「ハァ……ハァ……ハァ……」
ルイズは馬に乗って森を駆け抜ける。
ルイズは馬に乗って森を駆け抜ける。
「もう…どこいったのよ…」
彼女は巨体の使い魔を探す。
彼女は巨体の使い魔を探す。
「そもそも、あいつモット伯の屋敷の場所知らないでしょうに……」
口に出してから、気づく。
口に出してから、気づく。
「そうよ!あいつはモット伯の屋敷の場所を知らないのよ!飛び出していったはいいいけど、方角も距離も知らないはずだわ!なーにが
『我々の知力』よ!穴だらけのザルじゃない!一応あてがないから念のために屋敷に行って、そこに居なかったら帰るしかないわね」
『我々の知力』よ!穴だらけのザルじゃない!一応あてがないから念のために屋敷に行って、そこに居なかったら帰るしかないわね」
そして、森が開け、モット伯の屋敷が見えてくる。
屋敷を囲む塀の向かいの茂みに一人の大男が潜んでいた。
屋敷を囲む塀の向かいの茂みに一人の大男が潜んでいた。
彼の使い魔であった。
「ちょっとぉおおッ!なんであんたいるのよ!」
「モット伯とやらの家に向かうといったはずだ、脳みそがクソになったのか?」
「モット伯とやらの家に向かうといったはずだ、脳みそがクソになったのか?」
ルイズは混乱する。
「あ、あんた異世界から来たんじゃなかったの?なんでモット伯の屋敷の場所がわかったのよ?」
「あ、あんた異世界から来たんじゃなかったの?なんでモット伯の屋敷の場所がわかったのよ?」
ワムウは平然と答える。
「シエスタは『もうすぐ貴族の方の家に専属で勤める』『残り数日間はここで生活ができる』と言っていた。もうすぐと言っているんだから
行くのが5日以上はないだろうが、数日間という言い方からには少なくとも3日か4日はここに居るという印象を受ける。つまり馬車で1日ないし
数時間といったところだろう。こちらの馬の速度が俺の世界とほぼ同じだというのは数日前に俺の体で調べさせていたからな。まあ、俺の足で
1時間ちょっとしかかからない程近いとは思わなかったがな。方角はお前の部屋にある地図を見れば、王宮が北で南西はガリアという他国との国境、
東はゲルマニア国境だ。いくらなんでも勅使がこれ以上王宮から離れるということはあるまい。したがって北に向かって歩いていたら大きな屋敷に
『モット屋敷』などという悪趣味な看板があったんでな、小さな『赤石』を探すよりはわけがなかった」
「シエスタは『もうすぐ貴族の方の家に専属で勤める』『残り数日間はここで生活ができる』と言っていた。もうすぐと言っているんだから
行くのが5日以上はないだろうが、数日間という言い方からには少なくとも3日か4日はここに居るという印象を受ける。つまり馬車で1日ないし
数時間といったところだろう。こちらの馬の速度が俺の世界とほぼ同じだというのは数日前に俺の体で調べさせていたからな。まあ、俺の足で
1時間ちょっとしかかからない程近いとは思わなかったがな。方角はお前の部屋にある地図を見れば、王宮が北で南西はガリアという他国との国境、
東はゲルマニア国境だ。いくらなんでも勅使がこれ以上王宮から離れるということはあるまい。したがって北に向かって歩いていたら大きな屋敷に
『モット屋敷』などという悪趣味な看板があったんでな、小さな『赤石』を探すよりはわけがなかった」
ルイズは目が点になる。
「あんた、異世界から来た亜人だってのに地図の文字が読めるって言うの?」
「我々の能力をなめるな。文字や言葉など数時間ほどでほぼ完全に習得できる」
「あんた、異世界から来た亜人だってのに地図の文字が読めるって言うの?」
「我々の能力をなめるな。文字や言葉など数時間ほどでほぼ完全に習得できる」
ルイズは呆然として、ため息をつく。
「あんたって、ほんと化け物ね……肉体面でも精神面でも…」
「ではその化け物から忠告だ。これから化け物じみたことをやるから貴様のような普通の人間は足手まといだ、帰ってくれ」
「あんたって、ほんと化け物ね……肉体面でも精神面でも…」
「ではその化け物から忠告だ。これから化け物じみたことをやるから貴様のような普通の人間は足手まといだ、帰ってくれ」
足手まといだと言われ、ルイズは激昂する。
「ヴァリエール家三女のメイジが普通の人間だっていうの!やっぱり私が魔法使えないからなの?爆発だけでも手助けくらいできるわよ!」
「違う。多少土人形やら火やら出せたところで同じだというのだ。俺は足手まといを抱えながら暗殺するほど器用ではない。
それに俺のプロテクターの定員は一人だ。ついて来られて侵入がバレては元も子もないし、バレずに済む方法は思いつかん。
それとも、お前がその方法を思いついたって言うのか?」
「ヴァリエール家三女のメイジが普通の人間だっていうの!やっぱり私が魔法使えないからなの?爆発だけでも手助けくらいできるわよ!」
「違う。多少土人形やら火やら出せたところで同じだというのだ。俺は足手まといを抱えながら暗殺するほど器用ではない。
それに俺のプロテクターの定員は一人だ。ついて来られて侵入がバレては元も子もないし、バレずに済む方法は思いつかん。
それとも、お前がその方法を思いついたって言うのか?」
ルイズは唸る。
「じゃ、じゃあ私が正面で爆発を起こして陽動してる隙にあんたが裏口から入り込むとか…」
「論外だ。お前が勅使など殺したら死刑だと言ったんだ、誰かが殺したと思われては困る。それに、兵士の追撃をかわしきれるのか?」
「じゃ、じゃあ私が正面で爆発を起こして陽動してる隙にあんたが裏口から入り込むとか…」
「論外だ。お前が勅使など殺したら死刑だと言ったんだ、誰かが殺したと思われては困る。それに、兵士の追撃をかわしきれるのか?」
ルイズは黙る。
「とにかくだ、帰って貰おうか。できれば物音を立てずにな」
「とにかくだ、帰って貰おうか。できれば物音を立てずにな」
ワムウは立ち上がり、姿を消した。
* * *
ノックに主人は気づき、返事をする
「誰だね?」
「誰だね?」
一人の兵士が入る。
「衛兵のフウガです。あの、前門を23時まで見張るはずの同僚のライガが見当たらないのですが、行き先をご存知でしょうか?」
彼は後ろ手で自分の入ってきた扉を閉めた。
「衛兵のフウガです。あの、前門を23時まで見張るはずの同僚のライガが見当たらないのですが、行き先をご存知でしょうか?」
彼は後ろ手で自分の入ってきた扉を閉めた。
「知らんな、まあ十中八九脱走だろう。そんなやつはごまんといる、一々騒ぐんじゃない」
「しかし、彼とはこちらで数年一緒に勤めており、そんな奴じゃないはずな…うがッ!」
「しかし、彼とはこちらで数年一緒に勤めており、そんな奴じゃないはずな…うがッ!」
モット伯は目を見開いた。
こんなことは禁制の薬、厳罰の器具、裏世界の禁術を数多見てきたが、彼はこんな自体をあらわせる言葉を知らなかったッ!
先ほどまで、平然と自分と話をしていたはずの一人の兵士の背中から首が生え、胴体が体の外に表れ、腕を出し、足を出していった。
何より恐ろしいのはッ!その男が全ての体を見せてきたときには!その兵士は跡形もなくなっていたのだ!
その男には、手首がなかった。
こんなことは禁制の薬、厳罰の器具、裏世界の禁術を数多見てきたが、彼はこんな自体をあらわせる言葉を知らなかったッ!
先ほどまで、平然と自分と話をしていたはずの一人の兵士の背中から首が生え、胴体が体の外に表れ、腕を出し、足を出していった。
何より恐ろしいのはッ!その男が全ての体を見せてきたときには!その兵士は跡形もなくなっていたのだ!
