決闘が終わり、もう夜。
月が2つ並んでいる。
月が2つ並んでいる。
「…まったく、無茶しちゃって……あんたまだ召還されて一日目よ!?よくもこんな問題おこせるものね!」
「無茶だというが、俺の実力は知っている。多少魔法が使える程度の小僧に負けるとは思えん。もし負けたとしたらそれほどの男であった、ということだ」
「無茶だというが、俺の実力は知っている。多少魔法が使える程度の小僧に負けるとは思えん。もし負けたとしたらそれほどの男であった、ということだ」
ルイズが声を張り上げる。
「ダー―ッ!違うわよ!別にあんたみたいな田舎の亜人が負けて怪我することは心配してないわよ!あんたの恐ろしさは召還してすぐわからせてもらってるわ!
お生憎様!まったく、まだギーシュは決闘という形だったからよかったけど、あんたみたいな亜人が貴族を傷つけたりしたら即刻処刑よ!
しょ・け・い!もし次傷つけたりしたら、運がよくてもアカデミーってところで輪切りにされるくらいは覚悟しときなさいよ、まったく」
まくしたてるように話し、終わった後ためいきをつく。
「ダー―ッ!違うわよ!別にあんたみたいな田舎の亜人が負けて怪我することは心配してないわよ!あんたの恐ろしさは召還してすぐわからせてもらってるわ!
お生憎様!まったく、まだギーシュは決闘という形だったからよかったけど、あんたみたいな亜人が貴族を傷つけたりしたら即刻処刑よ!
しょ・け・い!もし次傷つけたりしたら、運がよくてもアカデミーってところで輪切りにされるくらいは覚悟しときなさいよ、まったく」
まくしたてるように話し、終わった後ためいきをつく。
「それにしても、あんた異世界から来たって本当?確かにあんたみたいな亜人見たことも聞いたこともないけど。太陽の光に少し弱い、って
実は吸血鬼もどきじゃないの?人間食べるっていうのが本当なら吸血鬼以上ね……ああ、頭痛くなってきた」
「吸血鬼、か。こちらの世界にも居るのだな。だが、世界が違う以上部下になるかどうかはわからんな。カーズ様が居ない以上石仮面も作れんし」
実は吸血鬼もどきじゃないの?人間食べるっていうのが本当なら吸血鬼以上ね……ああ、頭痛くなってきた」
「吸血鬼、か。こちらの世界にも居るのだな。だが、世界が違う以上部下になるかどうかはわからんな。カーズ様が居ない以上石仮面も作れんし」
「……ああ、もうなんでもいいわ、あんたの話にいちいち驚いてたら身が持たないわ…異世界からっていうと色々と説明がめんどくさいから
……そうね、東方のロバ・アル・カリイエから来たってことにしておいて。いい『ロバ・アル・カリイエ』よ。覚えた?」
「その程度の語、我々の知力ならば覚えるのはわけない。それより、そろそろ就寝しなくていいのか?俺は寝なくても構わんが寝れるならば寝ておきたい」
「あんた、いちいち物言いがムカつくわね…わかってるわ、もう寝るわよ。あんたは床だけどね!屋根があるだけ感謝しなさい!」
……そうね、東方のロバ・アル・カリイエから来たってことにしておいて。いい『ロバ・アル・カリイエ』よ。覚えた?」
「その程度の語、我々の知力ならば覚えるのはわけない。それより、そろそろ就寝しなくていいのか?俺は寝なくても構わんが寝れるならば寝ておきたい」
「あんた、いちいち物言いがムカつくわね…わかってるわ、もう寝るわよ。あんたは床だけどね!屋根があるだけ感謝しなさい!」
勝ち誇ったようにルイズが唸った。
「ゆか、だと?」
「そうよ、床よ」
「ゆか、だと?」
「そうよ、床よ」
(まあ亜人だしそんなもんよね、屋根があるところで寝れるってだけでも十分私は恩人だわ!ああ、なんて慈悲深いのルイズったら!)
「……狭いではないか」
「はぁ?」
「はぁ?」
まさかそういった返答が来るとは思っていなかったが、よくよく見てみると確かにあの巨体が寝るにはスペースが多少、いやかなり心許ない。
「どこで寝ても俺の勝手だろう、俺は外で寝かせてもらう」
「あ、ちょっと待っ…」
「あ、ちょっと待っ…」
ワムウは窓を開けて外に飛び出していった。
外を見ると林の方向に飛び去るという感じで向かっていき、地面から木の上に数歩で上っていった。
どうやら木の上で寝るらしい。
どうやら木の上で寝るらしい。
「いっちゃった……色々としもべとして頼もうと思ったのに、どうしろっていうのまったく…」
ルイズは再度ためいきをついた。今日ほど幸せが逃げた日はないな、などと思いながら意識は薄らいでいった。
* * *
「シン……帰ったら俺の部屋の電気消しといてくれよな…むにゃむ……ハッ!」
「おい、起きろ」
ルイズは鈍い音で目を覚ます。
「なに!?なにがおこったの!?」
「使い魔らしく起こしてやったんだ、感謝するんだな」
「い、今の鈍い音はなに?」
「小型の真空竜巻をお前の頭上に放った」
「使い魔らしく起こしてやったんだ、感謝するんだな」
「い、今の鈍い音はなに?」
「小型の真空竜巻をお前の頭上に放った」
ルイズが起き上がって枕を見ると無残にも羽毛がはみ出ていた。
ルイズが杖を持って立ち上がる。
「こ、この……」
「どうした?なにか不満か?」
「こ、この……」
「どうした?なにか不満か?」
ルイズは叫んだ。
「この汚らしいバカ犬がァーーーッ!」
「この汚らしいバカ犬がァーーーッ!」
ワムウは爆発で吹っ飛んだ。本日第一号だ。
「よくわかんないけどあんたが私の爆発に弱いのは割れてるのよ……いい、次こんなことやったら、全精神力をつぎこむわよ」
何事もなかったかのように立ち上がるワムウ。
「ふん、主人は主人でもカーズ様とは偉い違いだな、だがまあ今は頭を垂れておいてやろう」
「それで垂れてるつもりなの?まあ、いいわ。まずは着替えさせて。」
「着替えだと?俺の世界ではそれは自分でやるものだったが、こっちにはそんな風習があるのか?」
「ふん、主人は主人でもカーズ様とは偉い違いだな、だがまあ今は頭を垂れておいてやろう」
「それで垂れてるつもりなの?まあ、いいわ。まずは着替えさせて。」
「着替えだと?俺の世界ではそれは自分でやるものだったが、こっちにはそんな風習があるのか?」
ルイズが肩をすくめる。
「あのね?田舎者のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいるときは自分で服なんか着ないのよ」
「そうか、俺は使い魔になるとはいったが下僕になった覚えはない、自分で着替えるんだな」
「あのね?田舎者のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいるときは自分で服なんか着ないのよ」
「そうか、俺は使い魔になるとはいったが下僕になった覚えはない、自分で着替えるんだな」
うー、と低い声で唸り返す。
「あんた、朝ご飯抜くわよ?」
「好きにしろ。我々は多少食わなくても構わないし、なんならどこかから『調達』してきても構わんしな」
「あんた、朝ご飯抜くわよ?」
「好きにしろ。我々は多少食わなくても構わないし、なんならどこかから『調達』してきても構わんしな」
ワムウは外を見る。
(昨日少し見回ったが、あそこの林には割と動物がいる。野兎くらいはいるだろう、むしろ昨日のようなこぎれいな料理では
足りん。どうにかして補充しなければならない以上、どれが食えるかくらいしっておいた方がいいのだろうな)
(昨日少し見回ったが、あそこの林には割と動物がいる。野兎くらいはいるだろう、むしろ昨日のようなこぎれいな料理では
足りん。どうにかして補充しなければならない以上、どれが食えるかくらいしっておいた方がいいのだろうな)
外を見ているワムウを見る。
(あ、あいつ飯を抜かれるって言ったとたん外を見てるわ!『調達』…ってもしかして…あ、あいつの目!生徒を見てるに違いないわ!
『号外 トリステイン魔法学院から行方不明者が頻出!』ってことも………そ、それだけは避けないと!)
(あ、あいつ飯を抜かれるって言ったとたん外を見てるわ!『調達』…ってもしかして…あ、あいつの目!生徒を見てるに違いないわ!
『号外 トリステイン魔法学院から行方不明者が頻出!』ってことも………そ、それだけは避けないと!)
「わ、わかったわよ!自分で着替えるわよ、自分で!朝飯も食べさせてあげるから待ってなさい」
「食堂の位置は覚えている。先に行っているぞ」
「ま、待ちなさいよ!つーかお願いだから待って!あんた一人で行動させたらろくなことがないから!」
「食堂の位置は覚えている。先に行っているぞ」
「ま、待ちなさいよ!つーかお願いだから待って!あんた一人で行動させたらろくなことがないから!」
そういえば、扉も窓もカギを閉めていたはずなのに、どこから入ったんだろうと思ってふと窓を見て…
無残にも割れているのを見て…泣いた
無残にも割れているのを見て…泣いた
* * *
朝食を終え、食堂を出て教室へ向かう。
よっぽど昨日の決闘とその前のイザコザが広まったのか、昨日以上におびえてる人間が多かった。
特にワムウの影だけは踏んではならない、ということを身にしみてわかっているギーシュの取り巻きたちは太陽がどこに転移しても
影が届かない位置を常にとるように過敏に反応していた。
特にワムウの影だけは踏んではならない、ということを身にしみてわかっているギーシュの取り巻きたちは太陽がどこに転移しても
影が届かない位置を常にとるように過敏に反応していた。
(とりあえず朝食は終わったわ…ああ、なんで朝食くらいでわたしがこんなにビクビクしなきゃいけないの!)
「魔法の授業、とやらはなにをやるのだ?」
「今からやるのは土の授業よ、あの先生の授業は最初だから初歩からやるだろうしあんたのその自慢の『知力』なら理解できるんじゃない?」
皮肉げに言ってみるが、軽く流される。
「今からやるのは土の授業よ、あの先生の授業は最初だから初歩からやるだろうしあんたのその自慢の『知力』なら理解できるんじゃない?」
皮肉げに言ってみるが、軽く流される。
2人は教室に辿り着き、入り口のドアを開けた。
騒がしかった教室が静まる。
騒がしかった教室が静まる。
「や、やあルイズ、おはよう」
いつも『ゼロのルイズ』とバカにしているマリコルヌが乾いた声で挨拶してくる。
いつも『ゼロのルイズ』とバカにしているマリコルヌが乾いた声で挨拶してくる。
ルイズは無視して席につく。みなワムウの一挙一投足を注視し、影を踏まないよう気をつけている。
ワムウがルイズの後ろに立ってから数分後、シュヴルーズ先生が入ってくる。
ワムウがルイズの後ろに立ってから数分後、シュヴルーズ先生が入ってくる。
「皆さん。春の使い魔召還は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのが
とても楽しみなのですよ」
とても楽しみなのですよ」
先生はルイズの方向に目を向ける。
「ミス・ヴァリエールは大分変わった亜人を召還したようですね。なんでも人語を解する上に…とてもお強いとか…」
「は、はあ…」
「まあいいですわ、では授業を始めますよ」
「ミス・ヴァリエールは大分変わった亜人を召還したようですね。なんでも人語を解する上に…とてもお強いとか…」
「は、はあ…」
「まあいいですわ、では授業を始めますよ」
授業が始まる。ワムウはその内容をだいたい整理する。
(魔法の系統は『火』『水』『土』『風』『虚無』があり、そのうち『虚無』は今は失われているというわけか…
そして、土はこの世界ではいわゆる土木技術などを担っているらしいな)
(魔法の系統は『火』『水』『土』『風』『虚無』があり、そのうち『虚無』は今は失われているというわけか…
そして、土はこの世界ではいわゆる土木技術などを担っているらしいな)
ミセス・シュヴルーズが真鍮の錬金を成功させると、ワムウも感嘆の声をあげた。
「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ?」
「違います、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…『トライアングル』ですから」
「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ?」
「違います、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…『トライアングル』ですから」
(ふむ、あの言葉から察するにこちらでもそれなりに黄金には価値があるらしいな…だが、我々の世界と違い、採掘量が少ないからではなく、
錬金が難しいから価値が高騰している、とみたほうが良いようだな…我々の世界では黄金以上に価値が高かった銀も錬金できるのだろうか…)
錬金が難しいから価値が高騰している、とみたほうが良いようだな…我々の世界では黄金以上に価値が高かった銀も錬金できるのだろうか…)
「おい、ルイズ」
「なによ」
「気になっていたんだが、お前の属性はなんなんだ?」
「なによ」
「気になっていたんだが、お前の属性はなんなんだ?」
ワムウの一番後方の席のマリコルヌが吹き出しかける。自分では隠しているつもりだろうがルイズにすらバレバレだ。
「爆発、ということはやはり火、か?エシディシ様も熱によって物体を爆発などさせていたが…」
「爆発、ということはやはり火、か?エシディシ様も熱によって物体を爆発などさせていたが…」
「ミス・ヴァリエール!」
教師から叱責される。
教師から叱責される。
「授業中の私語は慎みなさい」
「すみません……」
「おしゃべりをする暇があるのならあなたにやってもらいましょう」
「え?わたし?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
「すみません……」
「おしゃべりをする暇があるのならあなたにやってもらいましょう」
「え?わたし?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
すると後ろの方から声があがる。
「先生、『ゼロのルイズ』にやらせると…」
声を出した生徒をワムウが睨む。
「先生、『ゼロのルイズ』にやらせると…」
声を出した生徒をワムウが睨む。
「おい小僧」
「ひッ!」
「ひッ!」
怯えて震えだす。
「なぜ主人は『ゼロのルイズ』などと呼ばれているのだ?」
「え、あ、それは…」
「なぜ主人は『ゼロのルイズ』などと呼ばれているのだ?」
「え、あ、それは…」
ルイズから声が飛んでくる。
「うるさいわねっ!ワムウもそんなこと聞かなくていいのよ!先生、やります、やらせてください!」
ルイズは前に歩いていく
「うるさいわねっ!ワムウもそんなこと聞かなくていいのよ!先生、やります、やらせてください!」
ルイズは前に歩いていく
「ヒッ!」
「このルイズ、容赦せんのか!」
「今週の山場ーっ!」
「このルイズ、容赦せんのか!」
「今週の山場ーっ!」
色々なところから声が漏れる、が無視してルイズは教卓の前に立ち、杖をかかげる。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです。」
ルイズはうなずき、杖を向ける。
ルイズはうなずき、杖を向ける。
生徒たちは、できるだけ教卓から離れ、机の下に逃げ込む。
数人こっそりと出て行く。
数人こっそりと出て行く。
ルイズは短くルーンを唱え、杖を振り下ろす。
その瞬間、教卓ごと石ころが爆発した。
爆風をモロに受けたルイズとミセス・シュヴルーズが倒れる。
爆風をモロに受けたルイズとミセス・シュヴルーズが倒れる。
「HEEEEYYYY!!あんまりだァアアアアアッ!」
「ここはまだ地面だからな!ここには確実な生がある!!」
「芸術は爆発だ!」
「机の下に顔があっても良いじゃないか!」
「やられたまんねーん!」
「おしおきだべェーッ」
「ここはまだ地面だからな!ここには確実な生がある!!」
「芸術は爆発だ!」
「机の下に顔があっても良いじゃないか!」
「やられたまんねーん!」
「おしおきだべェーッ」
まさに阿鼻叫喚、地獄絵図。
煤をハンカチでふき取りながらルイズが言った。
「ちょっと、失敗したみたいね」
「ちょっと、失敗したみたいね」
(なるほど、成功率『ゼロ』のルイズか…)
机の下に隠れていなかったためモロに食らったワムウは座り込みながらそんなことを考えていた。
机の下に隠れていなかったためモロに食らったワムウは座り込みながらそんなことを考えていた。