ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-23

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匿名ユーザー

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「と言うわけですが…よろしいでしょうか?ミス・ヴァリエール」
「……それは、かまいませんけど」
 朝にもこんなやり取りしたなような……等と思いながら、ルイズはミス・ロングビルに返事をする。
「すいません、守衛の誰かに頼もうかとも思ったのですが、私事ですし……」
「い、いえ最近は土くれのふ、フランケン?そんな盗賊も出ると聞きますし」
「土くれのフーケです」
 モット伯の屋敷に誘われたので、育郎を護衛に貸して欲しい。
 ミス・ロングビルにそう頼まれたルイズは、特に断る理由も無かったので
了承したのだが……

 なーんか気になるのよね……この人。
 知らないうちにイクローと仲良くなってるし……
 そりゃ、文字を教えてもらってるんだから、親密になっても不思議じゃないけど……
 別にこいつがミス・ロングビルと仲良くしてたからって、私には関係無いけど。
 関係ないんだけど……うん、関係ないわよね?
 でもほら、あれじゃない?一応私の使い魔なんだから……その、あれよね?
 ご主人様の私を差し置いて恋人作るのって……そうと決まったわけじゃないけど、そう、仮よ、仮に恋人になったとして、私のメンツ?威厳?そういうのがねー

 違うのよ。
 私もその気になれば恋人の一人や二人そりゃ軽いわよ?
 でもね、私はあの年中発情期のツェルプストーとは違うんだから!
 曲がりなりにも公爵家だし。
 そう、公爵家。
 つりあうような男の子なんてそうはいないの。
 だから私に恋人がいなくてもおかしくないの。
 恋文とかも送られた事が無いのも、相手が尻込みしてるからなのよ。
 むむむむむむむ胸とか全然関係ないの。
 これから大きくなるはずだし。
 大きくなったらいいな………なに弱気になってるのルイズ!
 大きくなるのは間違いないんだから!
 ちい姉さまを見ればそれは確定じゃない!
 もう一人のお姉さまは歳が離れてるから関係ないし!
 絶対関係ないし!

 なんか違う方向に怪しんでいるルイズであった。
 あと途中から話も違う方向に向かっている気がするが、気にしてはいけない。



「ようこそ、ミス・ロングビル!」
 屋敷の入り口でミス・ロングビルを迎えたモット伯が、後ろに控える育郎に気付く。
「おや?ミス・ロングビル、その平民は……」
「ええ、最近は何かと物騒ですから。守衛の方に一緒に来てもらったんです」
「そうですか」
 メイジのミス・ロングビルに平民の護衛などいるのかと、モット伯は少し疑問に思ったが、すぐに『か弱い女性』なのだから心細かったのだろうと思い直す。
「ミス・ロングビル、今夜は我が家の誇るシェフの料理を存分に楽しんでください」


「なぁ、相棒……やれると思うかい?」
「やらなければシエスタさんが……」
 護衛という事で、衛視の詰め所に案内された育郎が、デルフの声に答える。
 ミス・ロングビルから聞かされた、シエスタの救出作戦はこうだ。
 まずミス・ロングビルが、なんとかしてモット伯に、育郎と決闘をするように仕向ける。もちろん、育郎が勝てばシエスタを解放させると約束してだ。
 育郎が勝ちさえすれば、メンツを何よりも気にする貴族の事である、そのこと 自体を取引材料にして、今日あったことを口止めさせる。
 実に単純な作戦だが、王宮勅使という地位をもつモット伯の所から、シエスタをただ奪い返しても、すぐに連れ戻されるだけである。さらに言うなら、これなら育郎の主のルイズにも迷惑が掛かる事も無い。
 実に理想的だったが問題が無いわけではなかった……
「あの姉ちゃんがいうには、相手はトライアングルクラスなんだぜ?
 そりゃトライアングルってのもピンキリだし、相棒がそのままでもすげーのは知ってるけどよ……」
 デルフが珍しく心配そうな声を出す。

