ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-25

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匿名ユーザー

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なんとか決闘のやり直しにこぎつけたモット伯だが、その心は重く沈んでいた。
まず勝っても負けても、あのおっぱいメイドを手放さなければならないのだ。
ミス・ロングビルが立会人としている以上、この男を殺しても、約束を無かった事に
することは出来ない。
さらにはもし、この平民に負けでもしたら…
その話が広がれば、貴族としての名誉が地に堕ちるどころの話ではないだろう。

にしてもこいつ…危ない秘薬でも使っているのか?

先程のこの平民の速さは尋常ではなかった。
さらにここは食堂だが、決闘を行うという事で、机や椅子を片付けるよう命じた
おかげで、障害物になるような物はほとんどない。本来ならこちらが有利に
なりそうな状況なのだが、下手に魔法を避けられでもしたら、次の瞬間自分の杖が、
先程と同じように弾き飛ばされかねない。

癪に障るが、本気になる必要があるようだな!
この私の名誉と!そしてめぐるめくおっぱい性活の為にッ!

理由はどうあれ、トライアングルメイジ、波濤のモットはその力の全てを使い、
眼前の敵を倒す事を誓ったのだッ!

「相棒、狒々親爺がいっぱしのいくさ人の顔になりやがったぜ…」
デルフの言葉通り、モット伯の雰囲気が変わった事に育郎は気付く。
「わかった、気をつける…」
油断していないのなら、先程のように奇襲は通用しないだろう。
「それでは二人とも、用意はいいですね?」
部屋の端と端に立った育郎とモット伯が互いに頷き、杖と剣をそれぞれ引き抜く。
それにあわせてミス・ロングビルは巻き込まれないよう、部屋の隅に向かう。
「始めてください!」
その声と供に、育郎がモット伯に向かって走る。
先程とは違い距離があり、相手も警戒しているので奇襲とは行かないだろうが、
もとより離れた相手への攻撃方法があるわけではない。相手の攻撃魔法を避け、
次の魔法を行う前に杖を叩き落す、育郎はまさしく先程モット伯が警戒した
通りの戦法を取ろうとした。しかし
「なんだって!?」
突如モット伯の手前に水の壁が現れ、育郎が思わず立ち止まる。

よし、立ち止まってくれた…

モット伯が心の中で安堵の声をあげる。
実はこの水の壁はあまり厚くない。火の系統の魔法なら大抵のものは防げるだけの
魔力は込めてあるが、物理攻撃には対してはそれほど強い防御効果は無いのだ。
大人一人の突進で十分に突き破れるだろう。だがこの平民、見たところそれほど
戦いになれているようには見えない、この事に気付かない可能性は十分あると
モット伯は考えたのだ。
「『波濤』のモットの真髄、とくと見るがよい!」
叫びと供にモット伯が杖を振ると、水の壁が崩れ、生き物の如く蠢く蛇にも似た
水流を作り出し、己の傍らに控えさせる。
「ゆけ!」
モット伯の命に応じ、水が一直線に育郎に向かって飛んでゆく。
「相棒!俺でぶったぎっちまえ!!」
どこか嬉しそうなデルフの声に従い剣を振る、しかし

剣が振り下ろされる前に、水流は2つに別れ、そのまま育郎の背後でもう一度一つに
つながり、水流は育郎を中心とした円を描いた。
「チェックメイトだ!」
その声を合図に、円となった水流が、育郎を捕らえるべく急激に縮まった。
「何だと!?」
今度はモット伯が驚愕の声をあげ、天上を見やる。
水流が育郎を捕らえるかと思われたその瞬間、育郎は飛び上がり、そのまま天上に
備え付けられたシャンデリアに捕まったのだ。
「危なかった…」
「安心するのはまだ早いみたいだぜ、相棒!」
シャンデリアにぶら下がった育郎に向けて、再び水流が襲い掛かる、しかし紙一重で
それをかわし、床に降り立った。
「まいったな…」
「ああ、あのおっさん、おもったより…やる!」
デルフの声を聞きながらも襲い掛かる水流を避ける。そのままモット伯に接近
しようとするが、そうはさせじと、避けた水流がすぐに後ろから襲い掛かろうと
するため、なかなか攻勢に移れない。しかもモット伯は先程から水流を操る魔法しか
使っていないため、魔力を温存したまま戦っているのだ。
「持久戦もきつそうだな、段々良い攻めなってやがる…」
しゃがんで背後からの水流を避けた育郎に、デルフリンガーが声をかける。
「ああ、それにさっきみたいに動きを『変化』されるかもしれない」
立つ間もなく襲い掛かる水流を転がって避け、その勢いを利用して起き上がる。

にしても野郎…俺様に斬られない様に水を操ってやがる…
口に出して言ったのはやっぱまずかったかなー?

さすがにデルフの能力に気付いているわけではないが、デルフの声に何かあると
感じたモット伯は、攻撃する時は、なるべく剣から離れた場所を狙っている。
故に一見モット伯が優勢に見える状態になっていた、だが


思ったよりしぶとい!
だが焦るわけにはいかん!
『急いては胸を揉み損じる』!
オールド・オスマンもそう言っていたではないか!

モット伯は自分がそれほど有利だとは考えていなかった。
そもそも相手は自分の剣と会話をするほど余裕があるのだ。勝利を焦り、攻撃を
雑にするわけにはいかない。確実な勝利の為に、もう少し時間を稼ぐ必要がある。
そう考えながら水流を操っていると、後ろからの水流を避けた育郎が、方向を
変じようとする水流に向かって跳びかかる。剣で斬られると警戒したモット伯は、
水流に方向変換を命じる。
「しまった!」
しかし、そのまま育郎は水流自体にぶち当たりにいった!
自分に向かって水流が襲い掛かるのでないなら、そのまま突っ切る事が出来る。
その考えは正しく、水は育郎の体当たりによって半分ほどはじけぶ。
「もらった!」
勢いを殺さず、そのままモット伯に迫る。しかしその時、窮地に立たされた筈の
モット伯が、顔に僅かな笑みが浮かべて杖を振る。
「いや、礼を言わせて貰おう。時間を稼ぐ必要もなくなったよ!」
「相棒、下だ!」
「何だって!?」
足元から突如現れた氷の槍が、顔面に向けて飛んでくるのを何とか避ける。
「ありがとうデルフ」
「いいって事よ。にしてもどういう事だ?今のはウィンディアイシクル!
 あれだけ離れた場所に氷の槍を作り出すなんざ、トライアングルにゃ…」
デルフの疑問にモット伯が勝利を確信した声で答える。
「足元を良く見ることだ」
「うう、こ…これは…ッ!」
見れば何時の間にか、水がそこかしこに散らばっているでは無いか。どれも普通なら
すぐに絨毯に染み込んでしまいそうな程の量でしかないと言うのに。

「気付かなかったのか?私の操る水が少しずつ小さくなっていた事を…
 そうだ、攻撃しながらばら撒いておいたのだよ、私の魔力が込められた水を!
 そしてッ!
 お前の突撃によりさらに水がちらばった事で、私の勝利が決定した…」
目の前に光景に、育郎の顔が青くなる。
モット伯が杖を振ると、ちらばった無数の水滴が一斉に氷の槍へと姿を変えたのだ。
「さて、お前がすばやいと言っても、これだけの攻撃をはたして避けられるかな?」

どうする!?
これだけの数、全てを避ける事はできない!デルフで切り払うのも無理だ!

自分の周りを囲む氷槍を見回すと、育郎の目にあるものが映った。

そうだ!しかし間に合うか!?
いや、やるんだッ!やるしかないッ!

「逃げても無駄だッ!」
先程のように、シャンデリアにむかって飛び上がった育郎に向けて、モット伯が
生み出した氷の槍全てを発射する。
「盾にでもするつもりか?しかしこれだけの数、全てを防ぐ事はかなわんぞッ!」
モット伯が叫んだ次の瞬間、全ての氷の槍が育郎に襲い掛かり、ミス・ロングビルが
誰にも気付かれずに小さくガッツポーズをとった。


「なんだと!?そんな馬鹿な!」
モット伯が驚愕の声をあげる。
所々服が切り裂かれている場所はあったが、天井からぶらさがる育郎には目立った
傷は無かった。しかしそれだけではない、育郎の右手にデルフの代わりに握られていた
ものこそ、モット伯が最も驚かされたものだった。
それはシャンデリアだった。
そう、根元からへし折ったシャンデリアで、育郎は氷槍を全て叩き落としたのだッ!
育郎は右手一本でシャンデリアを振り回し、そして左手一本でそれを支えていた器具
をつかみ、自分の体重とシャンデリアを支えているのだ。
「嘘だ…そんな…」
モット伯床にへたり込む。先程の魔法で精神力は全て使ってしまった。
もう自分には戦う術は無い。
「ま、まいった!」
シャンデリアを手から離し、床に降り立った育郎にモット伯爵は降参の声をあげた。

「すまないデルフ」
床に落ちたデルフをひろいながら、声をかける育郎。
「イインダヨアイボウ。キニスンナ、オレハダイジョウブダカラ」
「で、デルフ?」
「ウン、ダイジョウブ。キットツギガアルサ」
「次?」
「アイボウハキニシナクテモイイヨ。ホント、ナンデモナイカラ」
「そ、そうかい?」
「ウン、ナンデモナインダ。ハハハハハハハハハ」


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