コルベールがもう一度呪文を唱え杖を振ると天蓋に落ちていた毛布がルイズへと覆いかぶさる。
「さっきまで眠っていたんだからすぐには眠れないと思うが眠る努力をしなさい。さあ、ベッドに寝て、毛布を固定しておかなくては」
「はい」
ルイズはそれに素直に従いベッドの上に寝転がる。
コルベールはそれを確認しルイズへ覆いかぶせた毛布をベッドに引っ付け固定させる。
「それではまた明日来ます。私が来るときはちゃんと起きていてくださいよ」
「わかってます」
「では、おやすみなさい」
そう言うとコルベールは扉を開けて出て行った。
ルイズは明日に思いを馳せる。
一体どんな訓練なのだろうか?
厳しいのだろうか?辛いのだろうか?
しかし、ルイズは耐えられる自信があった。
あんなに自分を励ましてくれる人がいる。あんなに自分を心配してくれる人がいる。
この学院において唯一自分の味方となってくれる存在。
コルベールがいればきっと辛くても耐えられる。
それが自分の心を拾ってくれた恩人への思いだった。
「さっきまで眠っていたんだからすぐには眠れないと思うが眠る努力をしなさい。さあ、ベッドに寝て、毛布を固定しておかなくては」
「はい」
ルイズはそれに素直に従いベッドの上に寝転がる。
コルベールはそれを確認しルイズへ覆いかぶせた毛布をベッドに引っ付け固定させる。
「それではまた明日来ます。私が来るときはちゃんと起きていてくださいよ」
「わかってます」
「では、おやすみなさい」
そう言うとコルベールは扉を開けて出て行った。
ルイズは明日に思いを馳せる。
一体どんな訓練なのだろうか?
厳しいのだろうか?辛いのだろうか?
しかし、ルイズは耐えられる自信があった。
あんなに自分を励ましてくれる人がいる。あんなに自分を心配してくれる人がいる。
この学院において唯一自分の味方となってくれる存在。
コルベールがいればきっと辛くても耐えられる。
それが自分の心を拾ってくれた恩人への思いだった。
コルベールは先ほどの部屋で見たルイズの顔を思い出していた。
特に印象に残ったのは、制御できると聞いたときの嬉しそうな顔だ。
これまで何度かルイズを見たことはあった。
しかしそのときの顔は決まって無表情か何か苛立ったような顔だった。
初めは周囲の環境に慣れていないせいかと思っていたが、そうでないことを知った。
同僚の話でルイズは魔法が使えないということを知ったのだ。どんなに簡単な魔法でも使えば爆発すると。
しかしそれを除けば、優秀な生徒らしい。
真面目に先生の話を聞き、魔法についてよく努力をしている。
だが、魔法が使えることが常識のこの学院で魔法が使えないというのはどれほど辛いことなのだろう。
ましてルイズは名門公爵家の生まれだ。
それなのに魔法が使えないというのはどれほど辛いのだろうか。
そして今日さらに追い討ちをかける出来事が起こった。
儀式に失敗し使い魔を召喚するどころか自分が使い魔になってしまい、さらに日常生活が困難になるほどの性質の悪い能力を身につけたのだ。
あのままではまともな人間の生活を送れるかどうかすら危うい。
彼女はそんな状況で真っ直ぐ立っていられるだろうか?
立てるわけが無い。どんな人間だろうと限界はある。
今ルイズが持っている能力は、周りにとって害でしかない。
ルイズは嘲笑されるどころか、厄介者となってみんなから疎まれ、最終的に孤独になって孤立し倒れてしまうだろう。
休める場所が無いのだ。そうなって当然だ。
だったら、そうなる前に誰かが支えなければならない。
ルイズが倒れる前に、たとえ役に立てなくても、心の支えになれる者がいなければならない。
そしてルイズは自分の生徒だ。
自分が支えなくてどうするというのだ。
コルベールはそう考えていた。
もう一度ルイズの嬉しそうな顔を思い浮かべる。
あの顔は守らなければならない。絶やしてはいけない。
ああいう表情を浮かべるものがこの世には必要なのだから。
たとえ嘘をついてでも守らなければならない。
そう、嘘。
コルベールはルイズに重大な嘘をついていた。
制御できるようになるだとかそれに実例があるだとか、そんなもの全部嘘っぱちだ。
ルイズを安心させるために言ったに過ぎない。
制御できるなんて自分の予測に過ぎない。
予測に絶対という文字は無い。つまり制御できない可能性があるということだ。
むしろ制御できない可能性の方が強いかもしれない。
それなのに彼女に言ったのだ。
制御できるようになると。間違いないと。
できないかもしれないのにだ。
……いや、諦めてはいけない。
自分が諦めては絶対にいけない。
自分が諦めたらルイズはどうする。
あれだけ大層なことを言い、思っておきながらできないかったら諦めるのか?
そんなことはしない!
必ず制御させてみせる。
あの力の謎を解き明かして、寝る間も惜しんででも制御法を突き詰めてみせる!
きっと糸口はあるだろう。
無ければ作ればいい!
そう決意を胸に秘め、コルベールは自分の寝室へ足を進めていった。
特に印象に残ったのは、制御できると聞いたときの嬉しそうな顔だ。
これまで何度かルイズを見たことはあった。
しかしそのときの顔は決まって無表情か何か苛立ったような顔だった。
初めは周囲の環境に慣れていないせいかと思っていたが、そうでないことを知った。
同僚の話でルイズは魔法が使えないということを知ったのだ。どんなに簡単な魔法でも使えば爆発すると。
しかしそれを除けば、優秀な生徒らしい。
真面目に先生の話を聞き、魔法についてよく努力をしている。
だが、魔法が使えることが常識のこの学院で魔法が使えないというのはどれほど辛いことなのだろう。
ましてルイズは名門公爵家の生まれだ。
それなのに魔法が使えないというのはどれほど辛いのだろうか。
そして今日さらに追い討ちをかける出来事が起こった。
儀式に失敗し使い魔を召喚するどころか自分が使い魔になってしまい、さらに日常生活が困難になるほどの性質の悪い能力を身につけたのだ。
あのままではまともな人間の生活を送れるかどうかすら危うい。
彼女はそんな状況で真っ直ぐ立っていられるだろうか?
立てるわけが無い。どんな人間だろうと限界はある。
今ルイズが持っている能力は、周りにとって害でしかない。
ルイズは嘲笑されるどころか、厄介者となってみんなから疎まれ、最終的に孤独になって孤立し倒れてしまうだろう。
休める場所が無いのだ。そうなって当然だ。
だったら、そうなる前に誰かが支えなければならない。
ルイズが倒れる前に、たとえ役に立てなくても、心の支えになれる者がいなければならない。
そしてルイズは自分の生徒だ。
自分が支えなくてどうするというのだ。
コルベールはそう考えていた。
もう一度ルイズの嬉しそうな顔を思い浮かべる。
あの顔は守らなければならない。絶やしてはいけない。
ああいう表情を浮かべるものがこの世には必要なのだから。
たとえ嘘をついてでも守らなければならない。
そう、嘘。
コルベールはルイズに重大な嘘をついていた。
制御できるようになるだとかそれに実例があるだとか、そんなもの全部嘘っぱちだ。
ルイズを安心させるために言ったに過ぎない。
制御できるなんて自分の予測に過ぎない。
予測に絶対という文字は無い。つまり制御できない可能性があるということだ。
むしろ制御できない可能性の方が強いかもしれない。
それなのに彼女に言ったのだ。
制御できるようになると。間違いないと。
できないかもしれないのにだ。
……いや、諦めてはいけない。
自分が諦めては絶対にいけない。
自分が諦めたらルイズはどうする。
あれだけ大層なことを言い、思っておきながらできないかったら諦めるのか?
そんなことはしない!
必ず制御させてみせる。
あの力の謎を解き明かして、寝る間も惜しんででも制御法を突き詰めてみせる!
きっと糸口はあるだろう。
無ければ作ればいい!
そう決意を胸に秘め、コルベールは自分の寝室へ足を進めていった。
ルイズは夢を見ていた。
その夢の中で自分は無敵だった。
別に何かと戦ったわけでもない。ただそう思っただけだ。
横見る。そこには見たことも無い建物があった。
そしてその建物にしがみつく何人かの人間。
ふと一人の手がその建物から離れてしまう。
そしてその人間は水平にあっという間に落ちていった。
自分が見た200メイルなんて目ではない。はるか底まで落ちていく。
ルイズはそれを自分でも驚くくらい無感情に見ていた。
その夢の中で自分は無敵だった。
別に何かと戦ったわけでもない。ただそう思っただけだ。
横見る。そこには見たことも無い建物があった。
そしてその建物にしがみつく何人かの人間。
ふと一人の手がその建物から離れてしまう。
そしてその人間は水平にあっという間に落ちていった。
自分が見た200メイルなんて目ではない。はるか底まで落ちていく。
ルイズはそれを自分でも驚くくらい無感情に見ていた。