ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-12

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匿名ユーザー

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朝もやの中、セッコとルイズとギーシュは馬に鞍をつけていた。
ルイズとギーシュが乗馬用のごつい靴を履いているのが不安で仕方ねえ。
どんだけ遠いんだ。

そういやギーシュって何ができるんだっけ。ええと・・・
  • 錬金。これは便利だ、うん。青銅と石以外に何を出せるか知らねえけどな。
  • 固定化。脅迫気味にスーツにかけてもらったが、ルイズに話すと「ドットの固定化は気休め」って言われたっけ。微妙だ。
  • 銅像。いっぱい出せるみたいだがあんまり強くないし目立つ。

やっぱし、秘密っぽい作業には向かねえよな。
こいつ自体目立ちたがり屋だし。

こっそり動くのに向かないと言えばルイズもだ。
セッコ的にルイズの爆発は凄い能力なのだが、
ルイズは爆発を「爆破攻撃」として使うことを非常に嫌がるので期待できない。しかも目立つ。

セッコが一人で悩んでいると、ギーシュが突如改まって話し始めた。

「お願いがあるんだが・・・」
「んん?」
「僕の使い魔を連れて行きたいんだ。」
「どこにいるんだあ?」
「ここ」
ギーシュは地面を指差した。
その直後、もこもこと地面が盛り上がり、熊ほどもある茶色の生き物が姿を現した。

ギーシュがそれに抱きつく。
「ヴェルダンデ!ああ!ぼくの可愛いヴェルダンデ!でも、最近ちょっと太り過ぎじゃないかな?」

「そいつヴェルダンデって名前だったのかあ。」

前言撤回、ギーシュ(の使い魔)は物凄く使える。
シルフィードに勝るとも劣らねえだろう。
パワフルだし、高速で地中を進める。
しかもオレと違って穴が残るから人の輸送も可能ときてやがる。
陣の外から穴掘ってウェールズを急襲だ、完璧、よしッ!!

「そうだよ。セッコは僕の可愛いヴェルダンデを知ってたのかい?」
「ああ、いつもそいつとシルフィードとオレで、食堂の力仕事手伝って飯もらってるぜ。」
「ヴェ、ヴェルダンデ・・・変なもの食べちゃダメだよ?」
ヴェルダンデは我関せずといった調子で鼻をならした。

ルイズが横から口を挟む。
「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」
「当然。[モグラ]だからな。けど、ヴェルダンデは馬ぐらいなら追いつけるよ。」
「そういう問題じゃないわ。わたしたちが行くのって、アルビオンでしょ」
「あ・・・」
「脳がマヌケね。」
「お別れなんてつらすぎる・・・僕はギリギリまで諦めないぞ!」
「残念ね。」

アルビオンって島なのかよ。結局ヴェルダンデも使えねえのか・・・うう・・・
とりあえずギーシュと一緒になって撫でておく。本当に残念だ。
その時、突然ヴェルダンデが鼻をひくつかせてルイズに飛びついた。
「な、なによこのモグラ」
「なーギーシュ。ヴェルダンデはなにやってんだ?」
ルイズとヴェルダンデが取っ組み合っている。
「この!無礼なモグラね!姫さまに頂いた指輪に触らないで!ああもう!」

「多分その指輪に引き寄せられたんじゃないか?
ヴェルダンデは宝石とか希少鉱物が大好きだからね」
「宝石まで探せるのか、すげえなあ。ギーシュオメーにゃもったいねえぜ。」
「いつかはふさわしい主になってみせるさ」
「当分無理じゃねえかあ?」

と、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくヴェルダンデを吹き飛ばした。
「誰だッ!!!」
ギーシュが激昂してわめいた。

朝もやの中から、一人の男が現れた。羽帽子を被っている。こいつも貴族かあ?
んんー?どっかで見たことあるなあ。

「貴様、僕のヴェルダンデになにをするだぁー!」
ギーシュが薔薇の造花を掲げる。
が、それよりも早く羽帽子の男が杖?を抜き、ギーシュのそれを吹き飛ばした。

「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。
しかし、お忍びの任務であるゆえ一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
その男は帽子を取ると一礼した。
なんだ、でかい帽子を被ってなければかっこいいじゃねえか。

「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
ワルドはしょぼくれたギーシュを見て、声をかけた。
「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」

婚約者ねえ。貴族って大変だな。
ルイズは目を輝かせてワルドを見ている。
「ワルドさま・・・」
「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」
ワルドはルイズを抱え上げた。ルイズは頬を染めている。
「お久しぶりでございます」
「相変わらず軽いなきみは、まるで羽のようだね!」
「・・・お恥ずかしいですわ」
「彼らを、紹介してくれたまえ」
言うとワルドはルイズを下ろした。
「あ、あの・・・ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のセッコです」
「きみがルイズの使い魔かい?人・・・だよね?」
ワルドが近寄ってくる。
「僕の婚約者がお世話になっているよ」
「・・・うん。」

