ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-34

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旅籠から飛び立った2匹の竜、シルフィードとヴァリエール家所有の竜は、
一時間もしないうちに屋敷についた。もっとも屋敷と言うより、その威容は
城と呼ぶほうが相応しいものだったが。
「エレオノール姉さま、それにわたしの小さいルイズ、お帰りなさい!」
城の前庭に降り立ったルイズとエレオノールに、桃色がかったブロンドの、
ルイズと同じ髪の色をした女性が駆け寄る。
「カトレア」
「ちい姉さま!」
顔を輝かせ、ルイズがその女性の胸に飛び込む。
「あらルイズ、暫く見ない間に背が伸びた?」
「はい!ちいねえさま!」
「私には全然かわってないように見えるけど…」
そうは言うが、嬉しそうに抱きあう二人に、エレオノールの顔が弛む。
「ねえ…ひょっとしてあの人も、ルイズのお姉さんなのかしら」
エレオノールとルイズのやり取りの時以上に、唖然とした顔をするキュルケ。
「そうだろうね。あんなにそっくりなんだし」
「え~どこが?」
「全然違うじゃねえか相棒」
即座に否定される育郎であった。
「そ、そうかな?」
「そうだって。髪の毛の色は娘っ子と一緒だが、顔つきが全然違うじゃねえか。
 例えると娘っ子は針。金髪の姉ちゃんは槍。あの姉ちゃんは綿って所だな」
「あら、上手い事言うわね。他にも…ほら、アレ見てみなさいよ」
「アレ?」
キュルケはカトレアの胸を指差す。
そう、それはルイズとエレオノールとは明らかに違っていた。
あるのだ!
いや、あるだけではない!
ボリューム満点なのだ!
「ありえねーよなー」
「ありえないわよねえ?」

「いや、そんなところで判断するのは…
 そうだ!タバサはどう思う?似てると思うだろ?」
シルフィードに、召使の言う事を聞くように言い聞かせていたタバサに、意見を
求める育郎。タバサは杖をカトレアに向け、ゆっくりと口を開いた。
「突然変異」
杖の先は、しっかりとカトレアの胸を指し示している。
「いや、胸じゃなくて…」
ルイズと抱き合っていたカトレアが、騒ぐ育郎達に気付く。
「あらあら、私ったら…ルイズ、お友達も連れて来たのね?」
「いえ、一人かってについてきたのがいます」
「もう、恥ずかしがらなくてもいいのに」
そう言って育郎達に駆け寄り、礼をする。
「わたくし、ルイズの姉のカトレアと申します」
「あ、どうも。橋沢育郎といいます」
「デルフリンガーさまだ」
「………タバサ」
最後にキュルケが、エレオノールの時と同じように、馬鹿丁寧な礼をした。
「これはこれはご丁寧に。ルイズの『友達』のキュルケ・アウグスタ・
 フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーと申します」
「まあ!ツェルプストーですって?」
口に手を当てて、目を丸くしているカトレアに満足するキュルケ。しかし、次の
瞬間予想外の言葉が飛び出す。
「素敵ねルイズ!インテリジェンスソードだけじゃなくて、ツェルプストー家の
 人ともお友達だなんて!」
「ちょっとカトレア!?」
「ちいねえさま!私こんなと友達じゃないわ!そこのメーンとか言う剣も!」
詰め寄る姉妹を不思議そうな顔で見るカトレア。
「あら、どうして?お隣同士なんだから、仲良くなったほうが良いじゃない」
「そうですよね」
そう言って、カトレアの言葉に育郎が頷く。
「まあ、貴方もそう思う?」
「ええ、やっぱりいがみ合」
「「アンタは黙ってなさい!!」」
息ピッタリで育郎に怒鳴る姉妹であった。

「ごめんなさいね。もうお姉さまもルイズも、せっかく来てくれたお医者様に…
 気を悪くしないでね?」
「いえ、いいんですよ。僕は気にしてませんから」
「ミス・ツェルプストーも」
「私も気にしてないわよ」
広場で一通り騒いだルイズ達は、カトレアの提案で、ヴァリエール公の部屋まで
彼女直々に案内される事になったのだ。
「別にキュルケに謝る事なんてないのに…」
「あら、だめよルイズ。わざわざこんな所まできてくれたんだから。
 お姉さまも、お客様に粗相なんて、恥ずかしいじゃないですか」
「…もういいわよ」
「二人とも、わかってくれて嬉しいわ」
姉妹達の返事に笑顔をみせたカトレアが、今度は振り返って育郎を見つめた。
「それにしても貴方…変わった服装ね、名前も変わってるし…あ、気を悪く
 しないでね。ひょっとして東方から来たの?」
「え?あ、はい」
「まあ、やっぱり!私東方から来た人を見るのは初めてなの!」
そう言って無邪気に笑うカトレアに連れられ、育郎の顔にも笑みが浮かぶ。
「ま、それはいいとして。そっちのお姉さんの婚約者…なんて名前だっけ?」
「バーガディシュさん…だったかな?」
「違う。チキンブロス」
そう答える育郎とタバサに、エレオノールが溜息をつく。
「…バーガンディ伯爵様よ。ていうかなによ、チキンブロスって?」
「………」

「そうそう、その伯爵様は何処にいらっしゃるのかしら?
 よろしければ、ご紹介して欲しいのですけれど」
先程の幸せモードの時は気付かなかったが、キュルケが浮かべる笑みに
不振な何かを感じ、エレオノールは眉をひそめた。
「ひょっとして貴方、妙な事を考えてないでしょうね?」
「何をおっしゃっているか、よくわかりませんわ」
二人の間に飛び散る火花に、辺りの空気に緊張したものが張り詰めていく。
「あら、ツェルプストー家の悪名は我が家によ~く伝わっているのよ?」
エレオノールの声音に、恐ろしい物を感じたルイズがキュルケを見ると、なんと
キュルケは楽しげに笑っているではないか。
ルイズはこの時、胸以外で始めてキュルケを凄いと思った。
「あら、残念…バーガンディ伯爵様はもう帰られましたわ」
「「へ?」」
カトレアの言葉に、張り詰めていた空気が一気に弛む。
「ど、どうして?」
「さあ…お父様とお話してから、すぐに出発なされたもので」
「な~んだ、つまんないの」
キッ!っと鋭い目を向けるエレオノールに気付き、悪戯を見つかった子供のように
舌を出すキュルケだった。

「東方…の医者か」
むぅ、と唸り、顎に手をやって考えるそぶりを見せるヴァリエール公爵。
それからルイズが連れて来た平民を見る。
珍しい黒髪と黒い瞳を持ち、これまた見たことのない珍しい服を着ている
その男はどうみてもまだまだ若造であり、さらには剣を背負っているため、
とてもとても腕の立つ医者には見えなかった。そんな者に娘を診せるなど…
とはいえ、かわいい末娘がなんとか呼び出した使い魔である。
娘を信じたい気持ちもあり、この怪しげな少年をどう扱うべきか決めかねていた。
「では、カトレアを頼みます」
「お、おいカリーヌ…」
自分の隣にいる桃色の髪の鋭い目つきの女性、公爵の最愛にして…とにかく最愛の
妻の言葉に、ヴァリエール公爵は困惑した顔をする。
「あなた、何を悩んでらっしゃるのですか?」
「むぅ…その、なんだ…」
娘の前で、その使い魔への不審を述べる事を躊躇い、思わず口ごもってしまう。
「多少珍しくとも、使い魔は使い魔。
 主の不利益になるような事を、するはずもありません」
『平民の使い魔は多少珍しいで済ませるような事だろうか?』と公爵は思ったが、
確かに妻の言う通りである。
「…そうだな。ルイズ、その男にカトレアの治療をさせなさい」
「は、はい!」

「ああ、エレオノール。お前はここに残りなさい。少し話がある」
ルイズ達といっしょに、部屋を出て行こうとするエレオノールを呼び止める。
「わかりましたわ、お父様。ほらルイズ、貴方はさっさとお行きなさい」
ルイズ達が部屋から出て行くのを確認した後、公爵はどう話を切り出すか
しばらく悩んだ後、結局単刀直入に言う事にする。
「あー、バーガンディ伯爵だが…お前との婚約は解消するとの事だ」
一瞬静寂が訪れ、そしてすぐにエレオノールの困惑の声が部屋に響く。
「…ど、どういう事ですの?何故!?」
「落ち着きなさいエレオノール。あなた、無論伯爵から納得のいく説明は
 受けているのでしょうね?」
長女と妻の視線を受け、なんとも気まずくなりながらも、これも親の義務だと
自分を納得させる。
「もう限界…だそうだ」
「どういう意味ですか!?」
どうもこうもそういう意味なのだが…とは公爵は言えない。
「はぁ…まったく、あなたはそんなわけのわからない理由で、婚約解消を
 受け入れたのですか?」
だってかわいそうだったんだもん…等とは口が避けても言えない。
「そうですわお父様!納得がいくよう話してください!」
「そんな曖昧な理由で婚約解消を許されるだなんて、何を考えているんですか?」
妻と娘に詰め寄られ、やはり自分の判断は間違っていなかったと確信する
ヴァリエール公爵であった。


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