ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は引き籠り-1

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
『――――つの・・・・さ・・・ペン・・・・の・・・・・』

全身を焼き尽くす・・・・否、溶かしつくす熱は急激に全身に回り
視界が崩れ、『オレ』が崩れ、支えを失って地面へと落下する。
受身も取れずに転倒したというのに大した音はしなかった。
地面につく頃にはもう殆ど『オレ』は失われて、石畳に落ちたのはオレの気に入りの厚みのある洋服ばかり。
いつもなら膝だってつかないからめったに汚れる事は無いそれ。
土埃まみれなんて我慢ならない!けど、今はそんな事考える余裕は一切無し。

熱い。熱い。熱い。消えていく、オレは死ぬのか?嘘だろ?オレは強かった。オレたちは!

『祝福を・・・・・・使い魔と成せ・・・・!―――――』

いつだってワンサイドゲームだった。オレたちが殺して、死ぬのは向こう。
膝だってつかなかった。怪我だってしなかった!オレの仕事は『引き込んで』、
訳もわからず困り果てる相手を『殴り倒し』『切り刻む』――――こんなんじゃない!
熱い!熱いッ!

熱はやがて脳味噌を蹂躙して、オレの思考は意味を成さなくなった。
ただ熱いだけの苦痛は頭部で遊びまわるのに飽きたのか、やがて左手に集束した。
なんだよ・・・・左手はさっき、溶けただろ・・・・・もういいじゃないか、やめてくれても・・・・

「もう!あんた、何時まで寝てるのよ!?起きなさいよッ!」
「ふぐあッ」

何故か顔を赤く染めて怒り狂う少女に、
こめかみを思い切り蹴りぬかれ(トゥキックだ畜生)オレは視界を取り戻した。



本日は晴天なり。石畳なし。ウィルスなし。これはなんだ?

「なんだってこんな平民なのよー!」
わっと沸くガキどもの笑い声は遠い昔に置き忘れてきた『平和』ってヤツそのもので、
オレはますます意味がわからなくなる。
さっきまでギンッギンに痛んでた左腕をひょいととられ、
ほう、ふむ、とか言いながら眺めるオッサンが気持ち悪かったからとりあえずぶん殴った。
何なんだ、はこっちの台詞だ!

此処は何処だろう?
ピンク頭の小娘をさんざっぱら笑った(平民がどうとか)ガキどもは、ふわふわと浮いて去っていった。
近くにスタンド使いが居るのか?モノに空を飛ばさせる能力なのか?
相手は何処に居るんだろう・・・・危険かもしれない・・・・状況がわからなさ過ぎる。今は。
「さっきから何をぶつぶつ言ってるのよ。」
「なんだ、まだ居たのかお前。鏡持ってるか?」
「口の利き方がなってないッ!」   痛ッ

痛い・・・・畜生、何だお前、プッツンしてるんじゃないのか。急に引っぱたくなんて
「何か言うならハッキリ言いなさいよ。」
「何も言ってません。すみません。」
五月蝿いな、口に出る癖は直した方が良いってのはわかってるさ。
だけど自分の能力を長々説明したり、攻撃方法を解説したり、皆似たようなもんだろ。
痛いのはもうたくさんだから口に出ないよう慎重に思考する。
周りのガキがふよふよ浮いてるってのに。この小娘、異常に気づかないのか?
というか・・・・・・
「お前は浮かないのか?」
「五月蝿いわね!」   痛ァッ

逆の頬にビンタを食らった。何なんだ。もう嫌だ。ギアッチョみたいなヤツだ!
ああ、ガキの、しかも女に二発もビンタを食らうなんて、仲間に知られたら笑われる――――


――――それどころじゃないだろ。『死んだ』んだ、オレ。笑われるのは間違いないが・・・・・・
『死んだ』、はずだった・・・・



少しばかり呆けていたら、いつの間にか屋内に居た。
あの小娘に手を引かれて連れてこられたような記憶が、ぼんやりとある。
ということはアイツの部屋かな。広くって、やたらと豪華だ。
そしてご本人様はオレの前で、椅子に座って、ふんぞり返ってオレを見・・・・・

「やあーっと正気に返ったみたいね。急に静かになったと思ったら、ぴくりとも動かなくなるし」
「あ、ああ・・・・」
「いい加減名前くらいは教えなさい。呼ぶのに困るし。別に私がつけるんでもいいけど・・・・」
「イルーゾォ。」
「そう。」
小娘はつまらなそうにふんと言う。(名前をつけたかったのか?ごめんだな。
少女趣味なヤツをつけられたらたまらない――――『イルーゾォ』より少女趣味ってのは中々難しい気もするが)
「じゃあイルーゾォ、なんでアンタなのよ。ねえ?なんで平民のアンタが来るの?」
「平、民?」
「貴族なら良いってもんでもないわ!あたしは猫とか梟とか、出来たらドラゴンとかが良かったの!
『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出すなんて聞いた事ないし、どれだけ笑われたか――――」
「『サモン・サーヴァント』ってスタンドなのか。動物を呼び出してどうするんだ?大体何に使うんだ」
「よくわかんないけど、平民よりは動物のがマシよッ!アンタみたいに口答えしないでしょ」

暗殺者を捕まえて猫の方がマシとはよく言ったもんだ。
よっぽどオレの便利なスタンドについて説明してやろうかと思ったが、それより大事な事がある。

「お前の『サモン・サーヴァント』で、オレは此処に来たんだな?間違いないな?」
「ルイズ。それかご主人様って呼びなさい、無礼よ。」

高慢ちきな小娘だ。ご主人様?誰が呼ぶか、意味が分からない。
しかしコレで原因はハッキリした。無差別なスタンド攻撃でつれて来られたんだな。
何故か無傷なのだってスタンドの効果かもしれない。『完全な状態で呼び出す』だとか――――


「何にせよ、オレは幸運だったし、それはお前の・・・・痛いすみません・・・・ルイズのお陰なんだろう。
ありがとう、だから、帰してくれ。」

オレは無傷だ。スタンドだって(まだ試してはいないが)出せるだろう。まだ『側に居る』感じがある。
実力ではなく『幸運で』だが・・・・戦いを乗り越えたオレには知識がある。
パンナコッタ・フーゴの危険なスタンド、新入りの機転や、『覚悟』!伝える必要がある!
あいつ等はやはり危険なんだ。ホルマジオも死んだし、『オレだって死んだようなものだった』
イタリアに帰って、仲間に伝えるんだ!
(仲間達はろくなヤツじゃあないが、オレは気に入ってるんだ。もう、ただの一人だって死んで欲しくない)

「場所がわからないなら、イタリアだ。イタリアならこの際何処だって」
オレはがっつくみたいに詰め寄って、小娘はそれに驚いて仰け反る。
申し訳無いけど時間が無いんだ。オレからの連絡が途絶えれば、次の追っ手があいつらの元に向かうだろう。
「・・・・む、無理よ。『サモン・サーヴァント』は召喚するだけで、帰すなんて出来ないわ」


冷水をブッ掛けられたみたいだった。
なあ、なんだって?

「それに出来たってね、帰しやしないわ。あんたは私の使い魔だもの。あたしの――――何処行くのよ。」
「・・・・洗面所なら、鏡はあるよな。」
「何なのよ鏡鏡って。いいけど。帰ってきたら身の回りの世話をしてもらうから!」
「嫌だね」

最悪だ。最悪の気分だ。もう一度死んだみたいに。
ふらふらと洗面所らしき場所を見つけ、「『マン・イン・ザ・ミラー』。オレだけを許可しろ」 鏡の世界へ潜り込む。
左右対称の『向こう側』でオレはルイズの居た辺りに戻り、少し狭いがふかふかのベッドに潜り込んだ。
(正確にはゾンビみたいな顔をしたオレを見て、マン・イン・ザ・ミラーが気を利かせて掛け布団を持ち上げてくれたんだが)
ああ、此処はいい。五月蝿いやつの居ない、オレだけの世界だ。

――――でも、喧騒も懐かしかった。帰りたい・・・・仲間の元へ・・・・
今日は眠ろう。そして明日、何としても帰る方法を突き止める。
死ぬのは怖かった。泣くほど。(ギリギリで泣かなかったと思う。多分。暗殺者は泣いたりしないだろ)
でも仲間達が死ぬのはもっと怖い。ソルベ達が死んだときの2.5倍、ホルマジオが死んだときの5倍は怖いだろう。
だから帰るんだ。
あんな強敵が相手じゃ謀反は失敗するかもしれない(急にネガティブになるのはオレの悪い癖の一つだとリーダーは言う。)
でも、最悪そうなっても、『マン・イン・ザ・ミラー』を慎重に使えば仲間を逃がす事が出来るだろう。俺は帰らなくては――――

「でも、もしも?」
嫌な事ばっかり思い浮かんで目頭が熱くなった。
熱くなっただけだぜ。泣いてない。暗殺者が泣くわけないだろ・・・・・・


「わ、私の使い魔が消えた!?」
ルイズは鏡の外で大騒ぎしていたが、その声は届かない。
鏡の中のイルーゾォは、当分その姿を表す気は無いようだった。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー