ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は天国への扉を静かに開く-5

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匿名ユーザー

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食事は特に何事もなく済んだ。
アルヴィーズの食堂の銅像は動くらしい、ぜひみてみたいモノだ。
食堂に入った途端に視線がぼくらに向くが、ルイズはそれら全てを軽やかにスルーした。
当然ぼくもそれに習ってスルーする。
「引いて」
「それくらい自分でやれ」
と言いながらも椅子を引いて座らせてやる。
テーブルはとてつもなくでかい、百人がけくらいのテーブルか。
まぁ食堂のテーブルだとこんなもんかと思いながら厨房へ向かう。
「赤ん坊と一緒に何かもらってくるよ」
何か言い足そうにしているルイズに気付かないふりをした。
どうせ主としての威厳を保つために小細工でもしようとしたのだろう。
しかしそんな事はぼくにはお見通しだ。
この岸辺 露伴容赦せんっ!


壇上で教鞭を執っている中年女性はシュヴルーズと言うらしい。
土のトライアングルメイジ。トライアングルは属性を三つ足すことが出来るメイジとのことだ。
最初にルイズを読んだときにそんなことを書いてあったことを思い出す。
ちなみにぼくの御主人は一つも足せない、故に「ゼロ」だと言うことは既に把握している。
そのため、あのデブが言ってたゼロの意味を今更訊くことはしない。
無駄だからな。
魔法を使おうとすると爆発するらしい。まるで吉良だな。
シュヴルーズが小石を教卓の上に置いて杖を振るうと、石ころがキラキラと輝く金属へと変化した。
おぉ、素晴らしい。それが錬金か、興味深い。
ん? キュルケがその金色を見て乗り出して「ゴールドか」と訊いている、俗物か。
キュルケの問いにシュヴルーズは真鍮だと応える。
どうやら金はスクウェアでないと出来ないらしい。
その辺りは少々詳しく問いつめたいな。
合金である真鍮は可能で、単一元素金属である金へは出来ない理由が不明瞭だ。
貴金属だからとか価値が高いとか希少だからと言った理屈はぼくら人間による感覚でしかない。
物質としてみるならば全てはすべからく同一の価値であるはずなのだから。
モノの価値は人が見出すモノである。それはどんなモノでも一緒だと思う。


シュヴルーズがルイズを指名して前に出て錬金するようにいった。
当然全員恐怖におののく。爆発するのだから仕方ないだろう。
「やります、やらせてください!」
キュルケが説得したが逆効果になったようだ。ルイズは半ば意地になって席を立ち、階段を下りていく。
生徒達がみんな一斉に机の下に隠れだす、ぼくもそろそろ避難しておこうか。
ふと、一際大きな杖を持った少女が人知れず外へ出て行くのが見えた。
そうだな、外が一番安全だろう。
それに、一人だけ出ていくなら本にするチャンスだ、ぜひ読ませてもらおう。

『ヘブンズ・ドアーーーッ。自身と露伴を透明にする!』

腕の中の赤ん坊に、そう書き込んだ。


赤ん坊のスタンド。『アクトン・ベイビー』はモノを透明、厳密に言えば不可視化させるスタンドだ。
その効果範囲は自分中心。されどその効果範囲はストレスや緊張で広がったと、ジョースターさんや仗助は言っていた。
ならば、ぼくの体まで範囲にすることが可能だと思っていたが、予想はばっちりだった。
赤ん坊故に制御できないスタンドだ。
こちらの世界に飛ばした時も、赤ん坊は自分の体だけ範囲にしていた。
一緒にいたのがぼくでほんとうに良かったと思う。ただ一言、赤ん坊に『スタンド能力を使えない』と書き込むだけで十分だからな。
一旦『透明になっても岸辺露伴には見えるようにする』と書こうかと思ったが。他の人に見えなくて巻き添えを食らったりしたら大変だから断念した。
そう、丁度背後から聞こえる爆発音なんかに巻き込まれたりしたら、ね。
それにしても少女はどこへ行こうというのだろうか。
見えない状態になったまま、後を付ける。
床は石造りなため、足音がコツコツと響く。
時折少女は背後を振り返って怪訝そうに振り返る。
なかなか気配に敏感みたいだ、それとも靴音が聞こえるのだろうか。
しかし腕に赤ん坊を抱いているから靴を脱ぐ訳にもいかない。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。
それにしてもずいぶん大きい杖だ、しかしそれでこそ魔法使いと言った風情がある。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。
おっと、考え事をしてしまった所為で止まるのが一歩おくれてしまった。


