ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔-15

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匿名ユーザー

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「散々、とはいかないまでも、あまり良い出来ではなかったね」
ため息をつきながら、桃色の少女がけだるげに二人の男に話しかけていた。
ここはトリステイン学院の女子寮。ルイズの部屋である。
時刻はすでに夜半を過ぎている。このとき、ルイズとその使い魔たちは先ほど行われた『使い魔の品評会』の反省会をしていた。

結果から言おう。ルイズの品評会はあまり好評を得られなかった。
結局、ルイズたちの演目は、ブチャラティが舞台会場に出て、挨拶をするという、至極単純なものであった。
そのときブチャラティはトランプを使った簡単な手品を披露したが、はっきり言って地味であった。
しかも、その次に出演した使い魔がタバサの巨大な風竜であった
から、会場の雰囲気は完全にタバサとられてしまった。ちなみに、今回の品評会の優勝はタバサとその使い魔、シルフィードであった。

「でもいろいろな幻獣が見れた僕としては、メチャ有意義だったぞ」
露伴が今日スケッチした奇怪な動植物の群れを眺めながら言った。この男は、心底上機嫌である。
品評会のときは衛兵の邪魔もなく、思う存分使い魔達の取材ができたようであった。

「特に恥はかかなかったけれど、ヴァリエール家としては失格ね。エレオノール姉さまが会場にいなくて本当によかったわ。でも、なんか引っかかるのよね……
 何か忘れてるような……」
ルイズは腕を組みながら、部屋中を歩き回っていた。

「嬢ちゃん、自分の使い魔が『人間の平民』だってことが皆に大公開されちまったわけだが、 嬢ちゃんの言いてーことはそーいうことか?」
「そうよ! そうだわ! よりによって姫様に……」

ルイズの顔が一転して蒼白になる。
彼女の顔から尋常ではない汗が流れ始めている。彼女の目元は暗く、低い声で発せられる独り言は何かの高等な呪文のようにも聞こえた。
「もうダメよ姫様に嫌われてしまうもう合わせる顔がないわそれにヴァリエールの家にも使い魔のことが知られてしまうわエレオノールの姉さまや母様達にどんなことを言われるか最悪学院を退学させられるかもうんきっとそう……」


「でも、使い魔といってもあまりすげぇのはいなかったよな! ブチャラティ!」
「えぇ? あ、ああ。逆にモグラとかフクロウとか微妙なものが多かったな! なあ、デルフリンガー」
ルイズの呪詛がぴたりとやむ。彼女はゆっくりと使い魔たちに振り返った。
その顔はなぜか幽鬼のように青白い。
「……そう?」
「そうだぜ! それとオレのことはデルフって呼んでくれ! ブチャラティもな!」

「……そう。ありがとう、デルフ。
 それに所詮使い魔なんてどれも似たり寄ったりね!
 その中に人間がいたってちっとも不思議じゃないんだから! ……多分」
「今度は一人で笑い始めたぞ……どーすんだ? ブチャラティ」
「露伴、お前も何か言ってくれ……ってこんなとき位スケッチはやめろ……」


十分程経過しただろうか?
彼女はそのような一人わらいを続けた後、大きく深呼吸を始めた。
「済んでしまったことはいまさら後悔しても始まらないわね。
 今夜はとりあえず寝て、明日これからのことを考えましょう。
 着替えて寝るからみんな外に出て」
「ああ、おやすみ」
ブチャラティは安堵の表情を隠せない様子で返答した。
「じゃ、明日な」
露伴は満足げにスケッチブックを閉じると、デルフをつかんで立ち上がった。
「そーいうことで、しっかりとイイ夢見なよ嬢ちゃん」

彼らが退室すると共に、ブチャラティの手でルイズの部屋のドアが閉じられる。
「今日はものすごく充実したいい日だったな! いい取材日和だった」
「俺は最後にすごく疲れたよ……」
「ロハン、オメー……ある意味すげー尊敬できるぜ」


