ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

L7 meets C-MOON-1

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爆発音が広々とした草原を突き抜ける。
爆発と共に立ち上った土煙が収まると爆発を起こした少女は目を必死に凝らし何かいないかを確認した。
しかしそこには何もいない。
少女はそれを確認すると爆発を起こした呪文をもう一度唱えようとする。
「ミス・ヴァリエール」
しかしそれは黒いローブに身を包んだ中年の男性の言葉によって遮られる。
少女は呪文を中断し呼びかけてきた男性に向き直る。その目には明らかな焦りの色が見えている。
「もうそこまでにしたまえ。もう次の授業が始まってしまうじゃないか」
「もう一度やらせてください!」
男性の言葉に少女はすぐに言葉を返す。
しかし男性は少女の言葉を否定するように首を横に振る。
「言っただろう、授業が始まると。君一人のためにそこまで時間をかけるわけにもいかないんだ。大体そこまで意地にならなくてもいいのではないかね?
儀式は明日でもできるのだから。」
男性がそう言うと少女と男性を遠巻きに見ていた群衆が騒ぎ始める。
「そうだそうだ!ミスタ・コルベールの言う通りだ!」
「っていうか、もう30回も失敗してるじゃないか!」
「すこしは待たされるこっちの身にもなってほしいわ」
「おはようございました」
「やっぱりゼロだな。ここまで失敗したらある意味大したもんだよ」
「さすがはゼロのルイズだ!」
最後の言葉に群衆が大笑いする。
ルイズと呼ばれた少女は拳を握り締める。強く強く握り締める。
「ミスタ・コルベール!あと1回、あと1回だけやらせてください!」
コルベールと呼ばれた男性はその様子を見ながらこっそりため息をつく。
「あと1回やれば納得するんですね?」
「はい!」
「ではあと1回だけですよ。失敗したら今日はそれで終わりです。わかりましたね?」
「ありがとうございます!」
ルイズはコルベールに頭を下げると、目を瞑り意識を集中させはじめた。
それを周りの人間は呆れたような、嘲笑したような、どうでもいいような、面白がるような顔で見ている。
そしてルイズが呪文を唱え始める。
厳しい言葉を言っていながらもコルベールはルイズを見ながら、ルイズがちゃんと儀式を成功するよう願っていた。
やがて呪文は完成し、力が解放され……これまでに無いほど大きな爆発が起こった。
周りの群衆から悲鳴が響き渡る。
しかしルイズはそんなものは全く気にしなかった。自分の服も所々破けていたがそれすら気にしなかった。
ただ舞い上がった土煙が収まるのを待つ。
そして土煙が収まってきた頃、ルイズが目を凝らすと土煙の中に何かが見えた。
きっとあれが自分の使い魔に違いない!
そう確信し土煙の中に飛び込む。体につく土など全く気にならなかった。
『自分が使い魔を召喚した』ただそれだけのことが、ルイズにとっては心を弾ませるのに十分な魅力だったのだ。
さっき見えたものは人影だった。だったらきっと亜人かそれに類するものだろう。きっと強いに違いない!何故なら自分が召喚したのだから!
ルイズはそう思いながら土影の中を手探りで探す。しかしいくら探しても使い魔が見つからない。
一体どこにいるのだろうか。見つからないことによって焦りがまたぶり返してくる。
暫らくして土煙が完全に収まった。
しかしそこには浅いクレーターがあるだけでルイズ以外何もいなかった。ルイズがただ1人だけクレーターの中に突っ立っているだけだった。
「うそ……」
ルイズは呟いた。
たしかに土煙の中に人影を見たはずなのに!
「見ろよ。ルイズの格好。土まみれだぜ!」
「あはははははは!きっとあの中で土遊びでもしてたのよ」
「使い魔も召喚せずに何遊んでんだよ」
「理解は幸せ!」
「服も破けてるし、あんな格好で恥ずかしくないのかよ!」
「ホントにゼロはすげえぜ!あんな爆発俺たちじゃ起こしたくても起こせれねえもんな」
ルイズは周りの嘲笑を聞きながらその場に立ち尽くしていていた。
そこにコルベールが近づいていく。
「ミス・ヴァリエール、もう気が済んだだろう。さあ、教室へ戻ろう。また明日挑戦すればいい」
「……はキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「どうした!?」
コルベールの言葉にルイズが返そうとした瞬間、ルイズが突如悲鳴をあげたのだ。
周りの群衆も何事かとルイズを見詰める。ルイズの悲鳴は長くは続かず、すぐに終わりルイズはその場に膝を突いた。
そして体が倒れそうになったので慌てて両手を目の前に差し出し体を支える。
そのときルイズは自分の左手に見覚えのないものを見つけた。
「大丈夫かね!?」
それと同時にコルベールが隣に屈みこみルイズの肩を揺らす。
「は、はい。もう大丈夫です」
「いったいどうしたというんだね。突然悲鳴をあげて膝を突くなんて」
たしかに普通ではそういったことは殆ど無い。
心配するのは当然だろう。
「それが、突然体中が熱くなったんです。炎に炙られてるみたいな感じで」
「体が?」
「はい。そして手にこんなものが」
ルイズはそう言ってコルベールに自分の左手の甲を見せる。そこには見慣れないルーンが浮き上がっていた。
「ふむ……、珍しいルーンだな」
コルベールがルイズの左手の甲を見ながらそう呟く。
「しかし、なぜこのようなものがミス・ヴァリエールに?」
コルベールはルイズに何故このようなルーンが浮かび上がったのか必死に考えていた。
ルイズはコルベールの頭から放たれる太陽拳から目を守っていた。
やがてコルベールはある一つの可能性にたどり着いた。
「もしかしたらこれは『使い魔のルーン』ではないかね?」
「つ、『使い魔のルーン』!?ど、どうして!?」
「君が言った体の熱は、使い魔に『使い魔のルーン』を刻むときに起こる現象そっくりだし、それが起こった後にルーンが刻まれたのならそう考えざるおえないな」
「そんな!自分に使い魔のルーンが刻まれるなんて聞いたことがありません!」
「たしかに私もそんな例は知らないな」
たしかにルイズの言う通りだとコルベールは思った。
いくらなんでも人に使い魔のルーンが刻まれるなどありあえるのだろうか?
しかも召喚しようとしていた本人にだ。別にルイズに手違いは無かった。それは自分が見ていたので自信を持っていえる。
しょうがない。こうなった以上確かめたほうがいいだろう。
「ミス・ヴァリエール、もう一回やってみるんだ。そうすればわかるはずだ」
「わかりました」
一度使い魔が召喚されれば『サモン・サーヴァント』は召喚した使い魔が死なない限り再び唱えることはできない。
ルイズがサモン・サーヴァントが使えれば全く問題はなくなるのだけど。
そしてルイズは、『サモン・サーヴァント』を使うことができなかった。
ルイズ自身驚愕に目を見開き体を所々震わせている。
そんなルイズを哀れに思いながらコルベールはルイズに話しかける。
「どうやら君自身が使い魔になってしまったようだね」
「うそよ。そんなのうそに決まってるわ」
咽喉がかすれたような声でルイズが呟く。
しかしそんなことを言っても事実は事実なのだ。
「先生、うそでしょう?わたしが、そんな、自分が使い魔になるなんて。ありえないわ。だってそんなの聞いたことないもの。だって」
「ミス・ヴァリエール」
呼びかけた自分の生徒の顔を見る。
その顔は笑っていた。ぎこちなく、認めたくないというように、目に涙を溜めたまま笑っていた。
「厳しいことを言うようだが事実は事実だ。それは認めなくてはならない。あとでこういったことが本当に無かったのか調べておくから……」
「おい!どうやらルイズは自分自身を使い魔にしたみたいだぞ!」
コルベールがルイズを慰めようとしたとき周りの群衆からそんな声が聞こえた。
その言葉に反応したのかルイズの体がびくりと震える。
まずい!
コルベールはそう思った。
普段の彼女なら、あるいはもう暫らくした後の彼女なら大丈夫だっただろう。
しかし今この場で彼女にそういった言葉をぶつけてしまっては、彼女は二度と立ち直れないかもしれない。
慌てて群衆に会話を止めさせようとするが既に遅かった。
「マジかよ!ありえねえって!」
「もうこれじゃあゼロじゃなくてマイナスじゃねえか!」
「自分を使い魔にできるなんて、したくてもできないわよ」
「オレンジじゃないんです……」
「いくらゼロでもそこもでゼロだとは思わなかったぜ」
「頭の中もゼロなんじゃないか?」
「よかったじゃないかルイズ。ちゃんと使い魔が召喚できてさ」
周りの群衆は、ルイズの同級生たちはそういいながら爆笑していた。今更コルベールがなにを言っても彼らの耳には届かないだろう。
コルベールはルイズの様子を見る。ルイズは何も顔を俯かせたまま何も反応しなかった。
コルベールは無駄と分かっていつつも生徒たちに黙るよう呼びかけた。

最初にその変化に気がついたのは一人の生徒だった。
彼は笑いすぎで手に持っていた杖を思わず手放してしまったのだ。
それに気がついた彼は杖を拾おう屈みこむと杖はそこに無かった。
「何だこれ?」
そんな声がして後ろを振り向くと自分の斜め後ろにいた生徒の腰の辺りに自分の杖が張り付いていた。
何故そんな所にあるんだろう?誰かの悪戯か?
「それ俺のだよ。返してくれないか?」
そう思いながら杖を返してくれるように後ろに尋ねた。

周りから自分を嗤う声が聞こえる。
自分のことを好き勝手言いたい放題言っている声が聞こえる。
あいつらは、わたしがどれだけ努力してきたか知っているのだろうか。
魔法が使える者たちの中で一人だけ魔法が使えないということが、どれだけ辛いかわかっているのだろうか。
わかるわけが無い。わかっているはずが無い!だからこうして自分を嗤うことができるのだ。
「あんたたちに……」
小さな声でそう呟く。
失敗しても、嗤わないでほしかった。落胆しないでほしかった。
自分は努力している。毎日毎日魔法が成功するように努力しているのだから。
だから、せめて嗤わないでほしかった。
「あんたたちに何がわかるのよおおおおおおおお!」
心からそう叫び顔を上げた瞬間、周りにいた群衆は水平に落ちていった。




目次         続く

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