ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アバッキオ-2

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俺はやり遂げた、真実に向かうことができたんだ。
「ああ、そうだ。おまえは本当に立派にやり遂げたんだよ」
ようやく終わったんだ。

空を見上げる。いい、空だ。
これなら気持ちよく眠ることが出来る。
後のことはアイツらに任せて、俺はさっさと眠るとするぜ。
「……いや、それはまだ早いよ」
………何?

ヴゥンッ!

な、何だこれはッ!イキナリ宙に鏡みてぇなのが現れやがったぞッ。
しかも近づいて来やがるッ!
こんなとこまで来てもスタンド攻撃か。
クソッ、やるしかねえ!

『ムーディー・ブルースッ!』

喰らえッ、ムーディー・ブルース!
即座にムーディー・ブルースの拳を鏡に叩き込む。
だが、その拳は鏡に飲み込まれ、俺の体ごと鏡に引っ張り込もうとムーディ・ブルースが吸い込まれる。

うおおおぉぉッ、吸い込まれるッ!
以前戦ったマン・イン・ザ・ミラーってスタンドと性質が良く似ている。
同じようなスタンド能力なのかッ。

ムーディ・ブルースッ、数秒前のお前をリプレイしろォォーーーッ!
数秒前、攻撃を行うムーディー・ブルースを再生させる。
その時間のムーディー・ブルースのいた位置まで戻せば、鏡から抜け出れるかも知れねぇッ!

だが、ダメだった。
鏡の引き込むパワーが強すぎて、何とか拮抗するのが精一杯だ。
しかもジリジリ、まだ引き込まれてやがる。
完全に引きずり込まれるのも時間の問題か。

そして耐える俺の後ろに、誰かの気配を感じた。
状況からして、このスタンドの本体かッ!?
しかし耐えるのに精一杯の俺に、背後を振り向く余裕はない。
そしてソイツが俺に話しかけてきやがった。

「あの警官も言っただろォォ、あんたはまだ終わっちゃいないんだぜーッ!」
とても聞きなれた声だった。ガキっぽくて、背のちっちぇヤツの声。
反射的に俺は混乱した頭で言った。

テメェ、ナランチャかッ!この鏡みたいなのは何だッ!
いや、それよりも何でオマエまでここにいるんだッ!
まさか、オメーまで、終点に来ちまったってのかーーーっ!?

「その通りだ、アバッキオ」
もう一つ背後から聞きなれた声が聞こえた。
俺が聞き間違えるハズがねえ。チームのリーダー。
何よりも頼りになる、あの男の声だった。

そんな、バカなッ、アンタは、嘘だろッ!
ブチャラティイイイイィィィィッッ!!
そんな、辿りつけなかったのかッ!

俺の意思は無駄だったのかッ!
真実には辿りつくことができなかったってのかッ!?
何でアンタが終点にいるんだッ!

「そんなことがあるハズがないだろう。
アバッキオ、おまえの意思は確かに俺達が受け継いだ。
俺達は勝ったんだ。運命を解き放ったんだ」

じゃあ、なぜ、アンタはここにいるんだッ。
「後はジョルノに全てを託してきた」
………あの、小僧にかッ!
「ああ、オマエは気に喰わないだろうが、それは勘弁してくれよ。アバッキオ」

いや、ハッキリ言わせて貰うぜ。
途轍もなく気にくわねぇッ!
あの小僧に後のことが何とか出来るとは思えねえぜッ。
「オマエらしいな」

「さあ、アバッキオ、そろそ、ろ二人と、はお別れだ……」
なんだと、あんた何を言ってるんだ?
俺は自分のかつての相棒に目を向ける。

「それは…ま、だオマエが、終わって…いな、いからさ…」
何だ、これは?
急に耳が遠くなっちまったのか?
音にノイズが入ってよく聞こえなくなってきた。

そして俺の目の前にブチャラティのスティッキー・フィンガーズ。
ナランチャのエアロスミスが現れた。
二体のスタンドから二人の声が聞こえてくる。

「もう時間が、ねぇから…、よー、ちゃっ、ちゃとす、るぜェ、ェェッ。
へへへ、寂しくな・・・るけど、さー、負けんなよーーーッ。
受、け取ってくれ…アバッキオォォォーッ!」
ナランチャの声と共にエアロスミスがエンジンを唸らせ俺に突っ込んできた。
そしてヒュン、と消え去るように俺の体に吸い込まれる。

一体なんなんだ。
ブチャラティ、あんたは俺に何をさせたいんだ?
「アバッキオ、これ……先も、オマエは苦、難の道を歩くだ、ろう。
だが大切な、のは真、実に向かお…うとする意思、だ。
オマ、エはそ…を思い、出した。なら、こ…れか…ら行く、場所でもやっ、ていける」

スティッキー・フィンガーズが語りかけながら、俺の胸に手を置いた。
「運、命とは、眠…れる奴隷だ、目、覚めることで、運命は、解き放つこと、が………出来る。
俺はおま、えが眠、りから……目覚める…ことを祈、ってい、る。それが、俺に出来る……ただ一、つのこ…だ。
そし、てこれ…は俺の『記…ぉく』だ、役立、ててくれる……と嬉しい。
そ…じゃ……な…………アバッキオ……………」


おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!