「それでもあの姿になる訳にはいかない。ロングビルさんだけでなく、ルイズやおじいさんにまで迷惑がかかるかもしれない……」
「もし大怪我でもしてあの姿になったら?あっちの相棒は容赦ねえぞ。
 別に気にする必要もねーけど、あのスケベ親父を殺しちゃさすがにまずいだろ?」
「………それでも、何もしないわけにはいかない」
 そう、『バオー』の存在を秘密にする以上、変身するわけにはいかない。
 生身のままで、トライアングルクラスの魔法使いを打ち倒さねばならないのだ。
「まあ、相棒ならそう言うと思ってたけどよ……」
 育郎は気付かなかった、この時デルフリンガーがほくそえんだ事を。
 もっとも、剣がほくそえむのを気付ける人間がいるのかは謎だが。
「なあ、相棒。実はな、俺相棒の為に最近いろいろ思いだそーと頑張ってるんよ」
「デルフ?」
「それでだな……こう、はっきりとは思い出せねーんだが……
 もし相棒が避けきれねーって感じたら、俺で魔法を受け止めてみてくんねーか?」
「魔法を受け止めるって……大丈夫なのか?」
 今度は育郎がデルフに心配そうな声をかける。
「ああ、なんか起きそう気がするんよ。なんも無くても、俺頑丈だから」
「……それじゃあ、危なくなったら頼むよ」
「おお!まかしときな!」

 そして相棒はその時知るんだ!
 俺がどれだけ役に立つかを!

 実はしっかり思い出していたのだが、ありがたみ強調させる為に、あえてぼかした言い方をするデルフリンガーに、育郎はまったく気付かなかった。



 一方そのころミス・ロングビルは。
「次はこちらのワインはいかがですか?アルビオン産の年代物ですよ」
「あら、そんなに飲ませて……酔った私をどうするおつもりですか?」
 冗談めかしてそう言うミス・ロングビルに、脈ありと感じるモット伯。
「いやいや、どうするもなにも、私は紳士ですから!」

 さっきから胸をやたらに見る、あんたのどこが紳士なんだい……

 と言う様な内面を全く見せず、ミス・ロングビルは会話を続ける。
「そうですわね、モット伯は紳士ですから。例えば……
 危険な夜道をか弱い女性が、護衛一人で帰らせるなんて、気が気でないでしょう?」
「ふむ、それはそうですが……ミス・ロングビル?」
 いまいち要領がつかめないモット伯に、ミス・ロングビルが、今まで見せた事の無い妖艶な笑みを浮かべて口を開く。
「そうですわね……夜もふければ護衛がいるとはいえ、何かとあぶないですし。
 か弱い女性をそんな危険にあわせるよりは、館に留まらせる方を選ぶのでは……と」

 そそそそそそれはOKということなのか!?OKという事なんだな!?

 と言うような内面を全く見せず、モット伯は少し考えるそぶりを見せる。
「そうですな……最近は土くれのフランドル等と言う輩が、町を騒がせておりますし」
「土くれのフーケです」
「そうそう、土くれのフランシスカという盗賊でしたな!」
「………」
 ミス・ロングビルのこめかみが微妙に痙攣している事に、モット伯は気づかない。

「まあ、そのような盗賊が大手を振る世の中です、嘆かわしい事ですが……
 確かにそんな危険な輩がはびこる夜道に、気安く送り出すわけにはいきませんな!」
「さすがモット伯ですわ!紳士でらっしゃる!」
「いやいや!」
 わざとらしいおべっかなのだが、モット伯はそれを好意と受け止める。
「で、では早速部屋の用意を……なんなら私の」
「でも、まだこんな時間では、夜も遅く……などとは言えませんね」

 どどどどどういう事だ!OKじゃなかったのか?おあずけ!?

 等と内心焦りまくりのモット伯に、ミス・ロングビルが続ける。
「ということは、まだもう少しお邪魔になってもよろしいですよね?」

 ななななななんだびっくりしたではないか!
 もう、ミス・ロングビルも人が悪い!あーびっくりした!

「もちろんですとも!おお、そうだ!
 わたくし書物のコレクション等を趣味にしているのですが、御覧になられますか?」
「まぁ!さぞかし立派なコレクションなのでしょうね?」
 大げさに驚くミス・ロングビルにモット伯は気を良くする。
「はっはっはっ、質だけなら学院の蔵書にも引けをとらぬと自負しています」
 そう言って席を立ち、ミス・ロングビルを自慢の蔵書のある書斎へと案内する。

「まあ、立派な本棚ですこと!並んでいる本もさぞかし貴重なんでしょうね」
「もちろんですとも!例えばこの『伝説の巨人』や『光の騎士』の超越の竜に関する四冊など、これ一冊だけでも並みの貴族では一生かかっても手に入らないほどの……」
 ここぞとばかりコレクションの自慢を始めるモット伯。
「まあ、そんなに高価な物ですの?」
「ええ、個人でこれだけ集める事ができる者は、この国でも数えるほどでしょうな!」
 さり気なく自分の事をアピールするのも忘れない。
「それはすごいですわね……そうですわ!その本で一つ賭けをしません事?」
「賭け?」
 さすがにその言葉に、良い気分になっていたモット伯の顔がひきしまる。
 なにせ自分の命の次に……さらにはおっぱいの次、いや、同等?
 しかしこれだけのコレクションは……いや、しかしおっぱいの果てしなさは……
「モット伯?」
「ああ、これは申し訳ない。ミス・ロングビル、賭けといって先程言ったとおり貴重な蔵書ばかりゆえ、例え一冊でも貴方には見合うものが」
 その言葉が言い終わる前に、ミス・ロングビルがモット伯にしなだれかかる。
「貴方が賭けに勝てば……今夜は貴方の好きにしても……」
「すすすす好きに!?で、では例えばあんな事やこんな事も……」
「ええ、もちろん」
 そう言ってモット伯の耳に熱い吐息を吹きかける。
「ほおおおおおおおお!!!」

 マジか!?
 いや、待て落ち着けモット!このコレクションの貴重さを良く考えるんだ!
 確かに!確かにミス・ロングビルのおっぱいも素晴らしい!すんばらしいが!

「し、しかしですなミス・ロングビル!?」
「実は私が連れてきた護衛なのですが……」
「?」
 唐突に話を変えるミス・ロングビルに、さらに困惑するモット伯。

「モット伯が学院から買い入れたメイドと、随分親密でして」
「は、はぁ」
「今日私がモット伯に招待されたと聞いて、一緒に連れていって欲しいと必死になって頼んだきたのです」
「そ、それがどうかしたのですか?たかが平民の事情など」
 何故そのような話をするのか、さっぱりわからない。
「ええ、もちろん私もそう言ったのですが、どうも諦めきれないようで。
 違う場所で働く事で、なかなか会えなくなるのではと不安なのでしょうね……
 そこで、彼のためにも、一つ決闘をなされてはいかがですか?」
「決闘?平民と?」
「ええ、勝った方が負けた方の言う事を聞く。決闘の慣わしですわね……
 彼もそれで駄目だったら、さすがに納得するでしょうし。なにせ王宮勅使の
 モット伯との決闘ですもの……それで私は平民の彼に『賭け』ようと思いますの」
 その言葉の意味を理解し、モット伯の顔に笑みが浮かぶ。
「なるほど……では当然私は自分の勝利に『賭ける』ことにしましょう!」
「『賭け』は成立……ですわね?」
「ええ、勿論ですとも……」
「ふふふ」
「はっはっはっ」
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「はっはっはっはっはっはっはっはっ!」

 こうして、それぞれの欲望が絡み合い、育郎とモット伯の決闘が実現したのであった。



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