ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-9

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匿名ユーザー

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「ドラァァーッ」
「げうッ」

鞭をふりまわす相手には近寄りたくない 女を殴るのも気がすすまない
仗助は顔をしたたか打ちすえた一発に耐え
ルイズの右肩を全力で突き飛ばし室外へ逃げた
ケガをしていないか心配にはなるが、かまっているヒマはない
そして部屋を出るついでにドアを壊し

「なおす」

彼の不思議な力は他のモノと意図的に混じり合わせ癒着させることもできる
それを利用してルイズの部屋を即席の座敷牢に仕立て上げてしまったのだッ

ドンッ ドンッ

「何これ、どうなって? 開けなさいッ」
「ザマーミロだぜ
 つきあいきれっかっつーの」

言いつつ仗助は改めて回りを見る
どうもルイズの部屋と同じようなのがズラリと並んでいるらしい
もしかしてここは「寮」か何かみたいなものなのか?
そういえば、亀に引き込まれて「ここ」に出たときに見たっけか
同じ服装をしたやつらがズラリと並んでいるのを
アレは制服ってことか!

(つまり…なんだぁ、おいッ)

推論が次第に形になってきた
いきなりここに出てきたオレ ドラクエとかなんとか、それっぽい魔法を使うあいつら
オレはヤツらに「なにか」されたわけか …と、なるとッ
得体のしれない力を持った組織とか何かに誘拐された?

(ドコの十週打ち切りマンガだっつーの)

自分で考えてアホらしかった
一蹴しかけて…自分で自分の考えに目ン玉をムイたッ

(だけど待てッ
 「使い魔」だとか、「ご主人様」だとか
 ツジツマが合うじゃあねーか、そう考えりゃあよぉぉ~)

つまり、そーいうモノにするために誘拐したということになるッ
というかもう、そうとでも考えなければ何もかもわかんね―――ッ!!
とにかく、あのルイズとかいうピンク髪が今ギャンギャン騒いでいるのだ
このままここでジッとしていたらマズイッ 仗助くんピンチッ

(だがよぉ~ ただ逃げるだけじゃダメだぜ、多分…)

このままインディ・ジョーンズのようにサッソウと逃げ出していけると考えるほど
ノンキこいてはいられないのである
右も左もわからないまま突っ走ってもアッという間につかまるのがオチだ
必要なものは「情報」である そして、それを得るため 今頼れそうなアテは

「シエスタ、っつったな…あのメイドさんしかいねぇよなぁ~」

すくなくともあのメイドは仗助を人間扱いしていたのである
それどころか、仗助の不思議パワーを指して「貴族」だと
まだ遠くには行っていないはずだった
一刻も早くつかまえ、聞きたいこと全部聞き出してしまわなければならない
それこそ、あのハゲチャビンのような人間と出くわす前に、だッ

「帰れと言われたんなら『上』に上っていく可能性は…低いぜ
 使用人なんだからな」

幸いすぐに見つかった階段を注意深く降りていく
誰かと出くわしたらどうしよう?
そのときは…多分、手を上げて降参するしかないだろう
きゃしゃな少女に鞭を持たれただけで手こずる始末なのだ
髪の毛をバカにされれば話は別だろうが
怒りにまかせてでしか制御できない破壊力になんか頼ったら
今度こそ身の破滅というやつだ
それを思えば、今の自分の髪型が見る影もないことになっているのは
むしろヒジョーにありがたくすらあるのかも…

「…くっそ~~」

誰とも会わないよう、祈り続けて突っ走る
しかし、そういう思いは大抵むくわれないッ
仗助はギリギリのところで曲がり角の壁にひっ付いた
二人だ、二人いる 男と女の二人
男の方には見覚えがあった
赤毛の女と戦ってるとき後ろでわめいてた、なんかムカつく奴ッ

「私、スフレを作るのが得意なんですのよ」
「それは是非、食べてみたいな…」
「ホントですかッ」
「ああ…キミの瞳にウソはつかないよ、ケティ」

しかもどうやらスケコマシの真ッ最中
おサカンなことでッ!!
仗助は半分キレて眉をピクピクさせていた

(てめー このヒモ野郎ぉぉー
 さっさとどっかに行きやがれェェ――
 シエスタが追えなくなっちまうだろーがァ~~~ッ)

一方、ルイズッ
人一倍負けん気の強いこの少女
閉じこめられたまま大人しくなどしていないッ

「…どーなってるの、コレ」
「知らないわよ、あいつのヘンな力でしょ」

わめきたてまくって、なんだなんだとやってきたクラスメート達に
部屋のドアを壊してもらい、やっと出ることができた
その助けてくれた一人にモンモランシーという金髪碧眼の少女がいた
ルイズとはあまり仲はよくないが、まるきり他人というわけでもなかった