セッコはワルドを観察した。さっき風を起こしたということはメイジなんだろう。
だが、いい体してやがるなあ。きっと体術もそこそこいけるに違えねえ。
こんな奴をよこすなら、最初からこいつにやらせりゃいいじゃねえか。
いや、もしかするとむしろこいつの方が微妙に信用されてないのかあ?
今考えることじゃねーな。さっさと馬に乗ろう。

ワルドが口笛を吹くと、昨日見たライオンの胴体に鳥の頭がついた珍獣が現れた。
よく見ると羽が生えている。
グリフォン隊隊長つってたし、きっとこれがグリフォンなんだろ。多分。
ひらりとそれに跨ると、ルイズを手招きした。
「おいで、ルイズ」
ルイズはしばらく躊躇った後、グリフォンに乗った。
うー、くそお、やはりタバサと連絡を取っておくべきだった。
グリフォンの速さはわからねーが、2人が飛んで2人が馬とか冗談きついぜ。

ワルドが杖?を掲げ叫ぶ。
「では諸君!出撃だ!」
グリフォンが駆け出す。セッコとギーシュもそれに続いた。

空を見る。置いていかれると思ったが、意外にも馬と大差ない。
半分は鳥じゃねえから、鳥の半分の速度ってわけかあ。ふうん。
車とかあれば楽なのによお・・・ねえんだろうな、多分。


港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること馬で約2日、アルビオンへの玄関口である。
小さな町で、人口は300ほどでしかないが、アルビオンを行き来する人々で常に十倍以上の人間が町を闊歩している。
狭い山道を挟む崖の一枚岩を、土の魔法で住居に加工しているため、昼でも薄暗い。
更にそこから奥へと入った安居酒屋「金の酒樽亭」で、フーケと白仮面の男が話をしていた。

「連中が出発した」
「あんたに言われたとおり傭兵は雇ったよ。」
「で、こいつらは信用できるのかね?」
居酒屋の中はたった今フーケに雇われた傭兵でごった返していた。
「できるわけないじゃない、今前金を叩きつけたばかりよ。
そもそも人を選ぶ時間もなかったし。」
「まあ、そうだろうな。少し喝を入れてやるか」
「いいんじゃない?」

魔法学院を出発させて以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしである。
セッコとギーシュは既に2匹の馬を交換しているが、グリフォンはそのまま頑張っている。

なるほどな、そう早くなくてもスタミナがあるってわけかあ。
しかし、馬って使えねえなあ、腰痛いし。

「ちょっと、ペースが速くない?」
ルイズの口調は、ワルドと雑談を続ける間に元に戻っていた。
「へばったら、置いていけばいい。見た感じラ・ロシェールまでぐらい持ちそうだがね」
「そういうわけにはいかないわ。」
「どうして?」
「だって、仲間じゃない。それに、ギーシュはともかくセッコは重要な戦力よ。」
「そうは見えないがねえ。もしかしてきみの恋人だったりするのかい?」
ワルドは笑いながら言った。
「こ、恋人なんかじゃないわ」
ルイズは顔を赤らめた。そしてちょっと考える。
セッコの能力を知らせておこうかしら?
いや、やめておこう。戦闘になってからでも遅くはないわよね。

「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」
「お、親が決めたことじゃない」
「僕のことが嫌いかい?」
「そんなわけないじゃない!」
「はは、それは良かった」
わたしが結婚、ねえ。
まだそれに現実味を感じられないルイズではあった。

「もう半日以上、走りっぱなしだ。魔法衛士隊の連中は化け物か」
ギーシュが馬に体を預けて口を開く。
「バカ、ありゃあの動物がタフなんだ、人は関係ねえ。ルイズを見てみろよお。」
それにしても馬って奴は。
「秘密任務なら、風竜の一匹ぐらい貸してくれてもよかったのに。そう思わないかい?セッコ」
テメーがいなけりゃシルフィードの力を借りる予定だったんだよお。
「来なきゃよかったんじゃねえの?」
「そういうわけにはいかないよ。姫殿下を助けるのは貴族の義務だ」
「そうか。」

馬を乗り潰すこと4匹。何とかセッコたちはその日のうちにラ・ロシェールの入り口に着いた。深夜だが。

あれえ?確かにルイズは港町、つってたよな?何だこりゃ。
街並みは峡谷に挟まれている。

「なあ、ギーシュよお」
「なんだい?」
「ラ・ロシェールって港町だよな?」
「そうだけど、どうかしたのか?」
「うう・・・」
ギーシュの答えは要領を得ない。
その時不意に崖の上から、松明が何本も投げ込まれてきた。
その拍子に馬が驚きセッコとギーシュは振り落とされてしまう。
「な、なんだ!、奇襲か!」
ギーシュが怒鳴った。
そこを狙って何本もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。