二人が女子寮の入り口の前でまさに別れようとするとき、物陰から女性の声が発せられた。
「もし……そこにいらっしゃるのはルイズの使い魔殿ではないですか?」
上品だが、声の芯がか細い。それにどこかで聞いたことがある。
「何者だッ?」

ブチャラティは声を低くしてそれに答える。それと同時に、彼は声の主がいると思われる物影から、ルイズの部屋のドアを守りやすいような位置に移動した。

「わたくし、アンリエッタ・ド・トリステインと申します」
物陰から姿を現したのは、はたして、紛れもないトリステイン王女その人であった。
「『ブチャラティさん』でしたわね? このような場です。
 身分など気にせず楽にしてください」
「ちょっと待て、ひとつ聞くことがある。なぜ、一国の王女がこんな所にいる?」
露伴の詰問はしかし、王女の次の言葉でとぎられることとなった。

「まあ! あなたはキシベ=ロハン殿ですか? マンガ家の!
 わたくし、あなたが毎週描かれる『ピンクダークの少年』だけが王宮での唯一の楽しみなのですわ!」
「そ、そうかい。そいつはよかったな……」
王女は露伴に駆け寄り、彼の両手を覆うようにつかみ、畳み込むように話しかけた。
狂信者の目つきで訴える王女の剣幕に、さすがの露伴もたじろいでいる。
その様子さえ気づかず、アンリエッタ王女は握手をするように露伴の両手を上下させ叫ぶように話を続ける。
「ええ! あなたのマンガはとてもすばらしいですわ!
『ブルーライトの少女』もすばらしかったですけれども、やはり『ピンクダークの少年』にかなう娯楽はハルケギニア中、いいえ、エルフの世界を探しても見つかりっこないでしょう!」
「そうか。あ、ありがとう……」

「そんなことより、だ。王女様はなぜこんなところにいる?」
ブチャラティの言葉に我に返ったアンリエッタは、返答より先に自身の杖を振り、『ディテクトマジック』の魔法を唱えた。光の粉が、周囲十メイル程に降り注ぐ。


「……どうやら『監視』は無い様ですね」
王女はホッとため息をつき、初めてまともな笑顔を彼ら二人に向けた。
「どこに目が光っているかわかりませんものね」
「そう…………『監視』…………無いのね」(ニヤリ)



『ヘブンズ・ドアー』!!

次の瞬間、王女は意識を失った。
そのまま地面に倒れかかるが、岸部露伴に体を支えられる。
彼はそのまま王女の『本』を興味深そうに眺めている。
露伴の傍らにいるブチャラティが周囲を警戒をしつつ、相方に尋ねた。
「どうだ、露伴。彼女はルイズにとって安全な存在か?」

「大丈夫だ。こいつに悪意はないらしい。何かに操られているということもない。
 ルイズとは気の置けない旧友のようで、今回はルイズに友人として会いにきたようだ。どうやら頼み事があるらしい」
「そうか」
ブチャラティはホッと息をついて警戒を解いた。いいかげんこの学院の雰囲気にもなれないといけないな、と思いながら……

「なになに……彼氏はいない。
 スリーサイズはB84/W59/H85……」
「おい…」
(『キング・クリムゾン』!)
「それ以上は…」
(『キング・クリムゾン』!)
「ちょっと待て…」
(『キング・クリムゾン』!)
「ロハン!」
(『キング・クリムゾン』!)「……それに初めてキスをした時舌を入れられてるぞ」

