ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

条件! 勝利者の権限を錬金せよ その④

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条件! 勝利者の権限を錬金せよ その④

ルイズが目を覚ますと、自分の部屋だった。
身体のあちこちに違和感がある、何というか、絞めつけられているような。
前髪を掻き上げようとすると、額に柔らかい感触。包帯が巻かれていた。
ゆっくりと起き上がって自分の身体を見回す。
服は新しい物に着替えさせられ、右腕には手首から肘近くまで包帯が巻いてある。
指なんて包帯で真っ白だ。動かすと、ズキンと痛んだ。
痛みと同時に、結局昼食後一度も錬金が成功しなかった事を思い出す。
悔しさが込み上げてきて、胸の中が鈍く蠢いてるような気持ち悪さを感じる。
「どうして……どうして成功しないのよ!」
叫んで、ルイズは涙をこぼした。
「ちゃんと成功したはずなのに、どうして一度しか成功しなかったのよ……」
泣きながらルイズはポケットを探り……青銅が無い事に気づいた。
「な、無い! 私の青銅が……!」
飛び起きて部屋中を探す。机の上に置かれてあった、ボロボロの服も調べる。
無い、無い、無い、無い。どこを探しても、無い。
錬金を成功したという自信の証を、無くしてしまった。
ルイズは目の前が真っ暗になり、その場にへたり込んだ。
「なんで……」
呆然と、呆然と、ルイズは肩を落としていた。
それからどれくらい経っただろうか、突如静寂を破るようにドアがノックされた。
「あ、開いてるわよ!」
反射的に応えてから、相手は誰だろうと思った。入ってきたのは青銅だった。
「やあルイズ、怪我の具合はどうだい?」
「……ギーシュ。まさか、またあなたが私を運んでくれたの?」
「ああ。先生を呼んでね……三度目は無いようにと怒ってらしたよ」


ルイズは包帯で包まれた右手をギュッと握り、ギーシュを睨んだ。
「あんた、どうして私を助けるのよ?」
「決まってるだろう? 薔薇はレディを癒すものさ」
「……そうね、私が勝てばジョータローが部屋から出てってくれるものね」
「ま、まあそれもあるが……君があまりにも無茶をするから心配なんだ。
 現にこんな怪我までして、いくら君が『ゼロ』でも放っておけないよ」
「あんたまさか……あいつに命令されて私を探ってるんじゃないでしょうね?」
「まさか! すべて僕が勝手にやっている事さ」
「…………あんた、意外といい奴?」
「失敬な。僕ほど心優しい男はそうはいまい」
「二股かけてたくせに」
「……薔薇は大勢の女性を楽しませるために咲くのだよ、ゼロのルイズ」
「そんな事より私が錬金した青銅を知らない?」
「あ、ああ~……あれは、僕が持っている」
「返して」
「…………はい」
ギーシュから青銅を返されて、ルイズはようやく小さな笑みを浮かべた。
大丈夫、この青銅が勇気と自信をくれる。きっとうまくいく、今度こそ。
「ところでルイズ」
「何よ」
「僕はついさっき夕食を食べ終わったばかりなのだが」
それがどうした、と思い、言葉の本当の意味に気づくのに一秒、二秒、三秒。
理解したルイズは、ギーシュに向かって怒鳴った。
「何でもっと早く言わないのよー!」
ルイズは右手の包帯を解き、新しい手袋をつけてからヴェストリ広場へ走った。


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いきなり、である。
ヴェストリ広場についていきなり、承太郎は凄まじいプレッシャーを放っていた。
「ほう、逃げずに来たか。褒めてやるぜ」
「だ、誰が逃げるもんですか!」
ルイズは負けじと言い返す。でも、承太郎から発せられる威圧感に後ずさりしたい気分。
ルイズと一緒に現れたギーシュは、
「ルイズに手を貸してた訳じゃない」と必死に言い訳した。相当承太郎が怖いらしい。
そんな言い訳を軽く流して、承太郎はポケットから石を取り出し、
ルイズが練習に使っていた椅子の上に置いた。
そういえば片づけ忘れていたが、気絶しちゃったんだから仕方ない。
「さあ、約束の時間だぜ。この石を青銅に錬金してもらおーか」
「ふ、フン! そんなの簡単なんだから。
 さっきちょっと練習してみたら、私、見事に錬金に成功したんだからね!」
「ほー、そいつは楽しみだ。じゃあさっそく見せてもらおうか」
「のの、望むところよ!」
椅子と小石を挟んで、承太郎とルイズが向かい合う。
だが二人には決定的な違いがあった。
それは、承太郎はまた爆発して終わりだろうと思っているらしく、
椅子からやや離れた所に立っている事。それがルイズを苛立たせた。
一方ギーシュはルイズを応援するかのように近くに立っている。
まあ、承太郎と相部屋になっちゃったんだから、応援したい気持ちは解る。
そんなこんなでいよいよ運命の瞬間がやって来た。

ルイズは小石に向けて杖を構え、手袋の下の傷が痛みわずかに唇が引きつったが、
しっかりとした口調でルーンを唱え出した。
その、ほんの数秒の間にルイズの頭脳はフル回転していた。

このまま普通に錬金しても、多分、また失敗しておしまいに違いないわ。
そこで問題よ!
偶然で一度しか成功していない錬金を、どうやって今この瞬間成功させるか?
三択――ひとつだけ選びなさい。
答え① キュートなルイズは突如成功のコツを思い出し成功する。
答え② 一か八かでやってみたら再び偶然にも成功する。
答え③ 失敗する。現実は非情である。

私がマルをつけたいのは答え①だけど期待できない……。
なぜなら今この瞬間になっても成功した時のコツなんて思い出せないから。
だとしたら答えは……②しかないようね。

と、結論付けたところで詠唱が終わる。ルイズの杖が振り下ろされる。
果たして小石は青銅に錬金されるのか!?
ルイズと! 承太郎の! 賭けの行方は!?

(お願い――成功して!)

少女の思い――虚しく――小石は爆発した。
そりゃもう盛大に。
これでもかってくらい。
爆風でルイズは尻餅をつき咳き込む。
だがその瞳にはまだ闘志の炎が宿っていた。
(唯一成功した時も……爆発はしていた。だから、お願い――)
爆煙が、少しずつ、少しずつ、晴れていく。スローモーションのように。
ルイズは真っ直ぐに爆煙の向こうにある小石――いや、青銅を探した。
すると、ルイズの願いに応えるように爆煙の向こうがかすかに光る。
そこにある、とルイズは確信した。
爆煙が晴れたそこには、椅子の上には、鮮やかな濃緑の青銅の塊ッ!

「や、やった――」
ルイズの呟きを、承太郎の厳しい口調がかき消す。
「ルイズ……てめーの負けだ」

え? と、ルイズは口を開ける。
だって、爆煙が晴れた今、明らかじゃない。
椅子の上には、錬金された青銅。
そして、爆煙が晴れた今、明らかだった。
椅子の上の青銅に薔薇の造花――杖を向けたギーシュと、
その腕を掴むジョータローのもう一本の腕。
……え? どういう事? 何それ?
どう、して、ギーシュが、杖を……?
ギーシュは顔面蒼白で、滑稽なほど恐怖に歪んだ表情で、承太郎を見上げている。
承太郎の凍るような目線がギーシュを睨み、そして、ルイズを睨んだ。

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