ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-25

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匿名ユーザー

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朝早くワルドに起され促されるままついていくと、礼拝堂でわたしの結婚式が
始められようとしていた。
ここに居るのは、わたしとワルド、ウェールズ様とプロシュートだけだった。
何故、今こんなのとになっているのか、わたしには分からなかった。
ワルドは、この旅が終われば僕を好きになると言った。
結婚しようとも言った。
だけど、何故、今?こんな時に?こんな場所で結婚式を?
分からない、分からない。
不安になりプロシュートを見るが、彼は部屋の隅で黙ってグラスを傾けていた。
どうして何も言ってくれないの?
「緊張しているのかい?仕方が無い。初めてのときは、ことがなんであれ
緊張するものだからね」
ウェールズ様は、にっこりと笑って後を続けた。
「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。
では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、
そして夫と…………」
こんな気持ちで結婚なんて出来るワケないじゃない。
わたしはウェールズ様の言葉の途中で首を振った。
「新婦?」
「ルイズ?」
ウェールズ様とワルドが怪訝な顔でわたしの顔を覗き込む。
「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」
「違うの。ごめんなさい……」
「日が悪いのなら、改めて……」
「そうじゃないの、そうじゃないの。ごめんなさい、ワルド、わたし、
あなたとは結婚できない」
わたしの言葉にウェールズ様は首をかしげた。
「新婦は、この結婚を望まぬか?」
「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、
わたくしはこの結婚を望みません」

ワルドの顔に、さっと朱みがさした。ウェールズ様は困ったように首をかしげ、
残念そうにワルドに告げた。
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」
しかし、ワルドはウェールズに見向きもせずに、わたしの手を取った。
「……緊張しているんだ。そうだろルイズ。きみが僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい。ワルド。憧れだったのよ。もしかしたら、恋だったかもしれない。
でも、今は違うわ」
ワルドは、わたしの肩をつかんだ。その目がつりあがる。表情がいつもの
優しいものでなく、どこか冷たい、トカゲか何かを思わせた。
熱っぽい口調でワルドは叫んだ。
「世界だルイズ僕は世界を手に入れる!そのためにきみが必要なんだ!」
豹変したワルドに怯えながら、わたしは首を振った。
「……わたし、世界なんかいらないもの」
ワルドは両手を広げると、わたしに詰め寄った。
「僕にはきみが必要なんだ!きみの能力が!きみの『虚無』が!」
そのワルドの剣幕に、わたしは恐くなった。優しかったワルドがこんな顔をして
叫ぶように話すなんて夢にも思わなかった。
わたしは知らず知らずのうちに、ワルドから身を引いた。
「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか!きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀な
メイジに成長するだろう!きみは気づいていないだけだ!その才能に!」
「ワルド、あなた……」
この人は、わたしの知っているワルドじゃない。何が彼を、こんな物言いをする
人物に変えたのだろう?
ワルドの剣幕を見たウェールズ様が、間に入ってとりなそうとした。
「子爵……、きみはフラれたのだ。いさぎよく……」
が、ワルドはその手を撥ね除ける。
「黙っておれ!」
ウェールズ様はワルドの言葉に驚き、立ち尽くした。