ああ、畜生。なんかあるとは思ってたがよお。
とりあえずギーシュを馬の影に向かって蹴り飛ばし、鞘に入ったままのデルフリンガーで矢を叩き落とす。
「痛っつ、何するんだ!」
ギーシュがわめいている。
「壁でも作って待ってろお。」

潜るルートを考えつつ、再び飛んでくる矢を適当に捌こうとした所で、目の前に小型の竜巻が現れた。
慌てて後ろに跳び退る。

「大丈夫か!」
ワルドの声が聞こえる。大丈夫かじゃねえよ、邪魔するな。
「その様子だと平気そうだね、すまなかった。・・・夜盗か山賊の類か?」
降りてきたワルドが呟く。
ルイズも呟いた。
「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも・・・」
「貴族なら、弓は使わんだろう」

いや、その理屈はおかしい。つーかそう言うワルドの杖はどう見ても剣だ。
弓や槍持ったメイジも絶対どっかにいるだろ。賭けてもいいぜ。
そんなことを思っていると、聞きなれた羽音が聞こえてきた。
シルフィードかあ?
同時に、崖の上から男たちの叫び声が聞こえ、そしてばらばらと落下してくる。

「おや、風の呪文じゃないか。」
ワルドが微妙な表情になった。そしてシルフィードが地面に降りてくる。
「うおお、どうしたシルフィード」
「きゅいきゅい!」

そして、その上から何故かキュルケが飛び降りてきて、髪をかきあげた。

「お待たせ、ルイズ」
ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。
「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!」
「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こしてあとをつけたのよ」
キュルケは風竜の上のタバサを指差した。

しかし・・・
タバサはなんとしっかりと服を着込み、荷物まで持っていた。
絶対前もって準備してた雰囲気である。
「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」
「お忍び?だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。
あなたたちを襲った相手も捕まえたんだし、感謝しなさいよね?」
そう言ってキュルケは誇らしげに笑った。落ちてきた男たちが呻いている。

いや、全部聞いてたから知ってますけどね。
ルイズが心配だから応援に来た、なんて言えないじゃないの。タバサはタバサで何か考えがありそうだし。

「助けは嬉しいが、あまり深入りはしてほしくないな」
ワルドが首をかしげる。
「加減するから、大丈夫よ」
キュルケは笑った。本当は言い寄ってやろうと思ったのだが、先手を打たれてしまった。
そこまで好みじゃないしいいけど。

「あれは、放置?」
タバサが男たちを指差して、シルフィードを撫でていたセッコに言った。
「そんなのもいたな、一応話聞いてやるかあ。」
「情報一番」
敵から話を聞くときはどうするんだったっけな。
確か、えーと、足先から、あー・・・んと・・・

思い出した、切らなきゃなあ。デルフリンガーを引き抜く。
「よう相棒久しぶり。寂しかったぜ」
「喜べデルフリンガー。」
「どうしたよ」
「ちょっと静かにしててくれよお。」
「ああ、かまわねえぜ」

うー、36等分ってどのぐらいずつ切ればいいんだろ?
適当でいいかあ。どうせ多分死ぬし。

「なー、ちょっと話聞かせてくれるよなあ?」
「おめえらに話すことなんかこれっぽっちもねえよ!」
「そーかあ。それは残念だぜえ。」
「急いでたんだろ?さっさと行ってくれ!」
「まあ、そう言うなよお。な。」

深夜の渓谷に、偶然セッコから一番近い場所に転がっていた不幸な男と、その横にいたもう一人の絶叫と断末魔が響いた。

「あ、相棒ってわりと乱暴だな・・・」
「そうかなあ。」
ちゃんと話聞けたしルイズに報告するかあ。

「仮面の貴族と、貴族じゃない女メイジの2人に雇われた。怪しいけど給金が凄かったから受けた。 つってたぜ。」
「そ、そう。やっぱり貴族派かしら?もう危ないのね・・・」
ルイズの様子がおかしい、震えている。なんでだ?
「ふむ・・・既に情報が漏れているとは予想外だな、なるべく急ごうか。」
ワルドはそんなルイズを抱きかかえて、ひらりとグリフォンに跨った。
「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」
ワルドは一行にそう告げた。

「それはいいんだけどよお、ギーシュはどこ行ったんだあ?」
皆が首をかしげる。
すると、矢が数本刺さった青銅のドームの影からギーシュが姿を現した。
「あれ、賊はどうなったんだい?」

「「「「「・・・」」」」」

道の向こうに、ラ・ロシェールの町の灯りが怪しく輝いていた。




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