タバサは、図書館へ向かっていた。
あのヴァリエールの魔法が失敗するは自明の理、至近距離で爆発を喰らえばあの先生はただでは済まないだろう。
それに教室も同じく、残りの授業なんて出来るはずもなく中止になるはずだ。
ならばあの場に留まっている必要もなく、図書館で自習をしようと、教室を出たのだが。
なんだかおかしい。
立ち止まって背後に振り返るが、聞こえてくるのは爆発の残響だけ。
案の定ヴァリエールは失敗したようだ。しかしその事は今はどうでも良い。
何かがおかしい。何か足音が妙に響いているような気がする。
普段はこんなに響いている記憶はないのだが、気にしすぎだろうか。
今通った道を凝視するが、何も見えない。
やはり気のせいのようだ。
タバサはそう納得して再び歩き出す。
しばらく歩いたが、やっぱりおかしい。
ピタリと止まった、その時、違和感は現実となって襲ってきた。
コツ。と足音が一つ、多く…………。

「どこいったのよあいつはっ!」
メメタァに破壊された教室を、一人で片付けているのは我らがルイズ・ド・ラ・ヴァリエールである。
錬金の失敗によって破壊された教室を片付けるように言われた。
もちろん魔法を使わずに、とのことだが元々魔法の使えないルイズにはそんな制約はなんの意味もない。
が、一人でやるとなったら話は別だ。
気付いたら露伴がいなくなっていたのだ。席を立って教卓の前に行くまでは確実にいたはずなのに。
「どこいったのよあいつはっ、もーーーー。もーーーーーっ。もーーーーーーっ!」
地団駄を踏むが、いないモノはいないのだからしょうがない。
片付け完了が長引くだけだ、ルイズもそれを理解しているのだろうが、ヒートアップとクールダウンを繰り返している。
「どこ行ったのよあいつはーーーーーーっ!」
ルイズの叫びは、教室の壁に虚しく吸い込まれた。

「なるほど、図書館か」
突然背後から聞こえてきた声に、柄にもなくタバサは飛び退いて杖を構えた。
構えた先にいたのは、赤ん坊を抱いた露伴。
その姿を認めると、杖を引いた。
「いや、教室を出て行くところが見えたので少々気になってね。悪いけど尾行けさせてもらったんだ」
「……貴方は……」
「岸辺 露伴だ。一応ルイズの使い魔と言うことになっている。こっちは静・ジョースター」
露伴がそう紹介すると、静はタイミング良く「きゃは」と笑った。
「………何か用」
「? 君は何を言っているんだ。理由はさっき言ったじゃないか」
露伴が変なモノを見るような目でタバサに返す。
要するに用はない。
「……どうやって」
タバサは、露伴がどうやって隠れて後を付けてきたのかが気になった。
しかしタバサのその質問を無視しつつ、その腕の静をタバサに押しつけて本を抜き取った。
あいた左手で本を開き、右手でペラペラとページをめくる。
しかし、その瞳は読んでいるようには全く見えず。ただ流しているだけに見えた。実際その通りだが。
「読めないな……言葉が通じているのに文字は読めない。謎だな、召喚魔法にその辺りの理由があるのか………」
「質問に答え……」

『ヘブンズ・ドアァーーーーッ!』


タバサの腕から静を返してもらいながら、露伴はチカラを発動する。
能力の発動とともに、タバサの全身が弛緩し崩れ落ちた。
タバサが崩れ落ちる音は静寂な図書館に割合大きな音を響かせた。
司書の教員や、自習をしていた生徒達からの視線が注がれる。
「いや、なんでもない。ちょっと立ちくらみしたみたいだ」
露伴がそう言うと、ソレで納得したように生徒達は再び勉強に向かう。
「さて」
一番近くの椅子を引いて、そこにタバサを座らせる。
しかしその体に力は入っている様子はなく、だらりとした手の平からは杖が床に転がった。
静をそのテーブルの上に寝転がせ、タバサの杖を右手で持ち、
露伴はゆっくりとページを開いた。


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