ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-26

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匿名ユーザー

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「なんという事だ…」
目の前が真っ暗になったモット伯がうめく。
「約束を…守ってくれますね?」
自分を打ち破った平民を忌々しげに見る。
一瞬衛兵達を呼び、目撃者共々消すと言う選択肢が頭に浮かぶが、すぐにメイジが一人もいない衛兵達では、逆に返り討ちにあうだけだと思い直した。
こうなったら、せめて潔い態度を見せ、少しでも貴族の矜持を見せようと観念する。
「わかった…約束どおり私のコレクションの一冊を君に」
「え?僕はシエスタさんを」
「も、モット伯!ちょっと、ちょっとこちらへ!」
二人の間に割り込んできたミス・ロングビルが、モット伯を部屋の隅に連れて行く。
「み、ミス・ロングビル?先程あの平民が、何か気になる事を」
「いいですかモット伯!このままではモット伯の立場が非常に悪くなります!
 王宮勅使にまで抜擢される貴族が平民に敗れるなんて…と!」
「ま、まぁ確かに…」
ミス・ロングビルの勢いに気圧されてしまい、ついつい頷いてしまう。
「そこで、今回の事は貴方が勝利したという事にすると説得してみます」
「ほ、本当かね!?」
思わずその提案に飛びついてしまい、先程生まれた疑問も、頭の片隅に追いやってしまうモット伯であった。


そのころ育郎の主人であるルイズは。
「あらルイズ、イクローはどうしたのよ?」
一人で食事をとっていた所を、キュルケに話しかけられていた。
ちなみに育郎がいないにもかかわらず、ルイズの回りには誰もいない。
遠巻きに眺める生徒達は各々
「奴がいない!魔界に帰ったのか!?」
「馬鹿!見えないといって、いないとは限らないぞ!」
「感じる…ルイズの隣に誰かいるのを!間違いない、俺霊感強いんだよ」
等と相変わらず好き勝手に騒いでいた。
「…出かけてるのよ」
「何処に?」
キュルケの後ろにいたタバサがルイズに問いかける。
「何よ、貴方まで…ミス・ロングビルが出かけるから護衛を頼まれたのよ」
「学院長の秘書の?なんで?」
「いつもお世話になってるからって…あいつ、あの人に文字を教えてもらってるの」
「なーんか怪しくない?ねぇ、タバサ。貴方はどう思う?」
「別に」
いつも通り感情の無い声で答え、タバサは手に持った本を読みだした。
「もう、素直じゃないんだから…」
「なにが怪しいのよ…言っとくけどね、ミス・ロングビルはモット伯に招待」
「おや?イクローはどうしたんだいルイズ?」
言い返そうとするルイズに、今度はギーシュが話しかけてきた。勿論その横には、何時ものようにモンモランシーが控えている。
「なによあんたまで…っていうか、前から気になったてたんだけど、なんで貴方なにかとイクローを気にしてるの?」
「そう言えばそうね。貴方が女の子以外を気にするなんて珍しいじゃない。
 もしかして…モンモランシーがいつも引っ付くようになったから、今度は男にでも鞍替えを…イクロー結構いい男だし」

「へ、へんなこと言わないでよツェルプストー!そんな…ち、違うわよね?」
「そんなわけないじゃないかモンモランシー!ぼ、僕が愛するのは世の美しい女性全てであって、間違っても男なんて」
「美しい女性………全て?」
底冷えするモンモランシーの声に、みるみるうちにギーシュの顔が青くなる。
「い、いや違うんだモンモランシー…その、美しい花は誰にでも感動を与えるだろ?
 僕にとって女性はそういう存在であって、でも君だけはほかと比べようのない、
 この世で一番の」
「で、貴方は2番以降の花をどうするつもりなの?」
「えーと…」
二人のやり取りを見ながら、キュルケが溜息をつく。
「嫌ね、自分に自信のない女って…」
小さな声で言ったのだが、モンモランシーはその言葉を聞き逃さなかった。
「…貴方、今なんて言ったの?」
ひぃ、とあまりの迫力にギーシュが悲鳴をあげるが、当のキュルケは涼しい顔でその視線を受け止めている。
「あら、聞こえちゃった?そうね、男をつなぎ止める自信がないってのは、自分に魅力がないって言ってるのと同じじゃなくて?」
「なんですってええええ!」
「モンモランシー落ち着いて!キュルケ、もうちょっとこういい方ってものが…」
必死になってモンモランシーをなだめようとするギーシュだが、一方のキュルケはからかう気満々でニヤニヤして、モンモランシーの怒りを煽っている。
「違うの?じゃあなんで貴方決闘の時から、四六時中ギーシュと一緒なのよ?」
「へ?」
その言葉に途端に真っ赤になって、モジモジしだすモンモランシー。
「えーと、そ、それは…」
「ど、どうしたんだいモンモランシー?」
「あら?そんな反応されると気になるじゃない」
「え?何々?」
「………」
ルイズはおろか、タバサまでも本から視線を外し、モンモンランシーを見る。

「そ、そんなことより、なんでギーシュがあいつを気にしてるのかって事でしょ!」
「えー、別に良いじゃない?」
「ほら、ギーシュ!さっさと言いなさい!」
「わ、わかったよモンモランシー」
ギーシュも気にならないではなかったが、愛しいモンモランシーの頼みなので、素直に話し出す。
「その…まあなんだ、経過はどうあれ、僕は彼に助けられたじゃないか?」
「それに恩を感じたの?」
ルイズがいまいち納得の行かない顔をして、疑問の声をあげる。
「うーん、そこら辺はいまいちはっきりしないと言うか…いや、そうかな?」
「何よそれ?」
今度はモンモランシーが呆れた声をあげる。
「とにかくそれもあるんだけど…なんというか、僕は衝撃を受けたんだよ」
うんうんと頷いてギーシュが続ける。
「その…僕はこれまで、極端な話、凄いメイジになれば、立派な貴族になれると思ってたんだ」
「なんというか…本当に極論ね」
キュルケの言葉に相槌を打ちながら続ける。
「うん、けどやっぱり優秀な魔法使いにならないと出世とかは…
 グラモン家の名を汚さないためにも、ちゃんとした役職につかないと」
ルイズが頷く。彼女自身誰よりも立派な貴族足らんとして、日夜魔法を使えるように努力をしているのだ。ギーシュの考えはよくわかる。
「でも貴方元帥の息子なんでしょ?口を利いてもらえれば、それなりの役職に つけそうなものだけど?」
その言葉にキョトンとなるギーシュ。
「そんなの、僕の力じゃないじゃないか?それじゃ立派な貴族なんて言えないよ。
 それに…そんな情けない貴族じゃ、モンモランシーも嫌だろ?」
「ギーシュ…私の為に…」
「当たり前じゃないか、モンモランシー…」


「…それはいいから話を続けなさいよ」
いまにも抱き合いそうな二人に、ルイズがうんざりした顔を向ける。
「あ、うん…えっと、つまりだ、とにかく強い力を持てば、それだけ国にも奉仕できるし、上を目指す事も出来る。けど、彼はあれだけの力をもってるのに平民を助けようとするし、決闘を挑んだ僕の命まで救った…
 そりゃ、死にそうになったのは彼にやられたからだけど、それ以前に僕は彼に 手加減無しの攻撃をしてるし…とにかく、それだけ凄いのに威張りもしなければ、力をひけらかそうともしないじゃないか?
 それでだ、僕はその…彼に感銘を受けたと言うか、好意を感じたというか…」
ルイズとモンモランシーが、いまいち要領を得ないと言う顔をしている中、半ば呆れた顔でキュルケが口を開いた。
「つまり…貴方イクローと友達になりたいんでしょ?」
「「へ?」」
ルイズとモンモランシーの声がハモった。
「う、うん。まあ友達と言うか、仲良くしたいと言うか…
 でも、決闘の事を思い出すと、どことなく気まずいし。だからちょっとずつって」
「女の子には積極的なのにねぇ…にしても、以外に真面目だったり、貴方アタシが思ってたより面白い男だったのね」
珍しくキュルケが感心した声を出す。
「な、なによ面白い男って…」
「良い男って意味よ。よかったわね、モンモランシー」
「はっはっはっ、そんな事言われると照れるじゃないか。ね、モンモランシー?」
「もう、すぐに調子に乗るんだから…」
「さて、それは良いとして…
 次はモンモランシーがギーシュといつも一緒にいる理由を聞かないとね」
先程からかおうとした時と同じように、ニヤニヤ笑ってモンモランシーの方を向く。

「な、なんでそうなるのよ!?」
「そうね、是非聞かせてもらわなきゃ」
「る、ルイズ?べ、別に良いじゃない!」
「興味深い」
「タバサ、貴方まで!?」
「でも、僕も話したんだから、君も話してくれると嬉しいなぁ」
四人の視線に、さすがのモンモランシーも観念した。
「…ああもう,
分かったわよ!話せばいいんでしょ!」
半分ヤケクソ気味にそう叫ぶが、いざその時になると、途端にモンモランシーは顔を真っ赤にして、小さな声になる。
「えっと…あの決闘の時、ギーシュがあんな目にあってから、また何かあったらって考えるようになったのよ………そしたら、一緒にいないと不安になって…
 そりゃ、私の水魔法じゃまだまだだけど、あれからもっとちゃんと勉強もして、
 水の秘薬もなるべく持ち歩くようにしてるし…と、とにかくそういう事なの!」
「ああ、モンモランシー!そこまで僕のことを想ってくれたなんて!」
感激に震えるギーシュに、さらに顔を赤くして慌てるモンモランシー。
「か、勘違いしないでよ!ああなったのは、私がギーシュをけしかけたからだし…」
「モンモランシー…愛しい君の優しさに触れられる、それだけで僕は幸せなんだ」
「ギーシュ…」
互いに見つめあい、完全に二人だけの世界に入ってるギーシュとモンモランシー。
「まあ、今日は食べ終わった後だからまだ良かったわ…」
「ほらタバサ、よく見て勉強しておきなさいよ?」
「必要ない」

マリコルヌが、ギーシュとモンモランシーのあまりのストロべリっぷりに、思わず殺意の波動に目覚めそうになっている頃、
「モット伯…やはりトライアングルメイジを打ち破ったと言う事実は、彼にとって
 かなり価値があるようなので、もう少し出していただかないと…」
「う、うむ…しかしちゃんと黙っていてくれるんだろうな?」
「それはもう、モット伯と全面的に敵対するよりかは、お金で解決する方が特だと私からもよく言っておきますから」
「では頼みますぞ、ミス・ロングビル」

「どうですか、ロングビルさん?」
「もう少し待っていてください…下手に話をつけると、後で気が変わって、シエスタさんやイクロー君に危害を加えようとするかも知れませんし」
「本当にすいません、ロングビルさん…」
「いいんですよ。無事だったとはいえ、イクロー君を危ない目にあわせたんですし」
「そんな、お礼を言うのは僕のほうですよ!貴方がいなければ、シエスタさんを助ける事が出来たかどうか…デルフもそう思うだろ?」
「ウン、ソウダネ」
「………シエスタさん…ね」
「え?何か言いましたか?」
「い、いえ…それではもう一度交渉してきますので」

ミス・ロングビルは、モット伯と育郎の間をいったり来たりしながら、更なる戦利品の確保に全力を傾けていた。

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