ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-4

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匿名ユーザー

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(…どうしてよ?
 くやしかっただけなのに
 私は、ただッ…)

そろそろ気にしてもいいだろう
召喚した張本人は何をやっているのだろうか?
ゼロのルイズこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
彼女はペタリ座って事態を静観していただけだったが
決して頭が空ッポなわけでもなかった
ルイズは普段バカにされていた
魔法成功率ゼロ%だから「ゼロのルイズ」
なのにスゴク負けず嫌いな彼女は
今回の使い魔召喚でキュルケのハナをアカしてやろうと決意していた
それが「鳥の巣」である
まあそこまではよかった
よくないがよかった
まさか自分がいきなり殴られてブッ飛ばされるとは思ってもみなかったのだから
そして今、呼び出したあの使い魔が他の皆の使い魔やキュルケをキズつけている
よくはわからないが痛そうだ 骨が折れてるかもしれない
ふと自分の胸を見る
さっき殴られたばかりだったが今やっと気づいた

…ン!?

えらいことになっている
胸がナイのは元々だ ムカツクが自分でもわかっている
問題にすべきは、胸元にあったはずのマント留めだ
割れてもいないし砕けてもいないが原型を留めていない
グニャルンと曲がりくねっている
保存が悪くて液体が染み出してきた粘土細工のように
タマゲたことに一部、シャツとも同化しているッ

(コレに殴られたキュルケの手は…どうなってるの?
 まさか…全ッ然、動いていない
 中で骨がグチャグチャにされた?
 あんなの、私の手に負えるのッ…)

おそろしかった
あれを呼び出したからこんなことになったのだ
爆発ズドンですむような笑い話ではない
マント留めが元通りの形に戻るなんて思えない
とりかえしのつかないケガをキュルケや他の使い魔に負わせているのだ
ルイズの心は罪悪感と「ああ、やっぱりあたしはダメだ」的な敗北感一色に染まっていた
クラスメートにはチョットやソットでは懲りない女と見られていたし
ルイズ自身も意地だけを財産にしてきたが
それも、これでポッキリ折れてしまいそうだった

…グス スンッ…

(泣くな、私… 泣いちゃ駄目…)

それでもポタポタこぼれ落ちてくるのは止まらなかった

(…アー、アー、みっともないこと!!)

男の攻撃でまたも地ベタに転がされたキュルケは
生徒達の中で泣いている宿敵に向かってツバを吐いた
血が混じっているので吐き出さないと気分が悪かった

(アンタ、やっぱり「ゼロ」なの…?
 空イバりだけのくッだらないヤツだったの?
 ちょっとは見せてもいいでしょ、甲斐性ってやつ)

キュルケの多彩な趣味のひとつが
ルイズのイヤがる顔を見ることだった
だが彼女は極度のワガママでもある
泣き顔を見せられても不愉快千万ッ!!
                    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(アンタが私に見せていいのはくやしがってる顔だけよ、ルイズ)

だから、あの使い魔を生け捕って目の前で自慢してやる
地団駄踏ませてギャンギャンわめかせてやる
これはいい 今から楽しみだッ

「言ったはずですわミスタ・コルベールッ 引っ込んでいろとッ!!」
「…ぬぅッ?」

そんな自分の快楽主義に水を差すタコをキュルケは許さない
再度の突撃で生徒達から離れた男を抹殺すべく
コルベールは呪文の詠唱を始めていたのだ
二人、目が合う

ギン

わずかな睨み合い
平和ボケした貴族にはない眼光
コルベールとてただのハゲチャビンではなかった
キュルケも見誤っていたらしい
一瞬気圧されては認めざるをえなかった

「…次で終わりますもの、余計な手をわずらわせることもありませんわ」
「二言はないね、ミス・ツェルプストー」
「くどいですわよ、ミスタ・コルベール」

対等な契約
こんなことになるはずではなかったが
単にそれだけのことだった
次でケリをつければいい、ただそれだけ…
ギーシュに目配せをする
あれで一応、生徒達の最前列に踏み止まっているのだ
逃げたりはしていなかった
だが、言いたいことは山ほどあるらしい