その男には、手首がなかった。
モット伯はガタガタと奮えながらもその男に話した。
「お、お前は何者だ!先ほどの兵士はどこにいったんだ!」
「食べさせてもらった。人間に潜行するなんて、4000年ぶりだろうか」
彼は舌なめずりでもするかのように、周りを眺めながら淡々と述べた。
「お、お前は何者だ!先ほどの兵士はどこにいったんだ!」
「食べさせてもらった。人間に潜行するなんて、4000年ぶりだろうか」
彼は舌なめずりでもするかのように、周りを眺めながら淡々と述べた。
モット伯は腰を抜かし、後ろに倒れる。
「Wake me up!だ、だれかッむぐッ!」
「Wake me up!だ、だれかッむぐッ!」
モット伯ののどに手首が食らいつき、彼は大声をあげることはできなかった。
「切り落とした手首を持ってきていてよかったな、まさか役に立つとはな」
「切り落とした手首を持ってきていてよかったな、まさか役に立つとはな」
彼はその大男を憎憎しげに見つめる。
モット伯は杖を振った。
「何者だか知らんがトライアングルを舐めるなッ!」
「何者だか知らんがトライアングルを舐めるなッ!」
腐ってもトライアングル、腰を抜かした状態でも詠唱を密かに終えていた。
杖先から大男に向かって水柱がワムウに向かって飛んでいく。
杖先から大男に向かって水柱がワムウに向かって飛んでいく。
しかし、大男は片手でそれを受け止める。水しぶきが天井、床に広がる。
「う、うわぁああああッ!」
モット伯はまだ杖を振る。今度は高熱の蒸気を杖からあの大男に向かって飛ばす。
モット伯はまだ杖を振る。今度は高熱の蒸気を杖からあの大男に向かって飛ばす。
直撃はした。はずだった。が、大男はものともしない。
「あまり音と時間はかけたくない。とっとと死んでもらおうか」
モット伯はガタガタと奮えている
「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」
とのどに手首が食らいついた状態で出せるだけの声を出す。そして倒れたまま後ずさる。
「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」
とのどに手首が食らいついた状態で出せるだけの声を出す。そして倒れたまま後ずさる。
大男はニヤリと笑って
「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」
「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」
モット伯は哀願する。
「せ、せめて、冥土の土産にどこの者か教えてくれ」
「だめだな」
すると、モット伯の顔色が変わった。
「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」
「せ、せめて、冥土の土産にどこの者か教えてくれ」
「だめだな」
すると、モット伯の顔色が変わった。
「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」
大男の天井から水滴が滴り落ちる。
「『アクア・ネックレス』!」
* * *
風のプロテクターを纏い、見張りの一人を単独のときに殺し(その人間はかけらも残さず食った)、交代に来た人間に潜行する。
数人経由しなければならないか、と思っていたが一人はそのまま主人の部屋に向かってくれた。ありがたい。
数人経由しなければならないか、と思っていたが一人はそのまま主人の部屋に向かってくれた。ありがたい。
主人のモット伯とやらはメイジのようだが、大したことはない。
腰を抜かしたまま叫ぶ。
「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」
「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」
腰を抜かしたまま叫ぶ。
「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」
「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」
直接のかかわりがないだろうルイズですら嫌っていたのだから、殺意のある奴はいくらでもいるだろう。
そいつらと勘違いしてくれれば対処がしやすい。
そいつらと勘違いしてくれれば対処がしやすい。
「せ、せめて、冥土の土産にどこの者か教えてくれ」
奴は哀願してきた。戦士としてもクズであると明言できる。こんな奴には神風嵐を使うまでもない。もっとも片方手首がないため使えないが。
「だめだな」
「だめだな」
すると、奴の顔が変わる。
「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」
「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」
天井から水滴が滴り落ちてきた。
「『アクア・ネックレス』!」
落ちてきた水滴は軌道を変え、俺の口の中に飛び込んでくる。
普通の人間ならば、とっさにかわそうとする!しかしワムウは思いっきり拳を奮った!
水滴が吹っ飛ぶ。
普通の人間ならば、とっさにかわそうとする!しかしワムウは思いっきり拳を奮った!
水滴が吹っ飛ぶ。
しかし、彼はそのあたりをまだ漂っていた『蒸気』にまでは気を払っていなかった。
蒸気はまるで先ほどの水滴のように進路を変え、ワムウの喉へ侵入した。
蒸気はまるで先ほどの水滴のように進路を変え、ワムウの喉へ侵入した。
「NWWWWWWWWW!!」
その蒸気は俺の喉を切り裂いた。
モット伯は叫んだ。
「ビンゴォッ!喉を引きちぎった!」
「ビンゴォッ!喉を引きちぎった!」
大男の体はよろめく。
「フハハハハ!口ほどにもない奴め!俺の『水魔法』と『アクア・ネックレス』!これほど相性がいいものがあるだろうかッ!」
モット伯の家柄がいくらよかったと言っても、人望も実力もなければ出世はできない。
彼の人望は皆無ではあった。つまり、実力は折り紙つきであった。表面を取り繕う演技力とその実力だけは認められ、勅使にまで出世したのだ。
彼の『右腕』である能力もその出世を手伝っていたが、どんな汚れ仕事をも果たす胆力と経験こそは彼の『左腕』であった。
彼の人望は皆無ではあった。つまり、実力は折り紙つきであった。表面を取り繕う演技力とその実力だけは認められ、勅使にまで出世したのだ。
彼の『右腕』である能力もその出世を手伝っていたが、どんな汚れ仕事をも果たす胆力と経験こそは彼の『左腕』であった。
が、彼の経験をもってしても、
「MWWW…」
喉をもがれて、
「WRY…」
それでもなお戦いを挑んでくるような生物を知らなかった!
