ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

L7 meets C-MOON-6

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匿名ユーザー

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ゆっくりと目を開く
窓から入ってくる日の光に目を細めながら動かずじっとしておく。
暫らくすると目が日の光に慣れ開くようになった。
それに合わせに沈んでいた意識が浮上してくる。
「朝……」
意識が浮上したとしても覚醒するわけではない。
半分寝ぼけ眼で意味もなく呟いてみる。
なにも起こらなかった。当たり前である。
しかしぼけっとして時間を潰しているとだんだん意識がはっきりしてくる。
やがて完全に意識が覚醒した。
「起きないと」
起き上がろうとすると毛布に邪魔をされを起き上がれない。
それで昨日のことを思い出す。
「そうだ、わたし……」
思い出すと同時に涙が溢れてくる。
それを隠すため毛布の中に顔を埋める。
誰も見ているものなどいなかったが気持ちの問題だ。
なんで自分はこんな目にあうのだろうか。
自分がなにか悪いことをしたのだろうか。
したというのなら教えてほしい!
周りはみんな使えるのに!
ちゃんと使い魔を召喚したのに!
なぜ自分だけ!?
そう思っているうちにもう一つ思い出だす。
コルベールのことだ。
自分を励ましてくれたコルベール。
自分のことを親身になって考えてくれたコルベール。
そうだ。
泣いていちゃいけない。
泣いていてはコルベールにいらぬ心配をかけてしまうかもしれない。
そう考えあわてて涙を拭く。
それに寝る前、また来ると言っていなかったか?
言っていたはずだ。だから早く泣き止まないと!
だからといって涙がすぐに止まるわけはなく、そのあとも暫らく溢れ続けた。
そして涙が止まる頃、ルイズの頭に一つの疑問が浮かび上がった。
「そういえば、授業どうしよう」

朝早くから学院長室のドアをノックする音が聞こえる。
ノックをした人間は相手が返事をする前に何の躊躇いもなくドアを開け部屋に入る。
部屋に入った人間が見たものは重厚なつくりのセコイアのテーブルに肘をついている老人だった。
こちらに目も向けず水ギセルを咥えている。
「オールド・オスマン」
「なんじゃね?こんな朝っぱらから」
「昨日の使い魔召喚の儀式のことについてです。というか来いといったのはオールド・オスマンですが」
「忘れとらんよ」
老人、学院長オールド・オスマンは煙を吐き出しながらようやく入室者に目を向けた。
「まったく、なんて寂しい頭じゃ。見てるこっちが寒くなってくるようじゃ。見ろ。私のこの髪を!ふっさふさじゃろ」
「……私バカにされるようななにかをしましたか?」
髪をネタにされるその男はコルベールだった。
コルベールは冷静を装った目でオスマンを見つめる。
嫌がらせの部類の頭の話題はしてほしくないらしい。
しかしオスマンはそれをまったく悪いとは思っていないようで、鼻毛を引き抜く。
「しちゃおらんがの。何分暇じゃし、眠いし、、ミス・ロングビルいないし」
「ふざけるなよクソ爺」
さすがにそんな理由で頭をバカにされたら溜まったものではない。
「冗談じゃよ。ただ昨日の事件の処理が色々大変だったんでの。ちょっとくらい文句を言ってもいいだろうに。ミス・ロングビルも苦労したんじゃぞ」
「それは……」
「あれだけの数の生徒が怪我をしたんじゃ。学院としても責任を取らざるを得ぬじゃろ。まったく、本当に面倒ごとを起こしてくれたわい」
「すみません」
「今君がするのは謝るなどということではない。今回の事件の原因報告じゃ」
そう、今まで召喚の儀式で怪我をしたものは大勢いる。
それは召喚した使い魔を御しきれなかった結果だ。
だが、そういうときのために儀式のさいには監督する先生がいるのだ。
なぜなら、生徒たちに危険が迫ったとき、そばにその事態に対処できるものがいなければいけないからだ。
だというのに、今回の儀式ではその危険に対処できなかった。
しかもその場にいたほぼ全員が大なり小なり怪我をした。
骨折や、皮がずる剥けたり、頭を打って意識の混濁、全身打撲、などなど怪我は多岐にわたる。
こんなことは学院始まって以来だ。
「はい。ちゃんと仮説は立ててきました」
「うむ。では報告しなさい。ミスタ……、なんだっけ?」
「コルベールです。お忘れですか?」
「おお、すまんすまん。どこかの誰かさんのせいで疲れておっての~。頭に血が回ってなかったわい」
「いや、そんな露骨に私のほうを見ながら言われましても」
「冗談じゃ」
コルベールはそんなオスマンの様子を見ながらため息をついた。
しかしそれと同時にオスマンに、冗談を言う余裕があることに安堵する。
昨日は儀式の処理で相当忙しかっただろうと予想していたからだ。
しかしオスマンを見る限り、それほど忙しかったようには見えない。
つまり、それほど大事には到らなかったということだろう。
オスマンが場を仕切りなおすかのように咳払いをする。
「さて、改めて。報告しなさい。コルベール君」
そしてコルベールによる原因調査報告が行われた。

