ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-10

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匿名ユーザー

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頭に血が上っていたルイズは、疲弊と共に冷静さを取り戻していた。
が、拷問が質問にまで軽減されているもののそれはいまだ続いている。

「じゃあ、本当に襲ったり口説いたりしてたわけじゃないのね?」
「ずっとそう言ってるだろうがよおー。」
セッコが疲れ切った返事をした。まあ多分本当なんだろう。
「わかったわかった、もうそれはいいわ、でもね。」
「うん」
「そんな重要な能力を何で隠してたのよ!」
「かかか隠してねえ、フーケと戦闘中に思い出したんだって!」
「それにしたって半日以上たってるわよね。」
「昨日のどのタイミングで言えってんだよ!踊ってる途中にでも囁けってか!」
「じゃあ何でタバサとオールド・オスマンには教えてんのよ!」
「それは事情がああ」
「やっぱ隠してんじゃないの。」
「違う、向こうから聞かれたんだって!」
「違わない!」

朝。

「なあ、デルフリンガーよお」
繋ぐ鎖を丸めては伸ばす遊びを繰り返しつつ、現在唯一の話し相手に顔を向ける。
「なんでい、相棒。」
「今回オレって悪くねえよな?」
「いーや、まあ9割は相棒のせいだろ。俺様の経験からするとな。」
結局セッコは一晩中小言に付き合わされた挙句、丸一日の謹慎と非常時以外の“能力”使用禁止を命令され、ベッドに首輪で留められて部屋に置いていかれたのだった。
「勘違いだってのに」
「それが良くねえ。」
「そうかあ」

ちょっと、大人気なかったかしらね・・・
よく考えたら、セッコはあんまり悪くないような気もしてきた。いまさら後には引けないけど。

目の前では、「大人気ない教師No.1」のミスタ・ギトーが風魔法最強論を延々とリピートしている。
伝説の「虚無」はともかく、土水火風全てまともに使えないルイズにしてみれば、
それらはどれも均等にウラヤマシイ存在であり、そこに優劣などない。
キュルケが伸されているのはちょっと爽快なのだが、
ギトーはキュルケに輪をかけて不愉快なのであまり喜べない。
と、いきなり教室の扉が開き、誰かが現れた。

「ねえ、ギーシュ。あれ、何だと思う?」
「ミスタ・コルベールだよ。僕の愛しいモンモランシー」
「よく見ると、そうね」

彼はあまりにも珍妙な格好をしていた。
頭に馬鹿でかいロールのついた金髪のかつらをのっけ、
全身フリルや刺繍だらけのローブを纏っている。

「…ミスタ?」
同僚であるギトーすら眉をひそめた。
「あややや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!」
「授業中です」
コルベール?をにらんで、ギトーが短く言った。

「おほん。そのことなんですがね、今日の授業は全て中止であります!」
「は?」
驚くギトーとわきあがる歓声を全く無視し、コルベールは言葉を続けた。
「えー、皆さんにお知らせですぞ。」
しかし、もったいぶってのけぞった拍子に、馬鹿でかいかつらが取れて、床に落っこちてしまった。
首から上の大きさが一気に1/4ほどになり、その下から光り輝く禿頭が現れる。

それをボーっと見ていたタバサがぽつんと呟いた。
「滑りやすい」
教室が爆笑に包まれる。
コルベールは当然というべきか、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「黙りなさい!ええい!黙りなさいこわっぱどもが!
大口を開けて下品に笑うとは全く貴族にあるまじき行い!
貴族はおかしいときは下を向いてこっそり笑うものですぞ!
これでは王室に教育の成果が疑われる!」

笑ったこと自体に対して怒っているわけではないあたり、自分の姿かたちは理解しているようだ。

教室が静かになったところでコルベールは再び喋り始めた。
「えーおほん、恐れ多くも先の陛下の忘れ形見、
我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、
アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」
再び皆がざわめいた。
「したがって、粗相があってはいけません。
急なことですが、今から全力を上げて、歓迎式典の準備を行います。
そのため本日の授業は中止。生徒諸君は門に整列すること」

丸一日外出禁止とか暇過ぎるぜ。
つか飯も食えてねえ。

「鎖で遊ぶのも飽きたあ、面白い話でもしろデルフリンガー。」
「剣に面白さを求めるんじゃねえ」
「使えねーなあ。それにしても鎖につながれるってのは嫌な気分だぜ」
「相棒のパワーならそんなもん一瞬で引きちぎれるんじゃねえの?」
「なんとなくやったらダメな気がするんだよお。」
「使い魔って因果なもんだな」
サビ剣との無駄話で時間を潰すのもそろそろ限界だ。

あれ?ルイズの呼び声がする。
その直後、慌てて部屋に入ってきた。何があったんだあ?
「もう授業終わったのか、随分早くねえ?」
「そんなこと今はどうでもいいのよ、セッコ」
「うあ?」
「反省している?」
「してる。」
「本当に?」
「うん、うん。」
「怪しいわね、まあいいわ。ちょっと鎖外してついてきなさい。」
前から思ってたが随分適当な奴だなあ。外に出れるならいいけどよ。
「なんかあんの?」
「いいからついてきなさい。後、大声出したらダメよ。」
「わかった。」

「なんだこりゃ」

正門前に全員が綺麗に並んでいやがる。校長先生もといヒゲまでいる。
「いいから大人しくしてなさい、もうじき王女様が来られるのよ。」
「王女ってなんかのついでに学校に寄るような奴なのかあ?」
「うるさいわね、黙って見てなさい」
もしかしてここはすげー名門なのか?
そういやあどいつもこいつも貴族とか何とか言ってたなあ。

「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーリーッ!」
謎の動物に乗った騎兵を四方に従えた2台の馬車のうちの一つから、
杖を持ち冠を被った少女が現れた。
王女がにっこりと微笑み、手を振る。

「あれがトリステインの王女?ふん、あたしの方が美人じゃないの。」
いつの間にか隣にいたキュルケが、つまらなそうに呟いた。

ちょっと2人を見比べてみる。

      • それは微妙じゃねえか?

あれが王女ねえ。
「なールイズ」
反応がねえ。
「なー」
反応がねえ。
「キュルケー」
反応がねえ。こいつら何を見てるんだ?まさか王女じゃねえよなあ。
キュルケとルイズの視線の先を確かめる。

そこには、ライオンの胴体に鳥の頭がついた珍獣に乗って、でっかい羽帽子を被った貴族がいた。
貴族基準のかっこよさは理解できねえ。
しかしルイズも一目惚れなんてすんのか、ちょっと意外だ。

つーか俺の疑問に誰か答えてくれえ。誰か。
ちらりと斜め前にいるギーシュを見る。
王女を見ながら涙を流してやがる。これもだめだあ。
ん?

よく見ると、タバサがキュルケの足元に座って本を読んでいた。
「なー」
反応がねえ。本に夢中だ。
「タバサよお」
「何」
やっと気づいた。
「ちょっと素朴な疑問があるんだが答えてくれねーか。」
「いいけど」
「王女様ってさあ、杖持ってたけど自ら戦ったりすんの?」
タバサの表情が微妙に歪んだ。
「知らない」
おあ、オレなんか悪いこと聞いたかあ?

その夜。

「ルイズー」
「…」

あれから何を話しかけても反応がないルイズに絶望したセッコは、
諦めて部屋の隅に寝転がっていた。

「なあ、これもオレが悪いのか?」
返事がねえ、剣すらオレを無視・・・うう・・・

あ、鞘にしまえって言われて片付けたの、オレじゃねえか。
今日はもうダメだ、諦めて寝ちまおう。あれ、微妙な足音がする。
コツ・・・コツ・・・コ・・・

まだ、そおっと歩くような時間じゃねえよな?
足音は、なんとルイズの部屋の前で止まった。
「なールイズ」
「…」
「お客さんみたいだぜ」
「…」

くそ、もう耐えれねえ、後で怒られようがこの沈黙から逃げ出してやる。
デルフリンガーを掴んで窓から身を乗り出したところで、ノックの音が聞こえてきた。

コン、コン、 コココン

ルイズがいきなり正気に戻り、そして。
「セッコ、窓閉めて隅っこでじっとしてなさい。」
「うー」
畜生、さっきまで何しても反応なかったくせによお。

そういいつつルイズがドアを開けると、黒ずくめの女が部屋に滑り込んできた。
「…あなたは?」

女がそれには答えず、何かを唱えると光の粉が部屋に舞った。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
なんだこいつ?敵、じゃあねえよな。
女が頭巾を取った。
ああ?この顔は確か・・・

「姫殿下!」
言うが早いか、ルイズが膝をつく。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」

王女様がこっそり来るなんて、絶対にいい知らせのわけがねえ。
朝から晩まで最悪続きだ。もうなるようになりやがれ。
セッコは、頭を抱えてうずくまった。




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