俺の体に吸い込まれて、消えてゆくスティッキー・フィンガーズ。
そしてその最後の一欠けらが、光と共に掻き消えた。
依然鏡はムーディー・ブルースを吸い込み続け、俺も飲み込まれる寸前。
全く状況は変わっていない。

そんな俺を相棒が見つめている。
しかしその姿もだんだんと霞んできて、あまりよく姿を捉えることができない。
「さあ行、ってこ…い、終点に来たオ、マエに、まだ…道を歩、かせる…この運命。
苦し、い運命……だが、行く先……で得がたい何か、を、また得られ、ることに…な…のだ…ろう。
頑張、れよ…また会、おう………」

相棒が見えなくなってゆく。
俺はもう頭だけを鏡から出して、空を見上げた。

今にも落ちてきそうな空だった。


フーケの事件後、ルイズは生徒からも一目置かれるようになり、表立ってゼロと呼ぶ者は少なくなった。
もちろん魔法は使えないので、ゼロと呼ばれなくなったわけではない。
だがルイズはそういうことは、あまり気にしなくなった。

アバッキオが別に魔法が使えなくても、どうもない、と言ったから。
別に魔法が使えないことが悔しくないわけがない。
だが、大切なのは真実へ向かおうとする意思だから。
かつての一人悩んでいた頃に比べれば些細なことと言える。

アバッキオはぶっきらぼうな態度をとりながらも、何かあればルイズに相談するようになる。
ある日のこと、武器を持つと左手が光り力が沸いてきて分身、ムーディー・ブルースのパワーまで上がるのだとアバッキオが言った。
ルイズはならばと城下町に出かけ、武器屋でアバッキオに剣でも買ってやろうと考える。

そんなアバッキオが選んだのはナイフと剣。ナイフはともかく、剣はえらくやかましい物であった。
名をデルフリンガー。錆びだらけのインテリジェンスソード。
なんでそんなボロイ剣を選ぶのだと、不満気に聞いたルイズ。

「剣は使ったこともねえから、一番ブッ壊しても問題ないやつを選んだ」
そうアバッキオが言い、ルイズはそれもそうだなと思う。
デルフリンガーは逃げたくなったが、剣なので逃げることは出来ず、考えるのをやめた。

そんな日々を送る二人に、任務を与える者がやって来た。
アンリエッタは幼馴染で親友のルイズの元へ、一目を忍んで現れる。
任務はアンリエッタの書いた恋文をアルビオンまで行って回収してくること。
そしてアンリエッタからウェールズ宛の親書と水のルビーを託されたルイズ。

ルイズはもちろん任務を受けたが、アバッキオはそういう色恋沙汰は嫌いかも知れないと思い顔色を伺うと、
何でもないような顔をしながら、ふつふつとヤル気を漲らせている気配であった。
そういえばフーケのときも任務ということで、何故かヤル気を見せていた。

アンリエッタが去った後、ルイズは何故任務にこだわりを見せるのか尋ねる。
「俺の力が任務に必要とされるなら、命を掛けることは惜しいとも思わない」
求める答えとは違ったが、そう躊躇いなく言ったアバッキオにルイズは少し寂しくなった。

翌日アバッキオとルイズと何だかんだで任務に加わったギーシュの三人が出発する直前に、ワルドと名乗る青年が姿を見せる。
ワルドはアンリエッタから三人と協力して任務を果たして欲しいと頼まれやって来たのだという。
三人を鼓舞して早速出発しようとするワルドに、アバッキオはつまらなそうに言った。
「行くなら一人で行け。止めやしねぇぜ」

何を言われたのか理解できないワルドをほっといて、アバッキオはルイズに馬に乗るよう促す。
ワルドがようやく我に帰って今何を言ったのか聞き、ようやくルイズも復帰する。
だがアバッキオは本当にどうでもよさそうに「一人で行け」とまた言った。

