ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-14

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匿名ユーザー

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間一髪で殺し合いが回避された後。
セッコは激昂するルイズの文句に半ば無理矢理つきあわされていた。
しかし今回ばかりはセッコも後に引かない。なんと言っても先に行動してきたのもワルドなら、原因も全部ワルドなのだ。
いくら主だと言っても限度がある。

「ずっと思ってたけどね。セッコあなた気が短すぎるわよ」
そんなもの治しようがねえだろうがよお。

「いや、だから、あれは帽子のおっさんが悪いんだって!」
「そこじゃないわよ!立ち合いは武器や杖を落としたら負けなの!」
聞いてねえ、言われなかったし。

「んな事で負けてたまるか!あれは油断したくそ帽子が悪りーってよお!」
「ああもう、わからないわね!後、ちゃんとワルドのこと名前で呼びなさい!」
どう判れっつうんだ。

「あんな事あるごとにオレの邪魔をするやつなんて知るかよお。」
「立ち合いはともかく邪魔はしてないでしょう!それにご主人様の婚約者よ!」
「まだ結婚してねーだろうが!!」
「うるさいわね結婚するわよ!」
「勝手にしやがれ、今度こそ、オレは絶対に、悪くねえ!!」
「勝手にするわよ!」

そう言い捨てるとルイズは走って何処かへ行ってしまった。けっ。
疲れたのでその場に寝転がったら少し落ち着いた。

当事者のワルドはとっくにいなくなっている。
一人だけ逃げやがってふざけんじゃねえ。
いくら強かろうとルイズの婚約者だろうと金もってようとワルドはもう嫌いだ。
昨日晩もそうだ。空飛んでてすぐ横の崖にいきなり火が灯ったら気づけよお。
機密任務中なんだし先制攻撃していいぐらいだ畜生。
しかも、灯りを投げられて更に矢を2回撃たれるまで何もしないとか馬鹿か。
何のために飛んでんだ。そんなのんきな軍人がいてたまるか。
ルイズもルイズだ。こんだけ自分の部下、いや使い魔か、本当のことを言ってるのに何で納得しねえ。何が貴族だ、くそお。

あー、昔はよかった。
・・・は無茶苦茶だが少なくとも最期までオレを信じてくれた。
・・・はオレの素朴な疑問に答えてくれた。
誰だったけなあ。ここに来る前。えーと・・・イタリア、だったかなあ。
まあ、今となってはどうでもいいかあ。
「どうした相棒、何おかしな顔してんだ?」
抜きっぱなしで転がっていたデルフリンガーがカタカタ話しかけてくる。
「そんなに変だったかあ?」
「なんとなくだけどよ、怒ってるというより錯乱してるみたいな」
どういうことだあ?
「ううん・・・ああ、オレのことを少しだけ思い出したんだよお。」
「俺のこと、ねえ、昔々・・・そういえば俺もなんかあった気がすんだよ」
「ふうん、早く思い出せるといいなあ。」
「相棒もな」
「ところでよお、デルフリンガー。」
「なんでい、相棒」
「今度こそ、オレって悪くねえよな?」
「ん?・・・まあ、相棒がそう言うなら正しいんじゃねえの」
「ちょっと、ためらったみてえだが。」
「剣が考えたらおかしいか?」
「少しだけ。」
「そうか、でもなあ、俺はインテリジェ・・・」
デルフリンガーが理解できない話を始めたので鞘にしまう。

ルイズはともかく、これからワルドと敵地潜入なんて嫌だあ。
でも、きっと途中で抜けたら国の刺客に殺されるんだろうなあ。
死ぬのはもっと嫌だ。この任務が終わってから考えよう。
うう、一人で考えるのは難しい。

その夜、セッコは一人ベランダに寝転がって飴を舐めていた。
ギーシュたちは、一回の酒場で騒いでいる。
飯は食いたいが、ルイズの機嫌も悪いし、くそワルドも見たくない。
ぼーっとしていると、いきなりケーキの入った皿が目の前に落ちてきた。
「うっ、うおああ!」
飛び起きてそれをキャッチする。

外を見ると、サラダボウルを持ったタバサがそこにいた。
「飯が終わるにはまだ早くねえかあ?」
「決闘をシルフィードが上から見ていた。心配だと。」
「シルフィードはどこだよお」
「外の崖の上」
「はあ?」
「目立つ」
まあ、それもそうか。
「これは食っていいのか?」
「・・・」
大丈夫そうだ。
「・・・うめえ。」
だいぶ、機嫌が直った。
「これも」

サラダボウルが突きつけられた。

「ケーキはもうねえの?」
「バランスが悪い」
「そうか。」
渡されたサラダに口をつける。
「・・・なんだか変だ。」
だが、不快な味ではねえ。薬に比べたら全然食える。
んん、薬?そんなもの食ってたっけ?
「前、食べていた」
「そうかなあ。」
うーん、なんだっけなあ。
変なサラダをもぐもぐと飲み下す。深い苦みをじわじわと感じた。
ふと、昔何度も聞いた医者の言葉を思い出す。
“味をきちんと感じられるのは、回復の兆し”
そういえば、最初の頃食べた食事は味がわからなかった。
オレは回復してるのか・・・何から?
考えてもわからない。

「ところで、何か用でもあんの?」
「話が中断している」
んんん、ああそうか。そういえば途中でルイズに連れ戻されたんだっけ。
「わかった。だがオレの頼みはもう十分聞いたよなあ。」
「質問が残っている」
「何。」
「あなたは何者」
「名前とか、潜るとか、左手の印とか、ルイズの使い魔とか?オレ前言ったよなあ?」
「違う、もっと前」
「多分隠すようなことはねえんだけど、覚えてることが少ないから難しい。」
「判る事だけ全部」
さて、どう説明したもんかなあ。
記憶が飛び飛びで整理しにくい。
「確信がもてないのも言った方がいいかあ?」
タバサが頷いた。

覚えていることを順番に話していく。
月がひとつ。イタリア。前も使い魔みたいな立場だったかもしれない。車・・・
一通り答え終わる頃には、タバサは妙に深刻な表情になっていた。
そして呟く。
「難しい」
「まあ、飛び飛びでわかりにくいかもなあ」
仕方ねえだろうがよお。これでも努力してんだ。

「違う、ハルケギニアにはあなたが言うような場所も物もない」
「いや、ここが変なのはわかるけどよ、別の大陸に行けばあんじゃねえの?」
一体どういうことだあ?
「ハルケギニアはこの世界自体。国や島や大陸の名前ではない」
「・・・うあ?」
「だから、難しい」
なんだかとてつもなく悪い予感がする。
「なあ、タバサよおー。[地球]って判るかあ?」
「初めて聞く」
そんな馬鹿な。いくらなんでも空を飛べるような奴が地球を知らないわけがねえ。
「オレはもしかして。」
なあああああああ・・・?

「多分、それで合ってる」
まあ、今のところ別に帰りたいってことはねえしいいかなあ。

「そうか。でよお、これって校長先生とかルイズに話した方がいいと思うか?」
「とても、難しい。それと、オスマンは知っている可能性の方が高いと思う」
「うう。」
「後で考えればいい」
確かに、今考えることじゃねえよな。つーか、考えてどうにかなるもんかなあ。

突然、ベランダが暗くなった。
「素朴な疑問なんだがよお、外のあれって何だと思う?」
「フーケと、誰かもう一人。多分、メイジ」
「やっぱりそうか。こういう場合、どうするんだっけなあ。」
「皆と合流」
「床をぶち抜くのと階段ってどっちが確実かなあ。」
「下の様子が不明。よって階段」
「わかった。」
言うが早いか、セッコとタバサは部屋の奥に飛び込み、廊下から階段を駆け下りた。

それに一呼吸遅れて、フーケが叫ぶ。
「久し振りねえ。お礼を言いにきたわよ!・・・ってあら?」
「奴等なら、もう奥に引っ込んだぞ」
「このわたしを無視なんて、いい度胸ね!」
フーケは腹立ち紛れにゴーレムの腕を振り回しベランダを削り取った。
「で、どうするのよ?」
「とりあえず、傭兵諸君に頑張ってもらおうじゃないか」
「そうねえ」

下りた先の一回も、修羅場だった。いきなり玄関から現れた傭兵団が、酒場にいたワルドたちを襲ったらしい。
キュルケ、ギーシュ、ワルドにルイズが岩のテーブルを盾にして応戦しているが、数が多い上に傭兵達の錬度はなかなか高く、
闇を背にして矢を撃ってくるのもあり分が悪い。他の客たちは既に逃げ出しているようだ。
タバサとセッコは各々矢を吹き飛ばし、叩き落しながら、ルイズたちのいるテーブルの影に滑り込んだ。

「参ったね、やはり昨日の賊が言っていたメイジはアルビオン貴族派か」
ワルドの言葉に、キュルケが窓の外を指差し頷く。
「フーケもいるしねえ」
「何でフーケは攻撃してこねえんだ?オレ達を殺すだけならさ、
ゴーレムと錬金で店ごとグチャグチャに破壊すればいいよなあ。おかしくね?」
“なあ、くそ帽子”と言いかけたが、ルイズの言葉を思い出し何とか飲み込んだ。
キュルケが答えた。
「・・・やつらはこっちの精神力が切れて、魔法を使えなくなるのを待っているのよ。
そうなったらフーケともども突撃してくるわ。どうしてくれようかしら」
「ぼ、ぼくが防いでやる」
「少なくともオメーにゃ無理だろ。」
「やってみなくちゃわからない、ぼくはグラモン元帥の息子だぞ。
卑しき傭兵ごときに遅れを取ってなるものか」
ギーシュがそう言って立ち上がりかけたが、キュルケに足払いで止められた。
「そんなんだからトリステインの貴族は戦に弱いのよ」

何か考えていたらしいワルドが低い声で話しはじめた。
「いいか諸君、このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、成功とされる」
いきなり何を言い出すんだ?

しかし、影で本を広げていたタバサが本を閉じてワルドを杖で指した
「桟橋へ」
その後セッコとルイズにもそれを繰り返す。
「時間は?」
ワルドがタバサに尋ねた。
「今すぐ」
「聞いてのとおりだ。裏口に回るぞ」
タバサを見ると、囮を自分から言い出しただけあって堂々としている。
あー、確かにアルビオンに突撃するよりここで戦う方がまだ安全だよなあ。
オレも囮に志願するべきだったあ。もう遅いか、畜生。
「わかった。」

ルイズはおろおろしている。
その様子を見たワルドが説明した。
「今からここで彼女たちが敵をひきつける。せいぜい派手に暴れて、目立ってもらう。
その隙に、僕らは裏口から出て桟橋に向かう。以上だ」
「で、でも・・・」
ルイズはキュルケたちを見た。
キュルケがちょっと不機嫌そうに言った。
「ま、しかたないかなって。深入りはしないって言っちゃったしね。
いいから早く行きなさいな。ああ、でも、か、勘違いしないでね、ヴァリエール?あんたのために囮になるわけじゃないからね」
「わ、わかってるわよ」
ルイズは、キュルケたちにぺこりと頭を下げた。

セッコたちは低い姿勢で歩き出した。
飛んで来た矢をデルフリンガーで叩き落す。ワルド働け。
酒場から厨房に出て通用口にたどり着くと、酒場の方から派手な爆発音が聞こえてきた。
「・・・始まったみたいね」
ルイズが言った。
「そのドアの向こうからは音しねーぜ。」
ドアを開け、3人は夜のラ・ロシェールの町へと躍り出た。
「桟橋はこっちだ」
ワルドが先頭をゆき、ルイズが続く。セッコはしんがりを受け持った。

それにしても正面にあんだけいて、裏口に誰もいないっておかしくね?
出発してからというもの、理不尽なことばっかりだ。うぐぐ・・・

月が照らす中、三人の影法師が、遠く、低く伸びた。




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