ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-12

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匿名ユーザー

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「昼間まで、ねえ。馬車はあと一人乗れるみたいだし…ワムウはどこにいったのかしら…」

護衛の任務を受けたルイズは、キュルケと自分の使い魔を探す。

「あんた、自分の使い魔も呼べないの?」
「仕方ないでしょ、あんた達の使い魔とは決定的に違うんだから」
「まあ、そうよね…仕方ないわよね」

敷地内の森の中に入っていく
「ワムウッ!用事があるの!とっとと出てきなさい!」
「なんだ、騒がしいな」

上から声が聞こえる。
巨木の上からストンと降りてくる。

「ワムウ、出かける準備をしなさい」
「今度はなんだ」
「私が任務を受けたの、重要人物の護衛よ。詳細は馬車で話すからとっとと来なさい」
ルイズは身を翻す。

「断る」
「はぁ?」
「お前が受けた任務をなぜ俺が手伝わなければならん。俺をあてにして受けたならば、諦めて死んで来い。
それに、俺は護衛などやったこともないし、護衛しなければならないようなか弱き人間も護衛も嫌いだ」
「あんたは私の使い魔でしょ!これは命令よ!」
「使い魔は主人の身を守ると言っていたが、わざわざ火中に進む主人は別に止めん、俺もこうみえて忙しいのでな」
「なに屁理屈こねて…ちょっと待ちなさい!」

走り去るワムウに二、三発呪文を飛ばすものの、周りの木の幹を折るだけであった。

「どうすんのよ、ルイズ。オールド・オスマンもあと一人として彼を期待して席を空けたようだし…とにかく誰か一人連れてこないと」
「タバサが風、キュルケが火だから…ミス・ロングビルにはあまり戦わせたくないし…土か水がいると便利かもしれないわね」
「土ねえ、なんだか嫌な予感がするのう」

予感はもちろん的中した。
「やあ君たち、護衛の任務を受けたって?土属性をお探しなら、このギーシュ・ド・グラモンを…」
「えーと、水属性といえば…」
「最低ラインは欲しいわね」
二人は平然と流す。

「待ちたまえ!無視しないでくれよキュルケもルイズも!君たちを探してたんだ!」
「あんたと付き合う趣味は無いわよ」
ルイズにはとりつく島も無い。

「変な意味じゃなくて!君たちの任務に同行したいんだ!」
「あのねえ、私たちはワムウの代役を探してるのよ!決闘で完璧に優劣をつけられたドットメイジなんて論外よ論外!」
「フッ、そうは言うけどね、薔薇は女性を守るときにしか針を出さないものなのさ、それに僕をあのときの僕とは思わないで欲しいね」
「なにが変わったって言うのよ」
「成長のために図書館に入り浸り、僕に必要なものがわかったのさ!そう、それは必殺技!」
「えーと、モンモンラシーの部屋は…」
「待ちたまえええッ!せめてどんな技かくらい聞いてくれよ!」
ギーシュが哀願する。
「しょうがないわね、どんな技なの?」
「まず、ワルキューレは青銅でできている。つまり人間より重いため、相手より早く落ちる。そこで放り投げた相手を空中で首に足をかけて、
逆立ち状態になったワルキューレが地上に手をつき相手に首四の字を仕掛けると言う…名づけて『ロビンスペ…」

「キュルケ、304号室ってどこの棟だかわかる?」
「東棟よ、確か」
「ちょっと待ってくれええええッ!僕が悪かった!ギーシュ・ド・グラモン、一生のお願いだ!どうか、僕を参加させてくれ!
君たちの後をつけて校長室の声を盗み聞きまでしたんだ!名誉挽回、汚名返上のこんなチャンス逃すわけにはいかないんだ!」

二人はため息をつく。
「しつこいわね、そんなんだから振られるのよ。わかったからとっとと準備してきなさい」
キュルケが促す。
「しっかり働くのよ」
ルイズも一応認める。
「うう、ありがとう……必ずや僕のジェットストリームアタックを成功させてみるからね!」