ワルドは、わたしの手を握った。
「ルイズ!きみの才能が僕には必要なんだ!」
「わたしは、そんな才能のあるメイジじゃないわ」
「だから何度も言っている!自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」
痛い。振りほどこうとしたが物凄い力で握られて振りほどくことができない。
「そんな結婚死んでもいやよ。あなた、わたしをちっとも愛してないじゃない。
わかったわ、あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという、
在りもしない魔法の才能だけ。ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。
こんな侮辱はないわ!」
ウェールズ様がワルドの肩に手を置いて、引き離そうとした。
しかし、今度はワルドに突き飛ばされた。
突き飛ばされたウェールズ様の顔に赤みが走る。立ち上がると、杖をぬいた。
「うぬ、なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から
手を離したまえ!さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」
ワルドは二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。
そのまま風のように身を翻らせ、ウェールズ様の胸を青白く光る杖で貫いた。
「ウェールズ、貴様ごとき無能なメイジが僕を切り裂くと?笑わせるな!
滅びの道しか残されておらぬ哀れな王族よ、そこで犬の様に這い蹲り、
己の無力さを呪うがいい」
「き、貴様……、レコンキスタか?」
ウェールズ様の口から、どっと鮮血が溢れる。
「よく気が付いたな、偉いぞウェールズ」
ワルドは冷たい感情のない声で言った。
「ウェールズ様!」
わたしはワルドの手を引き剥がしウェールズ様を抱え起こした。
「……ラ・ヴァリエール嬢……アンリエッタに……この指輪を」
ウェールズ様は震える指先で自分の指輪をわたしの手の平にそっと置いた。
「あと……アンリエッタに……」
言い終わらない内にウェールズ様の手がダラリと垂れた。


「しっかりしてください!ウェールズ様!」
ウェールズ様の体から生命の鼓動が消えた。 
わたしは、たまらずワルドに怒鳴った。
「貴族派!あなた、アルビオンの貴族派だったのね!裏切り者ッ!」
「裏切り者か……ルイズ、視野を広げて見ると、裏切っているのは実は君達の
方かもしれないよ」
わたしの怒鳴り声にも、どこ吹く風のワルドがとんでもない事を言い出した。
「何言ってるの?」
「始祖ブリミルの悲願、聖地の奪還を疎かにし、ブリミルの恩恵である魔法の
力を貴族同士で領土を奪い合うためだけに使う事こそが、始祖ブリミルに
対する裏切りだとは思わないか?ルイズ」
「なら、その考えを陛下に言えばいいじゃない!」
「言ってどうする、ハルケギニア全土のメイジの意志を一つにまとめる事に
何年かかると思っている。いや、不可能といってもいい。そのために革命が
必要なのだよ」
「昔は、そんな風じゃなかったわ。何があなたを変えたの?ワルド!」
「月日と、数奇な運命のめぐり合わせだ。今ここで語る気にはならぬ
話せば長くなるからな」
もはや目の前の男は、わたしの知ってるワルドじゃない!
「助けて……助けてプロシュート!」
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ピタリ
プロシュートはわたしの隣に来ると手に持ってたグラスの氷水を
わたしの頭にぶっかけた!
「冷たッ!なにすんのよ!」
「頭を冷やせルイズ。要するにワルドは敵だってワケだ。後はワルドを
倒し手紙を持って帰る。それだけだろ?」
「えらく簡単に言ってくれるわね。ワルドはスクエアのメイジなのよ」
「知ったことか、お前は自分の身を守る事だけを考えてろ」
いつの間にか出現したグレイトフル・デッドがワルドに向かって大きな手を
繰り出した。しかし、その大きな手はワルドの杖で防がれてしまった!



「見えているの!?」
わたしの疑問にワルドは余裕の態度で解説した。
「見えている訳ではない、風の動きを読んだのさ。土くれの情報『見えない力』
と言ったな。動きが速過ぎる為見えないと思っていたのだが、そのままの意味
で『見えない力』であったか」
今までプロシュートが圧倒的だったのは、他のメイジにはグレイトフル・デッドが
見えていなかったからだ。
「ど、どうするのよプロシュート」
しかし、プロシュートに全く焦った様子は無かった。
「慌てるなルイズ。俺は見えて当たり前のヤツ等と殺し合ってきたんだぜ。
見えて対等であって、決して不利じゃねえ!」
グレイトフル・デッドの拳をワルドは飛びながらかわした。
それから杖を振り、呪文を発した。プロシュートはグレイトフル・デッドで防ごうと
するがウィンド・ブレイクは脇をすり抜け彼だけを襲う。プロシュートは剣を素早く
構え受け止めようとするが壁にぶち当たり、プロシュートは呻き声をあげる。
怪我した左腕が痛むのか、プロシュートの動きにいつものキレが感じられない。
「どうした?お前のお前の力を見せてみろ、偉大なる使い魔ガンダールヴ」
残忍な笑みを浮かべて、ワルドが嘯く。
そんなとき、デルフリンガーが叫んだ。
「思い出した!」
プロシュートも突然のデルフリンガーの言葉にとまどってる様だ。
「なんだよてめえ、こんなときに!」
「そうか……ガンダールヴか!」
「なんのことだ!」
「いやぁ、俺は昔、お前に握られてたぜ。ガンダールヴ。でも忘れてた。
なにせ、今から六千年も昔の話だ」
「寝言、言ってんじゃねえ!」
デルフリンガーに返答しながらプロシュートはワルドの魔法をかわしていく。
「嬉しいねえ!そうこなくっちゃいけねえ俺もこんな格好してる場合じゃねえ」
叫ぶなり、デルフリンガーの刀身が光り出す。