「つまり、ミス・ヴァリエールが身につけたその特殊な力によって起こった事件ということかね」
「そうです。今は安定していますがひとたび感情が爆発すればまたあのようなことになるかと」
「ふぅ、困ったことになったわい」
原因を報告し終え、コルベールはオスマンの反応を窺っていた。
別に自分は今回の事件の責任を負って罰を受けるのはいい。
しかしルイズにまでそれが行くのはまずいことだ。
なぜならルイズは被害者だからだ。
故意にあんな力を身につけたわけではない。
それに今回のことでルイズも相当心に傷を負っているはずだ。
体の傷はいずれ治る。
しかし心の傷は絶対に治るとは言い切れない。
そんな状態でもしルイズに罰が及んだら、ルイズの心の傷を広げる結果にしかならないだろう。
コルベールは自分の生徒の心配をただただしていた。
「コルベール君、君はミス・ヴァリエールの力を何とかできるかね?」
そんな心配をしているとオスマンが突然そんなことを言い出した。
「どうなのかね?」
「は、はい!何とかできます!してみせます!」
「ならいいんじゃよ。はい、今回の件はこれで終わり。コルベール君、ちゃんとミス・ヴァリエールの面倒を見るんじゃぞ」
コルベールはオスマンの言葉に耳を疑った。
今回の件はこれで終わり?
しかもこんなにあっさりと……
「え?あ、あの、お咎めはないんですか?」
「なんじゃ。君はそっちの気でもあるのかね。まだ早いと思うがの。私だって君の年ぐらいのときにはまだ目覚めとらんかったぞ?」
「そうじゃなくて!」
「わかっとる。冗談じゃよ。罰についてじゃが、別に誰が悪いというわけでもないしの。偶然は防げぬからな」
「オールド・オスマン……」
「それでも納得せぬというのならミス・ヴァリエールを一人前のメイジにしなさい」
「……はい!かならず!」
「では早速ミス・ヴァリエールのところへ行ってきなさい。行く約束をしとるんじゃろ」
それを聞いたコルベールが驚きの表情を浮かべる。
それをみながらオスマンの口元がにやりと歪む。
「なぜそれを?」
「顔にでかでかと書いてあるわい。読めぬ馬鹿は本人だけじゃ」
きっと顔になど書かれてはいないだろう。
結局オスマンが何故知っていたかを知らぬまま、コルベールは学院長室を退出していった。
そしてコルベールと入れ替わるように一人の若い女性が入ってくる。
秘書のミス・ロングビルだった。
ロングビルは部屋に入るなり、オスマン、そしてオスマンの机の上を見て驚きの声を漏らす。
オスマンはその様子を見ながら水ギセルを口に銜える。
「まさか、一人で全部仕上げられたのですか!?3日分はありましたよ!?」
そう、コルベールは大事に到らなかったと思っていたが、十分大事に到った。
そりゃあもう、4日は忙殺されるだろうというほど書類などの事後処理があったのだが、オスマンはそれを一人で全て終わらせてしまったのだ。
「え~と、学院長たるものいつでも余裕を見せないと、とか思って徹夜で……の?書類に埋もれた学院長とか格好悪いじゃろ」
「だからと言ってそんな無理をしたら身体を壊しますよ!」
「ミスタ・コルベールの前で余裕を見せるのは本当にしんどかったのう」
「まったく、今日はもうお休みになられてください」
「そうか、白か。純白か。うむ。しかし、ミス・ロングビルは黒に限る。そう思わんかね。可愛いモートソグニルや」
「……やっぱり休まないでください。今から仕事を持ってきます。作ってでも持ってきます」
ロングビルが抱いたオスマンに対する尊敬の念はもはや微塵も残っていなかった。


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