ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は引き籠り-2

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匿名ユーザー

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「ふあ・・・・っくし!」  うわっ寒ィッ

鏡の世界には温度が無い。
生物が居ないのは勿論、暖炉が燃えていようと、それは『鏡に映った炎』であり
手を触れても火傷する事は無い。
鏡の中の物を触れないのと一緒で、炎に当たった爪が跳ね返されるばかりで
手を突っ込む事さえ出来ないのだ。
だから鏡の世界は寒い。寒いから、寝るときには毛布なんかが必需品だ。

「あァ・・・・?」

勝手に『跳ね除いた』掛け布団を手繰り寄せようとして拒まれて、自分が『中』に居ると判った。
それにしても見慣れない部屋だ、ここは――――
ぼんやりと眺めていると、掛け布団は更に遠くへ飛び、
天蓋つきのベッドから箪笥へむかって、誰かが歩いていくようだった。
途中椅子やゴミ箱なんかにガツンガツンとぶつかっている。

(思い出した・・・オレは変な小娘に『連れて来られて』・・・・そいつの部屋だ。)

部屋の主はだいぶ朝に弱いようだ。・・・・でも、オレだって弱い。

(『サモン・サーヴァント』とかの話は詳しく聞きたいし、
此処が何処なのかも知りたい――――陸伝いに帰れればいいんだが。
でも、今『鏡の世界』から出て行ったら物凄く、面倒くさいんじゃないか?)

引き出しが勝手に開き、衣服がふわりと宙に浮かんで消えた(身に着けたんだろう。
生き物が『自分の一部』と判断したものは『精神エネルギー』となり、許可しない限りこちらには現れない)
あの小娘、なんだってオレに「ご主人様と呼びなさい!」なんて言っていたかは知らないが、
オレを見下しているところがある。後、スタンド名の『サーヴァント』って所に物凄く嫌な予感がする。

(嫌だな・・・オレはまだ眠たい・・・・)
「『マン・イン・ザ・ミラー』?」

ベッドの近くにマン・イン・ザ・ミラーが浮き出した。
いきなり訳のわからないところに連れて来られても、知らないやつに囲まれても。
こいつと『鏡の世界』がある限り、オレは大丈夫だ!安心していられる。
なあ?マン・イン・ザ・ミラー。お前は間違いなく最良のスタンドだ。
そりゃあパワーは強くないかもしれない。昔ちょっとした諍いで鏡の中に引き込んだプロシュートの野郎は
マン・イン・ザ・ミラーに殴られても怯む事無く殴り返してきた。オレを。
(あれは悔しかった。だがオレはあれで大切な事を学んだ!俺より強そうなやつは、腕と足を許可しちゃいけない。頭突きにも注意だ)
だからスタンドだけで強い相手を殺すのはちょっとした骨だし、鏡の外ではたいしたことは出来ない。
でもオレはお前を信頼してるぞ。
お前はオレに安全をくれるし、従順だし、鏡の中なら何だって出来る。
唯一文句があるとするならば喋らない事だが
(鳴くだけでもいいのに。メローネのスタンドくらい喋ったらもっといいが、生意気なのは嫌だ)
オレの言う事はちゃんと判ってるみたいだから、それだけでいいさ。

「だから、『マン・イン・ザ・ミラー』――――掛け布団を直してくれよ。
もう一度寝る。後二時間くらいしたら起こしてくれ」

言うが早いかマン・イン・ザ・ミラーはひょいと掛け布団を摘みあげる(オレでは動かせないからな。)
ありがとう、マン・イン・ザ・ミラー・・・・ああ~、温かいなあ。きっと凄く高いベッドだぜ!

文句の一つも言わない『マン・イン・ザ・ミラー』、ルイズがそれを見ることが出来たなら、きっと言うだろう。
「私も、あんな使い魔が欲しい。」




二時間きっかりかどうかは知らないが、マン・イン・ザ・ミラーに揺すり起こされて、オレはやっと目が覚めた。
今が何時なのかはよく判らない。でも、腹が減ったな・・・・
あのルイズとか言うやつに聞く事も色々あるし。ついでに、食事できる場所があるかも聞いてみようか。
ここがイタリアじゃないんなら、オレは無一文だしな。

(オレの目的は『一刻も早く帰る』から、『確実に帰る』にスイッチしていた。
快眠によりすっきりした脳味噌は一転、酷く楽観的になっていて
『心配しなくてもあいつ等はそうそう死なないし、万一帰るのが遅れても事情を話せば糾弾されまい』と判断したためだ)

いつ帰れるか判らないんなら、衣食住。住は大丈夫だが、それ以外が問題だ。
鏡の中の食い物は食えない、服だって着られない。結構制約が多いんだ。
場合によっては簡単な仕事を見つける必要があるかも・・・・・室内で、一人で出来る奴がいい。

慣れた動作で鏡を潜って、外の世界へ出る。軟らかい照明と温度、生きた世界だ。
(でもオレは、かえって落ち着かない。)

とりあえずルイズの部屋から出て、廊下をうろつく。昨日と違って全然人が居ない。
『居すぎる』よりはオレ向きだが、一人も居ないんじゃ道も判らないじゃないか。
だが、ずいぶんファンタジーでメルヘンな建物だし、人探しついでに探索も悪くないかもしれないな。

そして結構重要なのが、鏡の位置の確認。見つけたら場所を覚える。外せそうなら持ち歩く事。

        • 無いぞ。
鏡が無いぞ、全ッ然無い!
トイレには辛うじてあったが、それ以外には全く無い。
いや、全くといってもまだ行っていない場所はまだまだある。この建物は以上に広い上、至るところが施錠されていた。
それに、そもそも一般的な建物にはそうそう鏡などかかってないだろう。(あるなら個人の生活スペースだ)
でも、こんなに古風でデザイン性溢れた建物なんだし、その辺にかかってたっていいだろう!廊下とかに!
インテリアとか、そういうのは無いのか?わざわざ古風に建築するんなら、機能性なんて考えなくてもいいじゃないか。
コレは予想外に不便だな。『マン・イン・ザ・ミラー』は鏡があればこその最良、なければ何も出来ないといってもいい。
だから『仕事』の際には事前に鏡を設置して・・・・しかし、この場合はどうしたものだろう?設置するにも、何処から調達すればいい?

何かあったらとりあえず便所に駆け込む、なんて格好悪い真似したくない。
ルイズの部屋の、箪笥の横の鏡。あれ、割って持ち歩いてしまおうか?
それとも適当なガキでも捕まえて、手鏡を――――

「おや、君はたしか、ミス・ヴァリエールの使い魔の。」
「は?(使い魔?)」
「こんなところで何をしているんだね、新学期の始めの授業は使い魔も出るしきたりなんだ。
ミス・ヴァリエールからはぐれてしまったかな?そこの角を左だよ」
「・・・・どうも。」

昨日オレの手をじろじろ見ていたハゲだ。つうか、今も見ている。
何なんだ?気持ち悪いな。まあ別に、ハゲはうつる病気って訳じゃない。オレの髪は強い方だし――――
「ちょっと、左手を良く見せてもらってもいいかな?」
「!」

また反射的にぶん殴ってしまった。『許可』しないうちに触れるから悪い!
まあ、強く出れそうな奴には強く出るのがオレ流だ。フハハハハ、とか笑ってな。最高に「ハイ!」って奴だ。
昨日ぐっすり眠ったら、ずいぶん気持ちが落ち着いたからな。今のオレは悲観的じゃない、暗殺者のイルーゾォ。
暗殺者は強い。オレはもっと強い。オレのスタンドは最良だ!自信に溢れたオレは、顎を上げて歩く。
そういえば昨日、あの娘っ子にずいぶん舐めた態度をとられたっけ。
次にあったら『質問』・・・・いや『尋問』ついでに、「大人のお兄さんを怒らせると怖いんだぞ」って教えてやら無いといけないな。
「暗殺者を怒らせると」の方がビビるか?・・・・いや、ひけらかすものじゃないし、ビビらせ過ぎても可哀想か・・・・

角を曲がって左、ドアノブに手を掛ける寸前に、
派手な爆音がしてドアごと吹っ飛んできた。
直撃を食らって(泣くほど痛かったが、もちろん泣いてないぜ)一瞬意識を失う―――――


「え?罰掃除ですか?そんな・・・・・・もう、イルーゾォは何処なのよーっ?!」


―――――何か考えるより先に、全速力で便所の鏡に飛び込んだ。

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