ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-3

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匿名ユーザー

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「おあ?」
 廊下を人が歩く音でセッコは覚醒した。もう朝らしい。
 記憶が無いなりに自分の状況を再確認する。
 どうもこの今一つ理解できない状況は、夢ではねえようだ。
 なんせ目の前のベッドに自分を使い魔?にした女が眠っていやがる。
 確か起こせと言っていた気がする。

「起きろぉー、ルイズ起きろ」
 ぴくりとも動かねえ、だが息はしてるようだ。
「起きろつってんだろがよおおおお!」
 ベッドを思い切り揺らして叩き起こしてやるか。方法は言われなかったし。

「な、なによ!何事?」
「朝だ起きろぉー」
「あー……はいはいおはよう。……あなた誰だっけ?」
 記憶喪失って伝染性の病気だったかぁ?んなわけねえよなー?
「セッコ」

「ああ、使い魔ね、昨日呼んだ!」
「頭の病気か。」
「ちょっと寝ぼけてただけよ!あ、ついでに服を着せなさい。」
 言うが早いか服一揃いを投げつけられた畜生。
 それにしてもどうも逆らう気がしねーのは何故だ?
 やっぱりこの印になんかあるのか?

「できね。」
「ちゃんとやってくれたら飴ちゃん一個あげるわよ。」
「着せ方が判らねえ。」
「……」
 仕方なく自分で服を着るルイズ。
 貴族ってのは人前で着替えるのが普通なのかぁ?
 全く理解できねー。
「ちょっと早いけど朝ご飯食べに行くわよ。」
 そういえば、昨日トリステイン魔法学院?に来てから何も食べてねえ。
「うん、うん。」

 ルイズに付いて部屋を出ると、胸のでかい赤髪の女が目の前にいた。
 なんだか挑発的な表情をしてやがる。敵?
 赤髪はルイズを見るとにやりと笑った。
「おはよう、ルイズ。」
「おはよう、キュルケ。」
 ルイズが心底嫌そうにだが挨拶を返している。敵ってほどではねえみたいだ。
「あなたの使い魔って、それ?」
「サモン・サーヴァントで平民を呼ぶなんて、さすが[ゼロのルイズ]ね」
 ルイズの表情が険しくなっている。
「うるさいわね!」

 そもそもオレを使い魔と呼ぶこと自体どうも腹が立つ。
 別の二つ名があった気がするが、思い出せねえ。気にしても仕方ないか。
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねえ~。フレイム!」
 キュルケが勝ち誇って叫ぶと後ろから赤い獣が現れた。
 でかいが目が妙に可愛い。
 ルイズが今にも暴れ出しそうだ。オレは飯が欲しい。
「ルイズ、飯……」
「わかったわよ!こんなのほっといて先に行きましょ!」
 やった、飯が食える。
「ちょっと、この微熱のキュルケ様を無視とは何事よ。」
「朝ご飯が早く食べてえ、後で聞く。」
 正直関わりたくねえ。大体使い魔なんて、正体不明のほうが有利なんじゃねえの。
 まあ飯だ飯。食堂はもうすぐらしい。

「うおあ、無駄に豪華だなあ」
「無駄は余計よ。貴族が使うんだからこれで普通なの。」
「オレは何を食えばいいんだ」
「それよ。」
 指差した先の床にパンとスープの皿が置いてあった。
 腹が減っていたので平らげる。甘いもの以外の味はよくわからねえ。
「量が足らね。」



 ルイズは困っていた。平民の、しかも使い魔に貴族の食事を与える訳にはいかない。
 それに「教育」にも悪そうだ。だが、確かに足りない気もする。

 どうせ残す物ならいいかしら?
「少しだけよ。」
 鳥の皮とハシバミ草のサラダを渡してやる。
 セッコはそれをあっという間に食べてしまった。
 この食欲ぐらい役に立ってくれるといいんだけど。

 授業があるとかいうので付いていく。こいつ学生だったのか。
 偉そうだから先生かと思っちまったぜ。
 魔法学院っつーからには魔法を教えたりするのか?
 とはいえ、ルイズが魔法を使っているとこを見たことが無いのでなんとも言えない。手品かもしれねえし。

「ここよ。」
「オレも授業受けなきゃいけねえの?」
「一応ね、適当に流してていいからその辺の床に座ってなさい」
 石の床はなんとなく落ち着く。
 それにしても、どうやら魔法学院というのはウソじゃねえらしい。
 変な生き物がいっぱいいる。これ全部使い魔か。

「私は赤土のシュヴルーズ……土は・・基礎の……
トライアングル……錬金……だから……その……
スクウェアが……」
 授業は全く理解できねえ。諦めて目の前の変な生物をからかって遊ぶ。
 目玉お化けも6本足のトカゲも、形以外は普通の動物としか思えねえ。
 なんで使い魔が人間だと困るんだぁ?
 オレならこんな珍獣の部下はこっちから願い下げだ。

 と、突然爆発が起こった。こいつが魔法かぁ?
「うわあああ!」
「ゼロのルイズがまたやりやがった!」
 どうも失敗らしい。失敗にしてはえらい威力だ。
 また爆発があったら嫌なので外に出よ。それがいい。



「セッコ!セェッコ!!」
 おかしいわね、あいつどこ行ったのかしら。

「セッコ!」
「なんだ。」
 やっと現れた。主人が呼んだらもうちょっと早く来なさいよ。
「掃除を手伝いなさい。」
「わかった。」
 やれやれ、なんとか昼までに終わりそう。
 けど自分で指名しておいて、失敗したから一人で掃除しろなんて、あのババア今に見てなさいよ。

 何とか終わらせて食堂についてみると、テーブルにはデザートのケーキ(の残り物)しかなかった。
 甘いものは好きな方だと思う、でも昼食がケーキのみというのは耐え難い。
 半分セッコに投げてよこすと大喜びしていた。
 ハシバミ草を平気で食うくせに、甘いもの大好きなんて不思議な奴。

 セッコがまた何か騒いでいる。優雅な昼休みがぶち壊しだ。黙らせないと。

「オレは悪くねぇ!謝るのはオメーだ!」
「貴様のせいでモンモランシーが!」
「脳みそにカビ生えてるのか?足元に転がってきた物を拾って何が悪りい!」
「貴族に対する礼を知らないのか平民が!」
「オメーのどの部分に貴族の要素があるんだ小便のシミ野郎!!!」
「このギーシュ・ド・グラモンを侮辱したな!決闘だ!」
「望むところだ、ボロ雑巾にしてやるよおおオオオオ!」

「ギーシュもセッコも何やってんのよ!」
「これはこれは[ゼロのルイズ]、君の召喚した無礼な平民にちょっと教育をね。」
「何がゼロですって?!既にあんたの方が無礼よ!大体決闘は禁止されてるでしょう。
 何だか知らないけどセッコも謝りなさい!」
「禁止されているのは貴族と貴族の決闘だろう?こいつは平民だ。」
「そうだそうだ!」
「オレが謝る理由がひとつもねーよ!」
 既に観衆までヒートアップしていてとても止められそうにない。

「セッコ。」
「何だ。」
「もう勝手にしなさい。でも殺したらダメよ!殺されそうになっても逃げなさいよ!」
「わかった。」
 これは多分勝とうと負けようと「わたしが」謹慎だ。勘弁してほしい。
 一応主として見届けるべく広場へついていくものの足取りは重い。




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