ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-7

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匿名ユーザー

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「おい」
 何よ。
「起きろ」
 眠いわ。
「起きなさいよ」
 昨日ほとんど徹夜だったじゃない。
「起きる」
 ああもう……

「あ、おはよう」
 なんだか腰が痛いわ。

「よく眠れたかしら、ヴァリエール」
「なな、なんでキュルケがこんなところにいるのよ」
「ルイズオメー永久に寝てた方がよかったんじゃねえの」
「何訳わかんないこといってるのよ」

 あ、

「ちょ、ちょっとした冗談よ、そろそろフーケの潜伏地点かしら?あはははは」
「「「……」」」
「大物」



「ここからは、徒歩で行きましょう」
 ミス・ロングビルがそういって、全員が馬車から降りた。
 うっそうとした森が広がっている。
「なんか、暗くて怖いわ……幽霊でも出そうじゃない?」
 キュルケが凄くうそ臭い調子で呟いた。
「冗談でもやめて」

「やめろ俺で草を 枝を切るなあー」
「仕方ねーだろお、他に誰も武器もってきてねーんだからよお。文句ならフーケかロングビルに言え」
「なら魔法で何とかしてくれぇー、ウゲッ蟲の体液が刃にいい」
「魔法で無理に道とか開けたら気づかれちゃうわよ」
「そんなああああ」

「おあ?」
 いきなり一行の視界が広がった。
 かなりの広さが整地してあり、真ん中に廃屋、というか山小屋が建っている。
 五人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したままそれを見つめた。

「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
 ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
 人が住んでいる気配は全くない。やはり奇襲が一番だろうか?

「なあー」
 セッコが何か思いついたらしい。
「その[破壊の杖]って、頑丈なもんなのか?」
 ミス・ロングビルが答えた。
「秘宝ならスクウェアの固定化がされてるとは思いますが、それが何か?」
「ならよお、ここから全員で魔法かましてフーケごと消し炭にしようぜぇー」
 ミス・ロングビルがひどく慌てて答える。
「フーケを殺すより、秘宝回収の方が優先なのでそれはちょっと」
「うー」
 非常に不満そうだ。まあそうだろう、実際ドアから家の中に入るのは危険としか言いようがない。
 ああ、そうだ。そうしよう。
「シルフィードで屋根を破壊して奇襲する」
「名案ね」
「そりゃーいいな。で、何人乗れるんだ?」
「3人」

 結局、ルイズとミス・ロングビルを見張りに残して屋根を破ることになった。



「エア・カッター!」
 上空から柱を切り裂く。
「今だぜえシルフィードォー!」
「きゅいきゅい!」
 ドラゴンの爪が既に家からずれかけている屋根を横薙ぎに弾き飛ばした。

「あら、誰もいないわよ?」
 キュルケが素っ頓狂な声を上げる。
「ロングビルもあんま信用できねーなあ」
「きゅ!」

 それは、あまりに不自然で。
 部屋の真ん中に堂々と置いてあった。
「破壊の杖……」
「あら、ほんとね」

「はあ?」
 セッコが不思議な顔でこっちを見た。
「これはさすがに杖じゃねーだろぉ。バズーカ砲か?」
 キュルケが答える。
「いや、これよ。宝物庫内を見せてもらったことがあるから間違いないわ。て言うかばずーかって何よ」
「説明は難しい、そもそもオレも詳しいわけじゃねー」
「じゃあ遠慮しとくわ」
「まー、フーケが来てもこれ撃てば楽勝だと思うぜえ」
 そう言ってセッコが破壊の杖を掴み上げる。
 と、使い魔のルーンが輝きはじめた。武器と親和するのだろうか?

