ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-10

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匿名ユーザー

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「諸君、私は料理が好きだ…むにゃむにゃ…」
「おい、起きろ」

へんじがない。ただのねむいひとのようだ。

「おい、起きろ」
二回目のコール。しかしやはり、返事は無い。

無言で管から作った空気の渦を、枕もとに飛ばす。
ルイズはその衝撃で目を覚まし、ワムウを睨みつける。

「あんた!あれほどいったでしょ!また枕一つダメにして!」
無残な枕だったものをワムウにぶつける。

「朝早く起こせといったのはお前だろう、シエスタと出かけるんじゃなかったのか?」
「そうよ!何でそれを早く言わないのよ、さっさと着替えさせなさ…あんたに期待したら服がいくつあっても足りなかったわね……ああ、もうあんたは出かける準備しときなさい」

昨夜に服を片付けさせようとして引きちぎられていたルイズはワムウの家事能力について大分理解してきていた。

「俺も行くのか?」
「ああ、あんたは昨日の夕食のときいつのまにか居なくなってたわね。あの超絶的ダイナマイト一食爆発的雑味えぐ味ゼロ的格別デザート的天使的至高快感的今世紀最大的料理人のマルトーさんの料理を楽しまなかったなんて始祖ブリミルから天罰が下ってもおかしくないわ。今思い出してもヨダレずびっ!だわ!歯が飛び出たりしたときはびっくりしたけど」
昨日の回想に浸り始めるルイズ。
ワムウは無視して質問を続ける。

「だからなぜ俺もいくんだ?お前らは湖に行くんだろう?危険があるにしても俺を頼るな」
「違うわよ、昨日シエスタに急な用事が入って街に行かなくちゃいけなくなったから、一緒にいくことにしたの。
あんたも私の使い魔になった以上、この辺の地理とか常識をしっておいてもいいでしょ?」
「別に地理や常識などに興味は無いが、こちらの世界の武器は気になるな。戦闘はやはり魔法主体なのか?」
「前線に出てくるメイジなんて数が知れてるから、武器くらいあるわよ。むしろ魔法で武器を強化しているからあんたのところのなんかよりたぶんずっと強力よ!あんたんとこに錆びない剣だの喋るグラブなんてなかったでしょ?」

ワムウは少し考え、承諾した。

「わかったなら荷物でもまとめときなさい、使い魔なんだから荷物もちくらいしなさいよ、それくらいできるでしょ?」
ルイズは財布となにかがいくつか入っているカバンを指差した。

 * * *

「あら、待たせちゃった?」
既に三頭、馬が校門の外につながれていた。
「い、いえ、そんな滅相も無い!」

待たせたという言葉に過剰反応するシエスタを見てフフフと笑う。

「でもいいんですか?私だって馬車なら操れますよ?わざわざ一人一頭乗馬でいかれるなんて…」
「たった3人で街行くだけなのに馬車なんか一々出してどうするのよ、これでも私乗馬は特技なのよ?
心配するならこいつが馬に乗れるかどうかの方を心配したほうがいいわ、あんた乗馬経験あるってほんとのほんとよね?」
「ああ、何度かな。もっとも、普通の馬ではないが」
「そんなことだろうと思ったわ。とりあえずあんたでも乗れそうな一番でかい馬を頼んだけど…シエスタ、私の馬はどれ?」
「えーと、ルイズさんの馬はそこのヴァルキリーっていう馬で、私の馬はその鹿毛の馬で名前はストライクイーグル
だそうです。ワタライ牧場生産って書いてありますけど…シズナイってどこだか知ってます?」
「うーん、聞いたこと無いわね」
「そうですか、私も聞いたことないと思ったらどうやら東方生まれらしくて…ちょっと怖いです」
「大丈夫よ、馬に東も西もないわよ。それで、ワムウのは?」
「えーと、もうすぐ来るみたいで……あ、来ました!」


ズシン、ズシンと重々しいを立てて、巨大な黒い馬がやってきた。
「…ほんとに、これ馬?」
ルイズがポカンと口をあけて馬を連れてきた人に尋ねる。
「ええ、気性が荒すぎてこの世話をできるのはあっし一人だけなんで止めたんですが…」
御者は語尾を濁す。

ワムウが前に出て、馬に近寄る。
「あ、あんたもかなりでかいですなあ」

そして、ワムウは首に手を当てる。
唸っていた馬が急に静まる。

「あれ?大人しくなったわ?」
「この馬でいい、出発するぞ」
ワムウは巨馬にまたがり、馬は歩み始めた。
「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!ほら、シエスタも乗って乗って!」

