ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのパーティ-19

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
――――――――――――――――――――――――――――――――――

帰る手がかりの一つもつかめぬまま、既にこちらに来て一週間が過ぎた。
一週間もすれば、不本意ながらもこちらの生活にも慣れてくる。
朝起きて、才人共にルイズを起こし、才人が着替えさせている間に、僕が洗い物を済ませる。
僕はスタンドを使えば、いちいち水くみ場まで降りる必要もないので、適任であるのは事実だが、コレには理由がある。

はじめは交代交代で洗濯を行う予定であったが、才人がパンツの紐を切ったのがばれ、洗濯は僕が一手に担うこととなったのだ。
ちなみにこの事で、才人は一週間のご飯抜き、僕も止めなかったということで、五日のご飯抜きを宣告された。
もっともそんなことをされても、ルイズの朝食中に厨房でご飯を貰うので、全く関係がないのだが。

しかし衣食住の、住しか面倒を見ていない、しかもその住ですら怪しいのに、「ご主人様」と呼べ、敬いが足りないとは、理不尽甚だしい。僕のルイズ株は下がりに下がって、既に上場廃止状態だ。

そういう事で僕らは自然と、厨房との親交、つまりはマルトーさん達コックや、シエスタ達メイドとの親交が深まっていくのだが。
既に厨房に来る一通りの人間には、顔を覚えて貰っている状態だ。
一部の人間とは、仲良く会話を交わせるまでに至っている。


食事の後は、才人はルイズと共に授業へと、僕は血管針カルテットと共に衛兵として、見回りに当たる。
見回りといっても、侵入者に備えるなどではなく、生徒同士のもめごとの報告、出来るのならばその場を押さえる事や、魔法関係以外の備品の整理、人手が足りない所の手伝い、貴族の使いっ走りが主な仕事内容だ。

そのため貴族と接触する機会が多く、しかも殆どの貴族が高慢不遜な奴ばかりなので、極めてストレスが溜まる。
御陰でもめごとの仲裁にはつい力が入って、スタンド大活躍だ。何回貴族に向けて、『エメラルド・スプラッシュ』を放ったことか。
衛兵の仕事が再会して早三日目で、僕の前でもめごとを起こしたり、面と向かって罵倒するものは、ほぼ皆無となった。

さて、衛兵の仕事が終われば、僕も才人と同じように、ルイズの世話に戻る。
この時間が、一番トラブルに巻き込まれやすい時間だ。
この間は衛兵の仕事をしている時と違い、貴族に手を出せば、以前と同じく謹慎処分を受ける。
それを知ってか、ここぞとばかりに嫌がらせをしてくる。
もっともそういうことをする、臆病者の嫌がらせなんて、大したことのない罵倒程度なのだが。
適当にデルフリンガーを持った才人をけしかければ、あっという間に大人しくなる。
表向きな立場を持たない才人は、僕と違って、倒しても咎められることもないからな。

こちらに来て一週間。既に僕の平穏を乱す相手はルイズ、才人、そしてキュルケの三人のみだ。
ルイズは言わずもがな、あの癇癪持ちの自称ご主人様にかなう相手はいない。
才人は非常に優秀なトラブルメーカーだ。たいていの場合、僕まで連座で罰を受けるので、迷惑きわまりない。

この二人に比べれば、ルイズと混ぜない限り、たいした問題にならないキュルケは一段落ちる、はずだったのだが、最近になって、一つ問題が出てきた。
キュルケが才人に対して誘惑を敢行した事だ。
七股に挑戦するとは、見上げた根性だと思う。
変節をする人間は嫌いだが、ここまで来ると嫌おうという気すら起きず、返ってほほえましく感じる。
いや、そもそも変節しているわけではないな。一応、『微熱』とやらの二つ名の筋は通しているのか。
多分、相手も火遊び程度で、本気で誘惑するつもりは無いようにも思うのだが、どうか。

それはともかく、この劣悪な上、慣れない状況で、僕らが持ったのは一週間持ったのはやはり一重に、お風呂という存在があったからであろう。

お風呂は心の洗濯とは、誰が言い出したのか。
この異世界に於いて、この言葉は、非常に実感できる重みがあった。
そのため、お風呂のコンディションは常に万全を期しておかなければならない。
特に、放っておけば崩れてくる竈の整備などは、絶対に欠かしてはいけない。

本日の分の仕事を終えた僕は、今日もいつものように竈の様子を見に行った。
その途上、広場で思いがけない人影を見る。

「あれは……」
「よしよし、ヴェルダンテ。君はいつ見ても可愛いね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」

あの金髪。気取った雰囲気。間違いない、ギーシュだ。
だが、よく見れば何か、そのギーシュに抱えられて、大きな影がもう一つ。
こちらからはよく見えないが、サイズは小熊ぐらいはある。いったい何だろうか。

僕は後ろから息を潜めて、気付かれぬよう慎重に、ギーシュへと近づいた。

影の正体は巨大な土竜であった。
その土竜はギーシュの言葉に、鼻をモグモグとひくつかせている。
どうやらコレがギーシュの使い魔らしい。
僕はその姿をよく観察する。

「そうかい、そりゃよかった!」

成る程、くるくるとした目、綺麗な毛並み、可愛らしいという形容詞も、間違いではないように思う。
しかしながら、その土竜に頬ずりをするギーシュの様は、僕には非常に滑稽なものにしか見えない。
ともかく僕はギーシュに用があるので、土竜と離れるタイミングを狙って、後ろから声をかける。

「ギーシュ」
「誰だい? 僕を呼ぶの……は……」

あの決闘の日以来、ギーシュは僕の顔を見ると一目散に逃げ出すため、半径10m内に入れた試しがない。
だが、今の僕とギーシュの距離は1mもない。
ギーシュは僕の接近を許したことで、バカみたいにポカンと口を開ける。
そして状況を認識するや否や、いつも通り、脱兎の如く逃げ出した。


しかし、今回は逃がすわけには行かない。
僕はスタンドで、ギーシュの身体を一瞬にして縛り上げる。

「う、動けない!」
「そんなゲロ吐くぐらい怖がらなくても良いじゃないですか。何もしませんよ、安心してください」
「う、嘘だ。僕は騙されないぞっ!」

参ったな。ギーシュは完全におびえきった目でこちらを見ている。
少し、決闘の時にボコボコにしすぎたのかもしれない。

「だ、誰か助けっ……むがっ!」
「静かにしてください」
「むー! むー!」

騒がれてはマズイので、スタンドを猿ぐつわ代わりにして、ギーシュを黙らせる。
僕は仕方なく、ギーシュが落ち着くまで待つことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「本当に、危害を加えるつもりはないのかい?」
「ええ。そちらから何もしてこない限りは」
「わかったよ」

10分程して、ようやくギーシュは騒ぐのを止め、僕の話に耳を傾け出した。
これで、ようやく会話が出来るのか。


「それで、一体何の用なんだい?」

とはいえ、まだ少々警戒しているようだ。
ギーシュは何を考えているのか探りを入れる目で、こちらを見ている。
この状態で、いきなりお願いを切り出す訳にもいかない。

僕は無難に、先程の使い魔らしき土竜の話を切り出すことにした。

「いえ、あなたが土竜と戯れていましたので、何事かと思いまして」
「土竜? ああ、僕の使い魔のヴェルダンテの事かい?」

多少だが、ギーシュの表情が和らいだ。
この話題を切り出したのは正解かもしれない。

「ヴェルダンテというんですか。凄く可愛らしいですね」
「君もそう思うのかい!」

この後、ギーシュによる20分にも渡る使い魔自慢が繰り広げられると解っていれば、僕はこんな事を切り出そうとは思わなかっただろう。

「ヴェルダンテが…… ヴェルダンテは…… ヴェルダンテ。ああ、ヴェルダンテ、ヴェルダンテ……」

既に何回、ヴェルダンテという言葉を聞いただろうか?
学校では優等生として振る舞っていたので、形だけではあるが、人の話を聞くのはうまいと思う。
その僕が、心の底から止めてくれ、と思ったのだ。
もはや、語るには及ばないだろう。

「……というわけなのさ。どうだい、凄いだろう?」
「……ええ、本当に」

僕はよく耐えました。と続けたい所をぐっと我慢し、大きく息をつく。
まぁ、それだけ耐えたこともあって、ギーシュの僕に対する警戒心は、今は殆ど感じられない。


「ああ、済まないね、長々と話してしまったよ。っと、そういえば君はどうしてこんな所にいるんだい?」

「あちらにある、お風呂を修繕しようと思いまして」

そういって僕は広場の角の、僕と才人で制作した風呂場を指さす。
とはいっても巨大な鍋と、土で出来た竈に、申し訳程度の衝立があるだけなのだが。
ギーシュは興味深そうに、それをまじまじと眺める。

「平民も水の張ったお風呂につかるのかい?」
「いえ、コレは五右衛門風呂といいまして、僕や才人の故郷のお風呂です」
「へぇ、君たちの故郷は、その服装といい、随分変わったところなんだな」

ギーシュは特に、それ以上聞こうとせず、作ったお風呂をまじまじと見ている。
が、やがて興味を失ったのか、再び僕の方へと向き直った。
と、今度は僕の制服のポケットの辺りをじーっと見ている。
確か今、ポケットの中には石けんの香りつけに使おうと思っている、ムラサキヨモギが入っていたな。
ギーシュはいったん口元に手を当て、改めて僕のポケットを指さしていう。

「それはムラサキヨモギの葉かい? できればいくつか譲って欲しいんだが」
「これを、ですか?」
「ああ、代金は払うよ。そのポケットに入っている、半分ぐらいの量で良いんだ」

コレは思いがけない交換材料が出来た。
正直、どうやって頼もうかと思っていた所だ。
これならば僕の方からも切り出しやすい。


「お金はいりませんが、代わりにこの竈を、青銅に錬金してもらえますか?」
「それでいいのかい? なら、おやすい御用さ」

そういってギーシュは、ポケットから薔薇の造花を抜いて、短くルーンを唱える。
すると土の竈は見る見るうちに、赤銅色へと染まっていく。
ものの数秒で、竈は見事な青銅製へと変化した。

僕は改めて見るその魔法の便利さに、素直に感嘆の声をあげる。
スタンド能力には余りそういうものはないからな。
ギーシュはその声を聞いて、得意げに鼻を鳴らす。


「それでは、コレを」
「ああ、確かに貰ったよ」

僕は約束通り、右ポケットの方に入っていたムラサキヨモギの半分を、ギーシュに手渡した。
ギーシュはそれを受け取って、「これでモンモランシーとの仲直りの材料が出来た」等とつぶやいて、ご機嫌な様子で校舎の方へと戻っていった。
何に使うつもりかは知らないが、大方、香油か何かを作るつもりだろう。

それはともかく、これで竈に関しては問題ないだろう。
となれば、後はもう一つの予定である石けん造りだ。
本当であれば、先に石けんをつくってから、才人が来るのを待って竈の修繕を行うつもりだったが、ギーシュとあったことで、この分ならば、才人が来る前に終わらせられそうである。

僕は早速、調理場で貰った海草の灰と廃品の鍋、植物性の油、そしてムラサキヨモギを使って、石けん造りへと取りかかるのだった。

To be contenued……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー