ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-11

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匿名ユーザー

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いきなりルイズの部屋に現れたアンリエッタ「王女」は、
あれだけ周囲を警戒してこっそりと来たのにも拘らず、ルイズと大声で雑談を始めてしまった。
もちろんセッコは完全無視で。

寮だから両隣の部屋に人いるんだけどなあ。
それ以前にまだ廊下に人通る時間だし。こいつも脳にカビ生えてんのか。
つーか居辛いことこの上ねえ。

「あー・・・ルイズよお、外行っていいかなあ」
「ダメよ。」
言うと思ったぜ。

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら?」
アンリエッタが初めてオレの存在に気づいたみてーだ。
じゃあ最初の探知っぽい魔法は何だったんだよ。

「お邪魔?どうして?」
「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?いやだわ。
わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね。」

ルイズが微妙な顔で言い返す。
「いえ姫さま、邪魔なんてことは全然。こいつはわたしの使い魔ですよ。」
「使い魔?これ、人じゃないんですか?」
「多分人だとは思いますけど、使い魔です。」
「ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「わりと頼りになりますよ。姫さま。」
「そ、そう。」
そんな何ともいえない会話は延々と続いた。

もうついていけねえ、寝てやろうか。
さすがにそれはまずいかなあ。

セッコが苦悩していると、突然アンリエッタの口調が変化した。
「ああ、ルイズ・・・」
わざとらしいほどに大きなため息をつく。
「姫さま?!」
ルイズがわざとらしく大げさに驚く。
「わたくしは、ゲルマニアに嫁ぐことになったのですが・・・」
更にため息は繰り返される。
「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
大げさ度アップ。

「そうよ、でも、仕方がないの。同盟を結ぶためなのですから。」
そしてアンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢をルイズに説明しはじめた。
アルビオンの貴族たちが反乱を起こし、今にも王室が倒れそうなこと。
反乱軍が勝利を収めたら、次にトリステインに侵攻してくるであろうこと。
それに対抗するために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと。
同盟のために、アンリエッタ王女がゲルマニア王室に嫁ぐことになったこと。
そして・・・

これはヤバい話なんてもんじゃねえ。
オレは聞いてないオレは聞いてないオレは聞いてない・・・

毛布を頭まで被り、そっと部屋の隅へ移動。
しかし。

「セッコ、姫さまの御前よ。ちゃんと聞きなさい。」
「うう…わかったよお。」

畜生。

「そうだったんですか・・・」
ルイズが沈んだ声になっている。
あんまりいい話でないのは確かだが、仕事なら仕方ないんじゃねえのかな。
オレだってどうせならもっと強くて冷静な奴と組みたいけど選択肢ねえし。

「いいのよ、ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めていますわ。」
「姫さま・・・」
「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。
二本の矢も、束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね。」

矢二本じゃあ束ねても折れるだろ。せめて三本。

「・・・したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を、血眼になって探しています。」
「で、もしかして、姫さまの婚姻を妨げるような材料が?」
ルイズが顔を蒼白にして尋ねる。

「おお、始祖ブリミルよ・・・。この不幸な姫をお救いください・・・」
「言って!姫さま!一体、姫さまのご婚姻を妨げる材料って何なのですか?」

うばあああああお願い言わないで王女様おあああ、機密事項だよなあ?よな?

しかし、セッコのかすかな期待は当然というべきか裏切られた。

「・・・わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」
「手紙?」
「そうです。それがアルビオンの貴族たちの手に渡ったら、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう。
どんな内容かは言えませんが、きっとゲルマニアとの同盟は反故になってしまうでしょう。」
ルイズは息せきって、アンリエッタの手を握った。
「一体、その手紙はどこにあるのですか?トリステインに危機をもたらす、その手紙とやらは!」
アンリエッタが首を振る。
「それが、実はアルビオンにあるのです。」
「えっ、それではもう・・・」
「いえ、手紙を持っているのは反乱勢ではありません。アルビオン王家のウェールズ皇太子です。そして・・・」
「そして?」
「遅かれ早かれ、ウェールズ皇太子は反乱勢に囚われてしまうわ!そうしたら、
あの手紙も明るみに出てしまう!そして破滅です!何もかも!」

ルイズが息をのんだ。セッコはうなだれた。
「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは・・・」
「無理、無理よルイズ!わたくしったら、混乱しているんだわ!
考えてみれば、貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」

セッコの表情がぱっと明るくなる。
うん、うんうんっ、友人にこんな討ち死に前提の命令なんてしねえよな。
よしッ!!

「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜の顎の中だろうが、姫さまの御為とあらば、何処なりと向かいますわ!
姫様とトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません!
このわたくしめにその一件、是非ともお任せくださいますよう!」
ルイズはそう言いつつ、膝をついて恭しく頭を下げた。
げんなりしてセッコの頭が下がった。

目の前ではルイズとアンリエッタが延々と友情を確かめあいつつ任務の話をしている。明日の朝出発ってマジか。
行くこと自体はもうどうしようもねえ、だが馬で行くのは勘弁して欲しい。

そうだ、早くて快適な乗り物があるじゃねえか。
もし手伝ってくれるならそんな頼もしいことはねえ。そうしよう。

「ちょっと、話の途中よ。どこいくのセッコ」
ドアに手をかけたところで、ルイズに後ろから呼び止められる。
「明日の朝出発するんだよなあ?」
「そうだけど」
「ちょっと準備。」
「そう」
言いつつドアを開けて飛び出す。外の空気、うめえ!

と、誰かにぶつかった。そいや足音は2つだったっけなあ。
「あっと、従者さんすまね。」
アンリエッタが振り返り口を開いた。
「いえ、ここには一人で来たはずですが・・・」
ならこれは誰だあ?
顔を見る。ルイズもドアから身を乗り出した。

「「・・・ギーシュ?」」
しかし、ギーシュはルイズとセッコを無視してアンリエッタの前に跪いた。
「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せ付けますよう!是非!」

ルイズは微妙な顔でギーシュを見ている。
アンリエッタは首を捻っている。
セッコは代わりにギーシュがやってくれるならちょっとラッキー?と思った。

「グラモン・・・グラモン・・・ああ、あのグラモン元帥の?」
アンリエッタがギーシュに向き直った。
「そうです!息子でございます、姫殿下!」
そして恭しく一礼する。
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
なんだ、“も”かあ。期待はしてなかったけどよ。

「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう望外の幸せにございます」
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。
ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュ・ド・グラモン。」
ギーシュは感極まった様子で打ち震えている。大丈夫かなあ。

戦力は一応増えた。
だが、一人増えたことにより、タバサに頼んで途中までシルフィードを使うという
楽かつ素早い作戦は、完全に失われてしまった。
確かオレの記憶によるとシルフィードの積載は3人が限界だ。
「結局馬かあ・・・。」
「何よセッコ。最初から馬だって言ってるじゃない。」
「うう。」

ルイズは表情を引き締めると、アンリエッタに再び顔を向けた。
「では、明日朝よりアルビオンに向かって出発いたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます。」
「判りました。以前幾度か旅行しておりますので、地理は大丈夫です」
「それは頼もしいですわね。あ、そうだわ。」
アンリエッタはルイズの机に座ると、何かを書き始めた。そしてぽつりと呟く。
「ああ、やはりわたくしは、自分に嘘はつけません。」
「いきなりどうなされました?姫さま?」
ルイズが怪訝な顔でアンリエッタを見る。もちろんオレも。
「な、なんでもありません。やだわたくしったら独り言なんて。」
そう言うと、更にもう1文をしたため、それに封をした。

「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してあげてください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう。
それと、もし、もしですが、ウェールズ皇太子と連絡が完全につかない場合、これは焼き捨ててください。」
「判りました。この任務。絶対に成功させてみせますわ姫さま」
「ありがとう、ルイズ。それと、このお願いは公にできないので、
表立って何かをしてあげることができません。代わりと言ってはなんですが、この[水のルビー]をあなたに託します。
母君からいただいたものですが、もしお金が心配なら、売り払ってもらってもかまいません。」
アンリエッタは、自らの指から外した指輪をルイズに手渡した。

ルイズは深々と頭を下げ、それを指にはめた。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています。
母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなた方を守りますように」
そう言い残すと素早くアンリエッタは去っていった。

さて、明日早いらしいし寝るかあ。

「あんなお願いを聞かなきゃならないなんて、貴族ってわかんねえな。」
「きっと永久に判らないわ、そういうもんなの。悪いけどセッコにも協力してもらうわよ」
「なんだ、オレが嫌がってんの知ってたのかよお。」
「わたしはあなたの主よ。馬鹿にしないで」
「・・・そうか。」

こういう命令、前もあったような気がするなあ。

ええと・・・あれは・・・なんかの秘密を・・・Zzz

部屋の壁に耳をくっつけ、一部始終ずっと聞いていたキュルケが呟いた。
「なんか、面白そうなことやってるじゃないの。」





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