまま横に立っていた

…あっ!!

気づいた
そういえば、さっきやっちまったんだろうがッ
顔面と顔面の正面衝突をッ

「す、スミマセンでしたッス!!」

あわててベッドから抜け出し、深ーく頭を下げる
身体のあちこちに包帯が巻かれているが
動き回っても問題なかった
しかし、それよりも

バッ ザザァッ

「あ…め、め、滅相もありません、貴族様ッ
 お、おおお、お顔を…お顔をお上げ下さいッ」

「ハウス名作劇場」の反応は仗助にとってショック!!
彼女は頭を下げた仗助のさらに下を行くように
その場にひざまずいてしまったのだッ

「え、な…き、貴族様ァ?
 ちょっと待ってくれ、話が見えねー」

平伏したまま動かれないでは仗助は落ち着かない

「と、とりあえずよォー
 頭上げて下さいよ、立って下さいッス
 これじゃオレが恐縮しちまいます」
「…?」

よくわからないような顔をしながら
彼女はおそるおそる立ち上がる

「え、えェェ――っとだな…
 まずはイイスか? 名前聞いても」
「あ、はい…シエスタと申します」

「シエスタ」か
見たところ日本人らしさがないのはわかっていた
髪が黒いのを見ると混血の外人か
…にしてもウマイな、日本語
そんなことを思ったが
それよりも人に名乗らせたなら自分も名乗るのが礼儀だった

「オレは東方仗助、仗助でいいッスよ」
「ジョースケ様、ですね」
「サマはつけないでくれ、サマはッ
 コソバユいったらねー」
「…そ、そうは仰いましても、私のような下賤の者が」
「ゲセンって…
 だから、そこらへんワカンねーんだよなぁー
 オレのどこがそんなにエライわけ?」
「うっ…」

ジワッ

仗助はソボクな疑問を素直に聞いてみただけだった
だがシエスタは冷汗を額に浮かべて言葉を詰まらせてしまっている
「ウカツなことを言えない」ような雰囲気だ
どうしてこんなにうろたえるのか?
さすがに仗助も困り果てたが

ポタッ

シエスタの形良い鼻から何か垂れたのを見て思い出した
どうして自分が頭を下げたのか?

「鼻血、出てるじゃないッスか」
「…こ、これは、見苦しいものを…お許し下さい」

(イヤ、だからそれ、オレのせいだし)

口に出すとまたややこしくなりそうだったので
やることをさっさと済ますことにした

「ちょっとこっち来なよ…そう、なるべく近くに」
「? はい…」

言われたとおり近づいてきたシエスタの頬に
仗助は右手をそえる
四歳の頃、突如身についたあの力をつかうのだ
他人にみだりに見せつけるものでもないが
キズついたのが自分のせいなら使うのがスジ
仗助は単純にそう思った

ズギュン

「これでよし
 鼻血はもう出ねぇーッスよ」
「えっ?」
「ちょっとしたオマジナイをかけたッスからなぁー
 痛みは無いッスね、どこも詰まったりしてないスよね?」

不思議そうに鼻先をいじっていたシエスタは
やがて笑顔になって仗助にうなずくと

「偉大な魔法をお使いになられるから、おえらい方なのですよ…ジョースケ様」
「は?」
「ルイズ様をお呼びします。 ここでお待ち願えますか」

バダム

仗助を(いろんな意味で)置いてけぼりにして部屋から出て行った
「魔法を使う=エライ」
拾えたキーワードとしてはこれだったが
つまり、オレのこの力=魔法?
困惑は深まるばかりだ
だが彼の困惑はこれごときでは終わらない
本番はここからッ

ドタァァーン

やけに力強く開け放たれたドアの向こうから現れたそいつはッ!!

「起きたわね
 わたしの、使い魔ッ」
「おまえ…夢のッ
 ちがう、それだけじゃない、確か、おまえ」


―――君が突然、現れたッ!!


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