 * * *

虚無の曜日。なにげなく外を見ていたキュルケがワムウとルイズと一人のメイドが出かけようとしているのを見つける。
キュルケは部屋を飛び出した。

鍵のかかっている部屋を無理やり『アンロック』であける。
部屋の主にサイレントをかけられるが、相手も根負けしてサイレントを解く。

「タバサ、今から出かけるわよ!早く支度をしてシルフィードを呼び出して!」
「虚無の曜日」
反論の意を示されるが、そんなことは知ったことではない。

「あんたにとって虚無の曜日はどういう物かわかってるけど緊急事態よ!エマージェンシーよ!スクランブルよ!」
しかしタバサは首を振る。

「あのゼロのルイズの使い魔とルイズとメイドが出かけたのよ!たぶん誰もいない森の中で二人を丸呑みするに違いないわ!早く追いかけないと!」
「ルイズが、心配?」
「ち、違うわよ!学院から人死にが出るのが嫌なだけよ!あんたのシルフィードじゃなきゃ追いつかないんだから!」
しょうがないか、と言わんばかりにうなずき、窓の外に向かって口笛を鳴らす。

 * * *

「へー、シエスタはタルブの村の出身なんだ、どんなところなの?」
「自然に囲まれてて、すごい綺麗なところですよ。田舎って言われればそれまでですけどね」
シエスタはえへへと笑う。
「そんなところなんだ、一度いってみたいわね。どれくらいの距離なの?」
「馬で数日くらいかかると思いますよ、だからあんまり頻繁に帰れなくて送金とかは街で頼まないといけなくて…今日もそれの手続きが急に入ってしまって……」
「その年で家計を支えてるんだ、やっぱりすごいわねシエスタは。私には考えられないわ」
「そんな、貴族と平民では生活も変わりますから、それが当然ですよ。ルイズさん達は将来立派な貴族になるためにここで学んでいるんですから。それを私たちが支えられるっていうのは私にとっても嬉しいですよ…あ、街が見えてきましたよ!」

町の入り口にある馬停所に馬を止め、シエスタは少し時間がかかるということで少しの間別行動ということにした。

「ルイズさんは寄るところあります?」
「そうねえ、特に無いけど……そういえばワムウが武器を見たいって言ってたわね、そこの武器屋で待ってるわ」
「はい、わかりました。大体15分もあればいけると思います」

といってシエスタは街の中心部に歩き出した。

「さ、ワムウ行くわよ」
ルイズは武器屋の扉を開ける。


「いらっしゃいませ……おやおや、貴族様ですか、いったいなんの御用で?」
髭を生やした三十後半から四十歳台くらいの店主が声をかけてくる。客はいないようだ。

「こいつが武器に興味があるらしくて」
「おや、そうですか。色々と揃えておりますよ、もちろん冷やかしでも構いませんよ。どんな武器をご所望で?」
「そうだな、こちらの世界の武器をあまり知らんからな、オードソックスな奴を見せてくれ」
「オードソックスな武器ですか、コレクションを披露できなくて残念ですな。世界の妖しげな武器を集めるのが趣味の一つでしてね、こうして趣味が高じて武器屋をやっているわけですが……」
「どんな武器があるのよ?」
ルイズが口を挟む。
「人心を操る剣はもちろん、刃物付帽子、妖怪を封じていた槍、三方向に攻撃する妖刀……珍しいところでは正義の算盤や八岐大蛇の尾から取り出した剣、こんにゃく以外ならなんでも切れる剣などなんでもありますよ……お値段は張りますがね」
「いくらくらいなのよ?」
「ピンキリですが、私のコレクションは端金じゃ売れませんな。正義の算盤なら五千エキューというところでしょうか」
「高すぎるわよ!何年遊んで暮らせるのよそれ!」
「もちろん買われなくても結構です…コレクションを売るとしたらそれくらいは必要、という例えですよ」

店の棚を物色しているワムウが手を止める。
「これは…剣はあまり詳しくないが素晴らしいな」
「お客さん、お目が高い。それは東方のニッポーネというあの技術立国で作られた名剣でございます…それを作った剣職人はあの有名なホンダソウイチロウでして…コレクションではありませんが名剣には間違いないですな」
「いくらだ?」
「三千エキューですな、新金貨なら四千五百で」
「エキューというと、この金貨か?」
「ええ、それが三千枚です」
「ちょっとワムウ、あんた、何に手出してるのよ!いっとくけど私は剣に五百エキュー以上払う気はないわよ」
「俺の金を使う。なにぶん臨時収入があったんでな、だがさすがに三千はない」
「ふむ、それは残念ですな……ですがお客様はわかってらっしゃる…普通の人間とはオーラが違うようですし……そうですな、私の趣味の一つはコレクションと言いましたがね…私はギャンブルにも目が無くてね、どうです?
その剣を賭けて私とギャンブルでもいかがでしょうか?」

その提案にルイズがそんなの認められない、とばかりに
「ギャンブルなんて無理よ!負けたとき三千エキュー払え、なんていわれても私は嫌よ!」
反論するが
「負けたときに金はいりません…私は生まれついての『賭け師(ギャンブラー)』!私はあなた達のような『魂』を集めるのがコレクションで…もっとも『魂』を集めると言うのは比喩のような物だと思って構いません…
ギャンブルは精神と精神の戦い!いわばギャンブラーは戦士!勝利したときには相手の魂を得るといっても過言ではありません
さあ!あなたがギャンブルを受けると言うのならば!『魂を賭ける』とおっしゃってください」
「いいだろう、魂を賭けよう」
ワムウは即答する。

「グッド!お名前はなんといいます?…おっと、名前を尋ねるならばこちらから名乗らなければ…私の名前は『ダニエル・J・ダービー』と申します……」
「ワムウだ」
「ワムウ様ですか、いいお名前ですな」

鈴の音が鳴り、外の風が入ってくる。
「あっ、シエスタ、用事は終わったの…ってなんでキュルケ達までいるのよ!」
「あんたが食われるかどうか見物に来たのよ!でもあんたアホじゃないの?その使い魔のために武器屋に寄るなんて盗人に追い銭どころか強盗に拳銃よ!なに考えてるのよ!」
「別に買うわけじゃないつもりだったけど……なんか変なことに巻き込まれそうでね」

店主がキュルケに話し掛けてくる。
「いらっしゃいませ……その通り、少々取り込み中でね、注文をするなら後にしていただけますかな?」
キュルケは怪訝な顔をする。

「なにをする気なのよ?」
ルイズが説明をする。


「ギャンブルだって…勝ったらそこのホンダなんとかの剣を貰えるんだって」
それを聞いてキュルケは顔を変える。

「ホンダって…あのホンダ?ゲルマニアでもあんな剣は作れないわよ!店主、私もそれに乗せなさい!」
「いいでしょう…しかし2人というのは中途半端ですな……せっかくですから、5人乗りませんかね?
聞けばその男性は使い魔とおっしゃる……使い魔と主人は一心同体…乗るならば『魂を賭ける』とコールしてください」
「仕方ないわね、私も乗るわよ『魂を賭けるわ』」
「ルイズさんが乗ると言うなら私も…『魂を賭けます』」
「私も『魂を賭けるわ』、タバサはどうするの?」
「ギャンブルなら少しは慣れてる…『魂を賭ける』」
「グッド!5人揃いましたな!では、準備してくるので少々お待ちを…」

ダービーは中に去っていく。

キュルケが尋ねる。
「ギャンブルって、何するのよ」
「知らないわよ」
「はあ?何するかもわからないのに受けたの?バカじゃないの?」
「あんたも同じでしょ」

いがみ合っている間に、ダービーが戻ってくる。
「お待たせしました…四人ならば麻雀やトランプなどもいいですが…説明がまどろっこしいのは避けたいところです…そこで、こんなものを用意しました」

ダービーが持ってきたのはテーブルと、12枚のカード。
「名づけるならば…『限定ジャンケン』!」

「なによ、その限定ジャンケンって。ジャンケンは知ってるけど」
「その通り、普通のジャンケンを知っていれば誰でもわかるゲームです…しかし少し説明の時間を頂こう。
この6枚のカードをどうぞ」

それらには『グー』『チョキ』『パー』とその絵柄が書かれていた。同じカードが二枚ずつある。
「ご存知の通り、このカードでジャンケンをして頂きます…カードの数と内訳は私も貴方達も同じです…
これで、『5回』ジャンケンをしていただきます」
「普通のジャンケンとはどう違うのよ?」
「一度使ったカードはもう二度と使えません…ですから最終的に一枚だけ余る、ということです」
「余ったカードはどうするの?」
「カードを余らせるというのは、最後のジャンケンで両者残り1枚、勝ち負けがわかっているという状況を避けるためです。やる前から勝負が決まっている勝負ほど興が削がれるものはありませんからな」