「…やっぱり、人選間違えたかしら」


 * * *

「……ということで、ギーシュ・ド・グラモン、この任務にお供させていただきます、ミス・ロングビル。
命に賭けても必ずやあなたをお守りいたしますッ!」

口に薔薇を咥えながら一礼をする。

「は、はあどうも…」
ミス・ロングビルも困惑しながら返答する。

「あんたもそんなことやってないで早く乗りなさいよ」
ルイズに促されギーシュが乗り込む。

ミス・ロングビルが手綱を持ち、出発する。
「えーと、その護衛対象の人物の所在地はミス・ロングビルが地図を頂いたようだし…その人物の特徴は…
えーと…『30~40歳の男性』で、『白人』で、『世界ビックリ機械』…『おじさんX』…な、なによこれ」
「はは、オスマン師も人が悪いな。まあ地図を見る限り周りに人はいなさそうだし、すぐわかるんじゃないか?」
「偽者だとしたらどうするのよ、噂によると土くれのフーケは人を操れるとか…白人で中年男性なんてどっからでも呼べるわよ」
「まあ『世界ビックリ機械』な人はそういないだろうさ、見ればたぶんわかるんじゃないか」
「あんたは楽観的ね…」

馬車は深い森を抜け、開けた場所に出る。
「あの小屋ね!きっと!」
キュルケが声を張り上げ、前方を指す。
タバサは本を閉じ、顔を上げる。
馬車が小屋の前に止まる。

すると、一人の男が出てくる。
「貴様らは、オスマンの言っていた護衛か?」
距離を保った状態で聞いてくる。

「ええ、そうよ」
「名前を名乗れッ!護衛の名前は聞いているッ!」
「私がルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ」
「タバサ」
「ロングビルです」
「僕の名はギーシュ・ド・グラモン、二つ名は『青銅』、以後お見知りおきを」
男は手紙を睨みながら名前に耳を傾ける。
「待ていッ!最後の奴の名前は知らんぞッ!信頼できるのか?」
「私たちと同じくトリステイン魔法学院の生徒よ」

男は小さく舌打ちし、
「よし、いいだろう。どうやら本物の護衛のようだな」

「ちょっと待って、あなたが本物の護衛対象かわからないわ…『30~40歳の男性』『白人』は該当してるけれども、
『世界ビックリ機械』『おじさんX』であることを証明して欲しいわ」

男はニヤリ、と笑う。
「娘!人種は違えどわたしはお前のような慎重な者に敬意を表すぞ、『世界ビックリ機械』か、オスマンめ、悪趣味な奴め」
あまり見慣れない服の上を脱ぎ、目深に被っていた帽子を外す。
その胴体と右目は『機械』であった。

「な、なにこれ…」
「見てのとおり機械の胴体だ。少々無茶をして体を吹っ飛ばしてしまってな、腕、胴体、顔面、脚が義手義足のようなものになっている」

全員があっけにとられる。
「さ、触っても構わないですか?」
キュルケが尋ねる。
「ああ、構わん。痛くするなよ、優しくだ」
そっとキュルケが触れる。
「ほ、ほんとに金属ね……」
「どうだ、信じたか?」
「じゃあ『おじさんX』ってなんなんですか?」
「それは…俺とオスマンの間でのジョークだ、あまり気にするな」


一同は小屋の中に案内される。
暖炉と木の椅子、テーブルが置いてあり、スコップ、ロープ、油入れ、その他なにかよくわからない物がいくつか落ちている他は、
質素な木の小屋だった。

「……しかし、オスマンも心配性だな、あの老人のほうが俺としては心配だ」
「私も噂にしか聞いておりませんが、世界でも数人しかいないといわれる『ペンタゴン・メイジ』であるという話もあります。
名うての盗賊であり、魔法使いでもあるフーケですらも敵わないと言えるでしょう。あなたはどうやって自衛を?」
ミス・ロングビルが質問する。

「ふむ、いいだろう。少々もったいないがとりあえずもう一度外に出てくれ」

一同は外に出る。
男は上を脱ぎ、胴体の機械を露出する。
男は叫んだ。
「ナチスの科学力はァァァァァァァアアアッ!!世界一ィィィイイイイ!!!!」

胴体から何か小さいものが連続して発射し、森の木に突き刺さる。
その威力は数秒で森の木を何本も幹から折り、倒していた。

「これでわかったかね?気の毒だが、偽者の護衛だと判断したら君たちを蜂の巣にさせて貰った」
一同はごくりとツバを呑む。

「まあ、一応護衛をつけてもらったんだ、三人は護衛、二人は見回りでもしてもらおうか。人選はそちらで決めて構わない」
紆余曲折の結果、最初の護衛はロングビル、キュルケ、タバサ、見回りはルイズ、ギーシュとなった。

「あーもう、寒いのについてないわね」
「できればミス・ロングビルかキュルケがよかったなあ…」
「どういう意味よそれ、吹っ飛びたいの」
「べ、別に他意はないよ」
「そう、吹っ飛びたいのね」

この森の木には災難な日であった。


 * * *

「ところで…そこに転がっている杖のようなものはなんなんでしょう?もしかして…」
「それか、オスマンは『破壊の杖』などと呼んでいたが…我がナチスの技術の結晶ゥゥウウウッ!
15cm炸裂弾搭載ィイイイイッ!グレネードランチャーパンツァーファウストだァアアアッ!」

全員が立ち上がる。
「な、なんでそんな重要なものが無造作に何個も転がってるのよ!」
「うむ、オスマンにはまだ言ってなかったが、探してみたら数個出てきてな、何発か試し撃ちしてもまだ残っている、困ったものだ」
「試し撃ち?これは杖ではないのですか?」
ミス・ロングビルが尋ねる。
「杖などではないィイイイイッ!貴様らは魔法を使えメイジとやららしいが、俺はそんなものなくともこれを発射できるゥウウウッ!
ここをこうしてこうすると、あら不思議憎きソ連兵の戦車が木っ端微塵ッ!」

途中言っていることが少し理解できなかったが、全員これが恐ろしい威力を誇ると言うことはわかった。
「…ちょっと、驚きましたわ……頭を冷やすため少し外にいかせていただきますが、構いませんか?」
「ええ、構わないわ」
タバサもうなずく。

ミス・ロングビルは小屋を出て行き、数分後戻ってきた。

 * * *

「見回りって言ってもねえ…まだ時間じゃないのかしら?」
「僕だって同じ気持ちさ、そうそう都合悪くフーケが襲ってくるなんてことはないさ」
「そうだといいんだけど……どうやら都合は悪いみたいよ…」

ルイズには見覚えのある巨大なゴーレムと、フーケとおぼしき人影が立っていた。
フーケはこちらに気づいたのか、進行方向を変える。

「な、なあ、任務は護衛だしいったんここは逃げたほうが…」
「あんた、名誉挽回のチャンスなんじゃないの?貴族とは敵に後ろを見せないものを言うのよ!」

ルイズは呪文を唱え数発放つが、一発も当たらない。
「ほら、僕のワルキューレでもあれには敵わないよ!ここはさっきの人の手助けを…」
「護衛する相手に頼ってどうするのよ!そんなに逃げたいならあんただけでも逃げなさいよ!」
「じょ、女性を置いて逃げられるか!」

そんなことを言い合っている内に、ゴーレムが近づいてくる。
「しょ、しょうがない、僕の必殺技を試すしか…」

そこに人影が現れる。
「ワムウ!あんた、来てくれたの!あれがフーケのゴーレムよ、呪文当てるからちょっと距離を稼いで!」
ルイズはゴーレムに向き直る。
しかし、ワムウはゴーレムの方向には向かわない。
ルイズとギーシュの方へ迫り、

両方に蹴りと拳を叩き込んだ。


ルイズとギーシュは地面に倒れる。

土くれのフーケがゴーレムから降り、ルイズの手首を触る。
次に、ギーシュの胸を触る。
「ルイズは脈なし…ギーシュも鼓動なし、と……別に殺すつもりはなかったのに、鍛えてない貴族なんてあっけないわね」

フーケは再びゴーレムに乗り、小屋へ向かっていった。


To Be Continued...

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