「 い い 加減 に しろッ!! ロハン!!」
「わかったよ(面白くないやつだな)……『今のことはすべて忘れる』と……」
「聞こえてるぞ…」


その後、意識を取り戻した王女は、先ほど起こった事態にはまったく気づかずに、ブチャラティにささやくように話しかけた。
「ルイズはいますか?」

「ああ、いま寝るために自分の部屋で着替えているところだ」
「では、ブチャラティさん。その部屋まで案内してくださいませんこと? それと、大変申し訳ないのですが……
 今回はルイズと会うために参りました。ミスタ・ロハンは、今回は部外者です。
 これ以上はミスタ・ロハンといえども足を踏み入れてほしくないのです」
「わかってる。気にすんなよ、実は僕もルイズの使い魔だ。ここにブチャラティと同じルーンが刻まれてあるだろう?」
そういいつつ、露伴は自分の手の甲に刻まれたルーンを見せ付けた。
ついでに、ブチャラティの腕を引っ張り、同じ紋章をアンリエッタに見せている。
その紋章を見たアンリエッタは目を丸くしている。
「まあ、使い魔が二人も……ルイズは子供のころから一味違う人でしたけれども、彼女はすごい人ですわね」
王女は心底感嘆したような声を発した。そこにはルイズを蔑視するような意思は、まったく見受けられない。むしろ羨望を感じる声の響きだ。

「そのようなことであれば、御二方、ルイズの部屋までご案内くださいまし」

ルイズの部屋に、アンリエッタを連れたブチャラティたちが進入していた。
「すっかり寝てしまっているな……」
ブチャラティは嘆息した。彼がいくらルイズの部屋をノックしてもまったく返事が
なかったので、一行はルイズに無断で彼女のの部屋に入っていた。ちなみに、鍵は
アンリエッタの『アンロック』の魔法で解除している。

「ルイズは熟睡しちまってるぜ」露伴はめんどくさそうに応じた。
彼女が寝てしまったら、なかなかおきないんですよ。
たたき起こせば起きますがね、僕はやりたくない。
露伴の傍若無人な態度に気にした様子もなく、アンリエッタはなぜか自信たっぷり
に応じた。
「ええ、とてもよく知っていますわ」


王女がベッドで寝ているルイズにそっと近づき、耳元でルーン・マジックをそっと囁
いた。
「↑↑↓↓←→←→BA」
「ふにゃ……ヨガファイア……ハッ」
ルイズが突然目覚めた。それも寝ぼけずに、完璧に。

「あれ……姫さま?」
あわててベッドから起き上がるルイズに向かって、感極まったようにアンリエッタが
抱きつく。
「ああ! 私のルイズ! 私の数少ない、心の許せるお友達!
 今までどんなに会いたかったでしょう!
 今までどんなにお話したかったことでしょう!」
「ひ、姫様、もったいないお言葉にございます」
ルイズは急に抱きつかれたためか、はたまた寝起き姿のまま王女に遭遇したためか、
完全に舞い上がって身体を硬直させてしまっている。
アンリエッタはルイズの首に抱きしめた腕を放さずに感極まったように叫んだ。
「まあルイズ! そのような堅苦しい言葉遣いはおやめになって!
 わたくしたち、幼いころは人形をとりあって取っ組み合いをした中ではありません
 の」
「ええ、そうですね。あの時、私は姫様の覇王翔吼拳をおなかに受けて気絶してしま
 いました」
「それから二人してラ・ポルトの爺にしかられたわね」
ようやくルイズを抱擁から開放したアンリエッタは、それでもルイズの両手を握り締
めながら、慈しみのあふれた眼差しをルイズに向け、微笑んだ。
その笑顔は、先ほど行われた品評会の会場で見せていた笑顔とは似ても似つかぬ、温
かみのあるものであった。ルイズはその表情の中に、安らぎの感情をを感じていた。
ルイズはようやく落ち着きを取り戻し、アンリエッタを王女としてではなく、旧友と
して向かいあった。
二人ははにかんだように、在りし日の美しい思い出を振り返っていた。

(王宮の中庭にて……)
(「うおおッ! 『人形』はわが手にッ!」)
(「ルイズがラ・ポルトから『人形』をGetする方法を見つけたというのなら……
  それはそれで利用すべきだわ……」)

To Be Continued...

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