ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-28

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
唐突だがトリスティン魔法学院の風呂について説明しよう。
貴族が入る風呂は大理石でできた、ローマ風呂のような作りで、香水が混ぜられた
湯が張られた豪華なものある。もちろんライオンの口から湯が出ている。
「ギャーたべられるー!」
と、湯が止まっている時に、マリコルヌがふざけて頭を入れたところ、キレイに
ハマって抜けなくなった事もある。
ちなみに湯が出てきて、窒息しそうになるまでマリコルヌは放置されていた。
さらに女子風呂は特別仕様で、対覗き用に各種魔法によって厳重に守られている。
その威力は凄まじく、年に4回はオールド・オスマンが磔になっている程だ。
対して学院内で働く平民用の共同風呂は、掘っ立て小屋のような作りのサウナ風呂だ。
汗を流し、体が温まったら、外にでて水を浴び、汗を流す簡素な物である。
さて、異世界から来た育郎は、いったいどうしているのか?

「また酷くなっている…」
育郎が自分の腕を見てつぶやく。そこはただれたようになっているだけでなく、
変身したときのように、青く変色していた。
「………」
そのまま無言で顔をなでる。
一見して、腕のような変化は無いように見えるが、その感触は普通のものではない。
「相棒、気にすんなっても無理があるけどよ…まあなんだ、それでも気にすんな」

そんな育郎を見かねて、木に立てかけられたデルフが声をかける。
誰かに自分の体の変化を見られるのを嫌った育郎は、学院の外、人気のない泉を
探し出し、風呂に入る代わりに、そこで2、3日に一度水浴びをするのだった。
「ありがとう、デルフ…」
「いや、俺ももうちっとマシな事言えりゃ良かったんだが…」
重苦しい沈黙に、辺りがつつまれる。

なんとかなんねえかなこの空気
そりゃ無理もねえけどよ…
はぁ、俺が剣じゃなかったら、相棒にもう少し良い事言えるんかね?
つっても槍だったらろくな事は言えねーな
にしても、なんてくれーんだ…
こーんな良い天気なのによ。
空も青いし、小鳥もさえずってるし、竜もバッサバッサと…

「って竜だと!?」
「あ…あれは!」
育郎が空を仰ぎ見、空を飛ぶ巨体を確認する。
「きゅいきゅい!見つけたのね!」
それはタバサの使い魔、シルフィードだった。


「だからわたし、その吸血鬼に言ってやったの!
 『オーノーなの!貴方もう駄目なの!逆にお仕置きされちまってるの!』って!」
「ほー吸血鬼を手玉に取るなんざ、あのちびっ子大した奴だったんだな」
「吸血鬼か…そんなのがいるなんて、なんだか恐いな」
「「それはない」の!」
「そ、そう言われても…」
「それでね、それでね、その後お姉さまが…」
無邪気に話し続けるシルフィードのおかげで、先程までの重苦しい空気も、どこかに
おいやられてしまった。
韻竜という希少な種族ゆえ、人前で喋る事を主人から硬く禁じられているのだが、
おしゃべりが大好きなシルフィードには、それはとても辛い事なのだ。
今日も授業中、特にやることもないので学院の空を飛んでいたのだが、そんな時に
育郎が学院の外に出ていく所を偶然発見し、後をつけたのだ。途中で森に入った
育郎を見失ったりもしたが、こうやって無事一人と一振りを見つけ、おしゃべりに
興じる事ができたと言うわけである。
「シルフィードは本当にタバサが好きなんだね」
「そうなの!わたしお姉さま大好き!きゅいきゅい!」
水につかったまま会話を続ける育郎に、シルフィードは嬉しそうに身をゆすらせる。
「お姉さまはもの知りだし、とっても優しいし、それに私に名前をくださったの!
 素敵な名前!シルフィード!にんげんたちの名前!」
「そりゃ人間の名前じゃなくて、風の妖精の名前じゃなかったか?」
「そ、そうなの!大昔の妖精の名前なの!ちょっと忘れてただけなのね!」
間違いを指摘されてあせったのか、翼をバサバサと動かしてわめく。

「竜たちの名前では『イルククゥ』。そよ風って意味なの!」
「そよ風…ねぇ?」
シルフィードが翼を動かしたせで巻き起こった、突風のような風を受けながら、
デルフがつぶやく。
「優しそうな名前だね」
「きゅい!ありがとう!貴方も変な名前だけど、私好きよ?」
「変って言うな!」
「いいよデルフ。好きって言ってくれてるんだし」
ホラ見なさい、と言わんばかりに胸をそらすシルフィード。
「やれやれ、あんま調子づかせるのはどーかと思うがね」
そう言いながらも、その声はどこか楽しげである。
シルフィードのあまりの無邪気さが、暗く沈んでいた空気を吹き飛ばしたのだ。
決して口には出さないが、デルフはシルフィードに感謝していた。
「お黙りなのね!イクローさまが良いっていってるの!」
その言葉に、おもわず苦笑するイクロー。
「『様』なんてつけなくてもいいよ。照れくさいし」
首をかしげるシルフィード。
「きゅい?にんげんは『さま』って呼ばれるほうが嬉しいんじゃなかったの?
 あ、イクローはにんげんじゃなくて悪魔さんだったのね!」
「だから違うって!」