ルイズもいきなり何故そんなことをアバッキオが言うのか分からずに尋ねる。
アバッキオはワルドを見ながら口を開く。
「コイツが本当にあの姫さんの命令で来たのか確認できねえ。
確認が取れなきゃあツレとして認めるわけにはいかねえ。敵である可能性もあるわけだからな」

ワルドはそんなことかと、アンリエッタの名の入った文書を取り出す。
だがアバッキオは冷めた目をするばかり。ワルドはその目に動揺を隠せない。
「本当にその書類が姫さんが書いたもんなのか、本当に証明できるのか?
俺達は姫さんがその書類を書いたところを見ることなんかできねえんだぜ」

だがワルドも書類の印を証拠とし、本物であることを現す。
が、アバッキオは逆に溜息をついた。
「ルイズもそうだが、オメーも一国の姫さんと付き合いがあるなら、そうとうなお偉いさんなんだろ。
だったら当然印を偽造出来ちまう可能性はある。任務の重要性を考えれば可能性があるだけでも危険だ。
それにそんなもんを証拠として持ち出すようなら、なおさら一緒に行くわけにはいかねえな。
使えねえマヌケヤローを連れてった日には命がいくつあっても足りやしねえぜ」

さっさと行くぞ、とルイズを再び促すアバッキオ。
ワルドは汗だらだらで、顔が赤くなったり青くなったり。
ルイズはさすがにワルドが哀れに感じて、アバッキオに連れて行ってあげようと言ってみた。

するとアバッキオはルイズを睨みつけ、ルイズは後ずさる。
「これは国の運命を掛けた任務なんだろうが。
だったら俺は何としてでも任務は達成するし、その不安要素は出来る限り排除する。
それに俺は自分の能力を過信しているわけじゃあねえ。能力は信用の置けるヤツにしか見せる気はない」

だがワルドは魔法衛士隊の隊長を務めるぐらい腕もいい。
多少フォローしつつ何とかとりなそうとルイズは考えるが、アバッキオの最後の言葉にそんなことは吹っ飛ぶ。
信用の置ける者にしか能力は見せない、アバッキオはそう言ったのだ。
「あの、信用、してくれてるの…………?」

躊躇いがちにルイズが背を向けるアバッキオに問いかける。
一瞬ピクンと動きが止まり、僅かに間を置いて小さくチッと舌打ちした音が聞こえた。
アバッキオは何も語らずにいるばかりであった。

結局ワルドは何とか、ルイズが文書の内容が昨日アンリエッタと話したことと合致すると発見し同行を許可された。
アバッキオはそれでもワルドを信用することはなかったが。
それとワルドがルイズとグリフォンに一緒に乗ろうと言ったが、すげなくルイズは断った。

そうして一行が出発してから数時間。
途中賊に出くわし、一行の後をつけていたタバサとキュルケも合流。
ワルドはただの物盗りだろうと言うが、アバッキオはそうは思わなかった。

賊どもはアバッキオに木陰に連れて行かれ、木陰からは悲鳴と嫌な音が聞こえてきた。
しばらくしてアバッキオが戻ってくると、どうやら妙なヤツに頼まれたらしいと言う。
顔に仮面を付けた、杖を持っていたからメイジだと思われる人物。

ルイズはアバッキオを木陰に連れて行って小さな声で尋ねた。
アバッキオが能力を知られるを嫌がるだろうと配慮してのことだ。
「あなたの『ムーディー・ブルース』で調べられる?」

アバッキオは今の状況を分析しながら言う。
「調べてもいいが、近くの街で頼まれたらしい。
だが行き先とは全く違う方向だ。そこに寄ってるヒマはあるのかよ?」

当然そんなヒマは無かった。ルイズは首を横に振る。
なら急ぐしか道はない。
そのまま賊は適当に転がしておいて先を急いだ。

途中何度か馬を変えながら、ようやく夜になって港町に到着。
ワルドがいつフネが出るのかと調べてくると、明後日に出るとのことらしい。
とりあえず一行は宿を取り、明後日に備えようと就寝の準備に入った。

そして宿で部屋割りを決めようという時に、ワルドがルイズと一緒の部屋で休むと言い出した。
ルイズは大事な任務中にそんなことをする気にはなれないと言うが、
アバッキオがルイズの耳に何かを伝えると、ルイズは頷いてしぶしぶ同室で構わないと承諾する。

ワルドは宿の部屋でルイズを口説き、任務が完了したら結婚しようと切り出す。
ルイズは今はそんなことは考えられないと言い、ワルドは急がないから大丈夫だと言った。
予定通り事は進行中だとワルドは思う。ルイズは疲れたのでさっさと寝た。

そしてその晩、ベッドにアバッキオの姿は無かった。


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