ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

slave sleep~使い魔が来る-5

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匿名ユーザー

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『青銅』のギーシュ②

(ク、クソ…。なんで僕は今こんな状況に立たされているッ!?) 
今は昼時!天気は快晴ッ!! 
そんな中彼らは今も尚、戦いを続けていた。 

ギーシュは先ほどから信じられない目にあっていた。 
数時間前、もう一人その場にいる男――――ブチャラティに決闘を申し込んだ。 
メイジであるギーシュに取って平民との戦いなんてハンマーでアリと戦うようなモノッ! 
だが、結果は予想と大きくかけ離れる。その平民であるはずのブチャラティに大苦戦していた! 
ワルキューレは謎の"見えない打撃"と『ジッパー』で一体、また一体と破壊。 
焦ったギーシュは近づいたブチャラティを攻撃しようとするが杖をはたき落とされる。 
――杖を落とされたら負け。それが決闘のルール。
刹那、それを思い出したギーシュは慌てて空中で拾った。
                  ・・・ ・・・・・・
だが彼が手にしていたのは『杖だけ』ではなかった。
「こ、これは!右腕だッ!さっきまで杖を持っていたはずのッ!」
そして常人のそれをはるかに凌駕する殺気を放つブチャラティ。
「答えろよ・・・・。『質問』はすでに・・・『拷問』に変わってるんだぜ?」
ギーシュの命運は今、まさに尽きようとしていた。


「さあ…抵抗一つしないのか?結局おまえは威張るだけが取り得の 
弱ッちいマンモーニ(ママっ子)か。…幻滅だな。」 
(こ…こけに…しやがって……!!) 
だが思考とは裏腹にすでにギーシュの闘志は折れようとしていた。 
ギーシュは元々こういう土壇場で弱くなるタイプなのだ。 
(無理だ…。こんな奴勝てると思えない…。コイツは…身なりも、振る舞いも、 
メイジらしさがない…。なにより杖を持ってない時点でこれは『魔法』じゃあない! 
・・・だが、かといって『平民』でもない。コイツは一体なんなんだ? 
『ゼロのルイズ』は一体何を呼び出してしまったんだ・・・? 
ああ・・・どうしよう。こんな無様なところをレディーたちの前で・・・?)

ギーシュは見た。多くのギャラリーの中、一番見間違える
はずない顔を見た。―――モンモランシーだ。
さっきは怒っていたモンモランシーが、見間違いでなければこっちを心配そうに見ている。
(モ、モンモランシー!どうしたことだ・・?あんなに怒っていたはずのモンモランシーが・・・?
・・・僕は何をやってるんだ?よりによって彼女に『心配』をかけてしまっているっ!!)
ギーシュが杖と右腕を持って立ち上がる!ブチャラティも少々驚いた。
「コイツ・・?まだ戦う意思があるのか・・・?」
(僕はレディーにあんな顔をさせてしまうのだけは・・・どうしても『我慢』できないっ!!)
ギーシュは一瞬再びモンモランシーを見て、そして前に向き直った。

「・・やっぱりだ。思い出したぞ・・。これはあの『悪夢』と同じ状況ッ!!」


ギーシュ・ド・グラモンは部門の家柄であるグラモン家の四男として生まれた。 
父も、長兄も次兄も三兄も、常に戦の先頭に立って活躍している。 
「生命を惜しむな、名を惜しめ」 
これがグラモン家に代々伝わる家訓。 
ギーシュもまた、その家訓を幼きころから伝えられ、 
貴族のたしなみとしても、十分な戦い方を父から学んでいた。 

同時にグラモン家は、派手好きで、周りから『色ボケ貴族』とまで囁かれるほどの 
女好きな貴族としても有名だった。 
ギーシュもまた例外でなく、流石グラモン家と言われるほどのルックスを活かし、 
トリステイン魔法学院入学前の時点でもすでに付き合った女性の数が 
数え切れなくなるほどのプレイボーイぶりを発揮していた。 
家族からも、「女性には常に紳士的であるべき」と教えられ、入学後もまた女性を 
たぶらかし続けては、「流石グラモン一族!」「この女性の敵め!」と 
周りから賛否両論を聞き続けては学校生活を楽しく暮らしていた。 

―――――しかしそんな彼をある日『悪夢』を襲った。 
それが最初に起きたのは、今から半年ほどまえの事だった。


「うわああああ!!!」
その朝、ギーシュはベッドから跳ね起きた。
「ったく・・。妙にリアリティのある夢だったな。本当に殴られたみたいだ・・。」

「よお、ギーシュ。なんか今日は調子悪そうだな。」
話しかけて来たのは、友人の一人、マリコルヌだった。
「ああ。今日は少々変な夢をみてね・・。悪い意味で変だったから機嫌が悪いのさ。」
「へえ、どんな夢だい?」
「誰かと戦っている夢なんだ。それで負ける夢。そいつは僕のワルキューレをどんどん消して、
その後杖を折られて、殴られて気絶。それで終わりさ。」
マリコルヌは少々渋めな顔をし、
「そりゃ、奇妙な夢だったな・・。どんな奴だったんだ?」
「ああ、妙に印象強かったからよく覚えている。妙な髪形をしている奴だったんだ。
杖とかも持たず、平民のような身なりなのに、そんな能力で僕を倒したんだ。不快な夢だよ。」
「ふーん。ま、どうせ夢なんだからさ、そう気にすんなよ。ほら、そこの子達おまえ待ちじゃないのか?」
「おっと!いけないいけない!」
と、この時は気にもしてなかった。
だが、そのうち『たかが夢』とも言ってられなくなった


「うわああああああああああ!手が!僕の手に風穴がぁ!!」
次の朝、さらに大きな激痛を伴って跳ね起きた。
「ハァ・・・ハァ・・・ま、また夢・・・。」
手には風穴もなかったし、激痛もなかった。だが・・・。

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ  
その痛みは『さっきまで確かにあった』と言わんばかりに、その手は痺れたままだった。

「またなのか。大変だなお前も。」
またこのことをギーシュはマリコルヌに話していた。
「昨日よりもひどい目にあった。今度は銃で右手を打ち抜かれる夢だったんだ・・。
今はもう右手は動くけどさ・・。」
「二度あることは三度あるって言うし、これくらいでヘバってちゃ身がもたないんじゃないのか?」
マリコルヌは明らかに他人事っぽくそう言った。
「ひ、ひどいじゃないかっ!僕は苦しんでるんだぞ!?」
「そんな事言われたってオレは知らんよ。」
「なんて冷たいんだ"かぜっぴき"のマリコルヌ!!」
「"風上"のマリコルヌだ!二度とわざと間違えるなよっ!?その中傷が嫌いだって
おまえも知ってるだろ!?」
ギーシュもマリコルヌもお互いカッカし始めた時だった。

「全く。二人とも何バカやってるのよ。」
「モンモランシー!」
そこにいたのは、ギーシュと最も親しい女性、"香水"のモンモランシーだった。



ギーシュはさっきまでの青ざめた顔が一変、いつものキザな振る舞いに変わる。
「やあ、今日もまた朝日に輝く君の姿は美しいね、我が愛しの"香水"のモンモランシー。」
「あら、そういうあなたは顔色が悪夢に蝕まれ青ざめてしまっているわね"青銅"のギーシュ。」
「…ぐっ!」
痛いところを突かれ、少し動揺するギーシュ。
「・・フフ。大丈夫さ。君のおかげで僕はすっかり力を取り戻してしまったよ。
流石"香水"のモンモランシー。一番の特効薬はやっぱり君自身の美しさ・・・。」
「ハイハイ。もうアンタのキザなセリフはいいから。全く。しばらく悪夢にうなされっぱなしに
なってダウンしてたほうがまだ可愛げあるんじゃない?」
モンモランシーはそう言って去ってしまった。
「やれやれ・・。あいかわらずつれないなぁモンモランシー・・・。」
だがモンモランシーは、こんな事を言った事を心の底からマジに後悔した。