「WRYYYYYYYYYYYY!!!!」
起き上がった勢いによる蹴りがモット伯にヒットし、彼は壁に吹っ飛ぶ。
クリーンヒットとはいえ、苦し紛れの攻撃には違いないため、致命傷にはならない。
が、威力がないゆえにあまり音が立たなかったのは幸運であった。
クリーンヒットとはいえ、苦し紛れの攻撃には違いないため、致命傷にはならない。
が、威力がないゆえにあまり音が立たなかったのは幸運であった。
呻き声をあげて吹っ飛んだモット伯は、着地地点で自分の状況を考える。
(ど、どういうことだ!?奴の喉は確かに切り裂いた…もぎとったはず!実際ここからでもそれが見える!なのに!なのにッ!なぜ奴は
生きているんだ!?俺に蹴りを食らわしてくるんだ?)
(ど、どういうことだ!?奴の喉は確かに切り裂いた…もぎとったはず!実際ここからでもそれが見える!なのに!なのにッ!なぜ奴は
生きているんだ!?俺に蹴りを食らわしてくるんだ?)
ワムウは予想外の攻撃に少し立ち止まって考える。
(ふむ…魔法にはこういうものもあるのか、勉強になったがいかんせんパワーが足らなかったようだな)
(ふむ…魔法にはこういうものもあるのか、勉強になったがいかんせんパワーが足らなかったようだな)
「うおおおおおッ!『アクア・ネックレス』ッ!!」
ワムウがモット伯に向かって歩き出すと、彼の近くを漂っていた先ほどの蒸気が、実体化し彼の喉に突っ込んでくる。
ワムウがモット伯に向かって歩き出すと、彼の近くを漂っていた先ほどの蒸気が、実体化し彼の喉に突っ込んでくる。
が、その水蒸気はワムウには届かなかった。
ワムウの姿はゆがんで見えた。
ワムウの姿はゆがんで見えた。
「この『風のプロテクター』は…もっともこの名付け親は俺ではないがな……まあそんなことはどうでもよかろう……
『風のプロテクター』は俺の肺からの水蒸気を俺の風で操って纏っている…水蒸気が水蒸気と風の壁をつっきることはできまい…」
『風のプロテクター』は俺の肺からの水蒸気を俺の風で操って纏っている…水蒸気が水蒸気と風の壁をつっきることはできまい…」
モット伯はアクア・ネックレスを執拗に忍び込ませようとする。しかし、カッター型にしなければシャボン玉すら通さなかったであろう
風のプロテクターは、水蒸気などを弾くことはわけがなかった。
風のプロテクターは、水蒸気などを弾くことはわけがなかった。
「ひ、ひぃいいいい!」
モット伯は後ろに後ずさるがもう窓しかない。
ここは屋敷の4階、生身の人間が落ちたら怪我は免れないだろう。
そして、怪我した状態でこの化け物から逃れることは不可能であると悟っていた。
そのために…
モット伯は後ろに後ずさるがもう窓しかない。
ここは屋敷の4階、生身の人間が落ちたら怪我は免れないだろう。
そして、怪我した状態でこの化け物から逃れることは不可能であると悟っていた。
そのために…
「『アクア・ネックレス』!」
彼はそれを自分の付近まで呼び寄せ、窓を開け、それをクッションのようにして飛び降りた。
そして、着地。
彼はそれを自分の付近まで呼び寄せ、窓を開け、それをクッションのようにして飛び降りた。
そして、着地。
「なるほど、そういった使い方もできるのか」
ワムウは窓のさんに立ち、躊躇なく飛び降りる。こちらも問題なく着地。
ワムウは窓のさんに立ち、躊躇なく飛び降りる。こちらも問題なく着地。
「さあ、そろそろ諦めるんだな。なかなか楽しかったが、そろそろ終わらせないと困る」
「ふは…ふはははははは!」
モット伯は大きく笑い出した。
「お、俺も幸運に恵まれたようだぜェーーッ!」
モット伯は大きく笑い出した。
「お、俺も幸運に恵まれたようだぜェーーッ!」
モット伯の視線の先にいるのは、ルイズだった。
* * *
「な、なにがおこってるのよ!」
「その水滴を口に入れるなッ!」
「その水滴を口に入れるなッ!」
モット伯はアクア・ネックレスをルイズの方向に向ける。
いくらワムウが柱の男だからと言って、あの距離ではアクア・ネックレスを止めるのは不可能であった。
いくらワムウが柱の男だからと言って、あの距離ではアクア・ネックレスを止めるのは不可能であった。
「ふひゃはひゃッ!無駄だッ!口以外にも入れるところなんてどこにだってあるぜェーッ!こんな時間に通りすがりの娘がいるわけがない、
そう思っていたがやはり貴様の関係者かッ!お前らは将棋やチェスでいう『詰み』に嵌ったのだーッ!」
モット伯は未だに手首で半分締められている喉を使い叫ぶ。
そう思っていたがやはり貴様の関係者かッ!お前らは将棋やチェスでいう『詰み』に嵌ったのだーッ!」
モット伯は未だに手首で半分締められている喉を使い叫ぶ。
「よくわかんないけど、こいつから離れればいいのね!ワムウはそいつをやっちゃいなさい!」
ルイズは杖を抜く。
ワムウは一瞥したあと、モット伯に向き直る。
ルイズは杖を抜く。
ワムウは一瞥したあと、モット伯に向き直る。
「ただの魔法でどうしようっていうんだ!俺のはただの魔法じゃないんだぜェーッ!」
モット伯は狂ったように叫びつづける。
モット伯は狂ったように叫びつづける。
ルイズは地面に杖を振った。
地面は軽い爆発を起こし、ルイズは後方に吹っ飛ぶ。
「距離は稼いだわよ。これでいいの?」
「ああ、十分だ」
ルイズには、なぜか、ワムウの考えがわかっていた。
地面は軽い爆発を起こし、ルイズは後方に吹っ飛ぶ。
「距離は稼いだわよ。これでいいの?」
「ああ、十分だ」
ルイズには、なぜか、ワムウの考えがわかっていた。
「なにが十分だって?その程度の距離でェーーッ!お前だって俺に届く距離じゃ…」
モット伯の心臓が血を吹いた。
「単発式『渾楔颯』」
『烈風のメス』は軽々とモット伯の心臓を貫き、アクア・ネックレスはルイズの手前で墜落した。
「単発式『渾楔颯』」
『烈風のメス』は軽々とモット伯の心臓を貫き、アクア・ネックレスはルイズの手前で墜落した。
ワムウは倒れているモット伯に近づく。
「ふむ…まだ息があるか……」
モット伯は持ち前の水魔法を使って治していたが、それでも意識を保つのが限界、死ぬのは時間の問題であった。
「ふむ…まだ息があるか……」
モット伯は持ち前の水魔法を使って治していたが、それでも意識を保つのが限界、死ぬのは時間の問題であった。
「とどめをささねばならない…だがただ食ってしまうのも惜しい…」
ワムウはつぶやく。
「この俺に単発とはいえ『渾楔颯』まで使わせた貴様には敬意をもってとどめをさしてやろう…手首がないから亜流になるがな…」
ワムウはつぶやく。
「この俺に単発とはいえ『渾楔颯』まで使わせた貴様には敬意をもってとどめをさしてやろう…手首がないから亜流になるがな…」
左足を関節ごと右回転…
右足を膝の関節ごと左回転…
そのふたつの足の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は!
まさに歯車的砂嵐の小宇宙!!
「闘技『神砂嵐』!!」
* * *
「…いくら無茶だからって、足手まといっていわれたのに残ってそれで人質になった、なんてことになるくらいなら死んだ方がマシよ」
「あいつの注意がお前に行ったから助かったといえば助かった。まあ、礼くらいは言ってやろう。」
「あいつの注意がお前に行ったから助かったといえば助かった。まあ、礼くらいは言ってやろう。」
ワムウは馬の横を同じスピードで走りながら話していた。
「…怒らないの?」
「無茶をやったが、結果的に良かった以上は俺からはなにも言えん。だが、あんな上手くいくことは滅多にない。十回に九回は死んでいても
おかしくない。あんな無茶をやりつづけるつもりなら、もう少し精進するんだな」
「無茶をやったが、結果的に良かった以上は俺からはなにも言えん。だが、あんな上手くいくことは滅多にない。十回に九回は死んでいても
おかしくない。あんな無茶をやりつづけるつもりなら、もう少し精進するんだな」
ルイズは下を向いて少し黙ったのち、話題を変える。
「ねえワムウ、なんでモット伯なんかに敬意を払う、なんて言ったのよ。戦いの上でも人質をとったり、能力を隠して奇襲したり、
あんたの言う『戦士』とはほど遠いような戦い方をしてたように思えるんだけど?」
あんたの言う『戦士』とはほど遠いような戦い方をしてたように思えるんだけど?」
ワムウは振り返りもせず答える。だが、その話には重みがあった。
「戦士とは戦いを侮辱しないもの、と考えている。今回の戦いにはルールなどなかった以上、卑怯呼ばわりする必要はあるまい。
むしろこちらから押しかけていって殺したんだ、どちらかといえば非はこちらにあるな」
「戦士とは戦いを侮辱しないもの、と考えている。今回の戦いにはルールなどなかった以上、卑怯呼ばわりする必要はあるまい。
むしろこちらから押しかけていって殺したんだ、どちらかといえば非はこちらにあるな」
「……あんた、わかってるならなんでこんな無茶やるのよ、まったく」
ふー、とルイズはため息をつく。
ルイズが生きてきた中でこんな生死の間をさ迷ったのは初めてだったゆえに、精神的に大分疲れているようだ。
ふー、とルイズはため息をつく。
ルイズが生きてきた中でこんな生死の間をさ迷ったのは初めてだったゆえに、精神的に大分疲れているようだ。
「だが、戦いを侮辱しなかったといったことだけではなく、奴は単純に強かった。この俺にここまでダメージを与えられる奴は今までにもそうは居なかった。
波紋使いでもないのにここまでやられたのは長いこと生きてきたが始めてかもしれんな。その強さに『敬意』を払った。それだけだ」
波紋使いでもないのにここまでやられたのは長いこと生きてきたが始めてかもしれんな。その強さに『敬意』を払った。それだけだ」
ルイズは息をすいこむ。
「あんたのいう、『敬意』とかよくわからないけれど……あんたにとって『戦士』は全てだってのは本当のようね……
ゲスだから殺そうと思った相手に敬意を払うとかわけわかんないわよ、まったく」
「あんたのいう、『敬意』とかよくわからないけれど……あんたにとって『戦士』は全てだってのは本当のようね……
ゲスだから殺そうと思った相手に敬意を払うとかわけわかんないわよ、まったく」
そして、振り返る。
「そうそうワムウ!寮に戻ったらあの姿を消した『ぷろてくたー』とかについてちゃんと説明するのよ!」
「そうそうワムウ!寮に戻ったらあの姿を消した『ぷろてくたー』とかについてちゃんと説明するのよ!」
X月Y日付 ゲルマニア新聞――モット伯行方不明事件
屋敷の敷地には小さな穴が空いており、争った形跡があったため、モット伯自身の失踪は考えにくく、殺人、あるいは誘拐と当局は考えていたが
モット伯自身の魔法と思われる水魔法以外の魔法が使われた形跡がなく、メイジ殺しの犯行と考えられて捜査を進めていたが、
凶器と行方不明になったモット伯及び2名の死体すら見つからず、当局は昨日、捜査の打ち切りを決めたと発表した。
新しい勅使に就任したアンドリュー・リッジリー氏の会見では……
モット伯自身の魔法と思われる水魔法以外の魔法が使われた形跡がなく、メイジ殺しの犯行と考えられて捜査を進めていたが、
凶器と行方不明になったモット伯及び2名の死体すら見つからず、当局は昨日、捜査の打ち切りを決めたと発表した。
新しい勅使に就任したアンドリュー・リッジリー氏の会見では……
To Be Continued...