ところで、その頃シルフィードの主人たるタバサは、つまらないと評判の、
ミスタ・ギトーの授業を受けていた。
なにかにつれ、自分の『風』の系統を最強だと語るギトーだが、今日もいつも通り、
黒板の前で風最強論を熱く語っている。こうなると中々授業にはもどらない。
本でも読もうかと思ったが、ふと少し前にシルフィードが学院の外に向かって
飛んでいくのが、窓から見えたことを思い出した。まだまだミスタ・ギトーの
無駄話は続きそうなので、彼女は自分の使い魔が何をしているのか知る為に、
滅多にしない感覚の共有を行い、そして…
「ちょ、ちょっとタバサ!どうしたのよ、鼻血でてるわよ!?」
キュルケがタバサの異変に気付いて声をかける。
よく見れば、タバサの顔は真っ赤になっているではないか。
「む、どうしたのかね、ミス・ツェルプストー?」
騒ぐキュルケに、ギトーが自慢話を中断する。
「あの、ミス・タバサが急に鼻血を、それに顔も真っ赤で」
「ふむ、何か悪い病気かもしれんな…しかたない、ミス・ツェルプストー!
 ミス・タバサを医務室に連れていってあげなさい」
その言葉にしたがって、キュルケがタバサを立たせて教室から出ようとする。
「大丈夫タバサ?」
どこか呆然としているタバサを気遣うキュルケに、彼女は一言、こう答えた。
「………キノコ」
「は?」
思い出して欲しい、育郎は水浴びをしていた。
さらにシルフィードは人ではないため、ついそのままの状態で話していた事を…
そして、タバサが感覚の共有を行った時、ちょうど育郎は着替えようと、
泉から出ようとしているところだったのだッ!
これは偶然の事故である!
彼女に、そして育郎にも罪はないのだッ!
「………キノコ」
「本当に大丈夫なのタバサ?」


自分の息子を見られたことなど、露ほども知らない育郎は、そろそろ学院に帰ろうと
身支度を整えたところだった。
「きゅい?もう帰っちゃうの?もっとおしゃべりしたいのに…」
シルフィードが寂しそうな声を出す。
「それじゃあ、また今度僕がここに来る時についてきたら良いよ」
「本当!うれしい!」
きゅいきゅいとはしゃぐシルフィードの姿を見ると、自然と笑みがこぼれてしまう。
「そうだ!お礼に面白いもの見せてあげるのね!
 本当はあんまり好きじゃないけど…イクローには特別に見せてあげるの!」
「面白いもの?」
「ひょっとして先住魔法か?」
デルフの言葉に、ちょっと怒ったような調子で言い返す。
「『先住』なんて言い方はしないのね。精霊の力!
 わたしたちはそれをちょっと借りてるだけなのね」
そう言って、ちょこんとその場に座り、呪文を唱え始めた。
メイジの唱えるルーンとは違う、口語に近い呪文の調べ。
「我を纏いし風よ。我の姿を変えよ」
呪文を唱え終わった途端、風がシルフィードの巨体にまとわりつき、青い渦となる。
「う、うわ!」
そして渦が消えた時、シルフィードの姿は、どこかタバサに似た感じのする、
青い髪の二十歳程の美しい女性の姿になっていた。
『変化』
詠唱者の姿形を変える、高度な呪文である。

「う~~~~~やっぱり二本足ってぐらぐらするから嫌い!」
どこか頼りなさげに立ち上がる、竜からいきなり人間の姿になったので、上手く
動けないのだ。とにかくよく見てもらおうと、育郎の方に向き直るシルフィード。
「きゅい?」
しかし育郎は手で目を覆っている。
「どうしたのね?せっかく変身したのに」
「い、いや…その…」
それも仕方が無いだろう、いやむしろこの場合育郎を褒めるべきかもしれない。
『変化』の魔法の効果は自分自身だけ。
つまり変身したシルフィードは、服をきていないのだ!

            これが!
            これが!
          これが全裸だ!

「あいかわらずてーしたもんだ」
「きゅい!もっと褒めるの!イクローさんも褒めて!」
そう言って育郎に近づこうとするが、まだ人間の姿になれていないため、
その足取りは頼りない。
「おいおい、随分フラフラしてるが大丈夫か?」
「きゅい!大丈わわわわ!」
「え?」
足をもつれさせたシルフィードが、育郎を巻き込みながら倒れこんだ。
「いたたた…やっぱりこの姿嫌い!」
「し、シルフィード!は、はやくどいて!」
「きゅい?」

育郎は地面に仰向けに寝ている状態で、その上にシルフィード倒れこんでいる。
おかげで育郎は、シルフィードが変身した姿とはいえ、そのなかなかに豊満な胸の
感触を十二分に味わっているのだ!
さらに!
起き上がろうとするも、うまく身体を動かせない為、胸がこう…
上下左右に縦横無尽な感じなのである!
「よかったな、相棒喜んでるぞ」
「で、デルフ!」
「本当!嬉しい!」
「シルフィード!抱きつくのはちょっと!?」


「モット伯、これが秘伝の型じゃ!よく見るが良い
   無! 貧! 微! 普! 美! 巨! 爆! 魔!
 この八つの型を忘れるでない!」
「おお!見えますぞオールドオスマン!それぞれの型があらわす胸が!」
育郎が邪心なく胸の感触を味わっているさなか、邪心まみれの二人はエアおっぱいの
鍛錬に全力を傾けていた。
「しかし忘れるでない!この八つの型にこだわる必要はないのじゃ!
 なぜならおっぱいの可能性は無限大!
 重要なのは己のイマジネーション!
 想像力が新たな可能性を切り開く!
 見よ、これがワシが編み出した第九の型………虚!」
「虚…無をさらに下回る領域とは…いや、これは潜みしものの胎動!?」
「さすがモット伯、虚をもう理解できるとは…」
念のために言っておくが、二人は正気である。
安心して欲しい!
「よいか、わしが次に教える事は、基本にして最も重要な『敬意を払う』事!
 敬意を払って次の段階に進むのじゃ!それがレッスン4!」
ただし、ある意味病気である事は否定できない!


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー