ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第二十八話 『虚空の中の虚無』

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第二十八話 『虚空の中の虚無』

機銃の唸る音とともに最後の竜騎士が墜落していく。その様子を確認したウェザーとルイズはゼロ戦をゆっくりと旋回させた。
空の上からだと、東の山の向こうから星が夜と共に空に上がってきていて、西の夕日はその明るさを徐々に隠し始めているのが見える。
「初夏で助かったな。日が長い」
暗くなるまでに決着をつけないと敵に引かれて体勢を立て直されてしまう。
ゼロ戦対策をうたれてはもはや空の脅威を排除する術はトリステインにはないだろう。
ただ蹂躙されるがままに任せるしかなくなる。
そうなる前に、
「ケリをつけるぞ!」
操縦桿を起こしスロットルを全開にして旋回から一気に直進させる。
向かう先はもちろんアルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号。
今もなお休むことなくラ・ロシェールに激しい砲撃を浴びせかけていた。そこにはトリステイン軍が――――アンリエッタがいるのだ。
一刻も早く艦隊をなんとかしなければならない状況で、しかしルイズは慌てたように異を唱えた。
「ちょっと!無理よウェザー!いくらゼロ戦が速くったって向こうは戦艦なのよ、火力は竜騎士とはワケが違うわ」
そんなことはわかっていた。戦争素人であるルイズにさえ人目で戦力の差を把握することが出来るほどに敵艦は巨大で強力だった。小回りが利くとは言え敵の砲撃をかいくぐり敵に攻撃をくわえることは至難だ。
いや、それ以前に果たしてこちらの攻撃は敵に聞くのだろうか。艦を落とすに至るほどの威力があるようにはルイズには思えなかった。
「・・・・・・できるさ。俺にはお前からもらった『コイツ』がある」
ウェザーはそう言って左手をかざす。その甲にはルーンがまるで大丈夫だとでも告げるかのように光っていた。
それを見せられるとルイズもため息を一つついて後にもたれた。
「もう・・・いいわ。信じてるから好きにしなさいよ」
「物わかりの良いご主人様で助かるよ」

ウェザーはゼロ戦を一度迂回させてから『レキシントン』号の右舷側に回り込んだ。
左舷側はラ・ロシェールに砲撃をくわえているからだ。
しかし一気に接近使用とした瞬間に右舷側が一瞬光った。
そして訝しむ間もなくゼロ戦めがけて無数の小さな鉛玉が飛んでくるのが見えた。
ウェザーは慌てて回避を行うが機体のあちこちに小さな穴が穿たれ、震えた。風防も割られ、破片が飛び散った。
「SHIT!散弾だ!」
ウェザーはゼロ戦を下降させて二撃目を逃れる。しかしこれでは近づくことは無理だ。機銃の射程には入れない。
「だ・が、近づけないなら近づけないでよぉ」
ゼロ戦が機首を持ち上げて再び上昇を始める。
「テメーを落とす方法はあるんだぜッ!」
ゼロ戦が昇る空のさらにその上、そこには一つだけ真っ黒な雲が浮かんでいた。
「『ウェザー・リポート』!すでにッ!」
一瞬の閃光。そして轟音が空に轟いた。雷は真っ直ぐに『レキシントン』の甲板の上に落雷したようだ。だが、
「チッ、浅いな・・・」
艦を落とすには至っていない。上から見ると甲板に穴は空いているがそれだけだ。
ウェザー・リポートにも正確に天候を操れる距離はある。広い範囲になればなるほど精度は落ちる。
もっとも、対人においてなら全く苦にならない射程ではあるが。
「火薬庫にでも落とせば一発だな・・・・・・正確に落とすなら接近する必要があるが・・・」
近づくには散弾をかいくぐって行かなければならない。
空気の層で弾こうにも飛んでいるこちらにまで影響がありそうだし、単純にかわしたのでは恐らく何かある。
こちらの脅威にすでに気付いていたのだからそれぐらいの備えはしていることだろう。
「となると一番段幕が薄いのは・・・真上か」
ウェザーはスロットルを開いて一気に上昇を開始した。


「そぉらッ!」
ゴーレムが最後の敵兵を押しつぶした。その土の拳を持ち上げたところにキュルケが火を放ち死体を燃やす。
そうして全ての兵を燃やしたのだ。周りには焼け焦げた跡と戦闘の傷跡が色濃く残っていた。
「何とか勝ったわね・・・」
キュルケが疲労感たっぷりにそうこぼした。
すでにウェールズ麾下のメイジはほとんどが戦闘不能か精神力切れだったために、『火』のエキスパートでもあるキュルケが割を食った形になったのだ。
とはいっても、戦える者は総動員で敵を抑えていたのだからほとんどがばてていた。
いつもは涼しい顔をしているタバサもさすがにキツかったのか額に汗をかいており、今も眼鏡の汚れをマントで拭き取っているところだ。
隊の状況を確認していたアニエスがウェールズに報告をしていると、森から一人の兵が馬を駆り向かって来るのが見えた。
そしてウェールズの目の前で馬から飛び降りて膝をつくと切り出した。
「報告します!村人は生存している者は全て保護完了しました!」
「そうか!ご苦労だった!して、班の状況はどうだ?」
ウェールズがそう尋ねるとその兵はハッと顔を上げてから悔しそうに視線をそらした。
「・・・一班は・・・村人を見つけ我々二班と合流する途中で敵と交戦し・・・・・・全滅したと・・・」
アニエスもウェールズも表情を険しくした。戦った敵は恐らく自分達が戦っていた敵と同じ生半可なことでは死なぬ体を持った者達だったのだろう。
「しかし・・・その状況でよく村人は助かったな」
「は、そこなのですが、救出した村人の話では貴族の者に救われたと・・・」
「ギーシュだわ!」
いきなりキュルケが話しに割って入ってきた。興奮したようにその兵に尋ねる。
「それで?ギーシュは無事なの?」
「え?は、はあ、精神力が切れて寝込んでいるようではありますが命に別状はないかと・・・」
キュルケはさらに詰め寄ろうとしたが、不意に足の力が抜けてしまい前にのめり込んでしまった。
このままでは地面に倒れると思われたが、その肩をウェールズに支えられて事なきを得た。


「疲れているだろう、無理は良くない」
ウェールズはそのままキュルケを起こすと隊に呼びかけた。
「全員疲れているだろうが聞いてくれ!これより我々はトリステイン本隊の援護に向かう!精神力の切れているメイジ、負傷の激しい兵は村人の元へ向かい護衛をしろ!動ける者は体勢を取れ!卑劣な手段を用いて祖国を蹂躙する者達を許すな!」
アニエスが駆け出し隊を整え始める。ウェールズはキュルケとタバサを促した。
「君たちの働きはとても大きなものだ。感謝する。しっかりと休んでくれ」
ウェールズの言葉に二人は頷き、呼び出したシルフィードの背に跨ると飛び立っていた。
それを見送っていたウェールズの元にアニエスが戻る。
「残存兵数はおよそ二百です」
「・・・・・・不安かアニエス?」
ウェールズのいきなりの言葉にアニエスは目を見張りうろたえてしまった。
確かに不安はある。たとえトリステイン軍の援護に回ったところで二千二百。いや、向こうも砲撃で被害を受けている以上はさらに少ないだろう。下手をすれば千五百を割るのではないか。もしそうならば兵数で倍の差がつくことになる。
 勝ち目は薄い。風前の灯火もいいところだ。だが自分はここでは死ねない。まだ、『奴ら』に借りを返していない。
大きな、大きな借りを・・・・・・
アニエスのうろたえる様子にもウェールズは微笑んで見せた。
「策ならある。今ごろは勝ちの見え始めたアルビオン軍は立て籠もるトリステイン軍を押し潰さん勢いでラ・ロシェールに雪崩れ込んでいるだろう。そこなんだ。敵は三千で雪崩れかかっている。三千と言えば大した人数だ。
そう、ちょうどラ・ロシェールの人口の十倍、いや、普段の人数と言った方がいいかな?私もかつてあの街に降りたことがあるのだが、普段それだけの人数があの街を行き来するのは結構窮屈でね。どうしてだろうね?」
策の話ではなく街の話をしだすウェールズにアニエスは眉根をよせながら答えた。
「はあ、そもそもあそこは港町とは言え小さな街ですからね。狭い峡谷の間の山道に設けられた・・・・・・あっ!」
そこまで言ってアニエスもようやく気付いた。
「そうだ。あの街は『狭い』峡谷の間の山道に設けられている。建物があるからこそ三千がそこに存在できるのだ。
敵は確かに三千だが実際に戦う人数はもっと少ない」
「つ、つまり・・・」

「『トリステイン軍は立て籠もりながら正面と戦う』・・・・・・『我々は追いついて後方と戦う』。つまりハサミ討ちの形になるわけだ」
あの狭い山道で戦うのなら数は互角。それどころか地形になれている者の多いトリステイン側が有利だろう。しかし―――
「ですが・・・敵には空からの支援攻撃があります・・・・・・これでは」
「問題ない」
ウェールズは断言した。
「あの艦はまもなく落ちよう。いや、落とされるだろう」
ウェールズは暗くなり始めた空に浮かぶ『レキシントン』号を見た。いや、その近くにいるはずのウェザーを見た。
アルビオンで君に拾われたこの命を僕は存分に使ってみせる。空にいる友よ。もしもは無い。おそらくも無い。
必ずやってくれると信じているぞ。
「ああそうだ、エルメェス。もしまだ余力があるのなら――――」
しかし振り返ってみれば誰もいなかった。あたりを見渡してもあのローブは見あたらなかった。
ゴーレムもいつの間にか土に戻されている。だがその土の山から何かが突き出ているのを見つけ、近づいてみるとそれは土の腕だった。
その腕はウェールズが来たのを待っていたかのように、近づいた途端にぼろぼろと崩れてしまったが、その崩れた土が意思を持っているかのように地面を這って文字を作りだした。
『借りの分は返した』
簡潔にそれだけを伝えて土は風に吹かれて完全に沈黙した。
「・・・・・・利子も込みでお釣りが来るな」
ウェールズは口元を緩めてそう言った次の瞬間には気持ちを切り替えていた。そして号令と共に進み出した。

森の中でも一際背の高い木のてっぺんに近い枝に人が立っていた。
ローブを剥ぎ、顔に巻いた布を取り去れば、現れたのは見目麗しき一級の美人。
その美人は長い、青に近い緑の髪を涼しくなり始めた風になびかせて立っていた。
視線は空を見上げる。だが見ているものは雲ではない。肉眼では遠すぎてそれと確認できないものを見ていた。
だが、見えなくとも彼女にはわかっていた。この空で何が起こっているのかが。何を起こそうとしているのかが。
「死ぬんじゃないよ、ウェザー」


割れた風防から侵入する猛風が肌を打つ。だがそれでもゼロ戦は上へ上へと昇っていく。
そしてついに『レキシントン』号の真上を取り旋回をしようとしたその瞬間、目の前の雲から一騎の竜騎士が突っ込んできた。
ウェザーは瞬時に機体をロールさせてその突撃をかわす。そしてすれ違いざまに見た騎士の顔は―――
「ワルド!」
アルビオンで半死半生の憂き目にあいながらも命だけは繋いだ男。紛れもなくワルドであった。
「生きていたのか」
「久しいな、『ガンダールヴ』!そしてルイズ!まさか君まで乗っていようとは驚きだが、手間が省けた!」
ウェザーはすぐさま旋回してワルドを正面に捉えた。
「おいおい、『よそ見』をしていて良いのかガンダールヴ?」
その言葉と同時に、左右から竜騎士が現れた。慌てながらもスロットルを上げると同時に急上昇して回避。
だが休む暇もなく真上から再び竜騎士が飛来する。
操縦桿を思いっきり捻り、機首が完全に上を向いた機体を急角度で旋回させた。地面が頭の上に見える。
が、そのタイミングを見計らっていたかのように頭上―――地面の方から別の竜騎士が操縦席を狙って飛んでくる。
 あわや接触かと思われたその突撃も宙返りにより、すんでの所で回避された。
 ウェザーは一度その空域から離れてから旋回して再び向き直る。と、そこで後のルイズから文句が出た。
「ちょ・・・ちょっと!今のは本気で死ぬかと思ったわよ!あ、頭も打ったし・・・」
「・・・そりゃすまん。じゃあ頭が無事か確認しよう。アレを見ろ・・・」
ウェザーは前方の空を指さした。ルイズはこぶをさすりながら身を乗り出して見てみる。
「ワルドが何人に見える?」
「え・・・ご、五人・・・いるわ・・・・・・」
「おめでとう。お前の頭は正常だよクソッタレ」
ルイズの見たものは正しかった。目の前には風竜に跨り手綱を握るワルドが、五人いるのだ。
一人を先頭にして鏃型の編隊を組んでおり、それはなかなか様になっていた。

「当然か・・・五人が五人ともテメーなんだ・・・距離の感覚もばっちり揃うわなあ、そりゃあ・・・・・・」
「偏在ね・・・ホントやっかい」
「まったくだな。ところで問題だ、ルイズ。『訓練された他人二十人』と『訓練された自分五人』、より息のあった連携が取れるのはどっちでしょうか?」
「えと・・・五人?」
ちょうどその瞬間にワルド達が杖を抜きはなった。当然、同時に。
「それじゃあ実演して貰いますか!」
ゼロ戦が加速するのと風竜が加速するのは同時だった。
射程に入った瞬間にウェザーは七・七ミリ機銃と二十ミリ機関砲弾を放つが、敵はそれを易々と回避し、四散した。
しかしすぐに上で集まるとゼロ戦めがけて一斉に魔法を放つ。五つの『ウィンド・ブレイク』が機体を激しく揺らし、軋ませる。
ウェザーは急降下に移行してそれをやりすごして地表すれすれで機首を引き上げ、まるで地面を滑るかのように飛び抜けて再び上昇を始めた。
「乗り物よりも本人を狙った方が効果があるか・・・」
どのワルドが言ったかはわからないが、そう呟くとワルド達は二手に分かれた。
一方は迎え撃つように降下し、もう一方が大回りでゼロ戦の後方に回り込むつもりのようだ。
ウェザーは前方二騎に向けて機銃と機関砲を放ったが、一人のワルドが唱えた風によってそらされてしまった。
そして驚く間もなくもう一人が魔法を放つ。慌てて右に機体を倒してかわすが肝は冷えた。
が、二騎が通過して休む間もなく、今度は回り込んだ三騎が迫る。
ウェザーはゼロ戦のスロットルを全開にして一気に引き離そうとしたが、ワルドはぐんぐん距離を詰めてくる。
風竜の飛行速度は火竜とはワケが違うのだ。

「ハハハッ!どうしたガンダールヴ?もう手が届きそうだぞ!」
「っちい!」
振り切れないと判断したウェザーは操縦桿を一気に起こして機首を持ち上げた。
加速の着いたままのゼロ戦はその勢いのまま空中で弧を描く。ワルド達はその下を通過してしまい、回転を終えたゼロ戦が逆に風竜のケツに食らいつく形となった。
「そらッ!気合い入れて逃げねーとケツの穴が増えちまうぞ!」
そして機銃の掃射。突然の攻撃に対処できなワルド達は、一人は直にその身に機銃を浴び、一人は風竜の翼が打ち抜かれバランスを崩したところにさっきの一騎とぶつかりもみ合いながら落下していく。だが敵は冷静だった。
逃れた一騎を追おうとしたところに分かれた二騎が割り込むように現れてブレスを吐きかけて距離を取ったのだ。
「・・・本体だったら今ので終わってたんだがな」
その言葉が聞こえてはいないだろうが、ワルド達は口の端を歪めて笑い、杖の先から光を放って『レキシントン』号に合図を送った。そこには今まさに飛び立つ二匹の風竜の姿があった。そして風竜を横に従えると杖を構えて呪文を唱える。
現れたのは風の偏在。新たに現れた二体のワルドは飛んできた風竜にそれぞれ跨り杖を取り出した。
「さて、予備の竜はあと何匹いるのかな・・・・・・」
ウェザーはゼロ戦の残弾を確認して唇を噛んだ。

 昔、小姉さまが聞かせてくれた話を思い出した。
『生き物はみんな生まれてくるときに始祖様から才能の詰まった袋をプレゼントされる』
 まとめてしまえばそんな話だ。ただこの話ではその袋の口を紐で結んでいるために子供のうちはまず解けない。
それでも、成長と共にその解き方に気付いていく・・・ということなのだが、じゃあわたしの立場は?
 周りはもう魔法を使えて、キュルケやタバサなんかはもうトライアングルだ。
彼女達は幼い頃にその解き方に気付いたのだろうか?
 それともわたしにはそもそも才能の袋がプレゼントされてないんじゃないだろうか。
そう思っていた時期がわたしにも現在進行形であるわ。
 始祖ブリミル様!この世に生を受けて十六年、わたしは努力してきました!周りに馬鹿にされてもなじられても、いつか見返してやるんだと唇を噛んで耐えてきた。
 魔法が使えなくともせめて公爵家ヴァリエールの名に恥じぬ貴族でいようとしました。
でも、それでもやっぱりわたしは魔法が使いたいです!
 わたしにはまだ解き方はおろかプレゼントさえ見つけられません。わたしは・・・・・・わたしは本当に『ゼロ』なんですか―――――――――


「ルイズ!しっかりつかまってろよ!」
 ウェザーの声にルイズはハッとしたように首を起こした。どうやら意識が少し飛んでいたらしい。
慌てて体を固定して外を覗く。その時機体が大きく唸った。
 空が自分の足下にある。大地が頭上に見えた。雲がすごい速さで流れていき、急に縦に向かって流れ始める。
落ち行く夕日が目の前にあるかと思いきや次の瞬間にはまだうっすらとしか見えない星が視界に飛び込んできた。
 ルイズは目まぐるしく変わる視界に混乱しながらも興奮していた。
それは初めての経験にたいする好奇心や、戦場にいるのだという恐怖心から来るものであり、それらがない交ぜとなった興奮であった。
 見ているだけで気持ち悪くなってきたのだから、ウェザーの『雲のスーツ』がなければ今頃意識が飛んでいただろう。
そう思ってルイズはウェザーを見た。
 真剣な表情で四方に気を配り、神経をすり減らすような飛行を続けている。心なしか唇が青い気がする。ルイズは視線を落とした。
 ウェザーの姿を見ると自分の小ささが浮き彫りになっていくようだった。
 魔法の使えぬ自分の元に現れた摩訶不思議な男。自分にはその力が、存在が必要だから向こうは自分のお守りをしてくれているだけなのだ。完全に依存してしまっている。自分はそれが許せなかった。
 自分はウェザーと対等でいたい。それはメイジと使い魔の関係でも、大人と子供の関係でもないものだった。ルイズ自身まだよくわかっていないが、ウェザーの背中に隠れるのではなく、隣に並んで歩いていきたいのだ。
 ちっぽけなプライドなのかもしれない。でもルイズにはそうすることが自分にとって一番なのだという自信があった。
 だが今の自分にできることは後から口を挟むことだけ・・・。あとは始祖の祈祷書を開いて祈るだけ。
「―――って、あんたは全ページ白紙じゃない・・・」
 思わず本を叩き付けそうになったが、やればますます惨めになるだけなのはハッキリしていたので止めた。
「始祖様は才能どころか文字すらわたしに与えてくれないのね・・・・・・惨め」
 振り上げた本を下ろして適当にページを捲っていく。と、あるところで指にはまった『水』のルビーと『始祖の祈祷書』が光り出した。
「え?」

 機体が再び揺れるがルイズは最早気にならなかった。その一ページを開くと、古代のルーン文字が綴られている。普段の勤勉がここで役に立った。しっかりと授業を受け予習復習もかかさなかったおかげで読めるのだ。そして文字を指で追う。

『 序文。

 これより我が知りし真理をこの書に記す。この世の全ての物質は、小さな粒より為る。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す。
 神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒により為る。神が我に与えしその系統は、四の系統何れにも属せず。
 我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。』

「虚無・・・虚無の系統・・・伝説の系統じゃない・・・・・・」
 ページを捲る指が思わず震えた。鼓動が速くなっていくのがわかる。

『これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり。『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異郷に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。
 『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。
 選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。

                     ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
 初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』 』


そしてその後に古代語の呪文が続いている。ルイズは始祖の祈祷書から目をそらすことなく、しかし思わず半笑いで呟いた。
「は、はは・・・ねえ、始祖ブリミル。あんたわたしの袋にとんでもない紐の結び方したわね・・・今まで解けなかったはずだわ。まさか紐解きに指輪と真っ白な本が必要だなんてわかるわけないじゃないの」
 だが、理解できた。『読み手を選びし』と言うことは、読めた自分は選ばれたのだ。思い返せば、確かに自分の魔法は爆発してばかりだった。呪文も間違えてはいないのになぜか爆発する魔法。
 周りは失敗だと揶揄していたが、誰かその理由を言えたことがあるだろうか。いや、なかった。
 それはつまり、自分の系統が『虚無』だったからではなかろうか。
 それを馬鹿げているとは思わない。自信もある。以前なら信じられなかっただろう。でも今はその考えをすんなりと受け入れられた。信じることができた。
 わたしのことを『信じている』やつがいるから。
 ルイズは唇をきつく結んで気を引き締めると、座席に座るウェザーの肩を掴んだ。
「ああ?なんだ!今忙しいん・・・」
「ねえウェザー、あなたにとってわたしは必要かしら?」
 この非常時に何を言っているのかと文句の一つでも言ってやろうかと思いウェザーは振り向いたが、ルイズの眼を見てすぐに首を戻した。
「ねえ、ウェザー!」
 その眼には強い『決意』と『覚悟』が見て取れた。ウェザーはその眼を知っている。諦めを知らず輝き続ける眼。そう、まるで徐倫のような――
「ああ・・・必要だ。正直この状況は俺一人じゃキツイ。だから、ルイズ。お前の力が必要だッ!」
「任せなさい!」
 今まで聞いたルイズの声の中でも、間違いなく一番力強い声がウェザーの耳朶を打つ。


「ゼロ戦を一番大きな艦に近づけて!」
「わかった・・・が、その前に決着をつけておかないとな!」
 ゼロ戦を再び上昇させればワルドの姿が見えた。ちょうど横合いからワルド二人が飛び込んできたところで、それをかわす形で上昇を続けた。正面の三騎はそれぞれが三方に分かれて襲いかかってくる。
 まずは正面の一騎に機銃を浴びせた。しかし弾けるように落下していく上を通過してから、タイミングを計っていた右の一騎に迫られてしまい、かわしきれない。後方からはさっきの二騎が詰めてきている。
 ウェザーの脳裏に一瞬暗い影がよぎったが、すぐにルイズの眼を思い出してそれを振り払った。諦めることはできない。
 スロットルを最小にしフラップを全開。と同時に操縦桿を左下に倒す。一騎に加速させて旋回して右をかわしたが、後方の二騎を避けきれない。
「『ウェザー・リポート』!」
 その瞬間に豪風がゼロ戦を押すようにして吹き抜けていった。機体を軋ませながらもなんとか二騎を振り切り、螺旋を描いて上昇して左に進む。そこにはまだ突撃をしていないワルドが一人いた。
「何度もやり合ってるうちにわかった。五人の中で攻撃の度に一騎だけわずかにだが不自然な攻撃を繰り返しているヤツがいるってな・・・・・・偏在は捨て駒にできるがオリジナルはそうもいかないよな」
 そのワルドは目を見開き、焦ったように背を向けて逃げ出した。
「逃がすかッ!」
 ウェザーはその背に向かって残りの弾全てを浴びせかけた。まるで踊るように跳ねながらワルドはその身に弾丸を受け、力無く墜落していった。それと同時に他のワルド達も消えていく。どうやら当たりだったようだ。
「あとはあの艦だけだな・・・具体的にどうするのか、聞いていいか?」
「フッ飛ばすわ。爆発で」
 ルイズは簡潔にそれだけ言った。だがウェザーは笑わない。ルイズにふざけているような雰囲気など欠片も有りはしないからだ。
「多分詠唱中は周りに気を配れないから・・・ウェザー、お願いね」
「・・・わかった。全力でお前を守ろう」
 艦隊の真上につき、ルイズが詠唱を始めたのを見て風防を開ける。
 風防を開くと猛烈な風が顔を打った。自分も『雲のスーツ』を着ようかと思ったとき、ウェザーは乗り手を失った竜が二匹しか飛んでいない事に気がついた。


 五騎から一騎撃ち落とし残りは四。本体を竜ごと落としたので三だ。三匹の竜がいなければおかしい。周りにもいない。ならばどこへ?
 その時首筋に寒気を感じたウェザーは上を向いた。そしてウェザーの目が捉えたのは、今まさに竜から飛び降りて真上に振ってくるワルドの姿だった。
「ガンダールヴーーーッ!」
 雄叫びと共にワルドが杖を突きだす。その先端には風が渦巻いていた。『エア・ニードル』がウェザーの顔面に迫っている。
 咄嗟に両腕を顔の前で交差してそれを受けとめるが、両腕を串刺しにされてしまった。鋭い痛みに顔をしかめるが、ワルドからは目を離さない。
「ぐぅ・・・テメエ・・・あいつはフェイクか」
「いかにも。お前ならきっとあの偏在の不自然さに気づいてくれると思っていたよ。僕自身が命の危険に身をさらしたわけだが、だからこそ今こうしてお前を掴むことが出来たわけだ。
 ふふふ・・・しかしこの竜・・・いや、竜じゃないな。とにかく、このハルケギニアの論理の産物ではないな。ということは『聖地』・・・・・・ふふふ・・・やはり、か」
 そしてウェザーの後のピンクの髪に視線を移す。しかしルイズは目を瞑り低い声で詠唱を唱えているだけで、この状況を意に介してはいなかった。
「・・・生憎とうちのご主人様は集中なさっておられるんでね、客人に挨拶出来ない状態でな・・・わびに茶菓子でも出したいところなんだが」
「ククク・・・なに、かまわんさ。僕の目的はお前だ、ガンダールヴ」
 ワルドは杖をグリグリと押し込みながら、空いた手で胸元をはだけさせて見せる。そこには生々しい傷跡が残り、何かを物欲しそうに蠢いて見えた。
「この傷は貴様につけられたものだ・・・・・・あの時から僕の目的は三つに増えた。『母を手に入れること』、『世界を手に入れること』、そして『貴様を殺すこと』だ!」
 空けていた手を杖に乗せ、さらに力強く押し込んでくる。ウェザーも必死に耐えるが、先端は徐々に喉に近づいていく。
「どうしたガンダールヴ!これで終わりか?」
「く・・・おおおっ!」
「ハハハッ!ハハッハハハハハハハハハ!」

エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ

 体の中をリズムが踊った。郷愁とでも言うべきだろうか。そんな懐かしさを感じさせるリズム。呪文を詠唱するたび、言葉を紡いでいくたびにリズムは徐々に奔りだし、内側でうねり出す。
 神経が研ぎ澄まされていくまさにその時、リズムを乱すノイズが一瞬だけ入ってきたが、すぐに集中を戻せた。外ではきっとまずいことが起こっているのだろう。でもわたしは何も心配しないで呪文を唱えていればいい。大丈夫。
 この安心感はウェザーがいるから?きっとそうだ。外のことはあいつに任せよう。わたしはこの体の中の奔流を形にしなくちゃいけない。

オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド

 体の中で、何かが生まれ、行き先を求め回転している。そんな感覚・・・・・・誰かが言っていたそんなセリフを思い出す。自分の系統を唱えると感じるという感覚。
 魔法の才能がないと言われ、ゼロと蔑まれてきた自分。何もなかったからっぽの『ゼロ』のルイズ・・・・・・
 体の中に波が生まれてうねりはどんどん大きくなっていく。

ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ

 そしてついに波は行き先を求めて暴れ出す。まるで内側から体を食い破らんばかりの勢いだ。
 それは『虚無』という伝説の威力を物語っているかのようだった。

ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル・・・・・・

永い詠唱ののち、呪文はついに完成した。
 そして目を見開く。


ウェザーはワルドと押し合っている間にも、耳だけはルイズの声に傾けていた。
この緊迫した状況でなお、その声は透き通っていた。場違いなほどに。
そしてその呪文がクライマックスに近づいてきたのもわかった。
 ちらりと視線を外に向ける。真下には目標とする艦隊があるが、目の前にはワルドがいて邪魔をする。
「クハハハハハハハ!どうする、ガンダールヴ!」
「・・・・・・こうする!」
 ウェザーは固定された腕を無理矢理捻り、逆に押し込んでワルドの手を掴むと、足で操縦桿を倒し、一気に下降させた。
「なんだと!自爆する気か貴様!」
「冗談ッ!」
 その言葉と同時にウェザーの背後からルイズが現れ、その肩に跨った。そして杖を振り上げる。
 ルイズは目を見開いた瞬間に呪文の威力を完全に理解した。このまま使えば全ての人を巻き込んでしまう。
ウェザーもアンリエッタもウェールズも、キュルケやタバサまで。あ、あとギーシュも。
 選択は二つ。殺すか、殺さぬか。破壊すべきはなにか。
 そんなものは決まっている。目の前に悠然と浮かぶ巨艦。戦艦『レキシントン』号。
「いっけえ―――ッ!」
 ルイズは己の衝動に準じて、振り上げた杖を振り下ろした。
 瞬間、世界が光で包まれた用に錯覚した。実際は小さな光球が膨れあがって戦艦を包んだだけだった。
いや、だけではなかった。その光はさらに膨らみ、艦隊を、空を包み込んだ。そいのまばゆさに誰も彼も目が眩んでしまう。
 当然ワルドも例外ではなく、思わず目を瞑ってしまった。その隙をついてウェザーは腕を思いっきり振り、宙空へとワルドを放り投げた。杖が腕から抜ける際に激痛が走ったが、それが視界ゼロの状況でもワルドを振り払ったことを教えてくれる。
 そして一切の音が消えた。

 ラ・ロシェールに向かい駆けていたウェールズ達もその光に目を眩ませたが、晴れていく視界の中で、驚くべきものを目にした。
 艦隊は炎上していたのだ。巨艦『レキシントン』号でさえ一目で戦闘続行は不可能だとわかるほどの激しい炎上。
 そしてそのさらに上には雲の巨人が出来上がっていた。ウェールズは見覚えのあるそれを見て全てを悟った。
「全員聞けッ!敵は天の怒りを買った!見よ!あれほどの威容を誇っていた艦隊の様を!さあ、鬨の声を上げろ!声を張らして敵に突撃する!勝ち鬨は我らがものなるぞ!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ』
 拳を振り上げ雄叫びを上げて敵の後方に向かう。すでに敵は狼狽えていた。頼みの艦隊は崩れ落ち、背中には雄叫びを上げて迫る敵。指揮は見る間に萎えていく。恐らくはあの中に『悪魔の虹』の生き残りでもいたのだろう。
 なるほど、すでに心は壊されていた。恐怖は一気に伝染する。
「やってくれたんだな・・・ウェザー!」
 ウェールズは空を見上げて叫んだ。


 一方でトリステイン軍も多少の狼狽はあった。いきなりの光に燃え落ちる艦隊。そして現れた雲の巨人。
 アンリエッタもまた呆然とそれを見ていた。辺りは奇妙な静寂が包まれ、誰も彼もが空を見上げている。
 その中で最も早く立ち直ったのがマザリーニであった。
「諸君!見よ!敵の艦隊は滅んだ!伝説のタイタンによって!」
「タイタン?あの神話の巨人だって?」
「さよう!あの空を覆い隠さんばかりの巨躯を見よ!あれはこのトリステインの大地を支えているという、伝説の巨人ですぞ!各々方!始祖の祝福我にあり!」
 すると、雄叫びはまるで波のように全体に伝わり、狭い岩壁に反響して大きなうねりとなった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおーッ!トリステイン万歳!」
 しかしアンリエッタは眉をひそめてマザリーニにそっと尋ねた。
「枢機卿、タイタンとは・・・まことですか?伝説の巨人など、わたくしは聞いたことがありませんが・・・」
 アンリエッタの問いにマザリーニはイタズラっぽく笑った。

「真っ赤嘘ですよ。ですが、今は誰も彼もが判断力を失っておる。目の当たりにした光景が信じられんのです。私とて同じ事ですが、しかし、現実に敵艦隊は壊滅し、自然現象では有り得ぬ雲の巨人がタイミングよく現れた。これを利用せぬ手はありますまい」
「はぁ・・・・・・」
「使えるものは何でも使う。それこそ、必要とあれば猫の手も借りる。政治と戦の基本ですぞ。覚えて置きなさい殿下。遠くない未来、あなたはそれを武器にしなければならなくなる」
 アンリエッタは頷いた。今は生か死か、勝つか負けるかだ。
「敵の狼狽え様は以上と言ってもいいですな。恐慌状態に近い。なんにせよ、好機には違いありませぬ」
「はい」
「さて、行きますか。大事な彼氏も迎えに行かねばなりませんしな」
「っ!え!そ・・・それは・・・」
 狼狽えるアンリエッタを見てマザリーニは豪快に笑い、アンリエッタの背を押した。
「はっはっは!姫様が幼少の頃より見守ってきたこのマザリーニの目が誤魔化せるとでも?・・・では殿下、勝ちに行きますか」
 マザリーニの言葉にアンリエッタは再び強く頷くと、空を見上げた。きらりと、夕暮れの空に何かがきらめいた気がして、そこに向けて杖をかざした。だが、すぐに顔を正面に向ける。
「全軍突撃ッ!王軍ッ!我に続けッ!」


 光が明けたウェザーの視界には燃え落ちる艦隊が移った。そして正面には風流の背に乗るワルドが。どうやら落下する前に風竜に拾わせたらしい。かすかな静寂の中で地上から昇る雄叫びが聞こえてくる。
「どうする?続けるか?もっとも、お前の味方は総崩れだがな」
 ワルドは下を見やると、口惜しそうに歯噛みしてからウェザーに杖を向けた。
「いいだろう。今日は引いてやる。だが忘れるな!貴様を殺すのはこの僕だ!その傷を忘れるな!次に会うときが決着の時だということを心に刻め!それまでの時間をせいぜい有意義に過ごすがいい!」
 ワルドはそう言い捨てて風竜を駆って飛び去っていった。ウェザーはその背を見ながら自分の喉を触る。血が指先に触れた。もう少しで完全に喉に達していただろう。今日に関しては負けを認めざるを得ない。
「・・・野郎・・・・・・」
 一人ごちたウェザーだったが、頭の上で何かがうごうごしているのに気付いて、肩にルイズを乗せたままなのを思い出して下ろしてやった。ちょうどウェザーの足の間にすっぽりと収まる。
 ルイズはぐったりとしてウェザーに寄りかかった。雲のスーツが体から剥がれていくのがわかったが、今はとにかく休みたかった。気怠い疲労感が体を包んでいて重い。でも気持ちは軽かった。何かをやり遂げたあとの、満足感が伴う心地良い疲労感だった。
「ねえ、ウェザー・・・」
「・・・なんだ?」
 疲れたような声を聞いてウェザーは視線を上に向けた。ルイズはウェザーを見上げてウェザーは空を見上げている。
「何で・・・あの雲の巨人を・・・出したの?」
「・・・アルビオンの時に見た奴がいれば脅しになるし、ウェールズへの合図も兼ねてたからだ。・・・今度はこっちの番だ。さっきの光はなん・・・だ」
 最後の方は尻窄みになってしまった。視線を下に持っていけばルイズは瞼を閉じてまどろんでいた。かすかに寝息も聞こえる。ウェザーは思わず肩を落とした。
「・・・・・・ご苦労様、ルイズ」
 ウェザーは痛む腕を上げて頭を撫でてやった。くすぐったかったのか、ルイズが身じろぎをして何かを呟く。
「もう・・・からっぽじゃないよ」
 東の空にはもう温かい月が顔を出して二人を見ていた。



To Be Continued…

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