(『殺し方』は!出来ている・・・・・・。)
グボオッ!
――――ダレカ・・・・タスケテ・・。
(キョオオ―――z______ン!!!)
ドゴオッ!
――――ミヲ・・・サカレソウダ・・・!
(オオオラァッ!)
メメタァ!
――――ナゼコンナメニアワナケレバナラナイ・・?
(『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!)
グシャッ!
――――タスケテ・・・・ボクヲスクッテ・・。
(このナイフを見て、さっきのガラクタよりも恐ろしい結末になるのを悟ったか…!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・
(貴様はすでにチェックメイトにはまったのだッ!)
グサッ!ドバァッ!!
「うわあああああ!!!!誰か!助けてくれぇ!!僕を救ってくれぇぇぇぇ!!!」
「おい!落ち着けよ!気をしっかり持つんだ!」
目が覚めたら、友人たちが自分を心配そうな目でこちらを見ていた。



「まったく勘弁してくれよ・・・。こっちが悪夢を見てしまいそうだ。」
だがギーシュはマリコルヌの声が聞こえているのか聞こえてないのか、
生気を抜かれ、生ける屍のようになってしまっていた。
顔は土気色で、全身に力が入っていない。
「ああ・・・・。」
「こいつは・・・・マジに重症だな・・・・。」
ふと、マリコルヌが思い出したように言う。
「なあ・・・ちょっとした風の噂で聞いたんだけどさ、それってもしかしたら
おまえに危険信号を送っている『予知夢』なんじゃないのか?」
「・・・・・なんだって?」
「前に聞いた事があるんだ。この世界の他にも多くの世界が存在して、その中に、自分たちと
全く同じような人物が似たような生き方をしている、平行した世界の話。これを俗に
"パラレルワールド"って言うらしいけど・・。」
マリコルヌが飲んでいた紅茶を置いて続ける。
「そしてお前が見たのは、『もうすでに戦い敗れていった自分自身』だったとすれば?
・・・お前もいずれ本当にその奇妙な平民と戦わなければならない運命だったりするんじゃあないか?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

「・・・・まさか。」
「まさかとはオレだって思うけどさ。でも偶然見たにしてはあまりにも
不自然すぎる・・・だろ?」
ギーシュは一瞬うつむいた。だが、
「・・・・くだらない。いくら僕でも夢と現実の区別くらいつけられる!」
そう言って帰ってしまった。


モンモランシーは学院中を回っていた。
「っもう!どこに行ったのよあのスケコマシ!」
懐になにかの小瓶を抱え、イライラしたように言う。
ふと、階段のところを見ると、そこに腰掛けて、力なくため息をついているギーシュを見つけた。
「ここにいたのね。」
「やぁ・・・・モンモランシー。」
ギーシュは非道くやつれきった様子で言う。
(アンタ・・・。いつもなら出会い頭にキザなセリフを言ってくるのに・・・。
そんなに非道い夢なの・・?)
「モンモランシー。僕はどうすればいいのだろう。」
「え?」
「正直な事を言うと・・・僕はマリコルヌの話を真に受けている。
馬鹿馬鹿しい。そう思いつつも自分がいずれその運命に押しつぶされるような気がしてならない
んだ。」

モンモランシーは自分の見ている目の前の人物の態度が信じられなかった!ギーシュが、
あのどこか鼻持ちならない、だが常に自信に満ち溢れているような男の、この弱弱しいさまをッ!
「このままだと僕はいずれ戦いに負けるかもしれない・・。いや、負けて怪我だけで済めばまだいい。
最悪、僕は死んでしまうかもしれないんだ!・・・もう夢も希望も・・・。」
「甘ったれた事言ってんじゃないわよッ!!」
ギーシュは少しビビった。モンモランシーの檄が飛んだのだッ!


「モンモランシー・・・。」
「『夢も希望もない』!?じゃあアンタずっとあるかどうかもわからないモノに怯え続けて
生き続けるつもりッ!?」
ギーシュは顔を上げた。モンモランシーはいつになく真剣な顔つきだった!
「・・・・私だって、そんな事になるのは怖いわよ。本当にそうなったら逃げるかもしれない。・・・でも
逃げて、逃げて、でも次また同じ目にあって、また逃げ切る保障はあるの?
追い詰められて、もう逃げる事もままならなくなったらどうするの?」
ギーシュは気づいた。感情的なモンモランシーの目が、悲しげだった事に。
「…私なら戦う。たとえ力の差が圧倒的でも、自分の使える力をフルに生かして『戦い抜く』!
結果よりなにより、私は誇りだけは捨てたくないから!」

モンモランシーは持っていた小瓶をギーシュに渡す。
「これは・・・薬かい?」
「そう。それには悪夢を見る人のために、沈静作用が含まれた薬。
寝る前に飲めば、数日で悪夢は見なくなるはずだから。」
ギーシュはその薬を見て言う。
「モンモランシー・・・。君はコレを僕に渡すために・・・・?」
「・・・・!そうよッ!マリコルヌたちがあんたのうなされる声がうるさいから作ってやってほしい言われたから!それだけよッ!」
モンモランシーは急に顔を赤くして言った。
「じゃあ・・。それ飲む前に、もう一度よく考えてみて・・・・。」
そう言ってモンモランシーは行ってしまった。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ギーシュはしばらく黙りこくっていた!だがッ!
「僕は・・・・何やってるんだ。僕が勝手に見た悪夢でモンモランシーを困らせるなんて・・。」
ギーシュは駆け出したッ!行き着いた先は・・・図書室ッ!
厚めの呪文辞典、戦闘部門の欄を見る!
「バカな事をやってしまった。よりによって一人のレディーを悲しませてしまうなんて。
我がグラモン家ではッ!一人でも女性を悲しませる事は許されていなかったのにッ!」
ペラッ ペラッ
ギーシュはページを捲りながら思った。
(僕は比較的戦闘系の魔法は苦手だ。だがせめて一つ・・・。何か、シンプルだが、抜群の威力を誇る呪文を覚える事は出来るはずだッ!
ワルキューレよりシンプルで・・・確実な威力の奴がッ!)
やがて"石礫"の呪文を見つけて言う。
「ありがとう。モンモランシー。もう大丈夫さ。戦うよ。その『運命』と。」
本当に来るかわからない『運命』。だがギーシュはそのあるかすらわからない『運命』のため、
大ッ嫌いな地道な努力をかさねる『覚悟』を決めた!
そして、次の日から薬を服用し始め、呪文の反復練習を行ったのだ!
ギーシュには飛びぬけた才能はなかった。だがその訓練はギーシュに
確かな強さをもたらしたッ!!

―――――――そして後々ギーシュは『悪夢』を見なくなる。
そして、自らの訓練と、女の子達との時間を潰している間に、いつしかギーシュは
『悪夢』のことを忘れていた。
――――そして時間は現在に戻る。



「思い出したぞッ!そうだ。僕はいずれこの奇妙な平民と戦う運命だったのだ!」
ギーシュは立ち上がった後、自分の右腕ごと杖をするどく前に突き出すッ!
「まだここで倒れるわけにはいかないッ!!」
呪文を唱える!その内容はあの"石礫"だっ!!
「こいつ!戦う意思を蘇らせたッ!」
ブチャラティはスタンドでガードする体制に入る!
「くらえ!」
ギーシュは"石礫"を放った!それと同時に!
タンッ!!
ギーシュは後ろにジャンプしたのだッ!
ドォォォォォン!!
「ああ!!発射の衝撃で後ろにッ!!!」
ギャラリーの誰かが叫んだ。ブチャラティもこのギーシュの合理的な行動に驚いた!
「うまい。発射の衝撃を利用してオレのS・フィンガースの射程距離から抜け出した・・!
だがそれだけではない。コイツのこの目・・・。さっきまではこんな目つきをした奴じゃなかった・・・。
オレは前に、一度これに似た現象を見たことがある。何がそうさせたかはわからないが、
アイツは今、この戦いに全身全霊をかける『覚悟』をしたッ!
ここから先はッ!気を引き締めたほうが良さそうだ・・・・!」


ギーシュは着地しながら思った。
(僕は"土"のドットメイジだ。自分の弱さは自分が一番よく知っている。だがそれならば!
その弱さをカバーする、僕にとって最善の戦いを行うッ!あるはずだ!僕の最善の戦い!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ギーシュは右腕を繋ぎなおそうとしながら言う。
「さあ、今度はこちらの反撃だッ!」
「こちらも・・・覚悟を決めてかかる!」

to be continued・・・

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