そしてチップを十枚、袋から出してくる。
「これを五枚、貴方達に渡します…一枚が魂一つと考えてください……私のチップも五枚、ただし私の魂が一枚、残りの四枚があの剣の分です。終わった時にこの剣のチップが一枚でもそちらにあれば潔く渡しましょう」

受け取ったチップには一人一人の似顔絵が描かれていた。

「説明が長くなりましたな…では始めましょう。最初は誰です?」
「俺が行かせて貰おう」
ワムウがテーブルの前に立つ。
「グッド!あなたの出すカードが決まったら裏にしてテーブルに置いてください…両方が置いたら一斉にめくります。
私は……そうですな、最初は武器屋ですからな、刃物を意味するチョキにすることにしましょう」
ダービーが揺さぶってくる。

が、ワムウはポーカーフェイスを崩さない。
「そうか、では俺はこれでいこう」
ワムウはカードを伏せ、自分のチップを横に置く。それに応じてダービーも裏のカードとチップを置く。
「では…オープン!」


ダービーが出したのは……『パー』。
それに対して、ワムウが出したのは……『グー』!

「MOOWWWWW!!貴様、騙したな!」
「言ったでしょう、ギャンブルとは戦い、戦場で後ろから刺されたと言っても文句をいえる相手はいませんよ」
「そうよワムウ、あんた単純すぎるのよ!あんなの信じるほうがバカなのよ!次は私がやるわ!」
「グッド!では次は今勝ちましたし…ゲンのいい『パー』にしましょうか…」

ルイズは不適に笑う。
「フフ、ワムウには通じたかもしれないけれど、私には通用しないわよ?」
そうして笑みを残しながら裏のカードとチップを置く。
「そうですか…そんな相手と戦えるとはギャンブラー冥利につきますな、では私はワムウを賭けましょう」
同じくチップとカードをテーブルに置く。
「では……オープン!」

ルイズが出したのは…またもや『グー』

それに対してダービーは………
『パー』!

「ニ勝目とは幸先がいいですな……では『ルイズ』も頂きましょう」
「そ、そんな…」
愕然とするルイズにワムウが文句を言う。
「お前はひねくれすぎている」

「二連敗しているというのにずいぶんと余裕ですな、皆様。魂を賭けていると言うのに…」
ダービーはニヤリと笑い、続ける…
「私、一つ嘘を言っていましてね…『魂』を集めると言うのは比喩のような物だと言いましたが…
実は比喩ではありません…生まれながらの能力で…私は『オシリス神』と呼んでいますが…
私の能力は『負けを認めた相手の魂を文字通り奪い取る』!そのチップはいわばあなたの魂そのものなんですよ!
もし、あなた達が負けたら…私のコレクションとなってもらいます」

ダービーはアタッシュケースを開ける。
そこには顔のついたコインが並んでいた。
「これはリチミエミエ…四暗刻のミエと自称していましたが大した事はなかった…これはヤマサキカズオと言ってね…
隣にいたリエコというのは敵ではありませんでしたが、このカズオは実に強かった!実際負けそうになりましたからね…
さて、このコレクションにメイジと使い魔が増えると言うのも実にいい!では続けましょうか…」

負けても特にデメリットはない、と思っていた彼らの空気が凍りつく。
「ちょっと!騙したの!」
「そんな人聞きの悪い、あなたたちは『魂を賭ける』と言ったはずです。負けても何も失わないなんてギャンブルではない!」
「そんなに言うなら次は私が…」


キュルケが行こうとするが、それを制してタバサが前に出る。
「キュルケは熱くなってる。熱くなったら負け」
「ほう、なかなか歯ごたえのありそうな相手がでてきましたな」
「ダービー、あなたは嘘をもう一つついている」
タバサは杖を振る。ダービーの後ろの壁が凍りつく。

「イカサマは認めない」
「ほう、なんのことやら…」
ダービーは表情を崩さない。
タバサは自分たちのカードを見せる。
「グーとチョキの右上の角に切り込みが入っている。グーは1つ、チョキは2つ」
ダービーはニヤリと笑う。
「よく気づきましたな、ここからが本当の勝負と言うわけですな」

ルイズが喚く。
「ちょっと!イカサマしてたなんんて卑怯よ!」
「なにをおっしゃる…イカサマを見抜けなかったのは見抜けない人間の敗北なのです…
私はね、賭けとは人間関係と同じ……騙し合いの関係と考えています。泣いた人間の敗北なのですよ」