「おああ、こりゃ駄目だあ」
 セッコが心なしかがっかりしている。
「弾が入ってねえ」
 弾?
「説明して」
「仕方ねーなあ、無駄に左手の力使うとなんか気分が悪くなるんだけどよお」
 ルーン文字が更に光を強める。

「これは[SRAWプレデター]つーここじゃねえ世界の武器だ」
 キュルケが口を挟んだ。
「杖じゃないっぽいのは理解したわ。けどダメってどういうこと?」

「これは、本来弾とセットなんだけどなあ」
「何か詰めて撃てばいいんじゃないの?」
 キュルケが珍しく正当な質問をしている。
「いや、どちらかというとなあ、この武器は弾の方が本体なんだ」
「は?」
 さすがに驚いた。
「こっち側はただの頑丈な筒だあ。まあ棍棒として使えば強えーかもしれねーけどよお」
「……」
「高い命中精度も。家も戦車もぶち壊す破壊力も。
 起動に魔法がいらないのも。全部弾の方の能力だ」
 ようやく、オスマン長老の不自然な落ち着きが理解できてしまった。
 戻ったら絶対問い詰めてやる。

「どうせあのヒゲジジイは弾の方を、別の名前で保管してんじゃねえの?
 フーケもいねーし、これもってかえろーぜえ」
 実にダルそうにセッコは[破壊の杖]もとい筒をシルフィードの背中に積んだ。



 その頃、周辺警戒という名の置いてきぼりを食らったルイズは困っていた。
「ああもう、一人で小屋に近づくわけに行かないし、ミス・ロングビルは何処かに行っちゃうし……」
 結局、遠くから小屋をボーっと見張ることしかできないのだった。

 セッコもセッコよ、ああいうときは普通主人を立てるべきじゃないの、使い魔的に。
 しかも妙にタバサに懐いてるし、キュルケじゃないだけまだマシだけど気に入らない!
 あ、小屋の屋根が吹っ飛んだわ。
 どうも戦いは起こらなかったみたいね。見に行こう。



「きゃああああああ!」
 ルイズが外で叫び声を上げてやがる。静かにしろ。
 声の方を見ると、昨日のゴーレムがこっちに向かってくるところだった。
「おほほほほ、踏み潰してやるわガキども!」

「うおあ、早く飛べええ」
 巨大ゴーレムに踏まれるよりわずかに早く、シルフィードが3人を乗せて離陸する。さて、ルイズをどうやって助けるか。
 それよりもあのゴーレムの肩に乗ってる奴をぶっ殺してえな。
 しかもやっぱフーケは女だったじゃねえか。ロングビル使えねえ。
「ちょっと降りるぜえ」
「この高さ飛び降りて大丈夫か相棒?」
「オメーを持ってりゃ余裕だ」

「レビテーションで降ろしてあげるわよ」
 キュルケが言ってきた。タバサは既に何か呟いている。
「そんな暇があるなら攻撃魔法を撃ちやがれ」
 そう言って飛び降りる。いつもながら[左腕の力]は頼れる。
 だが、どーもこういう状況になる度、何かを忘れてる気がしてくるんだよなー。
 ギーシュの時も、昨日ゴーレムを見たときもそうだった。落ちつかねえ。
 ルイズが逃げずに、魔法でゴーレムを攻撃している(失敗の爆発だが)理解できねえ。敵わないなら逃げてくれ畜生。

「ああもう、どうすればいいのよ!」
「逃げるんだよぉーーーーーーー!」
「冗談じゃないわ、貴族は背を向けない!」
「馬鹿かオメー!」
 ゴーレムの右腕がルイズを掴もうとしている。掴まれたら確実に死ぬなあ。
 間に合うか?無理だろーなあ。
 その時、上空から火の玉と竜巻が飛んできてゴーレムの腕を弾く。

「相棒!今だ!」
 うるせえ、見れば分かる。
 飛び込んでルイズを掴み後ろに下がる。糞、気絶してやがるじゃねえか。無茶し過ぎだ。
 仕方がねえ。
「拾いやがれ畜生おおおお!」
 シルフィードの影を見て、進行方向に思いっきり投げた。
「きゅい!」
 拾えたみてーだ、これでまず障害を1つ排除だぜえ。ちょっと挑発してやるかあ。