プロシュートは呆気に取られてデルフリンガーを見つめていた。
「デルフ?」
再びワルドはウィンド・ブレイクを唱えた。
光に気を取られていたプロシュートは避けずにデルフリンガーを構えた。
「無駄だ!剣では避けられないと、わかっただろうが!」
ワルドが叫んだ。が、しかし、プロシュートを吹き飛ばす風が、デルフリンガーの
刀身に吸い込まれていく。
そして……。
デルフリンガーは今まさに砥がれたかのように、光り輝いていた。
「デルフ?お前……」
「これが、ほんとの俺の姿さ!相棒!いやぁ、てんで忘れてた!そういや
飽き飽きしてたときに、テメエの体を変えたんだった!なにせ、面白いことは
ありゃしねえし、つまらん連中ばっかりだったからな」
「早く言いやがれ!」
「しかたねえだろ。忘れてたんだから。でも安心しな相棒。ちゃちな魔法は
全部、俺が吸い込んでやるよ!この『ガンダールヴ』の左腕、
デルフリンガーさまがな!」
興味深そうに、ワルドはプロシュートの握った剣を見つめた。
「なるほど……。やはりただの剣ではなかったようだ。この私の『ライトニング・
クラウド』を軽減させたときに、気づくべきだったな」
それでも、ワルドは余裕の態度を失わない。
杖を構えると、薄く笑った。
「さて、ではこちらも本気を出そう。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、
その所以を教育いたそう」
プロシュートは剣とスタンドで襲うが、ワルドは軽業師のように剣戟を
かわしながら、呪文を唱える。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
呪文が完成すると、ワルドの体はいきなり分身した。
四体の分身、本体と合わせて、五体のワルドがプロシュートを取り囲んだ。
「分身か……ギトーはコレを見せようとしてたのか」


「ただの『分身』ではない。風のユビキタス(偏在)……。風は偏在する。風の
吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」
ワルド達は懐から真っ白な仮面を取り出すと、顔につけた。
あの、桟橋で襲ってきた仮面のメイジはワルドだったの!
「まるでスタンドだな。最強の所以は分かった……だとしたら、どうして『虚無』に
拘るんだ、『風』が最強なんだろ?」
プロシュートの問に、フッとワルドは自嘲的な笑いを浮かべた。
「確かに系統魔法で『風』は最強だ……だが視野を広げて見ると、認めたくは
無いがエルフの使う先住魔法は我らの力を遥かに凌駕する。その強力なエル
フ共を打ち破る為にルイズの『虚無』が必要なのだよ!」
ワルドの目に以前、宿で見た妖しい光が灯る、ワルドの本当の目的が判った。
ワルドが在るという、わたしの虚無の力がエルフを倒す為に必要だったのね。
「自分じゃエルフを倒せない、だからルイズの力に頼ろうってのか。恥ずかしく
無いのかテメーはよぉ」
「目的のためには、手段を選んでおれぬのでね」
言い終わると、ワルドは呪文を唱え、杖を青白く光らせた。
『エア・ニードル』、さきほど、ウェールズ様の胸を貫いた呪文だ。
「杖自体が魔法の渦の中心だ。その剣で吸い込むことはできぬ!」
五体のワルドがプロシュートを襲う。
その攻撃をプロシュート自身とグレイト・フルデッドが防ぐが、五対二……はっきり
言って分が悪い。反撃できずに防戦一方だ。
ワルドは楽しそうに笑った。
「平民にしてはやるではないか。さあ見せてみろ、お前の力はこんなものでは
ないのだろう?」
じりじりとワルド達はプロシュートににじり寄った。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「もう、スデに『見せている!』、気づいてないのか?」
まさかっ!まさか……プロシュートは!……