イカサマを見破られたと言うのにその態度は変わらない。
そして新品のカードの入った箱を取り出す。
「これは見ればわかるようにまだ未開封、あなた達が開けて調べてもらって構いません。なんなら魔法でも」
といってタバサにそれを渡そうとする。
しかしそれを受け取らない。
「別に調べない。ただイカサマをしていたんだから次からは貴方から先にカードを出してもらう…
それと、私たちが魂を取り返せなかったらもう一戦受けてもらう」
「グッド!では再開しましょうか!」

現在のタバサのカード チョキ チョキ パー パー
現在のダービーのカード グー グー チョキ チョキ

 * * *

こんな小娘にイカサマがバレるとは思っていなかったが…なかなか面白くなってきた!
二勝先行した以上チョキを二回出しグーを出せばこちらの勝利は確定している…が、こいつらの魂を剥げるだけ剥ぐのも面白い!残り三戦、全勝するのも悪くは無い!
さすがに前のバカどもと違い、こちらのカードがチョキを出せば負けないくらいはわかっているはず…
その裏をかいて!ここは『グー』を出す!

「ふふ、私は『ワムウ』を賭けましょう、セット…」
「セット」
両者のカードが揃う。

「では…オープン!」


タバサのカードは……
『パー』!


「一勝」
「ほう、なかなかやりますな、しかし私がまだ一勝残っている…そちらが全て取り返すのは難しいのでは?」
「次につなげる」
「ふふ、それもいいでしょう」


あそこでパーを出すとはなかなか図太い…図太いがギャンブルには繊細さ、臆病さも必要…次何がくるかわからん…様子見にここは『チョキ』!図太すぎるならばここで落ちる!

「今度はルイズを賭けましょう……ではセット!」
「セット」
タバサもカードを置く。

「オープン!」
カードが開かれる。


タバサのカードはチョキ。あいこである。

「一勝一分け」
「次でラストですな、そちらのカードはチョキとパー、こちらはグーとチョキ…なかなか面白くなってまいりましたな」


ここでチョキを出してくると読んでくるとは…こいつ、ギャンブルに慣れているな……だが、それならばむしろ読みやすい…下手な勝負に出てくる素人より、勝負の理由のある経験者のほうが読みやすい…
次につなげると言っていた以上、ここで奴は負けるわけにはいかんだろう……
ここは!勝負に出る!

「もう一度『ルイズ』を賭ける!セット!」
「セット」


全員が緊張する。



「オープン!」


ダービーは『グー』!

それに対しタバサは………

『パー』!


「二勝二敗。引き分け」
「ここでパーを出してくるとは、なかなかのギャンブラー…気に入った!あの剣はあげれんが…そうだな、健闘賞というところか、ワムウでしたな、この剣を二百エキューでお譲りしましょう」

そういって錆びた剣を棚から出してくる。
「なによ、このボロ剣」
「てめえダービー!なにが残念賞だ!そこの娘っ子もなにがボロ剣だ!誰がお前らなんかに使われてやるもんかい!」

ルイズが少し驚く。
「これってインテリジェンスソード?」
「そのとおりです…少々珍しいので集めたのですが、雰囲気が妖刀魔剣からは遠いものでしてね、お譲りいたしましょう」

ワムウは剣を握る。
「おどれーた。てめー使い手か。前言撤回だ、俺を使いやがれ」
「譲ると言うんだから貰っておこう、二百エキューだったな」

ワムウは金貨をテーブルに置く。
「まいどありがとうございます、どうぞごひいきに…ギャンブルはいつでもお受けしますよ」
「もう勘弁よ」
ルイズ達は出て行った。


「…それにしてもタバサ、あんた結構図太いわね」
キュルケが呆れたように言う。
「見抜けない人間の敗北。自分で言っていた」
「ま、さすが雪風のタバサよね」

イカサマを見破ったときに出した氷。
ただの氷ではなく光を反射しやすくした氷だった。
その氷を鏡にしてダービーのカードを覗き込んでいたのだ!
渡されたカードを確かめなかった理由もその氷が溶ける前に勝負を終わらせたかったからだ。

「黒い壁だったからやりやすかった」

ルイズが背を伸ばす。
「あーもう疲れちゃったわ。シエスタ、こんなことに巻き込ませてごめんね。どっか行くところある?」
「そうですね…お昼にでもしませんか?」
「あら、いいわね」
「あたしがいい店知ってるわよ」
キュルケが口を挟む。

今日のトリステインは平和であった。

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