「なあー、フーケよお、[土]でオレと戦おうなんて冗談だろオ?」
「はっ、負け惜しみかい?さっさと潰れな!」
 あれぇ?なんかおかしいこと言ったかオレ?まあいいや。
 いくらデカかろうと所詮人形だ、登ってあのクソ女をぶち殺してやる。
 デルフリンガーを振り回しゴーレムの右拳を受け流す。動きは遅いがパワーがやべえ。
 タバサともう一人がもうちょっと頑張ってくれればいいんだがなあ。



ルイズ達がフーケと戦っていたその頃。

 これで何度目になるだろうか。ギーシュ・ド・グラモンは、実にくだらない事で始まった、あの決闘について考えを巡らせていた。
 1匹目のワルキューレを素手で破壊し、その上、錬金前の石をそのままぶつける新技もかわされた。
 その後の異常な動き。モンモランシーがいなければ、きっと僕は死んでいた。
それはいい、それはきっとあのセッコという平民が規格外だったんだろう。
 いまさら負けたことに絶望しても仕方がないさ。

 けど、けどあれは何だったんだろう?
 何度考えてみても、ワルキューレ7体が潰されたことが納得いかない。
 そう、7匹だ。
 僕は何故、あの時7匹のワルキューレを錬金できたのだろうか?
 確かに事前に1匹破壊されていたのに。途中で止めたとはいえ、更に1回錬金をしたのに。自分の成長かと思ったが、腹立たしいことに再現できない。
 あの男がいたから?
 セッコに側にいてもらって呼んでみた、やはり8匹目は呼べない。
 命の危険を感じたから?
 使い魔ヴェルダンデに落ちたら死にそうな縦穴を掘ってもらい、その横で試してみる。やはり7匹止まりだ。
 ダメだ、他に原因が思いつかない。
 けど、この僕が一度できたことがもう一度できないなんて、そんなことがあるわけがない。大体、突然8匹呼べるようになること自体はありうる。
 最初は1匹しか作れなかったのだから、今増えることはおかしくないはずなんだ。
 絶対に何かあるはずだ。絶対、絶対にもっと強くなってやる。



「ねえ、タバサ、セッコって本当に人間なの?」
「人」
「じゃあ何なのよあれ!吸血鬼でももっと鈍いわよ!」
「ルーンと何か、何かは不明」
「何か、ねえ。それにしてもあのゴーレムの左腕はなんなのよ!」
「わからない、あんな動きは見た事がない」
 さっきからいくら魔法を放っても、回転する左腕に受け流されてしまうのだ。
 これ以上近づくわけにもいかない。



「しつこいねえ!無駄だってのに!」
 敵が上と下にいるため、両方を牽制しなくてはならない。
 結果割とでたらめに腕を振り回す羽目になっているのだが、実際それは十分な効果を上げていた。
 左腕も大体予想通りの仕事をしてくれている。実に愉快だ。

「頭じゃねえ、足を狙いやがれ!」
 言いつつ、なんとか右腕に取り付こうとする。なかなかうまくいかねえ。
「相棒、足から登ればいいんじゃねえの?」
 ついにぼけたかサビ剣。
「馬鹿、足なんかに取り付いたら手に潰されるぜえ!」

「ああもういい加減に諦めなさいよ!」
 弾き損ねた火球がゴーレムの右足首に直撃する。
 一瞬動きが止まるが、すぐに再生すればすむことだ。

 しかし、セッコにとってその一瞬は十分すぎた。
 右腕にとりつき駆け上がる。
「相棒馬鹿だけどすげーなあ」
「馬鹿は余計だぜえ」
 一発で首を撥ねてやるクソ女。



「油断したわくそっ、ガキの癖に!」
 使い魔の男が右腕を凄い勢いで登ってくる。捕まったら確実に殺される、そんなオーラを全身から発散させながら。
 だが、もっとヤバイ状況を腐るほど乗り越えてきたこの私は慌てない!

「……なあんてね」
 フーケはゴーレムの右腕を、根元から切り離した。



「うおあああああああああ」
 畜生、まさか切り離してくるとは思わなかったぜえ。
 いや、あの再生能力を持ってすれば切り離すのが当然か。だが、腕が一本なければ足から登れるぜ!
「相棒―――!」
 デルフリンガーが五月蝿い。ちょっと黙ってろ。
 体勢を立て直し着地する。
「何度でも上ってやるぜフーケさんよおおおお」
「あんたの身体能力は本当に馬鹿がつくね!」
「ならいい加減に諦めやがれえ!」
「何のために」
「はあ?」
「あたしが何のために腕を切り落としたか分かるかい?」
「なに言ってやがんだあ?」
「このゴーレムはねえ、ダメージが[鈍い]のよ?すぐに[再生]するからねえ」
「それがどうしたああああ!」
「自然に、あんたが近づいて、なおかつ腕を切り落として不自然じゃあない状況!」
「なにわけわかんねーこといってやがんだああ!」
「[再生]するわよ」
「すりゃーいいじゃねえかよおお、その間に上ってぶっ殺してやるぜえ!」
「あんたごとね!!!」
「相棒、下だっ!!!」
 下あ?

「オバアアアアアアアアアアアアアア!!」
 まさか、そんな。オレが土ごときに!
「や、やりやがったなクソ女ああああああああ」
「負け惜しみならなんとでもお言い!」
 畜生、勢いが早すぎる、すまねえサビ剣、もう持ってられねえ。
「プげッ」
「相棒ああああああああああああああ!」

 乾いた音を立てて、デルフリンガーが地面に落ちた。



 畜生、動けねえ……息もできねえ……なんだっけ……前もこんな……

……おまえが行くのだセッコ、おまえの「……」がっ!
 なんだよ、オメー誰だ、どこに行くって言うんだあ?

「いけッ!」
 しつけえなあ。動けねえって言ってんだろ?

「硬い」硬いのに沈んでいく。
 そんなわけあるかよ。

「潜った」ぞッ!
 ああ、オレは潜り込まされてるぜ。

「地中に潜るまでもねえ」
 そうか……オレは……



「あははははは!あたしの方が一枚上手だったわね!ついでにあんた達もぶっ殺してやるわ!」
 フーケが高笑いしている。畜生。
「ああ、もう終わりだわ……」
 キュルケが泣きそうな顔でこっちを見る。ルイズは気絶したままだ。
 シルフィードの元気がない。
「破壊の杖はある」
 言い返してはみたが、この状況を何とかする術が思いつかない。
 唯一ゴーレムと戦えていたセッコは、ゴーレムそのものに飲み込まれてしまった。
 まだ何も、何も謎は判明してないのに。
 あれ、どうしたんだろう?
「ゴーレムの様子がおかしい」
「本当ね。あの使い魔まだ生きてるのかしら?」
 そんな馬鹿な。土に頭まで飲み込まれて生きている人間などいるわけがない。

「もっとしゃんとしなさいよ!あいつらに土の塊をお見舞いしてやりな!」
 どうもゴーレムの動きが鈍い。魔力はまだ十分残っているというのに。
 一体どうしたの、不純物が混ざったからかしら?

「勝利を確信したとき、そいつは既に負けている っつーのは誰の言葉だったかなあああ、畜生、思い出せねーぜ。オメーの言葉じゃねえのは確かだがなあー」
 そんな馬鹿な。
 今最も聞きたくない声が、足元から。
 足元……?
 そんなわけがない。ここはゴーレムの肩の上だ。
 きっと幻聴よ。珍しく苦戦したし。
「死ね」
 違う、やはり後ろに誰かいる。
「うああああああああああああ!」
 森の中にフーケの絶叫がこだまする。
 そして巨大ゴーレムが崩れ落ちた。




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