「ミエを張らなくてもそこに立っていられるキミがうらやましいよ、ミス・ツェルプストー
 実戦経験が豊富なんだね、よくわかったよ」
「…何が言いたいのかしら、ミスタ・グラモン」
「そんなキミがそれだけこっぴどくやられているんだぞォォーッ
 あんなパワーにスピードッ 射程距離なんか全然弱点じゃあなかった
 あの…平民相手に足下を石で固めて何になるっていうんだ
 すぐに壊して抜けてくるぞッ!!」

ギーシュの言うことは正しい
全身を岩で固めたところで動きを封じられるか怪しい相手だったのだ
だがそれでもなお、あの男は「人間」なのだ
だから

「あらギーシュ、それがいいんじゃない」
「何がいいもんかっ 早くミスタ・コルベールに任せて…」
「だからサイコーなのよ
 あのパワーにスピードが…」

ペロッ

自らの上唇を軽くなめるキュルケ

「いいから言われた通りにやりなさい
 そんなに『あのこと』バラされたい?」
「うぐっ…」
「『足元』よ、しっかり固めてね」
「ち、ちょっと待て、ぬかるみは…」

ハッ!?

そのときギーシュは気がついた

『土×2』ッ!!

キュルケの背後、数メイルに渡って
広く、きわめて浅いぬかるみに変わっていたのだ
草などはそのままだから、遠くからのパッと見ではわからないッ

(いつの間にこんな…まさかッ
 さっき殴られたとき、スデに詠唱は完了していたのか
 火を放ってから殴られるまでツッ立ってたのも
 これに気づかせないためだったのか
 殴られる瞬間に発動することで、あいつはこれを完璧に見逃したッ!!)



「ファイヤ…ファイヤッ」

バフッ バウッ

わずかな時間差と方向差をかけて火×1を二発
男に向けて逃げ場のないように撃ち込むキュルケ

「ファイヤ、ファイヤ、ファイヤァァァーッ!!」

ドボォオ

次々撃ち込む
もちろん魔法とて代償なしには使えないのだ
トライアングルメイジとはいえ、たとえドットレベルでも
こうまでむやみに乱射しては弾切れなどあっという間ッ
キュルケは殺すつもりで狙い撃っていた
どのみち、作戦に失敗すればあの男は死ぬことになるのだ
コルベールは優しくないようだから

「さっさと来なさいッ このフヌケぇぇぇぇ――ッ!!」

このモーレツな火球の雨あられに
一度は回避を決め込んでいた男も根負けした
反撃せねば焼き殺されてしまうッ

ドムゥ

男の足から土煙が上がり、
そしてまたキュルケは殴り飛ばされていった

ドボ
ズドッ ドッ ズドボッ

地面上を何度もバウンドし、学園全体を覆う城壁まで飛んで――

ギュン
ガシッ
ブワワッ

先回りした誰かに受け止められた
青髪メガネの仏頂面ッ
そいつは鳥の巣男に劣らない速度で飛び出し
キュルケを受け止め見事に減速してみせた

「…あら、タバサ」
「……」

タバサと呼ばれたその女は特に何も言わず
黙ってキュルケに肩を貸す

「ホントにカワイイわね、アナタ♪」

スリスリ

そのまま頬をすりつけられると、タバサは嫌そうに顔だけ押しのけた
戻れば決着はついていた
ギーシュはうまくやってくれたのだ
二回目の攻撃の時点で足からの着地に成功していた男は
三回目でも問題なく「足から」着地し…その足を固められた
着地というのは足全体をクッションに見立てて行うもの
足首から下をいきなりギッチリ固められた男は全力で前につんのめった
「足首は固まったまま」!!
結果どうなるか

「UGUUUUuuuuuuu…」

そこに全てのパワーとスピードを乗せてしまった男の足首は
いともあっさり折れてしまった

「これでもうほとんど動けないって寸法…『無力化』だわね」

これ以上逃げ回ったり抵抗しようというのなら
腕や膝で這い回らなければならないということ
今までより格段にノロければ恐れるに足りなかった
近寄らなければ万事解決…魔法で拘束する手段も、こうなればいくらでもあった

「にしてもブッソーな使い魔だこと
 冷静に襲いかかられてたらどうなっていたか…」(トチューでヤル気なくしてたみたいだけど)
「……」

タバサは相槌も打たなかった


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