「なに!?こっ、これは……」
ワルドの仮面に隠されていない口元に深い皺が刻まれていた。
あの長い髪にも分かりづらいが白髪が見え隠れしている。
グレイトフル・デッドの無差別老化攻撃!
わたしは慌てて自分の髪を手ですき、観察してみる。
艶のある桃色のブロンド……指先も皺が無かった。
顔は鏡がなかったので確認できなかったが、手触りでは違和感が無かった。

こいつら!早くも気づいていやがったんですよ!兄貴の『グレイトフル・デッド』は
体を冷やせば老化が遅れるっって事をよォーッ。

!!突然聞こえた男の声。だから、プロシュートはわたしに氷水をかけたのね。
わたしの体を冷やすために。
「こ、これはっ!?この疲労感は!」
ワルドの言葉に始めて焦りが出てきた。
「どうしたワルド、任務の疲れで肩コリでも出て来たか?」
プロシュートはデルフリンガーとグレイトフル・デッドでワルドに攻撃した。
ワルドにも先ほどの動きが見られなかった。
「うおおおおおおおぉ、そんな馬鹿な!神の左手ガンダールヴ、その『能力』は
あらゆる武器を使いこなす事と超人的な運動能力の二つのはず………
この力は一体……!?」
「この力は俺自身のスタンド能力だ」
プロシュートがグレイトフル・デッドの拳をワルドに振るう。
「『スタンド』?先住魔法か!?」
「おいおいワルドさんよー、俺が何から何まで親切に教えると思うのか?」
「おのれ土くれ!なにか隠しているとは思ったが、この事だったとは!!」
フーケ……ワルドに老化現象は話さなかったのね。いや、思い出したくも
話したくもなかったのか。
このままだとプロシュート押し勝つだろう……
なんだか心のモヤモヤが晴れない、わたしは何をやっているんだろう。
フーケの時も、今の戦いもプロシュートに任せっきりにしている。
たしかに使い魔は主人の身を守る。だけど主人は何もしないって事じゃない。
わたしは、この任務で成長すると誓った。だけど今わたしは何もしていない……
これじゃ何も変わらないわ。 
わたしは杖を掲げ呪文を詠唱する。


「なにやってる!ルイズ」
プロシュートの叱責が飛ぶが、わたしは止めない。
ファイアーボールを唱え杖を振る。一体のワルドが表面で爆発する。
ぼこん!と激しい音がして、そのワルドは消滅した。
「え?消えた?わたしの魔法で?」
残った四体のワルドが一斉にグルリとわたしの方を向いた。
こっ恐い……。
「ファイアーボールの一発で僕の偏在が消し飛ぶ訳が無い。君は土くれの
ゴーレムの腕を吹き飛ばしたそうじゃないか、しかも再生するはずの腕を
そのままにして」
ワルドの言葉に熱がこもる。
「追い詰められ、命を懸けると本当の力がわかる。なるほど、そこの使い魔の
言うとおりだ。まだ自分の系統に目覚めてもいないのに、この威力!
覚醒すればどれ程の力になるのか楽しみだ、実に楽しみだぞ僕のルイズ!」
ワルドが目を輝かせ、わたしに杖を向ける。
「逃げろ!」
プロシュートが叫ぶがワルドの風で、わたしは壁に叩き付けられた。
「「カ八ッ」」
わたしは衝撃でしばらく体が動かなかったがワルドは何もせず、ただプロ
シュートの様子を眺めていた。
おもむろにワルドが口を開いた。
「今、僕の魔法が、かすりでもしたか?」
何を言ってるのワルド?
プロシュートの方を見ると険しい表情で汗をダラダラとかいていた!?


プロシュートが叫ぶ。
「逃げろッ!ルイズ!」
わたしには何が何やらさっぱり分からなかった。
「主人の危機を知らせる能力か?ルイズのダメージが使い魔に伝わったのか」
ワルドの攻撃の質が変わった!プロシュートだけを狙う攻撃から、わたしにも風
を当てようと杖をこちらに向けてきた。

ズドドドドドドド

「うおっ、うおぉおおおおお」
プロシュートはわたしを庇う様にワルドの前に立ちはだかる。
「プッ、プロシュート!!」
「オレにかまうなッ!逃げろッ!」
「え!!え!?」
「早くにげろーッ!」
わたしのダメージがプロシュートのダメージになるですって?
思い出した!!そういえば召喚した時にプロシュートが言っていた。
それを今の今まで忘れていたわ!何てこと、何てことなの。
まさか、こんな事になるなんて!
一体のワルドがエア・ハンマーを、わたしにぶつける。
「「カハッ」」
攻撃を受けていないプロシュートも息をもらす。
「隙だらけだぞガンダールヴ」
三対のワルドの杖がプロシュートを引き裂いた。
「プロシュート!!」
プロシュートが床に倒れる、その体はピクリとも動かない。
出血がみるみる内に床に広がっていく。

わたしは立派なメイジになるとか、認められたいとか……空回りして。
プロシュートの足を引っ張って、最低のマヌケだわ。




ワルドの顔から皺が消えた……
余裕を取り戻したワルドが、にこやかな口元で声を高らかにあげた。
「さてルイズ、今一度問おう。僕と一緒に来てくれるかい?」
「絶対に嫌よ!」
YESと答えると思ってんの、この男は?
「さて、どうしたものか。かけがえのない『虚無』を殺してしまう訳にもいかぬ。
無理矢理に連れて帰っても協力を得られない……薬でも使うか?いや……
魔法の使えぬ人形にしては意味が無い……そうか、その手があったか。」
ワルドは、ニタァと笑うと舐める様な視線をわたしに向けた。
「君に惚れ薬を使う」
「ワルド、あなた何を考えているの。惚れ薬の売買、所持、使用は重罪よ!」
「革命を考えている者に、その様な忠告は無意味だとは思わないのかい?」
「あなた最低ね!」
「最後に自分の考えで話せる言葉は、それでいいのかい僕のルイズ?」
いいわけないでしょ。なにが惚れ薬よ!冗談じゃないわ!
「フフフ、いいぞ『聖地』が見えてきた!ヤル気がムンムンと湧いてくるじゃ
ないか!ええ、おい!」
ワルド、自分の世界に酔ってる?
四対のワルドがゆっくりと、わたしを囲もうと動き出す。
「フフ、すぐ済むよ」
にっこりと笑うワルドはもう、ただ気持ちが悪いとしか言い様がない。
「近づかないで!」
ファイアーボールを唱える。
しかし、ワルドにぶつからず、全く別の場所が爆発するだけだ。
続けてもう一度唱えるが、これも当たらずワルドの歩みは止まらない。
「威力は申し分ないがコントロールは、まだまだの様だな」
歩み寄って来るワルドの足が急に止まった。
「ば……ばかな!こ……この疲労感……ま……また始まったぞ!」



「終わってないぞ!!まさか……まさか!あいつ!」
ワルドが苦しんでる?でも……プロシュートはもう……
わたしはプロシュートに視線を向ける。

「グレイト……フル・デッド……」

プロシュートの血溜の中にグレイトフル・デッドが立っていた。
その表面が古い土壁の様にボロボロと崩れていく…………
まるでプロシュートの傷を表わすかのように……
「プロシュートォォォォォ」



「本当に……あなた……ううっ……そのとおりだったのね。
腕や脚の一本や二本、失おうとも、わたしを守ると言った事は!!
プ……プロシュート、あんなボロボロの重症じゃあ…………
も……もう……あなたは助からないッ!
息をひきとるのも時間の問題ね。
だのに、あなたは自分のグレイトフル・デッドを解除しない。
わかったわプロシュート!!
あなたの覚悟が『言葉』でなく『心』で理解できたわ!」

ワルドがプロシュートに息の根を止めようと襲い掛かる。
「この死にぞこないが!」
そうはさせない!!
「ファイアーボール」
プロシュートに迫ったワルドが吹き飛んだ。
「むっ!!ルイズのコントロールが良くなった!?」
残った三対のワルドが、わたしを取り囲もうと動き出す。
わたしは急いでプロシュートを守るように立った。
「嬢ちゃん、俺を使え!」
足元から、デルフリンガーが声をあげる。
わたしは、言われるままデルフリンガーを両手で構える……重い。
杖と剣を纏めて持っているので、振るいにくい!
剣を構えたとたんにウィンドブレイクが迫ってきた。
だがそれはデルフリンガーによって吸収されていく。
「くっ、インテリジェンスソードか!直接ルイズを気絶させねばならぬようだな」
目の前のワルドが、わたしに杖を構える。
「ファイアーボール」
ワルドが音を立てて消し飛んだ。これも偏在か……だが、あと二体!!
消し飛んだワルドから、二体のワルドが間合いを取る。
「せ……正確すぎる、僕の動きが正確に読まれてしまっている。
しかも一撃で偏在を吹き飛ばされる『パワー』もすごい!
老化の使い魔さえ倒せば、もう僕の勝利かと思ってた……
だが甘くみていた、この戦いの中で本当にやっかいなのは
『老化させる能力』の使い魔の方ではなかった
真に恐ろしいのは……!!この『虚無』のルイズの方だった!」
今まで、外していたのが嘘のように、狙い通りに魔法が当たる。
不思議な感覚、これがリズムが生まれるってやつなの?

「栄光は…………おまえに……ある……ぞ…………
……やれ      やるんだ……   ルイズ    オレは……
  おまえを   見守って……  いるぜ……   やれ……     」


「ルイズ、君の『面がまえ』……今まで、こんな『目』をしているメイジではなかった
まるで『十年』も修羅場を、くぐり抜けて来たような……スゴ味と……
冷静さを感じる目だ……たったの数分で、こんなにも変わるものか……
君に小細工は通用しない!!」
二体のワルドがわたしに突っ込んできた。
「ファイアーボール」
わたしは前を走るワルドに魔法をぶつけた。
ワルドが爆発し消し飛ぶが、後ろのワルドは構わずに突っ込んでくる。
偏在を盾にしたのか。これで残るのは本体のみ!
「もらったよ、僕のルイズ」
呪文が間に合わない!単純な力押しできたか!!
ワルドが杖を構える。やっぱり、わたしじゃ勝てないというの?
憎憎しげにワルドを睨む。その後ろには、いつの間にかグレイトフル・デッドが
その大きな腕を振り下ろしていた。
ワルドの左腕が飛んだ。
「なにー!?」

「グレイト……フル・デッド……」

激昂したワルドが杖を振り上げた。
「この使い魔がッ!!」
ありがとうプロシュート。このチャンス、無駄にはしないわ。
「隙だらけよ!ワルドッ」
プロシュートに一撃を加えた屈辱の台詞をそのまま言い返す。
「しまっ……」
「ファイアーボール」
「ぐはッ!!」
ワルドの表面で爆発が起こり、煤だらけで倒れた。

倒した……わたしが『スクエア』のワルドに勝った!!

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