「ヘンな力っていうか、どう見ても魔法じゃない
 完璧に壁とくっついてる…『土』? 『練金』?」
「知らないっつってんでしょッ」

怒るルイズに、モンモランシーはヤレヤレだった
「ゼロのルイズがメイジを召喚」ッ なんという倒錯ッ!!
しかも「三日前」の戦いでは杖らしきものも持っていなかったのだ
つまりあれは先住魔法か
召喚されたあの男も人間なのは見た目だけで
エルフや吸血鬼だったりするのか?
使い魔との契約『コントラクト・サーヴァント』が成功していれば
オリの中の猛獣を恐れる子供がいないように心配なかったが
そこは「ゼロのルイズ」なのである
聞けば使い魔が逃げ出したという ご主人様を部屋に閉じこめてッ
崩れた建物を一瞬で修復するほどの力を持った使い魔がッ

「非常事態じゃないの…」

背筋が寒くなった
学院のド真ん中にエルフのような存在が歩き回っているなど
火薬庫に火トカゲを放たれたのと同じだ

「探すわよ、わたしの使い魔…」
「バカ言ってんじゃあないわよ
 先生起こして学内全員避難だわッ」

意気込むルイズをモンモランシーはどなりつけた
そんなこと、自分が指示するガラではなかったが
誰かがやらねばならないッ
だがその決意も、続くルイズの行動に踏みにじられることになる

「~~~時間がないッ!!
 わたし行くわよ、逃げられちゃうじゃないッ」
「あっ、ルイズ、待ちなさ…」

走るルイズを追うモンモランシー
その後をなんとなくついていってしまうその他数名
避難するにしても降りるしかないのだから これはある意味当然ではあったが
どたどた駆け回るいくつもの足音から異変に気づく生徒が続出
彼らのうち何人かもまたドアを開け、騒動のもとを確かめようと追いかけることになるのだった

なんか上が騒がしい
仗助もすぐに気がついた 向こうにいる男女も気づいたのだろう
「ひとまずこの場はお開きだ」とやっと決めてくれたようだ

(ようやくか!
 くっそぉ~ 時間くいすぎたな 逃げ切れっかな…)

「いたッ」
「うええっ!?」

確かに時間を食いすぎた ふりむけばそこにヤツがッ

「待ちなさいルイズッ」
「いた、って、使い魔?」
「平民の使い魔? いえ、魔法を使ってたから貴族の使い魔?」
「なんだなんだ」
「何の騒ぎなんだよ、さっきから聞いてんのに」
「教えろったら」
「キュルケの新しいカレがペリッソンって本当?」
「コルベールってハゲだよな」

しかもなんかたくさん連れてる!
もう考え事の段階は月までブッ飛び消滅した
助かるには走るしかないッ

「オレが何したっつーんだよォ チキショオオオオ―――ッ!!」
「な、なんだねキミはッ」
「ギーシュ様に乱暴しないでッ」

男女二人を突き飛ばして逃げる仗助だったが
そのさらに向こう側の曲がり角から、また見覚えのあるヤツが…
あの赤い髪、あのナイスバディーのねーちゃんはッ

「あら」

こちらに気づくと、興味シンシンといった眼で近づいてくる
仗助は無視こいて横を通り過ぎようとしたが、すこし甘い
伸びた右手から腕を組まれた ナチュラルに、ニュルッと
年齢的にも彼女イナイ歴イコール年齢である仗助は思わずドギマギするものの
そんなもの、うしろからせまりくる絶体絶命の前にはふっ飛ばされてしまうッ

「は、放せッ…殴るぞ、本気だぞッ」
「なぁに? またヤるの?
 あたしはかまわないけど、どうせやるなら別の場所での戦いの方が」
「さわってんじゃねーわよッ」

ドボォォ

「がぶほおッ」

ドシャア

走り込みからの十八文ドロップキック
ルイズの両のブーツ底が仗助に炸裂 顔面にッ!!
自分も転んでしまってはアレだということだろう 赤毛の女はアッサリ手を放していた
鼻血を出して立ち上がった仗助は、尻もちをついていたルイズと目が合った直後
…がなり合いに発展した

「てめー なんてことしやがるッ
 女だと思って黙ってはいたが 温厚な仗助さんでもイイカゲン我慢の限界だぜーッ」
「勝手に逃げる使い魔がそれを言うのッ?
 わたしを一体、なんだと思ってんのよ」
「誘拐犯だろーがッ
 ここはどこだッ すぐにオレを返せッ 110番すっぞ バカヤロ―――ッ」
「バカヤローですって? いやしくも王家につらなるわたしをバカヤロー?
 よっぽど長生きしたくないらしーわね、このトーヘンボク」

「落ち着きなさい」

バシッ バシッ

ヒートアップする仗助とルイズの頭を後ろからひっぱたいたのは赤毛の女
我に返った仗助は言われた通り落ち着くことにした ルイズも不本意ながら従うようだ

「まず、なんで逃げたのか聞かなきゃいけないトコだけど」
「ンだよ、オレにゃ言いたいことなんかナンもねーぞ」
「ま、それは後にしましょ…ほら、あそこ。 面白そうなことになってるし」
「ん?」

赤毛の女が指さした先
そこにいたのは今さっき仗助が突き飛ばした男女と、もう一人…
スラリとしたパツキンの少女だった

「モ、モンモランシー どうしてここに…」

男がボーゼンとつぶやいていた


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